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相続放棄

相続放棄に必要な書類とは?


いつもお読みいただきありがとうございます。


さて、今回は家庭裁判所で行う「相続放棄」手続について、必要となる書類等をご案内させていただきます。
簡単なものは簡単なのですが、面倒なものは面倒。
それが僕が抱いている相続放棄のイメージです。


その要因の一つが、ただでさえ期間制限がある手続なのに必要書類の収集が大変なケースとそうでもないケースがある点です。


では、どういった書類が必要で、どういったケースが複雑になるというのでしょうか―
尚、それなり好評のようなら、他の手続でもそのうち同じような必要書類シリーズを書いてみようかな(?)とは思ってはいます。


<目 次>



1.相続放棄に必要となる書類と、その考え方

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詳細は後述しますが、相続放棄手続は誰が申述人(相続放棄をする方)になるかによって、必要となる書類が異なってきます。
ですので、まずは基本となる書類というか、どのケースでも必須になる書類(共通基本書類)をご案内致します。



<共通基本書類>

  • 被相続人(お亡くなりになられた方)の死亡の記載ある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本
    ※被相続人の本籍地で取得可

  • 被相続人の住民票除票(除住民票)又は戸籍の附票
    ※住民票除票(除住民票)については被相続人の住所地で、戸籍の附票については被相続人の本籍地取得可
    対象の方が亡くなると、その人の住民票は、住民票除票(除住民票)と呼ばれる書類になります。
    ようするに亡くなった後に取得する住民票のことです。
    また、戸籍の附票という書類は、該当する戸籍を作った(本籍を定めた)時以降の住民票の移り変わりが記録されたものです。
    いわゆる住所の履歴書のような書類ですね。
    尚、いずれの書類も被相続人の最終住所を証するために必要になるものであり、いずれか一方の書類を取得する形でかまいません。

  • 申述人(相続放棄をする方)の戸籍謄本
    ※ご自身の戸籍謄本となります。
    被相続人との関係性の証明のため、必要となります。



あくまで、これらが基本です。
取得難易度もそれほど高くはないでしょう。
特に考えることは少なく、単に対象となる役所に赴くか、郵送で取り寄せるかの手間だけです。

ただ、問題はこれだけで済むケースと、そうでないケースがある点なのです...



1-1.相続人が子または配偶者の場合

申述人が被相続人の子または配偶者にあたる場合は、基本的に上記の共通基本書類だけで済みます。
最も楽なケースですね。


ちなみに、その趣旨を説明すると―


相続放棄手続は、一般的な相続手続とは異なり、「誰が相続人になるのか?」はそれほど重要にはなりません。
そもそも相続放棄をするか否かは、各相続人の自由であり、相続人全員で行わなければならない等の縛りなどはないのです。


そのため、ここで証明すべきは、「誰が相続人になるのか?」ではなく、「申述人が相続人なのか否か」という部分になります。


相続人が子や配偶者の場合は、子や配偶者であることが証明できればいいだけです。
必ずしも被相続人に何人子供がいるのかを証明しなければならないわけではありません。

結果、このケースでは、上記でご案内した基本共通書類だけで足りるという結論に至るわけです。



1-2.相続人が孫(曾孫)の場合

ここから発展形と言うか、少しばかり相続の知識を要します。
誰が相続人になるのかをある程度理解する必要があるためです。


ただし、考え方自体は相続人が子や配偶者のケースと大きく変わるわけではありません。
「申述人が相続人であること」を書類で証明すればいいだけです。


ただし、異なる点もあります。


孫や曾孫は、本来、相続人ではありません。
あくまで、代襲相続(子または孫の死亡)によって相続人たる地位を得るのです。
そのため、その部分(代襲相続)の証明を行う必要があると―

ただ、そこまで難しくも面倒でもありません。
具体的には次の書類を追加することで事足ります。


  • 共通基本書類+代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本



ようするに、死亡した子等の戸籍謄本等を追加するだけなのです。

まだまだ簡単ですね。
ただし、これ以降、必要書類が段々と面倒になってくるのです...



1-3.相続人が父母、または祖父母の場合

まず、父母、祖父母が相続人になるケースのおさらいをしましょう。

端的に言えば、被相続人に子や孫がいないケース、ないしは既に死亡しその代襲相続人がいないケースです。
(祖父母が相続人になるケースは、その上で父母が共に死亡している場合等です。)

この辺をしっかり理解できれば、おのずと必要となる書類も見えてくるはず―

具体的には、基本共通書類に加え、次の書類が必要となってきます(尚、基本共通書類と被る書類については1部のみで可)。


  • 被相続人の出生~死亡迄の連続したすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    ※これによって被相続人の子の有無を証明するわけです。子や孫がいればその者等が相続人となるため、それらがいない旨の証明が必要だという趣旨です。


また、被相続人の子(及びその代襲者)が死亡しているケースでは、上記に加え次の書類も必要になります。


  • 被相続人の子(及びその代襲者)の出生~死亡迄の連続したすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
    ※趣旨は同様です。


そして、祖父母が相続人になる場合には更にもうひと手間生じることになります。
父母が共に死亡していない限り、祖父母が相続人になることはありませんので、上記に加え、父母の死亡の記載ある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が別に必要になると―


かなり複雑になってきましたよね。
子や配偶者が相続人の場合と比べると、段違いの手間です。

ただし、これが天井というわけでもないのです...



1-4.相続人が兄弟姉妹または甥姪の場合

最も面倒なケースです。
分かる人にはもうなんとなく分かりますよね。


兄弟姉妹が相続人となる要件は、
①被相続人に子又はその代襲がない
②父母・祖父母等が既に死亡している
と言う状況です。
(甥姪が相続人になる場合は、更にここから兄弟姉妹に代襲相続が発生している必要があります。)


それを書類上で証明するわけですから、父母・祖父母が相続人なる場合の一連の書類に加え、父母・祖父母の死亡の記載ある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が必要になるわけです。
尚、甥姪が相続人となる場合には、更にここに該当する被代襲者の死亡の記載ある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本が別途必要になるとー


大変ですよね。
該当する戸籍謄本等を集めるだけでも結構な手間と時間を要します。

にもかかわらず、原則、これを熟考期間内に速やかに取集しなければならないわけです。
※相続放棄の申立後、速やかに不足書類を追完するケースもありますので、書類収集が間に合わないからと言って、相続放棄手続を諦めるのは悪手です。


2.その他、必要となることがある書類等について

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相続放棄手続に必要な書類は、基本的に1.でご紹介したとおりです。
誰が相続人になるかによって、その種類が変わるとー

ただ、それに加え、別の書類等が必要になると言うか、添付しておいた方が望ましいケースなどもあります。
具体的には、被相続人死亡3ヶ月経過後に相続放棄を行うケースです。


例えば、役所からの送付書類や、借金先からの催告書等です。


相続放棄ができる期間は、被相続人の死亡の事実を知った日から3ヶ月です(例外として債務(借金)の存在を知ってから3ヶ月)。
必ずしも死亡日から3ヶ月ではないのです。


そのため、戸籍等に記載ある死亡日と、申述人が「知った日」は、必ずしも一致するものではありません。
両親が離婚していた場合等、何年にも渡って疎遠状態にあるようなケースだとなおさら―


結果、被相続人の死亡後3ヶ月経過後に相続放棄を行うケースは何ら珍しくないのです。


ただ、添付する書類が上記の戸籍等だけだと、どうしても客観性に欠ける部分があります。
それを補うため、それらを別途添付するケースがあるわけです。

ただし、これらは一律にこれが必要という部類のものではなく、案件によって個別に判断すべきものであるため、詳細については個別にご相談いただく形がよろしいかと思われます。



3.まとめ

さて、今回は相続放棄に必要な書類のお話しでした。

重複しますが、簡単なものは簡単、難しいものは難しいというのが相続放棄の特徴の一つです。
ただ、たとえ簡単に見えるようなものであっても、特にこの手続は専門家へ依頼することをお勧めします。

なにせ失敗が許されない手続ですからね。

また、安易に行うようなものでもありません。
期間に翻弄され、よく考えずに相続放棄するのではなく、期間伸長の申立等をうまく駆使すべき事案も存在します。

相続放棄をご検討の際は、諸々ご注意ください。

それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一