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不動産登記住所変更(氏名変更)登記とは?
いつもお読みいただきありがとうございます。
今回は登記業務の基礎とも言える、住所変更(氏名変更)登記についてご紹介致します。
正直、簡単なものは非常に簡単な登記になります。
そのため、自力で住所変更(氏名変更)登記を行ったことがあるという方も少なくないのではないでしょうか?
ただし、そうではないものも多くあります。
難しいものは思いの外、難しいー
さすがにここではそこまで詳しい内容やマニアック過ぎる案件はご紹介しませんが、突き詰めていくとかなりの容量になってしまうものと思われます。
私的に住所変更登記は、最も簡単なようでいて、最も奥深い登記という位置付けなのです。
さて、その詳細とは―
<目 次>
- 1.そもそもなぜ住所変更(氏名変更)登記が必要なのか?
- 2.住所変更(氏名)変更に必要な書類とは?
2-1.住所変更が1回のみのケース
2-2.住所変更が複数回あるケース
2-3.住所変更経緯を証明できない場合
2-4.氏名に変更がある場合 - 3.まとめ
1.そもそもなぜ住所変更(氏名変更)登記が必要なのか?
なにはともあれ、まずはここからでしょう。
端的に言うと、同一性の問題です。
既に登記されている人物と、新たに登記を行おうとしている人物は、果たして同一人物なのか??
不動産登記の世界では、同一性が重要視されるのです。
例えば、Aさんが所有する不動産を売却するにあたって、登記されている住所が「川口市~」であり、添付されている印鑑証明書上の住所が「蕨市~」だったとしましょう。
もしくは、住所自体に変更なくとも、婚姻によって氏が変更しているような場合はどうでしょう?
これらに人物の同一性は認められるか否か―
正解はもちろん「否」です。
あくまでその際の基準になるのは、「氏名」のみ、「住所」のみではありません。
「氏名・住所」双方が合致することによって、人物の同一性が認められることとなるのです。
尚、当然ながら人物(所有者)の同一性が認められない登記申請は、その旨の変更登記をしない限り法務局がこれを受け付けてくれません。
(厳密には登記自体は可能ですが、登記の却下対象になってしまいます。)
もちろん、取引等の安全性の問題ですね。
したがって、登記されている住所や氏名に変更がある場合は、売却や贈与、住宅ローンの借り換え等の登記の前提として、住所変更登記や氏名変更登記が必要になってくるのです。
2.住所変更(氏名)変更に必要な書類とは?
住所変更や氏名変更登記を行う際には、その変更を証する公的な書類が必要になってきます。
例えば、住所の変更であれば"住民票"が、氏名の変更であれば"戸籍謄本(抄本)"がその代表的な書類となります。
ただし、ケースによっては、それだけでは足りないこともあります。
そして、この辺が住所変更登記が難しくなってしまう要因でもあるのです。
そこで、ここではケース毎に想定される必要書類をご説明することに致します。
2-1.住所変更が1回のみのケース
この場合、住所変更に必要となる書類は現在の住民票のみです。
最も簡単なケースと言えます。
住民票の記載欄には、"前住所"という項目があり、住所変更が1回のみであれば、そこに登記簿上の住所(登記された住所)が記載されるため、住民票1通で住所の変更経緯を証明することができるのです。
単に現在の住所を証明するのではなく、登記された住所から現在の住所迄の変更経緯を証明するという点が大事なポイントとなります。
尚、これは以下の複数回住所変更があるケースでも同様なことが言えます。
そのため、基本的に住所移転の回数が多ければ多い程、その難易度も上がっていくことになるのです。
2-2.住所変更が複数回あるケース
厄介になり得るケースです。
なぜなら、住民票だけでは必要書類を満たすことができないことが多いからです。
その分、手続も煩雑になると...
例えば、制度上、住所を川口市(登記された住所)から蕨市に移転した後、戸田市に移転した場合などは、住民票に前住所として記載される住所は一つ前の蕨市のものだけとなります。
そうです。
そこに、川口市の住所は記載されないのです。
結果、現在の住民票だけでは登記された住所から現在の住所迄の変更経緯を証明することはできません。
では、どうすればいいのか??
即、繋がらないのなら仕方ないとはいきません。
もちろん、他の書類でこれらの不備を補完する必要があるのです。
その代表的な書類として、"戸籍の附票"と"住民票の除票"が該当します。
まず、それらがどういう書類なのかの簡単な説明からー
- 戸籍の附票:本籍地を管轄する役所で取得可能。その本籍地にいる間に行った住所変更経緯が記載される書類である。言うなれば住所の履歴書のようなイメージ。
- 住民票の除票:住所を管轄する役所で取得可能。住所移転後のかつての住民票。
住所移転が複数回あるケースでは、これらの書類をうまく組み合わせ、住所変更経緯を証明することとなるのです。
ちなみに僕が同手続を行う場合は、戸籍の附票の取得を優先することが多いです。
別に除票でもいいのですが、保存期間の関係で廃棄されていることが多いですし(原則、住民票の除票は、住所移転後5年間で廃棄の対象となります。)、住所移転の回数がはっきりしない場合などは複数箇所で取得する羽目になったりするので...
その点では、「複数の住所移転=戸籍の附票」と捉えてもよいかもしれません。
除票はスポット、スポットで使用する感じでしょうか―
尚、戸籍の附票ですべて住所変更経緯が証明できる場合には、別に住民票を取得する必要はありません(現在及び過去の住所を証明する書類であるため)。
対して、住民票の除票は過去の住所の証明でしかないため、それ単体だけでは足らず、「住民票+除票」、もしくは、「戸籍の附票+除票」等の組み合わせになります。
また、戸籍の附票は戸籍同様、市区町村ごとの任意の時期に改製されています(それを「改正原戸籍の附票」と言います。)。
そのため、住所の移転時期によっては戸籍の附票だけでは足らず、それに加えて、改正原戸籍の附票も必要になることがあるのです。
その他の注意点とすると、戸籍の附票はあくまで対象となる本籍地に在籍した間の住所移転経緯しか記載されないため、住所変更とあわせて本籍地の変更がある場合などは、複数の本籍地で戸籍の附票を取得する必要が生じます。
加えて、改製原戸籍の附票も住民票の除票同様、原則5年で廃棄の対象となるため、取得できないケースも多々あります。
そうなんです。
取得するのが面倒なばかりか、元より取得できないようなケースもあると...
では、保存期間経過による書類廃棄等により、住所変更登記に必要な書類が揃えたくとも揃わないような場合は、どうすればいいのでしょうか?
2-3.住所変更経緯を証明できない場合
間々あります。
では、その際、どうやって住所変更登記を行うのでしょうか?
結論からすると、とにかく集められるものはすべて集めます。
また、基本的に保存期間経過による書類廃棄等の場合は、役所がその旨の「廃棄の証明書」を出してくれます。
それも集めます。
その他、聞きなれない書類かと思いますが、「不在住証明」と「不在籍証明」というものがあります。
これも集めます。
尚、不在住証明と不在籍証明に記載すべき住所は、共に登記されている住所となります。
当該書類を提出する趣旨は、登記されている住所地に対象者の住所がない、本籍がない旨の証明です。
要は、なりすましではない証明ですね。
後はー
管轄する法務局と相談です。
別に権利証の写しを要求されるパターンや上申書が必要なパターンもあります。
人物の同一性が証明できない以上、慎重な手続が求められるわけです。
2-4.氏名に変更がある場合
結婚や離婚等を原因として、登記されている氏名と現在の氏名に相違が生じているケースです。
もちろん、売買等の前提として氏名変更登記を要します。
では、どのうような書類が必要になるのかと言うと―
基本的な考え方は、住所変更の場合と同様です。
住所変更の場合が、登記された住所から現在の住所迄の変更経緯を証明する必要があるのに対し、氏名変更の場合は、登記された氏名と現在の氏名の変更経緯を証明する必要があると―
そうです。
氏名変更登記に際して、まず必要となる書類は、"戸籍謄本(抄本でも可)"です。
そこには結婚や離婚、養子縁組等の身分行為が記載されており、氏名変更経緯の証明になるためです。
尚、結婚や離婚後に本籍を変更した場合には、現在のものだけではなく従前戸籍も必要となるケースがあります(氏名変更の原因となった結婚や離婚の表記が、取得した戸籍謄本等にされないこともあるため。)。
それについては、取得した戸籍謄本等に登記簿上の氏名の記載があるか否かで判断しましょう。
ちなみに、氏名変更登記には上記の戸籍謄本等だけでは足らず、住民票、それも必ず"本籍地の記載ある住民票"が必要になります。
住所に変更はなく、氏名だけを変更するようなケースでも同様です。
いわゆる、氏名変更登記には、戸籍謄本等と本籍地入りの住民票がセットになるのです。
なぜか?
これも同一性の問題です。
本籍地入りの住民票の役割は、「登記されている人物」と「戸籍上の人物」を繋ぐことです。
住所・氏名で登記されている人物と住民票が繋がり、そこに記載ある本籍地の表記で戸籍上の人物と繋がるイメージですね。
結果、すべての情報が繋がり、無事、氏名変更登記が可能となるわけです。
3.まとめ
さて、今回は住所変更(氏名変更)登記の基礎と、必要となる書類等のご案内でした。
今後、相続登記の義務化とあわせ、住所変更登記や氏名変更登記も義務化されることになりました(2024年施行予定)。
そのため、今後はそれを行う機会も増えていくことでしょう(これまでは売買時等、必要に応じて行うことが多かったため、放置されているケースがほとんどでした。)。
既に変更が生じている方は、今のうちに変更登記を行っておくのもいいかもしれませんね。
その際の参考にしていただければ。
それでは今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一