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不動産登記権利証の必要性とその使途について
いつもお読みいただきありがとうございます。
先日、仕事で知り合いの不動産屋に行ったところ、なぜか店舗内で名刺入れを販売していました。
しかも、結構、僕の好みだったのでついつい購入することに...
写真を撮り忘れてしまいましたが、他にも色々種類がありましたよ。
そんなへんてこな不動産屋が台東区蔵前にあります。
興味のある方は是非。
さて、今回は権利証の必要性とその使途についてのお話しです。
権利証シリーズ第2弾の記事となります(今のところ全3回でお送りする予定です。)。
当初の予定だと1つの記事にまとめるつもりだったのですが、意外とお伝えすべき点が多くて...
ちなみにメインと言うか、本来、僕が書きたかった内容は後日掲載予定である第3弾の方なのですが、あくまでそれは当記事の延長線上にあるものなので、合わせてご確認いただければと。
それでは早速本題へ。
皆さんの中には、なんとなくでも『権利証=重要書類』という認識があるのではないでしょうか?
ただし―
- なんのために権利証が必要なのか?
- はたしていつ使用するのか?
と、問われたとしたらどうでしょう??
なかなかどうして答えに詰まる方も多いと思います。
この辺をある程度理解できていれば、権利証に対する認識も変わるはずですし、紛失してしまうようなケースも減る(?)かもしれません。
不動産をお持ちの方、今後その予定がある方は、是非ともご覧ください。
<目 次>
1.なぜ権利証は必要なのか?
そう、考えたことはありますでしょうか―
権利証が大事そうな書類だという認識はあっても、なぜそうなのか?いつ必要になるのか?という認識は薄いのではないかと思います。
よくよく考えてみると、その辺の説明がしっかりされているケースをあまり見ませんから...
説明があったとしても、単に「ご売却の際に必要になります」だったり、「住宅ローンのお借換え時にも使います」と、言ったぐらいのものでしょう。
ただし、それはそれで致し方ないかと思います。
なかなかどうして一言で説明できるものではないですから(むしろこの記事を書いていて、元より簡単に説明するのは無理なんじゃないかな?と、思ってしまうぐらいです。)ー
そのため、これを機会に記事にしてみました。
尚、事前に次の記事(権利証シリーズ第1弾記事)を参照いただくと、権利証についての理解がより深まるかと思われます。
「権利証?登記済証?登記識別情報?いったいどれが正しい??/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_101/
1-1.権利証は何のためにいつ使用するのか?
まずは、いつ権利証を使用するかの結論からー
権利証は、不動産の所有者が登記義務者として登記申請を行う際に必要となります。
これが大原則です。
司法書士の補助者や受験生なんかも、まず覚えるところの一つです。
とは言え、さすがに前提知識がないとイメージしにくい部分かと思いますので、その趣旨をできる限り詳しくご説明致します。
登記手続の原則は共同申請です。
住所変更等、その例外(単独申請)もあるにはありますが、基本的には登記手続上有利とされる側を"登記権利者"、不利とされる側を"登記義務者"とし、共同でこれを行うこととなります。
イメージしやすいところで言えば、売主と買主が共同で登記申請を行う不動産の売買でしょうね。
ちなみに住宅ローンのお借り換えであれば、銀行と不動産の所有者がその当事者となります。
ポイントは、それらの対象となる登記手続において誰が登記義務者になるのかの判断です。
そして、それはいったいどういった基準に基づくものなのでしょうか?
まず不動産を売却する際、登記手続上で不利とされるのは常に売主側です。
売買は、不動産所有者(売主)が登記義務者となる典型例とも言え、当然に権利証が必要なケースの一つなのです。
ちなみに、これはなんとなくイメージしやすいのではないでしょうか?
売主は不動産の所有権を失う立場にあるわけですから...
では、大きな転売利益が生じるような売買であればどうでしょう?
もちろん不動産の所有権は失ってしまいますが、それによって大きな利益が生じますので、あるいは上記とは異なる結論になるのでは?とも考えられます。
理由は後述しますが、結論はそれでも変わりません。
どうであれ、常に売主側が登記義務者になるのです。
続いて住宅ローンのお借り換えのケースについてですが―
当事者はお金を借りる不動産所有者と銀行です。
どうでしょう?どちらが登記上不利なように思えますか??
わざわざ銀行に結構な金額の手数料を支払ってまで住宅ローンのお借り換えをするぐらいです―
それによって以前の住宅ローンよりも金利負担は少なくなるのが通常でしょう。
であれば、不動産所有者にとっては有利な行為であるようにも...
結論からすると、これについても登記手続上不利とされるのは不動産の所有者の方です。
と、言うよりかは、住宅ローンを設定する登記は、その内容はどうであれ常に不動産所有者が登記義務者とされ、権利証が必要になってきます。
ケースは異なりますが、両事例とも同じ観点からの判断がなされているわけです。
形式的な観点からの判断とでも言いましょうか―
考えてもみてください。
法務局側は提出された登記の申請情報のみで物事を判断せざるをえず、実情を把握できているわけではありません。
確実に分かるのは、住宅ローンのお借換えであれば、新たに抵当権(住宅ローン)という名の不動産担保を設定するという事実のみです。
不動産に担保を設定すること自体は、形式的にみて不利な行為に違いありません。
仮に支払いを怠ってしまえば、最悪、競売等でその権利(所有権)を失ってしまうことさえあるわけですから...
同じく売買についても、いくら儲かったのか、いくら損したのかといった詳細情報を法務局が知るすべはありません。
あるのは形式的に売主が所有不動産を手放すという事実のみです。
このように、登記上でその行為が有利か不利かの判断は、あくまで形式的な部分でのみで判断されるわけです。
そして権利証は、形式的に不利な立場にある本人が、なりすましの第三者ではないことの確認をするために要求されるものなのです。
もっと言えば、登記上不利とされる行為について、その真意を確認する趣旨でもあるのです。
そして、これこそが何のために権利証が必要になるかの答えとなります。
本来、権利証は本人にしか持ちえないものと考えられています。
それを添付して登記申請しているのだから、対象となる登記も本人の意思に間違いないだろうー
と、いうわけなんです。
1-3.実は権利証だけではなく3点セットが必要
権利証は大事な書類です。
記述のとおり、登記申請時の諸々の確認のために使用されますから。
ただし、もちろん権利証だけで登記手続のすべてが完結するわけではありません。
大事な書類です。大事な書類なんですが、そこまでの"超"重要書類でもないわけです。
そのため、仮に権利証を盗まれてしまったとしても、それだけで不動産の所有権を失うことなんてまずありません。
その辺はちゃんと考えられています。
上記でご説明した法務局による確認(本人であるかどうかの確認等)は、何も権利証だけで判断されるわけではないからです―
- 権利証
- 印鑑証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
- 実印による押印
その際に必要とされるのは、以上、3点です。
本人しか持ちえないであろう権利証と、実印による書面への押印、それを証する印鑑証明書を添付するのであれば、これは本人の意思に相違ないだろう、と、いう考え方ですね。
あくまで権利証は、大事な書類等の内の一つでしかないのです。
そのためもちろん状況にもよりますが、仮に権利証を紛失してしまったとしても、そこまで慌てる必要はありません。
それに対する対処法がないわけではないので。
対して、そうそう起こり得ることではないでしょうが、権利証と実印と印鑑証明書(印鑑カード)を併せて紛失等してしまった場合は、ちょっと慌てた方がいいかもですね。
状況的には3点揃っちゃってますから...
1-4.権利証を紛失してしまった場合の対処法は?
権利証を紛失してしまった場合の登記手続につきましては、別のブログ記事(権利証シリーズの第3弾)にてお送りする予定です。
ともあれ、ここでは権利証を紛失してしまった場合の対象法について簡単にご説明致します。
まず、確認いただきたいのが、紛失してしまった権利証の種類です。
古い形式の権利証なのか、新しい形式の権利証なのか...
(詳細については権利証第1回記事を参照ください。)
具体的には、登記識別情報と呼ばれるものなのか、そうでないのかで手続は変わってきます。
何を言わんとするのかというとー
新しい形式の権利証である登記識別情報には"失効手続"なるものが存在しますが、古い形式の権利証にはそれに代わるような手続が存在しないのです。
そのため、次のようなかなり原始的な方法に頼る他ないわけです。
①管轄法務局に紛失した旨を伝える
②場合によっては①に加え、司法書士会を介し各会員(司法書士)に通達してもらう
ここ数年目にした記憶はないですが、10年以上前はそうした通知が稀にきていたような気がします。
とは言え、事件性のないのであれば、あまりここまでやるケースは少ないとは思いますが...
尚、これは関係者への注意喚起でしかありませんが、管轄法務局に伝わっていればまず大丈夫ではないかと私的には思います。
ちなみに、登記識別情報の失効手続はそんなに面倒なものではありません。
管轄となる法務局の窓口にて、備え付けの書類を提出するだけです。
ただし、失効手続が簡単だからと言って、安易に行うべきものではない点には注意が必要です。
手続自体に問題があるわけではありません。
もちろん悪用されないため、それが必要となるケースも当然にあるでしょう。
とは言え、後で無事に権利証(登記識別情報)が発見された場合の効果がちょっとあれなのです...
どうなってしまうのかと言うとー
一度、登記識別情報の失効手続を行うと、後にいかなる理由であろうともその効力が復活することはありません。
ようは、無事に見付かったとしても、手続上は権利証(登記識別情報通知)がない状態が続いてしまうわけなんです。
なくしてしまった権利証が再発行されないのと同じ趣旨ですねいわゆる。
後々、余計な手間や費用がかからぬよう、この辺の判断は慎重にしたいものです。
2.まとめ
権利証シリーズ第2弾でしたが、いかがでしたでしょうか?
今回のテーマは特に分かりにくい部分ですので、なんとなくの理解でも十分かと。
第3弾は、いよいよ権利証を紛失してしまった場合の登記手続についてお送り致します。
たぶん、8月中には記事をUPできるのではないかと思いますが、目下作成中なので詳細なところは未定です。
ともあれ乞うご期待ください。
それでは今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一