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不動産登記

土地の相続登記が義務化される?~所有者不明土地問題~


いつもお読みいただきありがとうございます。


お知らせ等を除くと、おそらく当ブログ記事が2019年度の最終投稿になるのではないかと思います。
早いものですね...
今年も1年ありがとうございました。
来年も色々な情報等を提供させていただきますので、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。


さて、今回のテーマは相続登記の義務化についての話です。
今年に入ってから色々な報道や噂が飛び交っていますが、気になるその内容と現状の進み具合はいかなるものなのでしょうか?
かなり大きなニュースですので、今回だけに限らず、新しい情報が入り次第、順次お送りさせていただく予定です。




<目 次>






1.根底にあるのは所有者不明土地問題

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以前から叫ばれていた問題ではあるのですが、ここにきて大きく再燃してきました。



所有者不明土地問題ー



その切っ掛けは東日本大震災です。
懸念されていた以上の深刻さが浮き彫りになったいうことでしょう。


端的に言うと、もはや誰の所有か分からないような土地があまにも多く、復興事業での用地買収等の大きな妨げとなってしまったと―


先代ならまだしも、先々代やそれ以前と思われる者が土地の登記名義人になっているのであれば、対象となる相続人の数は...
僕自身、少なくとも年に1度は相続人が20名以上になってしまうような案件に携わっていますが、詳細を調べるだけでも相当な労力を要します。
それが複数ともなると、もはや考えたくもなくなる状況ですね。


ちなみに当ブログでも以前にご紹介していますが、一説によるとそうした所有者不明土地は面積にすると九州本土に及ぶとも言われています。
そればかりか、最近の報告では将来的に北海道にも及ぶとも...


だいたい日本の国土の20%ぐらいになるでしょうか?


疑っているわけではありませんが、それが事実であるならば経済的損益は計り知れませんー

そうです。




もはや、かなり大きな社会問題なのです―




尚、もちろん政府もこの問題を放置しているわけではありません。
今回の相続登記義務化の話もそうですし、相続登記を促すべく、これに先んじてそれなりの動きはしています。
それについては以前に当ブログでご紹介しておりますので、興味のある方は以下のリンクを参照ください。


「相続により土地を取得した者が相続登記をしないうちに死亡した場合の登録免許税の免税措置/司法書士九九法務事務所HP
https://99help.info/blog/_hp/#h20sjputcljfqsmv63105m522l6aqb3



ただ、これは限定的過ぎると思っていました。
良い制度なんでしょうが、実際、いつ使えるのかと...
事実、僕自身、まだこの制度を利用する機会に巡り合えてはいませんから(その理由については上記ブログ記事を参照ください。)。


また、新設された"
法定相続証明制度"も相続登記を促すという意味においては、同じ流れと言えるでしょう(これは便利です本当に。僕自身、多用しています。)。


「新しい相続手続『法定相続証明制度』について/司法書士九九法務事務所HP
https://99help.info/blog/post_13/



その他、最近、相続登記促進の広報用リーフレットが増えたように思いませんか?
大抵、全国どの市役所や法務局にも貼ってあるはずなので、まだ見たことがないという方は意識だけでもしてみてください。
もちろん、これもその一環です。



このように、少なからず対策自体は以前から存在します。
とは言え、殊の外、大きな成果が出ているかというと...



賛否両論あるとは思いますが、そうした状況を劇的に変えたいのであれば、確かに相続登記義務化ぐらいセンセーショナルな動きが必要なのでしょう。

言うほど簡単なものではないでしょうが―





2.現状、相続登記は義務化されていない

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あれ?そもそも相続登記って義務じゃないの??




そう思われる方も少なくはないと思います。
ただし、現状、相続登記は義務化されていません。
期限なんかもありません。


極端な話、何年後でも、それこそ何十年後に行おうとも自由ですし、何らかの罰則を受けるわけでもないのです―
意外に思われる方もいるかもしれませんが、事実としてそうなのです。


ちなみに相続手続のすべてに期限がないわけではないので、そこは混同しないようご注意ください。
あくまでこれは"相続登記"についての話です。

尚、期限のある相続手続について紹介しているブログ記事があるので、気になる方下記リンクを参照ください。

「相続がおきたらまずやるべきこと/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_16/




と、言うのが、これまでの話でした。


相続登記を行うか否かは各相続人個人の判断に任せられていたわけです。


そもそも登記とは、その権利(所有権)を第三者に公示するための制度です。
そうした観点からすると、やらないことによって困るのは本人達であり、わざわざ義務化して強制するようなものではなかったのです。


売買や贈与等、他の登記手続のほとんどについては確かにそうした側面がありますし、実際、義務化の話は出ていません。
そうする必要性がありませんから。

ただし、こと相続登記手続については、それらと同一に扱うべきではなかったのでしょう。
全く予想できなかったわけでもないでしょうが、その先に所有者不明土地が多発するという何とも残念な結果が待っていたわけですから...



案件にもよるでしょうが、相続登記を自力で行うのは本当に大変です。
とは言え、司法書士等の専門家に手続を依頼しようにも相応の費用が発生してしまいます。

資産価値の高い不動産であったり、売却が絡むような案件であれば、それでもやる気になるでしょうが、処分できるかどうかも分からない地方の不動産が対象となると...
加えて、所有権の権利自体は、亡くなられた方の名義で対外的には一応は保全されています。


となると、放置してしまうのもー


政府としては、そうした状況を打破すべく、今、まさにテコ入れをしている最中なわけです。




3.土地の相続登記が義務化される~その方向性は~

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相続登記義務化は、あくまで土地についての話です。
現状、建物はその対象にはなっていません。

問題の根幹が所有者不明土地にある現れと言えるでしょう。



では、いつ、どのような形で土地の相続登記が義務化されると言うのでしょうか?



僕自身、今年の2月頃に報道で知ってから注視し続けていますが、まだまだ具体的とは言えない状況が続いているようにも思えます。
にもかかわらず政府としては、2020年までに法律を改正する予定で話を進めているそうです。



そう、もうすぐなんです。



ただし、法律というものはたとえ改正されても、施行されなければ絵に描いた餅のようなものです。
そのため、実社会に反映されるのはまだまだ後の話でしょう。

ともあれ、土地の相続登記の義務化への舵は確実に切られていますので、そう遠くない未来にその全容が見えてくるはずです。
とは言え、現時点でも様々な案自体は出ているようなので、次項では軽くそれらに触れてみることにします。



3-1.罰則規定が定められる?

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どうやらその予定のようです。
ただ、その詳細は明らかではなく、いまだ検討段階にあるそう―


政府は罰則規定でも設けないと事態は改善しないと踏んでいるのでしょうね...


ちなみに、現状、罰則規定(過料)のある登記手続が存在しないわけではありません。

有名なところで言うと、商業登記手続における"登記懈怠(とうきけたい)"でしょう。
基本的に商業登記では、役員変更等の変更事由が生じてから2週間以内にその旨の変更登記しなければならず、それを長期間(明確な規定はありませんが、半年前後の経過で黄色信号といった感じです。)怠ると過料の対象になってしまうのです。

ちなみに過料金額は、裁判所が100万円以下の範囲で決めることにはなっていますが(会社法第976条1項)、ほとんどの案件は10万円前後で済んでいるように思えます。
少なくとも登記懈怠で100万円の過料を負ったような話は見たことも聞いたこともありません。

また、不動産登記手続でも、一応、過料の対象になる手続は存在します。
それは、"建物の表示登記"です。
これを著しく怠ると10万円以下の過料に処せられることがあるそうです。
僕自身はほんの数回話に聞いた程度ですが...


ともあれ、商業登記の登記懈怠にしても、建物表示登記についても、過料の基準がはっきりしていないんですよね。
それ相応の理由があるのでしょうが、過料金額もそうですし、対象になるならないについても曖昧です。


おそらく土地の相続登記も、これらとそう違わない形になるのではないでしょうか?
もしくは、より強い印象を残すためにも、他よりも重めの過料を定めるのか...

普通に考えれば前者なのでしょうが、なんとなく後者に近い形になるような気もします。
なにせ、それぐらい大きな問題になっていますので所有者不明土地問題は―

仮にそうなるのであれば、せめて期間や金額を明確にして欲しいものです。



3-2.早期手続に対する優遇処置もある?

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罰則だけでは効果が薄い―


飴と鞭ですねいわゆる。
早期に相続登記手続に着手した案件に対するインセンティブも検討されているようです。


実際のところ、まだどうなるかは分かりませんが、それ自体は実に賢明な判断かと―


むしろ私的には、罰則よりもこちらの比重を強めた方がより効果が生じるのではないかと思っています。
なにぶん、お得情報に目が無い国民性ですからね。
近年の電子マネーの普及状況を見る限り、一定層には確実に響くはずです。

尚、現状、挙がっている優遇処置については大雑把に言うと次のとおりです。


  • ①相続登記手続の簡略化
  • ②登録免許税の軽減処置



①についてですが、正直、多難だと思います。
報道か何かで、死亡届を元に法務局が登記内容を書き換える仕組みづくりも検討されているような話を耳にしましたが、僕にはイメージすら湧きません。
画期的ではありますが、実現するには
それこそ全く新しい登記制度を作る他ないでしょうから―
また、仮にそれが可能になったとしても、これまでには起こり得なかったトラブルが増加してしまうのでは...
そのため、簡略化するにしても、軽微な変更になるのではないでしょうか?


続いて②についてですが、やるならこれでしょう。
相続登記手続は高いと言われることが多いですが、実際のところ司法書士等の報酬に加え、戸籍の取得費やこの登録免許税が発生するからなんです。
もちろん、各司法書士等による部分もあるでしょうが、単体の報酬はそこまで高くはないはずです。
そのため、期間限定であっても登録免許税の大幅な軽減や免除が可能となるのであれば、効果覿面と言えるのではないでしょうか?




4.土地の相続登記は義務化されるまでは様子見がいいのか?

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"土地の相続登記が義務化されたとしても、すぐに過料に処せられるわけではない。
であるならば、インセンティブを期待して今はまだ様子見でいよう。"

あるいはそう考えている人がいるかもしれません。
ただ、その考えは危険ですし、個人的にはあまりお勧めしません。


と言うか、義務化や罰則以前に相続登記の放置自体に問題があるので―


相続登記の放置問題が生み出すのは何も所有者不明土地問題だけではありません。
放置の結果、相続人が更に死亡したり、行方不明になったり、認知症になったり、そうでなくともただ単純に相続人同士の仲が悪くなることだってあります。

結果、他の手続を取らざるを得ず、インセンティブをはるかに上回る手間と費用が生じてしまうようなことも...
そして、それらは全くもって珍しい話ではないのです。


現状、義務化されていない以上、その辺は各人の判断に委ねられるのでしょうが、少なくとも僕はそう思っています。


尚、上記の罰則規定は、まだ詳細が決定していないわけですから、過去に遡って適用されないとも言い切れません。
まあ、それはちょっと考えにくいですが、後は政府の本気度合いと言ったところでしょうか―
そうした面からも様子見は危険と言えるかもしれませんね。


ともあれ相続登記はなるべくお早めに!




5.まとめ

僕自身、本当に気になっている話です。
最初の発表から1年近くが経ち、来年には法律を改正するというので、改めて調べてみましたが...
まだそこまではっきりしていませんでした。

そのため、ブログ内容もなんだか論評的なものになってしまったような...


新しい情報が入り次第、当記事を編集するか、別記事にてご報告致します。


尚、最後に相続登記義務化に関するその他の案もご紹介しておくと、遺産分割協議の期限について10年を軸とする案や5年とする案、相続放棄の熟考期間である3ヶ月を一つの基準にすべき等々、その他、土地の共有制限や財産管理制度の見直しも検討されているそうです。


いったいどうなるのでしょうね?
それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一