取扱業務
後見人や任意後見人等の選任手続について成年後見制度等申立業務のご案内
成年後見制度は時代に即した便利でいて非常に有用な手続です。
間違いなく今後も増え続けていくことでしょう。
ただし、同手続を利用されるご家族によっては、必ずしも使い勝手が良い制度というわけではないかもしれません。
そのため、まずは正しい知識を有するべきです。
なぜ後見制度を利用するのか?
実際の手続はどうなるのか?
費用の問題は?
利用するかどうか分からないけど、まずはどんな制度なのか詳しく知りたい!
きっかけはそんな感じでかまいません。
お気軽にご相談下さい。
成年後見業務等申立業務(目次)
1.成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症や知的障害、精神障害などが原因で判断能力の不十分な方を保護し、支援する制度です。
もっと簡単にいうと、本人の財産と生活を守るための精度です。
判断能力の低下は財産や資産管理に大きな影響を及ぼします。
押し売りやリフォーム詐欺等、認知症患者を狙った事件が後を絶たないのはそのためです。
例えば次のような行為を本人に代わって行います。
(1)不動産や預貯金などの財産の管理
(2)介護などのサービスや施設への入所に関する契約
(3)相続手続(遺産分割協議)
(4)自宅不動産等の売却
また後見制度を利用していれば、仮に本人が詐欺や悪徳商法に遭ったとしても、その契約自体を取り消すことなども可能となってきます。
・成年後見制度の種類
ではそんな後見制度ですが、法定後見制度と任意後見制度に大別することができます。
それらは似ているようで結構な違いがあります。
法定後見制度:既に判断能力が不十分な人に代わって法律行為を行ったり、被害にあった契約を取消したりする制度です。判断能力の程度によって、後見、保佐、補助という類型に分かれます。
任意後見制度:少なくとも今は元気であるが、将来、判断能力が不十分になった時に備えておくための制度です。即効型、移行型、将来型という3つの利用パターンが存在します。
判断能力の程度など本人の事情にあわせて制度を選べるようになっているわけです。
判断能力が落ちてから利用なのか、事前に利用するのかの違いとなります。
以下、それらの簡単な説明となります。
2.法定後見制度(後見、保佐、補助)
法定後見制度は、そこから更に「後見」「保佐」「補助」の三つに分けることができます。
それらを分かつの基準は判断能力の差です。
具体的には専門医が各々の診断の後、次のような分類にチェックを入れ、それを基に裁判所が決定することとなります。
□ 自己の財産を管理・処分することができない。(後見)
□ 自己の財産を管理・処分するには、常に援助が必要である。(保佐)
□ 自己の財産を管理・処分するには、援助が必要な場合がある。(補助)
□ 自己の財産を管理・処分することができる。(法定後見制度は利用できません)
いわゆる家族が「後見」を希望していても「保佐」になったり、「保佐」を希望していても「後見」になったりすることもあり得るわけです。
・それぞれの相違点について
本人の利益を考えながら保護・支援することが共通事項ではありますが、以下の点が異なってきます。
種類 | 後見 | 保佐 | 補助 |
本人の判断能力 | 判断能力が欠けているのが通常の状態 | 判断能力が著しく不十分な状態 | 判断能力が不十分な状態 |
代理人の名称 | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 |
代理権の範囲 | 財産に関するすべての法律行為 | 家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 | 家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」 |
本人の同意 (申立時) |
不要 (理解できる状態ではないため) |
不要(現実的には必要) | 必要 |
成年後見人等が同意し又は取消すことが出来る行為 | 日常生活の買物などの生活に関する行為以外の行為 | 重要な財産関係の権利を得喪する行為(民法13条に記載の行為) | 家庭裁判所が定める行為(民法第13条1項記載の行為の一部に限る。) |
つまり支援の必要度は、「後見>保佐>補助」の順になるというわけです。
これらはご家族の希望ではなく、あくまで専門医の診断結果によって分類される点に注意が必要です。
また、どれに当てはまるかによって代理権の範囲が変わり、本人の同意が必要となることもあります。
まずは後見制度を利用する目的を明確にし、その上で一度司法書士等の専門家にご相談されることをお勧めします。
3.任意後見制度
任意後見制度は将来に備えて行う手続です。
寝たきりや認知症になった時に誰に助けてもらえるのか?
ある意味、その答えの出ない方に向いている手続と言えます。
尚、契約自体は交渉役場にて行うこととなります。
・任意後見とは?
任意後見とは、あくまで現時点では判断能力がある方が、将来、精神上の障害等によって判断能力が十分でなくなってしまうことに備えて、あらかじめ支援者(任意後見人)を誰にしておくのか、財産管理や身の回り等、何の支援してもらうのか、自らが決めておくことができる制度です。
老化や認知症、脳梗塞といった病気などで判断能力が十分に発揮できなくなってしまうことは誰にでも起こり得ます。
であれば、任意後見をうまく活用することで、将来の自分の希望する暮らし方を実現させてみるのもいいのではないでしょうか。
これも一つの『終活』の形です。
⇒「或る終活の話/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_43/
・任意後見の種類
任意後見には、即効型、移行型、将来型という3つの利用パターンがあります。
- 将来型
その名の通り将来に備え準備しておく形です。
適任者(任意後見人)を自分で選び財産管理や療養看護等に関する事務を委任しておきます。
そして、将来判断能力が不十分な状況になった際、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てることによって効力が生じます。
これが任意後見の基本型となります。
尚、本人の判断能力が低下しているにも拘らず、それに気付かず任意後見監督人選任の申立てが遅れてしまうことがありえるため、見守り契約などを考慮するのが一般的です。 - 移行型
将来型同様、判断能力に問題がないうちに行う手続です。
ただし、将来型とは異なり契約の時点から財産管理を行うこととなります。
具体的には、本人の判断能力が低下して任意後見契約の効力が生じるまでは、財産管理等の委任契約を締結し財産管理を行うことなります。
そして、判断能力が不十分な状況になった場合には任意後見契約に移行するわけです。
判断能力はしっかりしているが、身体が不自由で思うように活動できない場合などに有用な手続と言えます。 - 即効型
契約後に直ちに任意後見契約の効力を発生させるものです。
契約を結ぶ能力はなんとかあるけれども、判断能力が衰え始めている場合に利用されます。
即効型では契約後直ちに家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申立てることになります。私的には法定後見との使い分けが難しいという印象です。
どの種類が優れているというわけではなく、目的をどこに置くかが重要となります。
老後何が心配なのか?
何をどうしておきたいのか?
よく分からなければ箇条書きでもいいので文字として書き出すことをお勧めします。
どうせならより良い準備をはじめましょう。
また任意後見契約だけではなく、遺言書の作成や次に説明する死後事務委任契約も検討してみてはいかがでしょうか?
より理想に近づけるかもしれません。
4.死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、任意後見同様適任者を自分で選び、その者に亡くなった後の諸手続、葬儀、納骨、埋葬に関する事務等についての代理権を付与し、死後事務を委任する契約です。
法律上、必ずしも公正証書にする必要はありませんが、後の実際の手続を考えると公正証書にしておくべきと言えます。
・死後事務の内容例
①親族等関係者への死亡の連絡
②葬儀、火葬、納骨に関する事務
③菩提寺の選定、墓石建立に関する事務
④永代供養等に関する事務
⑤医療費、施設利用料等、生前に発生した費用の支払いに関する事務
⑥貸借建物の明け渡し、敷金等の精算事務
⑦家財道具、生活用品の整理・処分に関する事務
⑧相続人等への相続財産の引き継ぎ事務
⑨相続財産管理人の選任申立手続に関する事務
⑩家賃・地代・管理費等の支払いと敷金・保証金等の支払いに関する事務
⑪行政官庁等への諸届け事務
⑫以上の各事務に関する費用の支払い
・任意後見契約や遺言書との併用
死後事務委任契約は、遺言書や任意後見契約等とあわせて作成することが望ましいといえます。
遺言書にこうした事後事務委任契約の内容を記載することはできますが、法律的な効力はなく、あくまでご自身の希望として扱われてしまいます。
また遺言書の紛失や、発見、開封が遅れたりすると、せっかくの希望も実現されないということもあり得ます。
加えて、見守り型の任意後見契約を結んでいれば日常的に本人の状況を把握できるため危篤等の連絡を受けることも可能となります。
せっかくの契約であっても、死後の手続に関われなければ何の意味もありません。
理想とする葬儀等の死後事務を確実に実現するために、死後事務委任契約の締結を検討されてみてはいかがでしょうか?