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遺言遺言執行者は2人(複数)いてもいい?
いつもお読みいただきありがとうございます。
さて、今回は大きく分けると遺言についての話しになるのですが、その中でも少しだけマニアック(?)な内容になります。
おそらく独力で遺言書を書かれる場合には、あまり検討されない部分ではあるでしょうー
あくまで限定的な場面に限られますが、知ってさえいれば、うまく活用できる部分もあるかと。
ざっくり言えば、複数の遺言執行者を定める場合のお話しです。
では、具体的にどういうものなのでしょう?
1.遺言執行者とは
まず、遺言執行者についてですが、当ブログでも度々登場したテーマです。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現する者であり、言うならば相続手続上でのキーマンとなる人物等です。
特に相続人財産に預貯金等が含まれるような場合には、その効果を最大限発揮することになるでしょう。
(そもそも相続財産に預貯金等が含まれない場合の方が珍しいでしょうから。)
ちなみに、遺言執行者についてご説明した過去のブログをご紹介しますので、より詳しくという方はこちらもご参照ください。
「遺言書に遺言執行者は必要なのか?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_94/
「遺言執行者は誰にすべき?その報酬は??/司法書士九九法務事務所」
https://99help.info/blog/post_108/
その上で今回のメインテーマは、この遺言執行者を複数選任することはできるのか?
できたとして、注意点等はあるのか?
と、言ったところを焦点にお送りさせていただきます。
1-1.遺言執行者を複数選任することの可否
結論からするとできます。
むしろ、遺言執行者の数に制限はありません。
極端な話、2人でも5人で10人でもいいと…
まあ、そんな多くするメリットはなかなか無いと思いますけどね。
そもそも、遺言執行者が複数いること自体が珍しいとも言えるので。
ちなみに、前の記事でも触れていますが、遺言執行者になれない方は、「未成年者」と「破産者」に限定されています。
そのため、実際に相続を受ける相続人(このケースが最も多いと思います。)はもちろんのこと、相続を受けない相続人や知人などを指定することも、司法書士や弁護士等の他、法人や銀行等を指定することもできるのです。
1-2.遺言執行者は安易に複数人にすべきではない?
上記のとおり、遺言執行者には人数制限もなければ、資格制限もそんなにはありません。
だからと言って、いたずらに複数人を遺言執行者に指定することは止めておきましょう。
なぜならー
遺言執行者を2名以上指定した場合は、原則として、遺産の維持管理といった保存行為を除いて、遺言の執行手続は遺言者の過半数もって決めることになるからです。
遺言執行者を定めることで、せっかく手続を簡易に出来るようになるにも関わらず、かえって面倒になりかねないと…
もちろん、それが功を奏するようなケースもあるでしょうが、意図していないものであれば由々しき事態になることも…
ちなみに、このような事態を避ける方法は存在します。
しかも、わりと簡単です。
具体的には、各遺言執行者の職務内容を遺言書の中で決定しておけばいいわけです。
次項で一般的な書き方をご紹介しますが、例えば、『各遺言執行者は、それぞれ単独で本遺言の執行業務を行うことができる』といった文言を付加する方法となります。
1-3.複数の遺言執行者を選任する際の遺言書の書き方例
これが正解と言うわけではありませんが、遺言執行者が複数いる場合の選任条項をご紹介します。
尚、これは各遺言執行者がそれぞれすべての業務権限を持つ形になっております。
(あくまで参考程度にしていただければ。)
第〇条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、〇〇及び〇〇を指定する。
2 各遺言執行者は、それぞれ単独で本遺言に基づく遺言者の不動産、預貯金、有価証券、車輛その他の債権等遺言者名義の遺産のすべてについて、遺言執行者の名において名義変更、解約等の手続をし、また、貸金庫を開扉し、内容物の収受を行い、本遺言を執行するため必要な一切の権限を有するものとする。尚、各遺言執行者は、それぞれその権限を第三者に委任することができる。
赤字部分ですね。
これでそれぞれの遺言執行者が単独で手続を行えるようになります。
ちなみに、テーマから少し外れてしまいますが、遺産中に預貯金や有価証券などがある場合は、上記のように権限をはっきり書くようにしましょう。
対象となる金融機関によっては、遺言執行者にその権限があるかどうか判断できないという趣旨で、手続に関与できなくなることもあるので。
また、せっかくなら最後の一文にも注目しておいて下さい。
遺言執行者から第三者へその権限を委任できるようになる文言です。
これによって、例えば、遺言執行者から司法書士等の専門家に各種相続手続を委任する権限が生じることになり、実際に遺言執行者として相続登記等を依頼できるようになるわけです。
その他、遺言執行者が遺言者より先に亡くなった場合に備えて、二次的に遺言執行者を定めるようなことも可能です。
その辺は状況に応じて色々工夫していきましょう。
2.まとめ
ちょっと今回はマニアックなテーマでしたね。
そもそも遺言執行者を複数にすべき案件なんて、そこまで多くはないでしょうから、果たしてこの情報がどう活きるのか…
まあ、でも、そうした事例が全くないわけではありませんよ。
例えば、あまり仲がよくない相続人に対し、異なる財産を相続させる場合(相続人Aに不動産を、相続人Bに預金を相続させるケース等)に、各々が直接関与なく手続を行えるようにする等々、使いどころは無いわけではありません。
状況に応じて検討してみるのもいいかもしれませんね。
それでは今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一