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相続

家庭裁判所での調停や審判に基づく相続登記について


いつもお読みいただきありがとうございます。


さて、今回は相続登記は相続登記でも、少しだけ毛色の異なる手続についてのお話しです。
相続で揉めてしまった結果の相続登記とでも言いましょうかー


もちろん、そうならないに越したことはないんですけどね…
自分一人で完結する手続ならまだしも、他者が絡む時点で絶対はありません。


仮に相続で揉めてしまった場合に、どのような手続が待っているのか?
ごくごく簡単にではありますが、その辺りを要点を交えご紹介させていただきます。


※資格の性質上、司法書士には家庭裁判所での代理権がありません(認定司法書士に限り、裁判所提出書類の作成権限はあります。)。そのため、遺産分割調停等の代理をご希望の場合は、司法書士ではなく弁護士にご依頼ください。当ブログは、どちらかと言うと、遺産分割調停等の結果に行う相続登記手続に焦点を当てたものになります。






1.通常の相続登記手続と何が異なってくるのか?


早速ですが、『遺産分割』という言葉をご存じでしょうか?
遺産をどのように分けるのかを相続人全員で協議し、決定するあれです。


また、決定した内容を文書に起こしたものが、【遺産分割協議書】になります。
一般的な不動産の相続登記手続や、預金の解凍手続等で使用することが多いため、実際に見聞きする機会も多いのではないでしょうか?




では、協議の結果、遺産分割が整わなかった場合は?



既述のとおり、遺産分割協議は相続人全員で行う手続ですので、不調に終わってしまうことも珍しくはありません。
反対する人もいれば、どうしても連絡が付かない人がいることもあるでしょうからー


とは言え、そこで打つ手無しというわけではありません。
かかる労力や手続費用を考えると、避けれるものなら避けたいものでしょうが、家庭裁判所に対し、【遺産分割調停】【遺産分割審判】を申立てることができるのです。



1-1.遺産分割調停とは?

ごく簡単に説明しますと、遺産分割調停とは、裁判所を介した相続人全員の話し合いです。
尚、家庭裁判所(調停委員)が間に入ってくれるとはいえ、その本質はあくまで相続人間の話し合いです。
そのため、相続人全員が納得し、合意しない限り成立することはありません。


ついつい感情的になりがちな相続人間の話し合いに、中立、かつ、公平である家庭裁判所(調停委員)が介入することによって、円滑な話し合いを推進する趣旨ですね。いわゆる。


尚、無事に遺産分割調停が成立すると、『調停調書』なるものが発行されます。


1-2.遺産分割審判とは?

遺産分割審判とは、上記の遺産分割調停でも話が付かなかった場合に、相続人に代わり家庭裁判所が遺産分割の方法を決定する手続です。
(厳密には、遺産分割調停をすっ飛ばして遺産分割審判ができたような気もしますが、一般的には①調停、②審判の順序です。)


話し合いがまとまらなければ、残念ながら遺産は未来永劫そのまま…とは、いきませんからね。
裁判所が皆の言い分や証拠等、あらゆる情報を精査した上で判断を下すことになります。


尚、遺産分割審判がなされた場合には、『審判書』なるものが発行されます。



1-3.調停調書や審判書によって相続登記が可能に

ここまで来れば、後は法務局での相続登記手続を残すのみです。
尚、調停調書も審判書も、いずれも裁判所の判決と同じ効力を持つことになります。


ようするに、それらを用い、他の相続人の同意なく単独で相続登記を行うことができるようになるのです。


もちろん、遺産分割協議書など必要ありません。
詳しくは後述しますが、本来であれば相続登記に必要となる書類の大半も省略可能です。


調停調書や審判書が遺産分割協議書と戸籍謄本等の代わりになるようなイメージを持っていただければー
ともあれ、次項にて具体的な登記必要書類のご案内をさせていただきます。



1-4.相続登記必要書類~調停や審判の場合~

任意での遺産分割協議が整った上で相続登記を申請する場合には、一般的に次のような書類が必要になってきます。
(一般的な相続登記の必要書類ですね。もちろん、事案によって他の書類も必要になることもあるので、あくまで参考迄。)

まずは標準時と比べてみましょうー


  • 被相続人(お亡くなりになられた方)の出生時~死亡時迄の連続した戸籍謄本等
  • 被相続人(お亡くなりになられた方)の住所証明書(除住民票又は戸籍の附票等)
  • 各相続人の戸籍謄本(抄本)
  • 各相続人の印鑑証明書
  • 相続を受ける者の住民票



対して、遺産分割調停や遺産分割審判に基づき相続登記を行う場合は、これらの書類を大幅に省略することが可能です。
具体的にはー


<遺産分割調停に基づく場合>

  • 調停調書(正本でも謄本でもいずれも可)
  • 相続を受ける者の住民票



<遺産分割審判に基づく場合>

  • 審判書(正本でも謄本でもいずれも可)
  • 確定証明書※(詳細は後述します)
  • 相続を受ける者の住民票



だいぶ減りましたね。
本来、被相続人の戸籍謄本等は、誰が相続人になるのかを客観的に証明するために必要とされるものです。
法務局としても、相続人全員の協議である点をチェックしているわけです。

ただし、調停や審判による場合は、申立時に裁判所がそれらをチェック済みであるため、基本的には改めて取得する必要も提出する必要も無いとー

その点からすると、必要書類が減るというよりかは、必要になるタイミングが異なるというのが正しい表現なのでしょう。
取得不要というわけではなく、裁判所への申立時に必要になるのか、法務局での登記申請時に必要になるのかといった具合に。



尚、これが原則です。
そして、また例外もあります。



ケースによっては、被相続人の死亡の記載ある戸籍謄本等や住所証明書を要求されることも…

何と言うか、調停調書や審判書の記載方法の問題です。
なんとなく最近は少なくなってきたような気がしますが、審判書や調停調書に死亡年月日の記載がなかったり、被相続人の「最後の住所」と「登記簿上の住所」が一致していない案件において、審判書に「登記簿上の住所」の記載がなかったりするケースが代表例かなと。


この場合、審判書や調停調書では足りない情報を、戸籍謄本等や住所証明書を添付することで補完するのが無難です。


まあ、弁護士も裁判所も、係争の解決が主目的ですからね。
その点からすると、その後の登記のことまで気が回らないのも致し方ないとも言えます。

ですので、基本的な必要書類は既述のとおりですが、その記載内容をよく確認し、足らずの情報を付加する必要もある点、ご注意いただければ。




1-2.確定証明書とは何か?

軽くスルーしておりましたが、上記「1-1.相続登記必要書類~調停や審判の場合~」にて遺産分割審判に基づく相続登記の必要書類にのみ『確定証明書』なるものが登場しています。


  • これは何か?
  • 調停調書の場合には必要にならないのか?


結論からすると、調停調書に基づく場合には不要です。
なぜなら、既に確定しているからです。


もう少し、詳しくご説明するとー


調停調書が存在しているということは、いわゆる相続人間でのの話し合いが済んでいる状況です。
裁判所を介してまで話し合いを行い、かつ、相続人全員の同意の上、決定した内容です。
これが覆る理由はありません。


自ずとその確定を証明する必要もないことになります。


対して、審判の場合は、そもそも調停が不調になった結果、その判断を裁判所に委ねたものです。
そしてそれは、必ずしも相続人全員が望む結果ではなかったかもしれません(むしろ、そうであることが大半でしょう。)。
そのため、審判には裁判所の出した決定に対し、異議を申し立てる期間(2週間)が予め設定されているのです。


そうすると、審判書だけではその後に異議の申し立てがあったのかどうかを判断することは不可能です。
仮に審判書が存在していたとしても、決定から2週間が経過していたとしても、異議の結果、
いまだに係争中である可能性もあるわけですから。



結果ー



審判が確定していることを証明するべく、登記申請時には「確定証明書」の添付が要求されるわけなのです。


尚、確定証明書は、審判の後、改めて取得の請求をする必要があるため、以外と忘れがちです。
ご注意を。




2.まとめ

今回は調停や審判に基づく相続手続のお話しについてでした。
調停や審判の代理は弁護士の分野になりますが、その後の登記手続につきましては、我々司法書士の分野になります。


司法書士九九法務事務所は、調停や審判に基づく相続登記手続についても多くの経験がございます。
お困りの方がいらっしゃいましたら、まずはお気軽にご相談いただければ。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一