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遺言書に遺言執行者は必要なのか?


いつもお読みいただきありがとうございます。



とうとう東京オリンピックの抽選が始まりましたね。
まだどの協議に申し込むか決めかねていますが、当ブログ記事がUPされるころにはどうにかしていたいものです。

おそらくオリンピックを生で観られる機会は今後そうないと思います。
是が非でもチケットを手に入れたいのは皆さんも同じでしょう。

どの対戦カードでもいいので、できればサッカーを観たいのですが、なにぶん競争率が高そう...
おそらく陸上競技や体操なんかもそうでしょうね。

果たして僕はなんらかのチケットをゲットできるのか??
(できなければチケットのいらなそうなトライアスロンなどを観にいくつもりですけどね。)


さて、そろそろ本題です。
今回は、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)についてのお話しです。

以前に遺言執行者からの相続登記申請の可否についての記事をご紹介させていただきましたが(意外に好評でした。)、それとは少しアプローチを変えてお送りさせていただければと思っています。


大まかなに言うと―


本来、遺言書に遺言執行者は必要なのか?と、いうテーマです。




<目 次>





1.遺言書に遺言執行者を指定する必要性

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"終活"の注目度が日に日に増加する昨今、遺言執行者(いごんしっこうしゃ)というワードを耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか?


当ブログでも度々登場している遺言執行者ですが、その仕事を簡易に表現するならば、『遺言書の内容を実現する人』と言ったところでしょう。


重要、かつ、相応な責任も生じるポジションです。


ちなみに僕が顧客の遺言書作成をお手伝いさせていただく際に、遺言執行者を指定しないことは余程の事情がない限りありません。

その理由は単純で、その方が顧客の利益になると考えているためです。


では、遺言執行者の指定のない遺言書は何かしらの問題が生じることがあるのでしょうか?
あるいは、遺言執行者がいないことによって遺言書自体が無効になったりするのではないかと、心配されている方がいるかもしれません。


以下、検証してみることにしましょう。



1-1.遺言執行者は必ずしも必要なわけではない

結論です。


少なくとも遺言執行者の指定がないことを理由に遺言書自体が無効になるようなことはありません。



司法書士等の専門家に頼らず、自力で作成された遺言書などは遺言執行者の指定のないものが多いように思えます。
自筆証書遺言などの場合は特に―


安心していただいて大丈夫です。
せっかく作った遺言書を、それだけの理由でわざわざ作り直す必要はそうありませんから。


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では、そもそもなぜ遺言書で遺言執行者を指定するのか?


必ずしもいらないのであれば、わざわざ指定しなくてもいいはずです―


その理由としましては、遺言執行者がいた方が相続手続がスムーズに進むことが多いからです。
とは言え、相続手続の中にはたとえ遺言執行者がいても、相続人全員の関与が必要な手続もあります。


「遺言執行者は相続登記を申請できるのか?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_68/#h44sjnwr4iu3kdr90ttqxnmk651wj

ただし、それらを差し引いても相対的に考えると、いないよりはいた方がよいと考えています。
手続的な面でもそうですが、心情面でもプラスが生じることがありますから。


遺言執行者がいれば、せっかく熟考して作った遺言書を相続人に無視されることも、悪意はなくとも遺言書を発見されないというリスク回避にもなりますから(厳密には"誰を"遺言執行者にしたのかに寄る部分はあります...)―


その他にも、遺言執行者を指定していた方がよい具体的な事例が存在します。

詳しくは次項にて―




1-2.遺贈を予定している場合は遺言執行者を指定しておくべき

その理由の前に、まずは"遺贈(いぞう)"についての復習を行いましょう。
ごくごく簡単に遺贈を説明しますと―


  • 相続人に対して遺言する場合     ⇒   『相続』
  • 相続人以外に対して遺言する場合   ⇒   『遺贈』



単にそれだけの違いです。
ただし、誰が自分の相続人になるのか、正しく理解しておく必要はあります。
相続になると思っていたのに、実は遺贈だったと言うことも―

子供は常に相続人になりますが、配偶者や兄弟姉妹、孫などは常に相続人になるわけではありません。
その点、ご注意ください。

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では続いて、なぜ遺贈を予定している場合は、特に遺言執行者を指定していた方がよいのかについてです―


遺贈の対象が不動産であった場合などは尚更なのですが、それはどうしてなのでしょう?

もちろん、それにはそれ相応の理由があるのです。



通常、遺贈に基づく登記手続は、遺贈を受ける側を登記権利者、相続人全員を登記義務者とし、共同申請(相続のように権利を得るものが単独で登記申請できるわけではありません。)する必要があります。

そして、これこそが遺言執行者を指定しておいた方がよい一番の理由なのです。



ん?
それだけ??



あるいは、そう思われかもしれませんね。
でも、よくよく考えてみてください。


既述のとおり遺贈を受ける人物(登記権利者)は相続人ではありません。
親族ですらないこともあるでしょう。

対して、登記義務者となるのは本来対象となる不動産を相続する権利を有していた相続人です。


しかも全員―


彼等は遺言により自身の権利を失いつつ、あまつさえ実印での書類の押印や印鑑証明書の提出も求められます。



はたして皆が皆快く登記手続に応じてくれるでしょうか??



故人の最後のメッセージである遺言書と言えども、それに反旗を翻す輩が現れたとしても不思議はありませんよね。

事実、悲しいかな世の中そうした事態は珍しいものではありませんー



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遺言書で遺言執行者を指定していた場合には、訴訟等を行わずともこのような事態(相続人が登記手続に協力してくれない)を回避することが可能となります。


なぜなら、遺言に基づく遺贈の登記申請を共同で行わなければならない点に変わりありませんが、問題になりがちな登記義務者が、相続人全員から遺言執行者に変わるためです。


なんと登記義務者が遺言執行者のみでいいわけです。


それは、権利を失うことになる相続人の関与なしに相続登記が可能であるという事を意味します。


それだけでも十分に遺言執行者を指定する価値があるとは思いませんか?
手続がスムーズにいくだけではなく、トラブルの回避にもなり得るわけですから―

※遺留分の問題とこれらの問題は別問題ですので、混同しないようご注意ください。




1-3.遺言執行者にしかできない手続も存在する

そんなに種類が多いわけでも、そうした内容の遺言書が多いわけでもありませんが、遺言書に記載ある法律行為の内、遺言執行者にしかできない手続も存在します。


具体的には―

  • 子の認知
  • 相続人の廃除
  • 相続人排除の取消し
    (遺言書でこれらを行うこともできるのです)


なんとなく想像がつくかと思われますが、これらの行為は相続人と利害が対立する行為です(それによって相続人が増えたり減ったりしますので。)。
そのため、遺言によって行う場合は、あらかじめ遺言執行者しかできない行為として法律で定められているわけです。

尚、子の認知の場合は、遺言執行者が戸籍法の定めに従って役所の戸籍科にその旨の届出を行うことになりますし、相続人の廃除やその取り消しの場合は、家庭裁判所にその旨の審判を請求することとなります。


ちなみに僕は、遺言書内での相続人の廃除であれば経験があります。
少ないと思いますが、ないわけではないのです。

知識として持っておいて無駄になるものではないでしょう。




2.遺言書作成後に遺言執行者を指定したい場合

遺言書作成時に遺言執行者を定めていなかったとしても、後にそれを定めることも可能です。


それもそのはずでしょう―
でないと、先にご説明した子の認知や相続人の廃除等ができなくなってしまいますから。



では、どうすればいいのか?

手続的には遺言者が生存しているか否かで変わってきます。


尚、遺言者が生前の内は手続もシンプルです。
新しく遺言書自体を書き替えるか、必要な内容を追加する遺言書を改め作成するだけですから。

仮に書き換えを希望するのであれば、この際ですから遺言書の全体的な内容も精査し直すのもいいですね。
あらゆる意味でより良い遺言書にしましょう。


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対して、遺言者が死亡した後はどうような手続になるのでしょう?


心配せずとも、手続自体はそんなに複雑なものではありません。
ただし、ある機関を利用しなければなりません。


そう、家庭裁判所です―


遺言者が死亡した後に遺言執行者を指定するには、相続人等利害関係人から"遺言執行者選任の申立て"が必要となってくるわけです。


2-1.遺言執行者選任申立手続について

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どうしても裁判所と聞くと複雑な手続を予想しがちですが、遺言執行者選任の申立手続自体は、そこまで複雑なものではありません。

ルールに従いその旨の申立書と所定の書類を管轄となる裁判所に提出するだけです。

以下、簡単にまとめてみます。


・申立人

利害関係人(相続人、遺贈を受けた者、遺言者の債権者など)
※誰しもが申立人になれるわけではありません。あくまで遺言の当事者のみが申立人になれるイメージです。


・申立先(管轄裁判所)

遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
※ちなみに司法書士九九法務事務所のある埼玉県川口市や、近隣の戸田市、蕨市などの管轄は、すべてさいたま家庭裁判所(本庁)となります。


・必要書類等

①申立書

②遺言者の死亡の記載ある戸籍(除籍)謄本

③遺言執行候補者の住所を証する書類
 ※住民票又は戸籍の附票

④遺言書の写し

⑤利害関係人であることを証する書類
 ※親族であれば戸籍謄本だったり、債権者であれば借用書(金銭消費貸借契約)だったりと、事案に応じた書類が必要になってきます。

⑥収入印紙
※800円の収入印紙が必要となります。どの家庭裁判所であっても手数料に変動はありません。

⑦郵便切手
※連絡用の郵便切手が必要となります。切手の内訳は家庭裁判所によって異なります。


尚、これらはあくまで申立に必要となる標準的な書類です。
遺言内容や利害関係人によっては、追加書類を求められることもある点には注意下さい。



3.まとめ

遺言執行者の必要性についての記事でしたが、いかがでしたでしょうか?

どうかと問われれば、なるべく指定しておいた方が良いと思いますよ遺言執行者は。


ただし、もちろん誰でもいいと言うわけではありません。
遺言内容に適した人物等を選ぶべきですね。


そうなると、今度は「誰を遺言執行者に指定すべきなのか?」と言う疑問が生じるかもしれません。


親族でいいのか?もしくは、信託銀行なのか?弁護士なのか?司法書士なのか?


需要があるようでしたら、そのうちそうしたテーマの記事をUPしようと思いますが、とりあえず今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一