平日9:00〜20:00(土日は要予約)

ブログ

不動産登記

夫婦間であっても贈与税はかかる?

さて、今回は夫婦間贈与の話です。

「夫婦間なんだから贈与税なんてかかるわけがない!」

意外とそう思っている方、あるいは意味を取り違えてしまっている方が多くいらっしゃいますが、原則として夫婦間、家族間であっても贈与税は発生します。

898edacfb8a7c8f5c091854e06c4ba23_l.jpg

なぜ勘違いしてしまうのか?

よくよく改めて考えてみても、夫婦間や家族間で贈与税がかからない理由がありません。
仮にそうであれば、相続税などその意味をなさなくなってしまいます―


ではいったいなぜ勘違いしてしまいがちなのか?

人によって色々な理由があるでしょうが、一番は課税対象の混同かと思われます―


日常生活費や教育費などに充てるための贈与については、「通常必要と認められるもの」についてのみ贈与税の課税対象にはなりません。


親子や夫婦には扶養義務がありますので、生活上、互いに助け合っていかなければなりません。
ご飯を食べさせなければならないでしょうし、学校にも行かせなければならない。

それらすべてに贈与税がかかるのであれば、とても生活なんてできませんよね。

そのため、主に日常生活や教育にかかる贈与についてはこれを課さないというのが国の考え方なわけです。


ただし、これはあくまで日常生活や教育にかかるものに限定された話です。
それ以外は当然に贈与の対象となってしまいます。


夫婦間贈与、自宅の購入時は要注意

974e03dc5610cafe8a188b0bd48b0f54_l.jpg

夫婦が共有でマンションや戸建を購入することはよくあることです。
簡単な事例を基に考察してみましょう。

例えば―

  • 4,000万円のマンションを夫婦で購入
  • 資金元はすべて夫名義の住宅ローン
  • 持分は夫婦各2分の1を予定


ちなみにこの状態は、立派な贈与となります。

何もお金を出していない妻が単純計算で2,000万円分の贈与を夫から受け、マンションを購入した形となるからです。

夫の資金元が住宅ローンか否かは問題になりません。

お金の流れが『銀行→夫→妻』なのか『夫→妻』の違いでしかないからです。


自宅購入時に妻も購入費用を負担しているケースでは?

続いて次の事例です。

  • 4,000万円のマンションを夫婦で購入
  • 資金元は3,500万円が夫名義の住宅ローン、残り500万円については妻の預金
  • 持分は夫婦各2分の1を予定


上記と異なる点は、妻もマンションの購入費用を支払っていることです。
ただし、だからと言ってこれが贈与に当たらないわけではありません。

確かに妻からお金は動いています。
が、問題はその額です。

妻は2,000万円分(4,000万円の2分の1)の不動産を取得するわけですから、本来それに見合った金銭を負担する必要があります。

結果、差額である1,500万円分については、贈与の対象とみなされてしまうわけです。

※上記2ケースでは、なるべく分かり易くご説明するため基礎控除等の説明は除外しています。
また、不動産購入費用は単に売買代金だけではなく、諸経費(不動産屋の手数料等)を含めた総額で考えるのが原則です。

配偶者控除制度の利用

1cfbf8090899600e7445a9c7684c2bd2_l.jpg

既述のとおり、夫婦間であっても贈与税が発生することがあります。
特に不動産の購入時のように多額のお金が動く際にはより注意が必要です。

ただし、一定の要件を満たす場合には、本来かかる贈与税を支払わなくてよいことがあります。

夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除というやつです。

具体的な要件は次のとおりです。

  • 夫婦の婚姻期間が20年経過後に贈与が行われたこと
  • 贈与された財産が自分が住むための居住用不動産(または居住用不動産を取得するための金銭)であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した国内の居住用不動産(または贈与を受けた金銭で取得した国内の居住用不動産)に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること

※当該制度は同一の配偶者との間では一生に一度しか使用できません。


この制度の趣旨を要約すると、『20年間も夫婦でいるのだから、実際に住んでいる不動産又はこれから住む不動産についての贈与に限って、贈与税の負担を軽くしてあげますよ!』ということなのでしょう。

とは言え、贈与税が全額免除になるわけではありません。
あくまで最大2,000万円までのものにつき控除される趣旨です。

ただし、前述しました2つの事例(贈与税が発生する事例)に関しましては、この制度を利用できるのであれば、対象がいずれも2,000万円以内であるため、贈与税が課せられることはないというわけです―

また、居住用不動産の購入費用であっても、実際に住んでいる不動産の贈与であっても同制度を利用することができます。


例えば、後の相続などに備え生前に夫名義の自宅不動産を妻名義に変更することも、夫名義の自宅を売却し、その資金で新たに妻名義の自宅を購入するようなこともできるわけです。

婚姻20年経過等、その要件が多少厳しくはなっていますが、知らないと使えない制度ですので、当てはまる方は是非ご検討されてみてはいかがでしょう。

贈与又は売買による不動産の名義変更には登記が必要です

夫婦間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除を用い、自宅不動産を贈与又は購入した際には、管轄の法務局に対しその旨の登記申請が必要となってきます。

具体的には贈与契約書や売買契約書を作成した上で登記上の名義人を変更する手続です。

これを不動産登記手続と言い、ここまでやってこその手続完了なのです。


「不動産登記/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/estate-register/


司法書士九九法務事務所では、川口市や蕨市、戸田市などの近郊だけに限らず、東京都内、千葉、茨木等、これまでに数多くの贈与や売買に基づく登記申請業務の取り扱いがございます。

税務的に複雑なケースなどは税理士の紹介も致しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。


ではでは。


write by 司法書士 尾形壮一