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或る任意売却の話(住宅ローンの支払い苦)~前編~

さて、今回は任意売却の話です。

不動産業者が行う話のように思われるかもしれませんが、本来、任意売却の相談先は借金の専門家であってもいいはずです。

問題の本質は別にあります。
決して自宅を売却さえすれば全てが解決する問題ではないのです―

また、借金状況いかんによっては、不要な任意売却を事前に防ぐことも可能となるでしょう。


昨今、景気は上向きと言われておりますが、体感的には当事務所のある川口市周辺の任意売却案件は減るどころか、増えているようにも思えます。

そこで少しでも任意売却の手続を知っていただくべく、ここに来てなぜかわりと好評な物語形式のブログにてご紹介させていただきます(もちろん、登場人物等すべてフィクションです。)。

それでは本編のはじまりです。

厳しい現実

お酒も飲み会も好きな方ではないし、ギャンブルもしない。
趣味と呼べるものは幾つかあるが、そんなにお金がかかるようなものでもない。
もちろん悪い女性なんかに引っかかっているわけでもない。

にも関わらず、貯金はとうの昔に底を尽き、月末の住宅ローンの支払い目途も立っていない状況。
加えて、住宅ローンの以外の借金の借金の存在と、随分滞納してしまっている固定資産税。

恥ずかしながら、これがどん底というやつなのだろう―

そう言えば、何日も家族と話していない気がする。

原因の追究


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なんでこんなことになってしまったのだろう―

今になって思えば自宅購入がその引き金になってしまったように思える。

正直、自分でも高いとは感じていた。
自分に支払える金額の住宅ローンなのかと―

ただし家族が増え、家を欲しがる妻を制することは容易ではなかったのだ。
個人的にはもっと安い不動産でもよかったのだが、せっかくなら家族が気に入ったものがよいと判断してしまったわけである。

住宅ローンの審査がすんなり通ったことも大きかった―
頭金を1円も入れないフルローンだったのだが、何事もなかったようにOKが出たわけだ。

勝手な思い込みでしかないことは十分承知しているが、銀行からそうした対応を受け、どこか『支払える!』と、お墨付きを受けたような錯覚に陥ってしまったのだろう。

収入の減少

とは言え、最初から住宅ローンの支払いに苦しんでいたわけではない。
当初は貯金する余裕まではなかったものの、順調に支払えていた。
少なくとも支払いが遅れたような記憶はない。

自宅購入から2年ぐらいが経った頃ぐらいだっただろうか―

私の収入が減ってしまったのである。
厳密に言うと、会社の方針で残業が少なくなったのだ。
時勢というやつだろう―

月額にすれば僅か数万の違いだったのだが、それが殊の外、苦しかったのを憶えている。

平時はそれでもどうにか生活を合わせることができていたのであるが、冠婚葬祭や故障による家電の買い替え等、イレギュラーな出費に対応できなくなっていたのだ。

結果、不足する生活費に補填すべく、まずは住宅ローン先の銀行でカード―ローンを契約、徐々にそれを利用するようになってしまったわけである。

そして、借金― そして、差押え―

ここからはだいたい想像できるのではないだろうか?

生活が苦しくて1つ借金してしまうと、往々として2つ目、3つ目に手を出してしまうものである―

ただでさえ生活費が不足している状態に、新たな借金の返済が加わるのだ。
そうなってしまうのも当然だろう。

借金先が増えてしまってからの借金額の増加は自分でも驚く程だった。

気付くと銀行や消費者金融への返済が遅れてしまうのが怖くて、固定資産税の支払いをないがしろにしてしまっていた。

愚かにも税金よりも金融会社への支払いを優先してしまっていたのである。

そうして固定資産税の滞納を1年以上続けてしまった後-

裁判所からの自宅差押え通知がうちに届いたのである。

最初はそれがどういうものなのか理解できなかった。
差押えと言っても、誰かが家に来たわけでもない。
家財に赤紙を貼られるようなこともなかった。

理解できないというか、単に実感がわかなかったのである―

ただし、状況的にまずいということだけはひしひしと伝わってきた。
おそらく自宅を手放さなくてはならないだろうとの予感も―

結果、色々思考した挙句、いつもチラシが入っている不動産業者に相談をすることにしたのだ。
自宅を売る売らないかは別にしても、家を売却等した後のことを考慮すべきと判断したわけである。

任意売却という手続

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私からの売却相談に最初はやる気満々だった不動産仲介業者。

しかしながら、不動産を査定してもらった結果、仮に適正価格で売却できたとしても住宅ローンを完済することは到底無理であることが分かった。
(後で聞いた話であるが、こうした状態を『オーバーローン』と言うらしい。)

私的には想定の範囲内であったため、大した驚きはなかったのであるが、不動産仲介業者は終始困ったような反応をみせていた。

また、固定資産税の滞納と、それに基づく差押えの事実を伝えると、その表情はより険しいものになってしまっていた。

はっきりとは言ってくれなかったが、おそらくは彼には対応が難しかったのだろう。


『任意売却をするにも、もう少し固定資産税の滞納額が少なければ―』


確かそんな事を言っていたような気がする。
ともあれ、不動産仲介業者との正式な媒介契約は結ばず(結べず?)、他の手段を講じることとしたわけである。

市の無料相談会

私の住む埼玉県川口市では、予約は必要だが市役所にて弁護士や司法書士、税理士等の無料相談会が定期的に行われている。

相談時間は30分と決しては長くはないが、『無料だし、手続の道筋だけでも見えればな』と、いった気持で参加させてもらった。


結果、以下のことが分かった。

  • 任意売却と言うこと
  • 任意売却は必ずしも行う必要はないということ
  • 自己破産をすればよいということ
  • 自宅はいずれ競売で処理されるであろうこと


まず、私のような状態(自宅を売却しても住宅ローンを完済できない)の不動産売買を『任意売却』と呼ぶらしい。

また、必ずしも売却せずともいずれは競売手続が進行するため、任意売却が必須の手続ではないことが分かった。
加えて、競売後の住宅ローンについても、他の借金とあわせて破産手続を行えば、その支払義務から解放されるらしい―


なるほど。出口は見えた。
そして、手順もなんとなく分かった。

優先すべきは、自宅の売却よりも借金問題の解決なのだろう。

任意売却はその過程上の手続でしかないわけだ―


ただし、一つネックがあった。
どうもただ単に競売を待つのには抵抗があったわけである。

イメージの話だ。
競売だとそれが近所にばれてしまうのではないだろうか?

これ以上、妻に心労はかけたくはない―

どうにかないらないものだろうか?


司法書士事務所への相談

こうした任意売却の問題をどこに相談すべきか?

そう思案し、色々調べてみたところ、わりと近所に任意売却手続のフォローと借金問題を取り扱っている司法所事務所が存在していた。


しかも、相談は無料であり、特に時間の制限もないという―

私は藁をも掴む思いで受話器を握り、その司法書士事務所にコールした。


果たしてそれが最善だったのかどうかは分からない。
ただし、少なくとも私は最終的な結果に十分満足している。

司法書士への相談後、状況は加速度を増して進んでいった。

結論からすると、相応に時間はかかったが、なんとか競売を避けることができたし、無事、借金問題からも解放されたのである。


私が取った手続とその詳細は―

「或る任意売却の話(住宅ローンの支払い苦)~後編~」へ続く
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