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相続放棄

新型コロナウイルスを理由に相続放棄の期間伸長が可能に


いつもお読みいただきありがとうございます。



我々の業界にも新型コロナウイルスの影響が多分に出てきました。
緊急事態宣言が発令された都市にある法務局では、当然ながら担当職員の通勤の抑制や、非対面業務等、感染防止のための取り組みをせざるを得ず、その結果、登記の完了予定日が通常よりも遅くなってきたのです。

通常であれば10日前後で登記が完了していたものが、今はだいたい3週間、法務局によっては1ヵ月以上かかっているところも...

とは言え、状況が状況だけに致し方ないですよね。
今後、更に遅くなってしまうことも考えられますが、今は事態の収束が一番ですから。



さて、今回は新型コロナウイルスに伴う相続放棄の期間伸長手続についてご紹介致します。
尚、相続放棄そのものについては、次の記事を参照いただければと。




1.相続放棄の期間伸長手続とは

相続放棄は、原則として、『自己のために相続の開始があったことを知ったとき』から3カ月以内(これを熟考期間といいます。)に行う必要があります。


ただし、諸々の事情によりそれが困難な場合もあるでしょう―


例えば、遺産内容が複雑な場合です。
借金が多かったり、権利関係が複雑だったり、すぐに相続するかどうかを判断できないようなケースはそう珍しくありません。
そのようなケースにおいて、3ヶ月の熟考期間を延長する手続が、相続放棄の期間伸長手続なのです。


尚、この辺りがややこしいところなのですが、熟考期間をどのくらい伸ばせるかの規定はありません。
事案ごとによって個別に判断されるわけです。


ただし、一般的には1ヶ月から6ヶ月ほどの期間延長が認められるケースが多いように思えます。
また、ケースによっては、数回の期間の伸長が認められることもありますし、伸長自体が認められないこともあります。


いったい、それらの違いは何なのか?


次にご説明する伸長理由によるところが大きいのです。



1-1.相続放棄の期間伸長には客観的な理由が必要

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ただ単純に仕事が忙しいー


これを理由に相続放棄の期間伸長手続を行うのは極めて困難です。
少なくとも僕にはできません。


なぜなら客観的な理由になっていないためです。


忙しいだけなら仕事を休めば済むでしょう。
あくまで第三者的な目線に立ち、これは致し方ないな...と言う状況が必要なのです。



尚、先にご説明した遺産内容が複雑な場合や、長らく被相続人(亡くなられた方)と疎遠だった場合、相続人になっていること自体不明だった場合などが客観的な理由の代表例と言えるでしょう。

その他、自然災害などもこれに該当することがあります。


例えば、平成23年3月11日の東日本大震災の被災者であった相続人の方々は、特にこれといって家庭裁判所への申立てをしなくとも、平成23年11月30日まで熟考期間が延長されていました。


また、より記憶に新しいところで言えば、令和元年の台風第19号です。
内閣府が定める対象区域に該当する相続人は、同じく特にこれといって家庭裁判所への申立てをしなくとも、令和2年5月29日まで熟考期間延長されています。




となると、今回の新型コロナウイルスはー



  • 客観的な理由になり得るか?
  • なり得るとして、特にこれといって家庭裁判所への申立ては必要ないのか?




以下、検証してみることにします。




1-2.新型コロナウイルスは客観的な理由になり得る

当然と言えば当然でしょう。


これだけの世界的大混乱です。
客観的な理由にならないわけがありません。



新型コロナウイルスは、相続放棄の期間伸長手続における客観的な理由になり得ます。



ただし、これには大きな大きな注意点もあります。



あくまで現段階では、新型コロナウイルスは客観的な理由になり得るだけであり、熟考期間中の家庭裁判所への申立手続自体は必須なのです。
東日本大震災や令和元年台風第19号とは異なり、特にこれといって家庭裁判所への申立てをしなくとも、当然に熟考期間が伸長されるわけでありません。



おそらくは、今後、その旨の法律が施行され、同じく当然に熟考期間が伸長されるようになるとは思います...
ただ、少なくとも現時点においてはそうなっていないため、勘違いしないようご注意ください。



重複しますが...



新型コロナウイルスを理由に家庭裁判所で期間伸長の申立てができるだけなのです。



いち早い事態の収束と、手続の簡素化を望むばかりです。




「新型コロナウイルス感染症に関連して,相続放棄等の熟慮期間の延長を希望する方へ/法務省HP」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00025.html




これらに関する最新情報等を入手しましたら、適宜その内容を更新させていただきます。
少し短めではありますが、今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一