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その他司法書士等、その他士業のあれこれについて
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回はちょっとだけ趣向を変えた内容でお送りします。
業務的なものというよりかは、弁護士、司法書士、行政書士を含む"士業"全般についてのお話です。
誰に頼めばいいのか分からないー
どこに相談すればいいのか分からないー
正直なところ、そうした問題を抜本的に解決できる程の内容ではありませんが、無駄になる程のものでもないかと思われます。
興味のある方は是非ご覧ください。
<目 次>
- 1.士業の種類 ~10士業・8士業~
- 2.各士業の業務内容
2-1.弁護士と司法書士は何が違う?
2-2.行政書士の業務はなぜ弁護士や司法書士と被るのか? - 3.どの士業に依頼すれば分からない場合はどうすればいい?
- 4.まとめ
1.士業の種類 ~10士業・8士業~
この国には、皆さんが想像しているよりもずっと多くの"士業(しぎょう)"が存在します。
ちなみに、士業は基本的に専門性の高い職業が多く、武士の"士"にちなんで、"サムライ業"と呼ばれることもしばしばです。
ざっとその代表格(あくまで代表格です。実際はもっとたくさんあります。)ともいえる資格を挙げてみますと...
- 弁護士
- 公認会計士
- 税理士
- 司法書士
- 行政書士
- 弁理士
- 土地家屋調査士
- 社会保険労務士
- 不動産鑑定士
- 中小企業診断士
※順番に深い意味はありません。なんとなく並べただけです。
尚、これらの仕業を巷では"10士業"と呼んだりもするようです。
ただし、それを覚えておく必要は全くないかなと...
僕自身、これまで10士業なんてワードを使ったことなんて一度もありませんから。
正直、その選別方法も謎です。
暮らしと事業に関わる士業という趣旨の説明がされていたりもしますが、であれば、1級建築士なんかもここに入っていいような気もしますし、他にももっとあるような...
また、上記の10士業から公認会計士、中小企業診断士、不動産鑑定士を除き、海事代理士を加えたものを"8士業"と呼んだりもするようです。
どうやら、職務上請求で住民票や戸籍謄本等を取得できるかどうかがその判断基準になっているそうなのですが、正直、だから何なんなんだと思ってしまいますよね実際。
その他、10士業や8士業に含まれていないものでも、最近で言えば宅地建物取引士(旧宅地建物取引主任者です。ようは宅建ですね。)やファイナンシャルプランニング技能士も士業に入るとか入らないとかー
そればかりか、上記のような国家資格ではない民間資格にも、"士"がつく資格が数多く存在します。
今、非常に人気の相続診断士を筆頭に、相続士、相続鑑定士、相続管理士、金融診断士、労務管理士なんかもそうですし、たしか敷金診断士なんて言う資格もあったはずです。
もはや、何が何だか―
かなり資格の、肩書の好きな国民性であることはよく分かりますよね。
2.各士業の業務内容
とは言え、他士業の詳細業務についてはそこまで詳しいわけではないので、ごくごく簡単な説明になっています。
また、もちろんすべての士業というわけではなく、上記10士業に限定したものです(とても書ききれませんから...)。
- 弁護士:あらゆる法律の専門家。各種訴訟手続の他、離婚問題、借金問題、相続トラブル、労働問題等々、業務内容は多岐に渡る。
- 公認会計士:会計に関する監査業務のスペシャリスト。企業の監査の他、M&Aや株式公開などには必須の存在。
- 税理士:税務書類作成のスペシャリスト。公認会計士と被る面はあるが、中小企業や個人がお世話になるのは基本的に税理士が多い。
- 司法書士:登記業務のスペシャリスト。その他に、簡易裁判所での訴訟業務、裁判所書類作成業務等、弁護士と被る部分の業務も多い。
- 行政書士:許認可申請や各種契約書類等の代行が主業務ではあるが、弁護士、司法書士と業務範囲が被ることが多い。
- 弁理士:特許、実用新案権、意匠権、商標権と言えば弁理士。仕事上の絡みがあまりないので詳しくはないです。
- 土地家屋調査士:不動産の表示に関する登記の専門家。司法書士との関わり合いが深く、業務を兼任しているようなケースも多い。
- 社会保険労務士:社会保険や労災などのスペシャリスト。最近では助成金業務でもよく目にします。
- 不動産鑑定士:まんま不動産鑑定のスペシャリスト。競売物件の鑑定の他、裁判案件や相続案件などでも幅広く活躍。
- 中小企業診断士:経営コンサルタントのスペシャリスト。仕事上の絡みが全くないので、よく分かりません。
と、まあ、こんな感じでしょうか。
それぞれに独自の専門性をもっているのですが、『弁護士、司法書士、行政書士』と『司法書士、土地家屋調査士』、『公認会計士、税理士』は互いに被る業務も多いため、特に分かり難いのではないでしょうか?
例えば、公認会計士と税理士の業務は、僕からしたら結構異なります。
なにぶん監査と税務の違いは大きいですよ。
ただし、大手の監査法人等から独立開業した公認会計士などは、税理士登録を行い、公認会計士というよりはむしろ税理士として活躍しているケースが目立つため、それらの区別が付きにくくなっているのではないでしょうか?
司法書士と土地家屋調査士については、登記という面では同じですが、業務内容で言うと結構な違いがあります。
かなり専門的な話になってしまいますが、不動産の登記は、"表題部"、"甲区"、"乙区"の3種類に分かれるのですが、内、表題部の専門家が土地家屋調査士であり、甲区及び乙区の専門家が司法書士なのです。
とは言え、かなり分かりにくいですよね...
ちなみに、表題部とは、土地の所在や地番、地積等が、建物について言えば、所在、家屋番号、構造、床面積等が表記されている部分です。
対して、甲区とは、所有権が誰にあるのかが登記されている部分であり、乙区とは所有権以外の権利(抵当権等)が登記されている部分です。
慣れていないとその区別は付きにくいかもしれませんが、一応、司法書士と土地家屋調査士では、業務範囲の明確な線引きがあるわけです。
※厳密に言うと、一部の表題登記に関しては司法書士による登記も可能ですが、話がややこしくなるのでここでは割愛させていただきます。
どうでしょう?
なんとなくそれぞれの違いが伝わりましたでしょうか??
それぞれが似ているようでも、相応の区分けのようなものが存在しているので、業務自体が被ることは少ないのが通常なのです。
ただし例外も、業務自体が被る(もしくはそう見える)資格も存在するのです。
そう、『弁護士、司法書士、行政書士の違いが分かりにくい問題』です...
2-1.弁護士と司法書士は何が違う?
以前であれば明確にそれらの区別が付いていたはずです。
なぜなら司法書士の業務は、ほぼほぼ登記業務に限られていましたから―
しかしながら、平成13年6月の司法制度改革審議会意見書において、司法書士の簡易裁判所における訴訟代理権については「信頼性の高い能力担保措置」を講じた上でこれを付与すべきとされ、平成14年4月の国会審議において、司法書士法の大幅な改正が行われるに至ったのです。
簡単に言うと、それ専門の試験に受かった司法書士(認定司法書士と言います。)については、次のような業務を新たに行うことができるようになったわけです。
法務大臣の認定を受けた司法書士は,簡易裁判所において取り扱うことができる民事事件(訴訟の目的となる物の価額が140万円を超えない請求事件)等について,代理業務を行うことができます(簡裁訴訟代理等関係業務)。
簡裁訴訟代理等関係業務とは,簡易裁判所における(1)民事訴訟手続,(2)訴え提起前の和解(即決和解)手続,(3)支払督促手続,(4)証拠保全手続,(5)民事保全手続,(6)民事調停手続,(7)少額訴訟債権執行手続及び(8)裁判外の和解の各手続について代理する業務,(9)仲裁手続及び(10)筆界特定手続について代理をする業務等をいいます。
簡裁訴訟代理等関係業務は,業務を行うのに必要な能力を有すると法務大臣が認定した司法書士に限り,行うことができるとされています。
※法務省HPより抜粋
この結果、簡易裁判所で行われる民事事件の多くに司法書士が登場するようになりました。
代表的なところで言うと―
過払い金の返還訴訟、建物明け渡し訴訟、敷金の返還訴訟、貸金返還訴訟等々...
弁護士のように簡易裁判所で代理人として裁判ができるようになったわけです。
また、代理権自体は認められていないものの、認定司法書士は家庭裁判所や地方裁判所等へ提出する各種書類の作成及び相談業務を行うことが法律上認められるようになりました。
これにより司法書士九九法務事務所でも得意業務としている、自己破産や個人再生、相続放棄や後見の申立業務等の裁判所書類作成業務が可能となったわけなんです。
対して弁護士は―
当然ですが司法書士のような代理権の制限は一切ありません。
簡易裁判所でも地方裁判所でも家庭裁判所でも何の制限なく代理人になることができます。
まさに裁判業務のエキスパートというわけなんです。
正直なところ、弁護士と司法書士の業務が被っているというよりかは、司法書士の業務範囲が拡大し、一部の従来の弁護士業務を行えるようになった言う表現の方が正しいのでしょう。
2-2.行政書士の業務はなぜ弁護士や司法書士と被るのか?
既述のとおり、行政書士の代表的な業務は、許認可申請(建築業、風営法等々)と各種契約書作成業務と言えるでしょう。
ただし、中には相続業務や会社の設立業務を主業務にしているところや、離婚、交通事故等を取り扱っている行政書士事務所も存在します。
その点において、弁護士や司法書士と業務が被っているように見えるのです。
ちなみに、それ自体が違法なわけではありません。
例えば相続であれば、行政書士は手続に必要となる戸籍の収集や遺産分割協議書等を作成する権限がありますし、会社の設立業務で言えば議事録や定款等を作成することも可能です。
ただし、その後の登記業務については司法書士の業務になりますので、法律上、行政書士がこれを行うことは許されていません。
さすがに最近は少なくなったと思われますが、依頼者本人の名前で登記申請を行政書士が行うことも法律的にはNGです(誤解がないように言うと、ちゃんとルールを守っている行政書士さんは、登記申請業務のみを別に司法書士に依頼する等、適切な対応を取っていたりします。)。
離婚や交通事故についても同様です。
これについて弁護士のように代理人として動くことは許されていませんが(もちろん交渉事ができるわけではありません。)、その旨の書類作成を行うこと自体に問題があるわけではないのです。
以前、行政書士をモチーフにした人気TVドラマがありましたが、あれはエンターテイメント性を高めるためにかなり脚色されているのだと思います。
あれを実際の行政書士がまんまやったなら...
行政書士の本業はあくまで各種書類作成です。
弁護士のように代理人として自由に立ち回れるわけではないのです。
尚、そんな行政書士ですが、やってはいけない書類作成業務も存在します。
そう、裁判所書類作成業務です。
裁判所への提出書類の作成を業として行えるのは、あくまで弁護士と認定司法書士に限られます。
これを行政書士が行うことは法律上許されていません。
そのため、例えば行政書士の資格で成年後見の申立書類を作成することはできませんし(成年後見人に就任すること自体は可能ですし、後見人に就任した上での裁判所提出書類などは、あくまで後見人としての業務となります。)、自己破産や個人再生、相続放棄などの裁判所申立書類作成業務についても同様です。
この辺は行政書士と弁護士、司法書士とで明確な線引きがありますので、ご注意を。
その他の業務で言うと、遺言書の作成業務でしょうか―
これについては司法書士も行政書士も弁護士も取り扱っているところが多く、僕自身、基本的にいずれも違法性等はない理解でいます。
どの士業を選ぶかは依頼者側に委ねられている感じですねいわゆる。
尚、これについては士業の優劣はなく、サービスそのものや実際に業務を対応する個人の知識や経験、人柄等で決める感じでいいのではないでしょうか。
以上のように、行政書士の業務はかなり幅広いですが、登記等一部の業務については単独で完結できない場面があったり、裁判所書類作成業務については元より行うことができません。
司法書士についても同様ですが、行政書士は弁護士とは異なり案件に応じて使い分ける必要がある士業と言えるのでしょうね。
3.どの士業に依頼すれば分からない場合はどうすればいい?
と、まあ、ここまで各士業の説明を簡単にしてきましたが、実際のところはお困りごとをどの士業に相談すべき分からないケースも多いと思います。
なにぶん僕等司法書士がややこしくしている面もありますので―
国が運営する"法律の窓口"みたいな機関があればいいのでしょうが、民間のポータルサイト上では存在しても、僕が知る限り公的な機関の中にそれらしきものは見当たりません。
とりあえず気楽に相談しようにも、それなりの相談料が発生するところもあれば、サイトなんかでは登録等を義務付けられるケースもあるようです。
では、どうすればいいのか??
なかなかに難しい問題です。
各種士業の専門家やポータルサイト運営会社もビジネスである以上、何らかの対価が発生するのは当然のことと言えます。
それを踏まえた上で―
それでも、士業に相談することをお勧めします。
相談料のかからない士業もいますし(僕なんかは基本的にいただいておりません。)、紹介料なんかは元よりかかりません。
仮に相談料等が発生したとしても、それで有益な結果が出るのであれば高くはないはずです。
なぜに士業を相談先に進めるのかと言うと―
士業間と言うのは、結構横の繋がりが強いものなんです。
どんなに優秀な方であっても、世の中に存在するすべての法律業務ができるわけではありません。
各士業は少なからずそれぞれが専門性を持って活動しているため、行き届かない部分は他の専門士業と協力して業務にあたるのが通常なのです。
例えば僕の場合ですと、上記の10士業の内、残念ながら弁理士と中小企業診断士については今のところ繋がりはありませんが、他の士業との繋がりは相応にありますし、職業柄、不動産業者とのパイプも強いです。
実際、相談いただいた顧客の案件に応じ、より適しているであろう士業への紹介等を行うことも少なくありません。
遠回りに思えるかもしれませんが、あくまで現状では案外それが近道だったりもするのです。
最後に相談対象となる士業についてですが―
もちろんお困りごとに関連していそうな士業にするのがベストです。
ただし、それさえもよく分からない場合は...
弁護士がベターかと思います。
なにせオールマイティーですから。
弁護士の相談料や敷居の高さが気になるのであれば、司法書士も捨てたものではありません。
不動産・会社登記、相続全般、遺言、借金問題、後見等々...
業務的にはなかなかの幅広さを持っていますから。
お困りの際は是非に。
4.まとめ
そもそもなんでこんなに資格があるんでしょうね?
最近、ほんとに色んな肩書を目にすることが多いので記事にしてみました。
特に相続系の民間資格が増えているような印象です。
別にそれ自体が悪いことではないのでしょうが―
既存の国家資格も多いです。
実のところ他にも色々調べていたのですが、とても記事にできるような容量ではないなと思い、10士業に絞った次第です。
これはあくまで個人的な見解ですが、もう少し資格数を絞った方が...
なにせ利用者が分かりにくいでしょうし、元より大事なのは資格そのものよりも知識やサービスでしょうから―
それでは今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一