ブログ
債務整理或る借金の話 ~前編~
さて、今回はちょっと趣向を変えて物語風のブログにしてみました。
(もちろんフィクションですし、モデルもいません。)
反響があれば続けてみたいとは思っていますが―
ともあれ本編のはじまりです。
これはごくごく普通のサラリーマンに起きた借金にまつわる出来事である。
2012.5
きっかけはほんの些細なことだった。
当時、仕事先や同僚との飲み会が続き、月初にして早くも小遣いが底を尽きかけてしまっていた。
先月も似たような感じで、その時は文句を言われつつもどうにか妻から追加の小遣いが貰えたため事なきを得たが、さすがに2カ月連続は厳しいものがあった。
そんな愚痴をこぼしていると、同僚がなぜか半ば自慢げに自身の借金の話をしてきたのである。
どうやら彼には20万~30万円程の借り入れがあるらしい。
ただし毎月の返済に困るようなことはないし、借金額が増えすぎるようなこともないそうだ。
彼曰く、借金は付き合い方の問題らしい。
確かにそれも一理あるのだろう。
そう勝手に思い込んでしまった節があるが、身近な人物の話は自分の中にある借金のハードルを下げるには十分過ぎるものだった。
私は愚かにもその飲み会の帰りにはじめてキャッシングをしてしまったのである。
それまで借金自体の経験がなかったわけではない。
一時的に友人から借りたこともあったし、既に返済し終わったのであるが、かつてカーローンを組んでいたこともある。
そして、何より今の住まいを購入する際に住宅ローンを組んでいるわけだから、決して借金とは無縁の人生とは言えないだろう。
ただし、キャッシング自体には昔から明確な抵抗があった。
友人からの借金は別としても、モノを購入する際の借金と、ただ単にお金を借りる行為は違うと思っていたからである。
とは言え、そんな私がはじめてキャッシングをした際に感じたものは―
『なんだ、こんなに簡単に借りられるんだ。』
そんなありふれた感想でしかなかったのである。
2012.11
その後、自制していたつもりだったものの、おそらく何かのたがが外れてしまったのだろう。
少額ながら毎月のように借入れを行うようになってしまい、借金額は徐々に大きくなっていってしまっていた。
2014.12
私は高給取りというわけでもなかったが、少なくとも平均年収は超えていたし、生活に困るようなことはなかった。
ボーナスもある。
住宅ローンの返済も順調だ。
ちょっとした借金なんてその気になればいつでも返せる。
自分の中にそんなあやふやな前提があった。
ただ、今になって思うとその考え方自体があまりにも甘かった。
早い段階で妻に打ち明けられていれば、あるいは想定どおりにいったのかもしれない。
ただそうはならなかった。
ならなかったのである。
2015.2
この時ほど自分の臆病さに嫌気がさしたことはない。
借金が増えてしまい、返済が厳しくなってきたことが自分でわかっていても、何ら妻に借金の事実を切り出せなかったのである。
それは離婚されてしまうのではないかという恐怖が主だった。
とは言え、借金の返済原資が自分の小遣いだけでは当然限界があった。
結果、借金の返済をするために新たな借入れをしてしまうのにはそんなに時間はかからなかった。
ちなみにそうなってしまってからの借金の増え方は自分でも驚くほどだった。
それもそうだろう。
借金を返すために借金をしているのだからそうならないはずがない。
借金先も1社から5社に増えてしまっていた。
返済日に遅れてしまうと自宅に催告の通知が送付され、妻に借金がばれてしまうのではないか?
借金の借入先から恫喝されてしまうのではないか?
当時は色々な不安がよぎり半ば自制心を失いかけてすらいた。
今になって思うと、この段階よりも前、少なくとも借金の返済のために新たな借入れをせざるを得なかった時点で専門家に借金の相談をすべきだったのだろう。
ただ、正直それも怖かった。
いや、むしろ抵抗があった。
おそらく借金をしている自分が恥ずかしいといったような感情があったのだろう。
2015.4
妻にも、誰にも相談できず、借金は増え続け、そのプレッシャーからか少なからず仕事にも悪影響が出るようになってしまっていた。
最終的にはこの後、司法書士に債務整理手続を依頼することになった。
どうやら借金問題を解決することを、債務整理手続と言うらしい。
業界用語のようなものなのだろう。
ではなぜそれまでできなかった借金相談が急にできたのか?
答えは実にシンプルなので呆れられてしまうかもしれない。
単純にほんとうにもうどうしようもなくなってしまったからである。
当たり前だが人は無限に借金ができるわけではないらしい。
もはや、私の収入ではキャッシングの枠の関係で、どこからも借金ができない状況に追い込まれてしまっていたわけだ。
2015.6
正直、破産を覚悟していた。
私もそこまで馬鹿ではない。
借金額は400万円を超えていたのだ。
とても一介のサラリーマンに支払える額ではないだろう。
不謹慎ながらよく自分でもここまで借りられたと感心するばかりだ。
こんな私に貸す方も貸す方だと思っていたが、手続を依頼した司法書士曰く、遅れなく毎月借金を支払っていると、借入れの実績ができ勝手に枠が広がることがあるそうだ。
ありがた迷惑とはまさにこのことだ。
ともあれ一番の心配は家族と家のことだった。
破産すれば家を失ってしまうだろう。
正直、それでは妻に合わせる顔がない。
しかし、意外にも司法書士からの提案された手続はそれとは異なるものだった。
続く