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遺言

遺言書とは異なる内容の遺産分割協議について


いつもお読みいただきありがとうございます。


僕自身としては、かなり久しぶりの投稿になってしまいました。
ペースを戻したい、いや、むしろ上げて行きたいところなのですが、なにぶん優先すべき仕事が多くて...
なんともありがたい話なのです。
とは言え、それに甘えずブログの方もサボらず頑張っていこうと思っております。

さて、今回は遺言書が存在する状態での遺産分割協議の可否についてご案内致します。
多少マニアックなテーマではありますが、困っている方も多いのではないかと思われます。

それについて、注意すべきと言うか、外してはいけないポイント等もありますので、その辺をうまく整理できればなと。
また、詳細は本編でご案内しますが、この辺りの知識を持っていれば、それを遺言書に活用することもできるのです。

興味のある方は是非最後までご覧ください。

<目 次>



1.遺言書のとおりに相続するのが原則

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あくまでそれが大前提です。
(ここを外してはいけません。)

当然と言えば当然ですよね。
そうでないと遺言書を残す意味が希薄になってしまいますから...


簡単に遺言内容を覆せるのであれば、トラブルを防止することなんて出来はしないでしょう。
最優先されるべきは遺言者の意思であることに違いはありません。

では、ありとあらゆる場合において、遺言書が、そこに記載ある遺言内容が、常に優先され、それに対する例外は生じないのでしょうか?

遺言書とは言え、さすがにそこまでのものではありません。
もちろん、それに対する例外はあります。


遺言者の意思を最大限尊重した上で、バランスを取るとでもいいましょうか―


1-1.受遺者(遺言を受ける側)の意思も尊重される

最優先されるのは遺言者の意思です。
ただし、だからと言って受遺者側の意思が全く無視されるわけではありません。


受遺者側が遺言を放棄することは当然に可能です。


そもそも遺言によって受ける効果は、必ずしも恩恵ばかりではありません。
例えば、遺言には受遺者側に一定の負担を付与することも可能です。
いわゆる、受遺者側が望まない内容の遺言だってあるのです。

そうでなくとも、単純に「いらないな...」と思うこともあるでしょう。

例えば、処分自体が難しい調整区域の田畑や、不動産の価値以上に処分費がかかる廃墟等々...


そうした受遺者側の意向が全く無視されてしまうわけではないのです。

結論からすると―

たとえ遺言書があっても、それを受けない自由が受遺者側にも認められています。
ようするに、遺言書はあっても相続を放棄することが可能なのです(具体的な放棄の方法については、近いうちに別の記事にてご紹介致します。)。

いわゆる、遺言書があっても必ずしもそのとおりの帰結になるわけではないと―

では、今回の主題である遺言書とは異なる内容の遺産分割協議についてはどうでしょう?
あくまで遺言を放棄するのではなく、その内容を変える趣旨ですね。

遺言者の意向を優先するのか?
受遺者の意向を優先するのか?


以下、検証していきましょう。


2.遺言書と異なる内容の遺産分割協議は有効なのか?

先に結論から。

遺言書とは異なる内容の遺産分割には有効なケースも、そうでないケースもあります。
よくあるグレーな結論なようにも思えますが、ある種この論議には明確な判断基準が存在するのです。

それはー

「遺言執行者」の有無です。


遺言執行者は、当ブログでも再三登場しているので、あるいはその意味を知っている方も多くいるでしょう。
改めて簡単に説明しますと―


遺言執行者とは、遺言者に代わって遺言の内容を実現する義務を負う者です。


遺言執行者は、遺言の内容を実現すべく、受遺者への遺産の分配や引渡し、遺言内容によっては認知や相続の廃除を行う等、多くの権限を持っています。
いわゆる、遺言に基づく相続手続の主導者であり、手続上の主役のようなものです。
また、権限だけではなく、それに対する相応の責任を負う者でもあります。

もう、なんとなくお分かりかもしれませんが、この遺言執行者を無視して行った遺産分割協議は無効になります。
たとえ相続人全員が同意していたとしても結論が変わることはありません。


そもそも遺産の管理権は遺言執行者にあるためです。
仮に遺言執行者を無視した遺産分割協議が有効とするならば、遺言執行者の職務は大きな混乱をきたしてしまうでしょう。
むしろ、その存在意義すら危ぶまれてしまうことでしょう。

結果、いくら相続人全員の同意があったとしても、遺産の管理権がない以上、遺言執行者を無視することはできないわけです。


では、遺言執行者が存在する以上、遺言書とは異なる内容の遺産分割協議は常に無効なのか??

もちろん、そんなことはありません。
あくまで遺産の管理権のある遺言執行者を無視した遺産分割協議が無効なだけであって、絶対的に無効というわけではありません。
端的に言えば、遺言執行者を無視せず、協議内容を共有し、その同意を得られればいいだけの話なのです。

ちょっと分かり難くなってきたと思いますので、ここで簡単にまとめてみますね。


<遺言書と異なる内容の遺産分割協議の有効性>

  • 遺言執行者が存在しない ⇒ 相続人全員の同意がある場合にのみ有効
  • 遺言執行者が存在する  ⇒ 遺言執行者の同意に加え、相続人全員の同意がある場合にのみ有効



まあ、当然と言えば、当然の帰結ですよね。
遺言書と異なる内容の遺産分割協議を希望するのであれば、まず遺言執行者の有無を確認するようにしましょう。



2-1.遺言内容を変えられたくないのであれば遺言執行者を活用しよう

以上のように、遺言とは異なる内容の遺産分割協議がなされることがあります。
受遺者側の当然の権利なので仕方がない話ではありますが、それに対する対策がないわけでもありません。


言わずもがな、遺言執行者の活用です。
遺言執行者を定めておくだけではなく、その者に遺言者の意向をよく伝えておくだけでも結構な違いが生じると思われます。

ほんと、遺言執行者は大事なのです。
尚、遺言執行者であっても、受遺者側の相続放棄する権利は止められませんので、その点は注意が必要です。
ただ、遺言内容を工夫する等、ある程度の対策は取れなくはないので、その辺は専門家にご相談するのをお勧めします。


より良い、より願望に叶った遺言書をお作りいただければ―



3.まとめ

さて、今回は遺言書とは異なる内容の遺産分割協議書の可否についてでした。
あげる方も貰う方も、それぞれの考え方と事情があるでしょうから、なかなかに難しい問題ですよね。


あくまで私的には、遺言書を優先したい思いが強いですけど...


尚、いくら意に沿わない内容であったとしても、遺言書を破棄する行為は犯罪です。
相続欠格等、民事上の責任だけではなく、場合によっては刑事上の責任(有印私文書偽造罪等)を負う可能性すらあります。

どうしても、遺言内容とは異なる相続内容にしたいのであれば、本編のようにちゃんとした手順と手続を踏むようお気を付けください。

それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一