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遺言

遺言の取り消しや遺言内容の変更に伴う注意点等

いつもお読みいただきありがとうございます。


早いもので今年もあと僅か。


個人的には、あっという間の2018年でした。


年明け直ぐに明治神宮に参拝に行った記憶がつい最近のように思えてしまいます。
寂しような、悲しいような...


ただ、この時期ならではの楽しみもあります。


そう、高校サッカーの季節の到来です(冬の選手権)。
今年はどのカードを観に行こうか今から楽しみで仕方ありません。



さて、余談はさておきそろそろ本題へ...


今回は遺言書の書き換え(変更・撤回)についてのお話です。
遺言書は書いてさえいればいいだけで決してはありません。


状況の変化に伴い、適宜、変更すべきこともあるのです―

それでは本編の始まりです。


<目  次>



1.作成した遺言書の内容に変更があった場合

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本来、遺言書に書かれている内容は変わりやすいものです。


死期が迫った段階で遺言書を作成するケースよりも、元気なうちに遺言書を作成されるケースの方が多いため、経年等の関係で元々の財産内容に変更が生じやすいとも言えますし、単純に遺言者の考えが変わりやすいとも言えるでしょう。



具体的な事例としては―


例えば父親が二人の息子に次のような遺言書を残していたとしましょう。


Ex.第〇条 遺言者は、末尾記載の財産のうち、A不動産については長男である〇〇に、その余の財産については次男である〇〇に相続させる。

ただし、その後に父親は翻意し、生前に遺言の対象となっていたA不動産を売却、その資金でより生活上で便利な駅前のマンションを購入しました。


このような場合、長男に残した遺言の効力はどうなってしまうのでしょうか?



1-1.遺言の取り消し

先に結論から申し上げると、このままでは長男は何も相続できず、次男がそのすべてを相続することになります(遺留分については別問題なので、とりあえずここでは考えないものとします。)。


『えっ?』
と、思われるかもしれませんが、そうなのです。

なぜならば、父親の取った行為が『遺言の取り消し』に該当するためです。


仮に本人にその気があろうとなかろうと、遺言の対象物(不動産)を自ら処分しているため、事実上、遺言を撤回したと同様の効果が生じてしまうわけです。


そのため上記の事例では、『その余の財産のすべて』を相続する次男が、父親が遺言後に購入した駅前のマンションも含めてすべて相続するという結論になります(長男に遺言させると書いた不動産は、駅前のマンションではないため、長男は代わりに駅前のマンションを相続するわけではありません。)。

仮に本心では父親が売却した不動産の代わりに駅前のマンションを長男に相続させるつもりであったとしても、そのことが遺言書から読み取れない限り結論は変わりません(逆に読み取れるような場合であれば結論は変わります。要は遺言書の書き方の問題でもあるわけです。)。


これが基本的な考え方です―


尚、このような状況であっても、他の相続人や遺言執行者の同意があれば駅前のマンションを長男名義にすることは可能ですが(詳細は次のブログ記事を参照ください。)、それが叶わないとするならば色々面倒な事態になりかねません。


ご注意を。



「遺言の効力に関するあれこれについて/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_62/



1-2.意図せぬ遺言書の変更や取り消しを防ぐためには

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遺言書は何度でも変更・書き直しが可能です。
制限は何らありません。


極端な事例だと、毎年、夫婦で互いに書き直している方もいるぐらいです。


せっかく作成した遺言書であっても、意図した形で使えないのであれば価値が減少してしまうどころか、場合によっては何ら意味のないものになってしまうかもしれません。



遺言書は、一度書いてしまえば絶対に安心というわけでは決してないのです。



定期的に遺言書を再作成する必要まではないにしても、作成した遺言書の内容を改めて見直すことはとても大事なことです。

専門家を介せず独力で作成した遺言書ともなればなおさら...

また、専門家を介していたとしても、意図がうまく伝わっていない遺言書などもちらほら...
@「


是非、この機を活かし再検証してみてください。


ちなみに、上記事例の具体的な対応策とし2ては、財産や意図の変更後の内容で遺言書を再作成するか、従前の遺言書を生かし、"遺言書の一部変更"を行う方法が考えられます。


"遺言の一部変更"とは、その名のとおり、従前に作成した遺言の中の一部を変更することです。


記載例としましては―

「遺言者は平成○○年○○月○○日付で作成の遺言書中、○○の部分を、次のように変更する。
~略~
変更しない部分は全て原遺言証書記載のとおりとする。」


というような形が無難でしょう。



その他、遺言書の一部変更が面倒、もしくはどうすればよいか判断に迷うような場合は、原遺言書を取り消した上で改めて再作成するのが無難でしょう(私的にはなるべくこちらをお勧めしております。)。


その記載例としましては―

「平成○年〇月〇日~公証人作成同年第○○号遺言公正証書で遺言をしましたが、そのすべてを取り消した上で次のとおり遺言します。」


尚、公正証書遺言の場合は上記のように公証役場で受付番号が振られますのでそれで特定し、自筆証書遺言の場合は当然それがありませんので、自身で記入した作成日付等で特定するような感じになるでしょう。

また、自筆証書遺言の場合は、遺言書の一部変更や再作成についても、作成時と同じルール(全文自筆、日付、押印、名前等)守る必要があるので、その点、要注意です。



2.複数の遺言書がある場合の注意点等

遺言書が複数ある場合の話です。


以前にも当ブログで軽く説明したかと思いますが、もう少し踏み込んだ話をさせていただこうかと思います。


まずは複数枚遺言書がある場合―


  • 作成日付の新しい遺言書が優先されます
  • 古い日付の遺言書のすべてが無効になるわけではありません
  • あくまで遺言内容が抵触する部分についてのみ古い遺言書が無効となります



これが基本です。

そのため、新しい日付の遺言書が、古い日付の遺言書に追加する内容であった場合などは、当然に双方とも有効な遺言書となるわけです。


複数遺言書の具体例1

古い日付の遺言書で『長男にA不動産とB銀行の預金口座を相続させる。』とあり、新しい日付の遺言書で『次男にC不動産とD銀行の預金口座を相続させる。』とあっても、その内容は抵触していませんので、二つの遺言書は共に有効です。



複数遺言書の具体例2

同じ事例で、それとは別に新しい日付の遺言書の内容が『次男にA不動産とD銀行の預金口座を相続させる。』であった場合には、A不動産の内容が抵触しますので、古い日付の遺言書中、その部分のみ『遺言の取り消し』があったとみなされます。預金口座については、抵触していないので何ら問題はありません。



2-1.自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類の遺言書が存在するような場合

わりとよくあるケースです。


例えば、以前に作成した公正証書遺言の内容を後に自筆証書遺言で変更しているような場合です。
(そのような変更方法も当然に可能なわけです。)

尚、複数ある遺言が公正証書遺言と自筆証書遺言であったとしても、上記の結論は変わりません。

公正証書遺言だからと言って自筆証書遺言に優先するようなことはなく、遺言の形式的に有効である以上、その種類を問わず新しい遺言が常に優先されます。


公正証書の方が強いとか、私文書だから弱いとか言うものではないのです。


相続の手続においては必要書類等に差異が生じますが、本来、法的な効力としましてはそれらに違いはないのです。



3.まとめ

これと言った統計があるわけではありませんが、年末は遺言書を書く方が多いような印象があります。


で、あるならば、遺言書を作成し終わった次の年の年末は、その内容を改めて見直す機会にしてみてはどうでしょう?

できれば毎年それを行うとより良いと思います。


当ブログがその切っ掛けになれれば幸いです。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一