住宅ローンが苦しいと思い始めたら
ブログ
任意売却任意売却を行うメリット・デメリット
今回は『任意売却』についてのお話です。
大多数の人にとっては、あまり聞きなれない言葉かもしれません。
そのような方は、まずはこちらを参照ください。
任意売却手続(司法書士九九法務事務所HP)
https://99help.info/service/bankruptcy/post_49/
ちなみにここでは当該手続におけるメリットを中心にお届けさせていただきます。
どんなメリットがあるのか?
まず前提として―
任意売却は必ずしも行わなければならないものではありません。
住宅ローンを支払えないでいると、何もしなくても勝手に競売手続が進んでいきます。
面倒であればその終了を待てばいいだけの話です。
ではなぜ勧めるのか?
もちろん相応のメリットがあるからです。
以下、それらを簡単にまとめてみましょう。
精神的な面でのメリット
- 傍からは通常の売買にしか見えません
任意売却と言っても、手続上は通常の不動産売買とそう大差はありません。
一般的ものに比べると、少しだけ不動産仲介業者が大変なぐらいです。
そのため、傍からみれば通常の売買にしか見えません。
競売と比べるとご近所さんに状況を知られる可能性が格段に低くなるというわけです。
尚、競売では裁判所の執行官による室内の内見があります。
仮に拒否しても入ってきます。
カギをかけていても、場合によってはカギを壊して入ってきます。
彼らにはそうする正当な権限があるのです。
(仮に競売手続が進行してしまった場合は、執行官の内見に協力することをお勧めします。)
その他、競売の場合ですと、落札希望者が事前に状況調査に来ることがあります。
聞いた話だと、競売落札希望者がご近所さんに内部の状況を聞いて回ったりすることもあるそうです。
違法ではないでしょうが、たまったものではありませんね。 - 引越しの時期等、ある程度の余裕をもって次の準備ができます
引越しの時期等、競売の場合においてもその予測は可能です。
ただし、予測できるだけであって自分で任意に決定できるものではなく、また、その変更も困難です。
あくまで競売は強制的なものですから。
できることには限りがあります。
対して任意売却の場合は―
割と余裕をもって決められます。
あらかじめ引越しを前提として不動産の売却活動を行うため、融通が利きやすいわけです。
また、もちろん不動産の買主さん側の事情にもよりますが、多少の変更であれば十分に対応することが可能と言えるでしょう。 - 競売よりも多くの返済が望めます
ある意味、最も大きなメリットと言えます。
すべてがそうなわけではありません。
競売の方がより高く落札されるケースもあり得ます。
ただし、あくまで一般的には競売よりも任意売却の方がより多くの借金返済が望めるのです。
確かにそうなってしまうケースが多いですが、必ずしも『任意売却=破産』ではありません。
場合によってそれ以外の可能性も生じ得ます。
より多くの返済することでその選択肢が拡がるわけです。
また、仮に自己破産を避けられない場合であっても、大きなメリットが生じることもあります。
例えば、住宅ローンを組んだ際に保証人がいるような場合です。
仮に自己破産がうまくいったとしても、残った住宅ローンの請求は保証人に対しなされてしまいます。そうした場合、保証人に対する被害を最小限に抑えるには、より多くの借金返済をする他ありません。
<経済的な面でのメリット>
- 原則として任意売却自体に費用はかかりません
通常、不動産を売却する場合、不動産屋への仲介手数料がかかります。
その他に土地の測量費、司法書士報酬等が生じることもあります。
任意売却であってもそれは変わりません。
手続的には通常の不動産売買と同じですので―
ただし、任意売却はそれらの費用を負担する必要はありません。
では誰がそれを負担するのか?
単純な論理です。
より多くの利益を得る者が負担してくれます。
仮にそれらの費用を負担したとしても、競売を行うより多くの債権回収が見込める者―
債権者(住宅ローンの支払いを受ける側)です。 - 引越代を貰える可能性があります
必ずと言うわけではありません。
場合によっては、任意売却によって債権者より20万円前後の引越代を貰うことができます。
上記と同様の趣旨です。
そのため、債権者側の回収額が少なかったりすると、当然うまみは少なくなりますので、引っ越し代までは拠出できないとの判断がなされることもあります。 - 固定資産税の清算を受けることができます
固定資産税というものは、その年の1月1日時点において不動産の所有者になっている者に対し課税される税金です(関東と関西で起算日が異なるようですが、とりあえずは関東としてご認識下さい。)。
そのため、例えば4月1日に売買を行ったとしても、その年の固定資産税の支払いは前所有者(売主)になされます。
そこで、任意売却を含む通常の売却手続では、売却時に固定資産税の清算を行い、売主に不利益が生じないようにします。
具体的には売却時を起算点とし、その日以降、12月31日迄の固定資産税の日割り計算を行い、その分を買主が売却代金と会わせて売主に渡すようにするわけです。
それは、所有者が変更後も固定資産税の請求を受けるという点で、競売の場合も同様です。
ただし、競売の場合は固定資産税の清算を受けることが困難です。
仮に落札者に清算を嘆願する連絡をとったとしても、まず取り合ってすらもらえません。
むしろ鍵の交換代や室内の残置物処理費を請求されるのがおちです。
固定資産税とは言っても、不動産によってはばかにならない金額になります。
地味ですが、確実なメリットの一つと言えるでしょう。 - 滞納税金の差押えが清算できる場合があります
住宅ローンの支払いに困窮されている方の多くが、固定資産税等の税金を滞納しています。
個人的には税金が最も恐ろしい借金だと思っていまが(それについては、別の項でお話し致します。)、イメージの問題なのか住宅ローンや他の借入金を優先している傾向が多いです。
その結果、不動産に滞納税金に基づく差押えがなされてしまうと―
はっきり言ってやっかいです。
非常にやっかいです。
近年、市区町村にもよりますが、税金の取り立ては非常に厳しくなっています。
差押えの取り下げ条件についてもそれは同様です。
一昔前までは、『損害金は免除、元本は支払える金額での分割払い。』なんてこともありました。
今ではまず考えらません。
説明するまでもなく、税金の差押えの入った不動産を好んで購入する人などまずいません。
それでは任意売却もできないのではないか?
と、思われる方もいるでしょう。
間違いではありませんが、正解でもありません。
税金の差押えがあっても任意売却できるケースは多々あります。
ただし、それらは税金の差押えを取り下げってもらった上での話です。
ようするにこれも売却の諸経費と同様に債権者が負担してくれるわけです。
もちろん限度はありますが―
あまりにも滞納額が大きければ、その分、債権者が回収できる金額が少なくなってしまいます。
そうなると、債権者にとっての旨みがありませんので、任意売却を了承せずに競売によって問題を解決しようとします。
尚、競売によって滞納税金が精算されることは非常に稀です。
デメリットはあるのか?
主だったデメリットはありません。
むしろあったら勧めませんから。
その上であえて挙げるとするとかかる手間です。
必ずしもしなくても良いことをするわけですから、そこは避けては通れません。
ただし、実際の業務を行うのは不動産仲介業者です。
時間を取られるとしても、契約時と物件の引き渡し時ぐらいのものです。
得る利益を考えれば―
答えは明白でしょう。
まとめ
本来、借りたものは返さなければならないのが道理です。
例え住宅ローンを完済することが不可能であっても、なるべく多くの返済することによって債権者の損害を最小限に抑えるべきです。
なかには任意売却を行うこと自体、債権者に申し訳ないと思われる人もいます。
心情的にはそうあるべきです。
ただし、何のあてもなく住宅ローンを支払えない状態のままでいるのでは意味がありません。
そのままでは債権者は競売手続を行うしかなくなってしまうからです。
状況に応じて任意売却を検討することも、債権者に対するれっきとした誠意なのです。