取扱業務
遺言書の作成手続について遺言書作成業務のご案内
『終活』が流行っていますね。
そのためなのか最近は遺言書についてのご相談をいただく機会が増えてきました。
遺言書は相続トラブルを未然に防ぐ意味合いだけではなく、相続人の手続上の負担が格段に軽減されます。
司法書士は遺言書作成のプロフェッショナルです。
適正な費用で法律上しっかりとした遺言書をつくってみませんか?
遺言書作成業務(目次)
遺言書を作成する上でのポイント
遺言書はただ単に書けば安心というものではありません。
遺言書として有効であることと、実際に法務局や銀行などで使用できるかどうかは別問題です。
しっかりとした法律の知識や経験がなければ、せっかくつくった遺言書であっても時として肝心な部分が足りなかったりします。
既に遺言書を作成されている方も、これから遺言書を作成しようとされている方も、以下確認してみてはどうでしょう。
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誰が誰に相続(遺贈)させたいのか?
誰が誰に遺言書を残すのかその特定はしっかりできていますか?
具体的には、住所、氏名(フルネーム)、生年月日などを表記します。
例えば・・・
遺言者は埼玉県川口市西川口1丁目1番1号、長男たる戸田一郎(昭和55年1月1日生)に対し次の遺産を相続させる。
最低限これぐらいの特定はすべきです。
尚、上記は受遺者(遺言を受ける方)についての特定ですが、遺言書(遺言を行う方)についても同様に特定を忘れないようにご注意下さい。
またその発展形として仮の条件を付けるようなことも可能となります。
例えば・・・
~尚、遺言者より先に戸田一郎が死亡した場合は、その長男たる~に相続さるものとする。
こうすることによって後に遺言書を作り変える手間を省けたりもします。
うまく活用してみましょう。 -
何を相続させたいのか?
どのような財産なのかその特定はしっかりできていますか?
対象が不動産であった場合、『自宅を相続させる』では駄目ですよ。
また自宅の住所だけを表記するのもおすすめしません。
必ずしも『住所標記=不動産標記』ではないですから。
具体的には土地であれば『所在』と『地番』、建物であれば『所在』と『家屋番号』が最低限の特定事項です。種類や地積等も表記しておけばより良いと言えます。
マンションの場合もほぼ同様ですが、敷地権やマンション名等、記載内容と注意事項がじゃっかん増えてきます。
尚、これらの情報は法務局で取得できる登記簿謄本(登記事項証明書)やお持ちの権利証(登記識別情報通知)の不動産の表記で確認できます。
その他、預貯金を対象とする場合は、銀行名、支店、口座番号、預金の種類(普通預金、定期預金など)の表記で特定します。
また、株式等の有価証券が対象の場合は、会社名、株式数等を記載するのが一般的となります。
どの財産についても言えることですが、ポイントとしては誰が見てもこれと分かる財産の特定です。
このポイントを外してしまうと、最悪の場合、法務局や銀行での手続に遺言書を使えなくなってしまうことがありますのでご注意を。 -
いつ遺言書を書いたのか?
遺言書を作成した日付も重要となります。
尚、これがない遺言書は法律上では無効です。
和暦でも西暦でもかまいませんが、曖昧な表記(12月吉日等)にしないよう注意しましょう。
時間の記載は必要ありません。
普通に『平成○年○月○日』と表記して下さい。 -
偏った内容ではないか?
一部の相続人に偏った内容であることが問題なのではありません。
むしろ内容が偏っていない遺言書の方が珍しいくらいです。
ただし、それ故に相続人同士でトラブルになることもあります。
その備えはできていますか?
少し難しい話になってしまいますが、遺言書内でトラブルになるのを見越して遺留分減殺請求の順序を定めておいたり、トラブルを防止すべくなぜ偏った内容にしたのかを付言事項で説明したりするのも手です。
これは遺言書を作成する上で必須事項というわけではありませんが、有る無いとでは全く異なる結論を迎えることもあり得ます。
是非ご活用下さい。
遺言書の種類
一言に遺言書といっても実は色々な種類があります。
普通方式
- 自筆証書遺言:遺言者本人だけで作成する最も簡単な遺言書
- 公正証書遺言:公証役場にて公正証書として作成される遺言書
- 秘密証書遺言:遺言者本人が本文を作成し、証人二人と一緒に公証役場へ行き、遺言書の封印を行う遺言書
特別方式
- 一般危急時遺言:遺言者の疾病その他の事由によって、死亡の危急に迫っている場合に行う遺言
- 難船危急時遺言:船舶の遭難等により、死期が迫ったときに行う遺言
- 一般隔絶地遺言:伝染病などが原因で交通手段が遮断された場所にいる人が行う遺言
- 船舶隔絶地遺言:船舶中の旅客や乗務員が行う遺言
とは言え、実際に世間で利用されているのは上記の内、「自筆証書遺言」及び「公正証書遺言」の二つがほとんどです。
他の遺言書については、遭難等、ある一定条件下で特別に許可されているものであり、これから遺言書を書こうという人が検討するものではありません。
そのため、以下、その二つに限定してご説明させていただきます。
1.自筆証書遺言
自筆証書遺言は遺言者が自ら筆記し作成する遺言書です。
それには以下のような長所と短所があります。
- 自筆証書遺言の長所
①紙と筆記用具さえあればだれでも簡単に作成することが可能。
②すべてを自分で行えば費用がかからない。
③自分から見せない限り他人に遺言内容を知られることがない。 - 自筆証書遺言の短所
①要式不備で無効になることがある。
②トラブルが生じやすい。
③死後、相続人に手間と費用がかかる。
④紛失、破損、汚損等の恐れがある。
長所についてはご説明するまでもないでしょうから、まずは短所の①についてです。
自筆証書遺言を書く際には、次の4点を守らないと遺言書全体が無効になってしまうことがあります。
- 全文自筆(人に書いてもらったものは無効です。)
- 正確な作成日を書く(平成○年○月吉日のような記載は不可です。)
- 戸籍通りの正しい氏名を書く(厳密に言うと、フルネームでないものや芸名などでも無効にならなかった裁判事例がありますが、わざわざ冒険するところではありません。)
- 押印(印鑑の種類は問いませんが実印が無難です。)
その他、加除訂正をするにも厳格なルールがあります(訂正個所に訂正印を押し,訂正文字数・加入文字数などを記載する必要があります)。
続いて②についてです。
自筆証書遺言は人目に触れず簡易に作成できる反面、相続発生後、その筆跡が遺言者本人のものかどうかで争われることもあれば、作成当時の意思能力の有無について裁判になるような事例もあります。
争いが生じる余地のないご家庭ならばまだしも、既に相続人間が険悪であるような場合(もしくはそうなるかもしれない場合)には、必ずしも適した遺言形式とは言えません。
また、公正証書遺言と比べると偽造や変造も容易となります。
では③についてです。
自筆証書遺言は遺言書の死後、家庭裁判所にて遺言書の検認手続なるものが必要となります。公正証書遺言の場合は、「遺言者の死亡」によってその効力が発生しますが、自筆証書遺言の場合は、それに加えこの「家庭裁判所での検認手続」が効力発生要件となります。
公正証書遺言についての詳細は後述しますが、「先に費用がかかるのが公正証書」、「後に費用または相続人に手間がかかるのが自筆証書遺言」と言えるでしょう。
最後に④についてです。
基本的に遺言者自らの管理となるため、それに伴うデメリットが生じます。
尚、相続人が作成事実を知らないことも多いため、せっかくつくったにも関わらず、場合よっては発見されずに捨てられてしまうようなケースもあるでしょう。
引越し時の紛失や、火災、水災などにも注意が必要になってきます。
※既に施行されているわけではありませんが、政府が相続改正案で自筆証書遺言を法務局で保管できる制度の創設を検討しているようです。これによって所有者不明の土地や空き家問題の解消にもつながるといいですね。
2.公正証書遺言
公正証書遺言は公証役場で作成する遺言書のことです(当然ながら公正証書となります。)。それには以下のような長所と短所があります。
- 公正証書遺言の長所
①要式不備の恐れがない。
②トラブルに強い。
③家庭裁判所での手続がいらない。
④再発行できる。
まず①についてです。
公正証書遺言は提出した起案を元に公証人によって作成されますので、法律的に有効な遺言を間違いなくすることができます。
筆記するも氏名ぐらいですので、体の不自由な方にも向いていると言えます。
続いて②についてです。
トラブル事例がゼロというわけではないですが、自筆証書遺言に比べればその率は格段に少なくなります。
2名の証人の立会のもと、面前で遺言内容を確認し、その場で公証人が作成を行うため、筆跡の疑いや意思能力の有無を問われることがありません。
では③についてです。
自筆証書遺言とは異なり、公正証書遺言の効力発生要件は「遺言者の死亡」のみです。
既に公証人によってその内容の適正は証明済みですので、煩わしい裁判所での手続を回避することができます。
最後に④についてです。
公正証書遺言は、「原本」、「正本」、「副本」の3通が作成されます(内容は同一です。)。
内、「原本」を公証人が保管し、「正本」及び「副本」は遺言者に手渡されます。
それをどうするかは遺言者の自由なのですが、私の携わった案件では「正本」を遺言者が保管し、「副本」を受遺者(遺言によって遺産を得る者)に保管してもらうことが多いです。
それによって紛失等のリスクが減るためです。
尚、「副本」であっても単なる控えというわけではなく、「正本」と同じ効果があるため、それ一つで相続手続を行うことが可能です。
また、この点が非常に大きなメリットなのですが、仮に「正本」、「副本」共に紛失等したとしても、公証人が「原本」を保管しているため、僅かな手数料を支払うことによって、再発行が可能なのです。
そのため公正証書遺言を紛失して手続ができないということは、まずありません。
- 公正証書遺言の短所
①お金がかかる。
②手続が煩雑。
③証人が2名必要となる。
仮に司法書士などの専門家に依頼されなくとも、公証役場で遺言内容に応じた手数料がかかります。
また公証役場に対して事前に遺言書の起案や財産等の疎明資料を提出しなければならないため、自筆証書遺言と比べるとかなり手続が煩雑になってしまいます。
加えて証人2名の立会が必須となるため、少なくとも公証人とあわせて計3人に遺言内容を知られてしまうという短所があります。
ただし、手続面はご依頼いただければすべて司法書士が行いますし、こちらで証人2名(内、1名は司法書士で、もう1名は事務員です。公証人も含め我々には守秘義務がありますので遺言内が外に漏れるようなことはありません。)の準備も可能です。
そのためご依頼さえいただければ実質的なデメリットは金銭面だけとなるでしょう。
専門家と一緒につくる遺言書。
それを高いと思うか安いと思うかは皆さま次第です。
どのような人が書くべきなのか?
遺言者は誰であっても書くべきです。
遺言書がなくて困ることはありますが、あって困ることは稀ですから。
その上で特に書くべき人は?
と、問われますと、経験上、次の事例に一つでも当てはまる方は要注意です。
残される相続人のためにも遺言書の作成を強くお勧めします。
- 子のいない方(配偶者がいて子がいない方を含む)
- 前妻または前夫との間に子のいる方
- 認知した子がいる方
- 相続人となる者(推定相続人)たちの仲が悪い方
- 相続人となる者(推定相続人)の中に行方不明者がいる方
- 相続人となる者(推定相続人)の中に意思能力がない者がいる方
- 相続人となる者(推定相続人)の中に外国に永住する者がいる方
どれかに当てはまりましたか?
個々の詳しい説明は省略させていただきますが、これらに共通することは程度の差こそあれ相続手続が複雑になる可能性が高いということです。
少しでも死後ご家族に迷惑をかけたくないと思うのであれば、すぐにでも行動に移してみてはどうでしょうか。
その他、遺言書(特に公正証書遺言)があればトラブル防止の意味合いだけでなく、銀行や法務局での手続も随分楽になります。
具体的には提出する戸籍等を省略できますので相続手続にかかる費用も手間も時間も少なくなります。
それらも含めて考えますと、やはり遺言書は誰であっても書くべきです。
まずは手間と費用のかからない自筆証書遺言でもかまいませんので。
相続人となるご家族に、『遺言書さえあったら・・・』と思わせないようにしましょう。