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物語或る終活の話(任意後見、死後事務委任契約等)~後編~
さて、今回は『或る終活の話』の後編となります。
前編はこちらで確認下さい。
⇒『或る終活の話~前編~/司法書士九九法務事務所HP』
https://99help.info/blog/post_43/
今回は一部手続的な話が関わってきますので、少し読みにくかもしれません―
とは言え、自身のこと、両親のこと等、誰しも見過ごせない問題の一つかと思われますので、そこは頑張ってお付き合いください。
それでは本編の始まりです。
専門家(司法書士)への相談
たまたま自宅の近所(埼玉県川口市)に、今回、私が希望する手続の取り扱いのある司法書士事務所があったため相談に来ている。
ちなみに相談は無料らしい―
先方には時間を取ってもらって悪い気はするが、何かを依頼すると言うよりかは、まずは私の調べた結果が間違っていないかどうかを確認する趣旨が大きい。
そこで私は主要課題というか、自身の悩みを伝えた―
- 老人ホーム等の施設入所時の身元保証人(身元引受人)の問題
- 自宅とアパートの管理及び売却の問題
- 認知症の問題
- 死亡時の遺体引き取りの問題
- 葬儀の問題
2時間近く話しただろうか―
まだまだ詰めなければ、検討しなければならない箇所は多々あるが、やはり私の想定は間違ってはいなかった。
いや、むしろやりようによってはより広くカバーできることに驚きさえ覚えた。
結論からすると、いくつかの法手続と既存の終活サービスを併せることによってこれらすべてを解決できるばかりか、更に先の展開を見据えることができたのである。
例えば次のような手続がある―
- 任意後見契約
- 継続的見守り契約
- 財産管理等委任契約
- 死後事務委任契約
- 公正証書遺言
- 尊厳死宣言書
羅列するといかにも難しそうに見えるかもしれないが、意外とそうでもない。
少なくとも私にはよく理解できた。
尚、必ずしもこれらをすべて利用する必要はない。
あくまでうまく使い分けるのだ。
当然、人によっては使わなくてもいい手続が出てくるだろう。
ではここで、私のケースに当てはめてみよう―
老人ホーム等の施設入所時の身元保証人(身元引受人)の問題について―
基本的にこれらの解決策は3つに絞られるそうだ。
①はじめから身元保証人(身元引受人)の必要のない施設を探す方法
②民間会社などが運営している「身元引受サービス」を利用する方法
③施設側と交渉し理解を得る方法
①~②は特に説明の必要はないだろう。
ただ、②については非常に高額になったり、望んだサービスを受けられなかったりするケースには注意が必要と言える。
注目は③である。
身元保証人(身元引受人)の問題はシンプルでいて根が深いそうだ。
尚、余談ではあるが成年後見人はこの身元保証人(身元引受人)にはなれないらしい。
「利益相反」と「職務権限外」が主な理由らしいが、その話はまた別のどこかでしよう―
ではどうするのか?
単に施設側と交渉をするというのだ―
もちろんそれには相応の立場が必要となるだろう。
そこで任意後見契約等をうまく活用するらしい。
本来、施設側が身元保証人(身元引受人)を求める趣旨は、施設利用料の未払いや緊急時の連絡、遺体の引き取り等の不備を防ぐためである。
そのため、本来であれば身元保証人(身元引受人)を要求する施設であっても、成年後見人や任意後見人が付いている案件ではそれが不要としているところもあるそうだ。
後に調べてみると実際にそういった所があった。
財産管理を成年後見等が行っているので未払いは生じない、もしくは生じにくいということなのだろう。
結果、成年後見人や任意後見人の有無に関わらず身元保証人(身元引受人)を要求する施設であっても、根気強く交渉することでそれが不要となるケースや、あくまで管理財産の範囲で保証することで解決するケースが多いと言う。
とは言え、絶対にうまくいくという保証はないらしい。
まあ、それはそうだろう。
ただそこは大きな問題ではないように思える―
仮に施設との交渉に失敗したとしても独りではないのだから。
施設にしたってその数は多くある。
任意後見人と一緒に似たような施設を探すこともできるだろうし、①や②の可能性も検討すればいいのだ。
実に心強い。
であれば、ほぼこの問題は解決できたも同様だろう―
自宅とアパートの管理及び売却の問題について―
これについては任意後見契約等により明確に解決することができるそうだ。
尚、これらはある程度自由に決めることが可能らしい。
例えば元気なうちから管理等をすべて任せることもできるし、判断能力が衰えてからそれらを開始することもできるという。
依頼者側の需要に合わせて臨機応変な契約を行うのだろう。
尚、これには任意後見契約、継続的見守り契約、財産管理等委任契約をうまく組み合わせて行うものらしい。
私の場合だと、元気なうちは不動産の処分は行わず管理は自分で行う。
ただし、認知症や体が不自由になり、老親ホーム等に入所する必要になった際にはその管理や処分を任意後見人に任せたい旨の希望を出していた。
いずれも希望に近い対応をすることが可能らしい。
加えて、不動産管理会社や売却の際の不動産仲介会社等を予め指定しておくこともできるのだそうだ。
契約の中に、「対象不動産の管理は~不動産に依頼する。」といった具合に縛りを入れるのだという。
もちろん希望がなければ定めるも必要はないだろう。
ともあれ、私の好きなタイミングで不動産の処分や管理の引継ぎができそうなことが分かっただけでも大きな収穫だ。
認知症の問題について―
そもそも自分が認知症であることに自分で気が付けるだろうか?
できる人もそうでない人もいるだろうが、少なくとも私には自信がない―
そのため、老親ホーム等への入所のタイミングもそうだし、不動産の処分のタイミングもそうだ。
適切なタイミングで適切な動きを取れる自信が私にはなかった。
ただし、これについても一つの解決策を見たように思える―
任意後見契約に付加するような形で「継続的見守り契約」というものがあるそうだ。
これは名のとおり、継続的に生活及び身心の健康状態などを見守ってくれる契約だ。
具体的には、最低1ヵ月一度の電話連絡をし、3ケ月に一度は自宅訪問で直接面談を行うらしい。
加えて、かかりつけの医師などに状況を話しておき、健康状態が悪化するようなことがあれば直接医師から任意後見人に連絡がいくようにする等々―
連絡頻度や訪問頻度なども希望に応じて自由に決定することができるそうだ。
突発的なものでもない限り、孤独死するようなケースもこれである程度防げるだろう―
なんとも時代に即した手続だ。
ともあれ、認知症等の異変を第三者が適切に判断できる状況が整うのは願ったり叶ったりというやつだ。
その後の認知症の問題についても任意後見契約でカバーできるので心配ない。
死亡時の遺体引き取りの及び葬儀の問題について―
成年後見であっても任意後見であっても、基本的にその業務は本人の死亡によって終了するらしい。
そのため遺体引き取りや葬儀は家族が行うことが原則になるそうだ。
とは言え、中には身寄りのいない人もいるし、家族が葬儀代の負担を拒否するようなケースも少なくないらしい。
そのような場合は、後見人が手続をせざるを得ないそうで、葬儀は行わず直葬といって火葬のみを行う簡易なものになるそうだ。
ただし、『死後事務委任契約』を活用すればこの問題も解決できるという―
具体的には、親族等関係者への死亡の連絡や葬儀、火葬、納骨に関する事務、医療費、施設利用料等、生前に発生した費用の支払いに関する事務や行政官庁等への諸届け事務等まですべて依頼できるわけだ。
要するに夫が死亡した際に私が何かと苦労した相続手続全般を委任できるというわけだ。
私のように自分の死後、なるべく親族に迷惑をかけたくないと思っている者にとってはうってつけの手続だ。
事前にどのような葬儀を行うか、葬儀費用の上限、読経の依頼先等、細部まで設定できるのもありがたい。
既存の葬儀サービスをうまく理由するのも手だそうだ。
自身が希望するサービスを予め伝えておくのもいいかもしれない。
自分が死んだ後のことをあれこれ考えるのは不思議な気分がするが、不思議と不安よりも安心感を覚える―
これについては特に関心のあった部分なので、じっくりと検討することにしよう。
私なりの終活を実現させるために―
正直な感想を言うと、私が思っていた以上のものがそこにはあった。
少なくとも私が調べられた範囲内のものではあるが、他の民間会社の終活サービスに比べ価格帯も安く、内容も細部まで行き届いているように思う。
また、相手の顔が見えることが何より安心だ。
仮に同程度のサービスを行うとしたら、もっと費用が嵩んでしまうだろう。
痒い所に手が届くというか何というか―
とにかく良いもののように思える。
であれば、なぜ世間の露出がいまいちなのだろうか?
致命的な欠点があるのではないだろうか?
その後も何度か司法書士と話しているうちになんとなくその答えが出たような気がした。
まず一つは素人には手続が難しく伝わりにくいのである。
任意後見~、死後事務~、名称からしてそうだ。
後は利点でもあるのだが、細か過ぎるのではないだろうか?
できることが多いため、主となるものが見えにくいような気がする。
ただし、それは仕方ないだろう―
一言で「終活」と言っても、本来であればそれだけ多くの手続を内包する必要があるだろうから。
その他、あくまで私には内容からすれば安いと思ったが、司法書士等の専門家に書類作成だけではなく、任意後見人の就任を依頼する場合には、月額料金がかかる点も波及しにくい理由なのかもしれない。
ちなみに私が今想定しているプランだと、月額3万円程になりそうだ。
確かに安くはないだろうが、それ以上のものが得られる確信がある。
安心をお金には代えられない―
また、それについても自由に設定することは可能だ。
月額3万円が厳しいようなら、契約の内容を変えればいいだけだ。
そこは自分自身でバランスを取れば済む話だろう。
尚、実際どうかは分からないが、これらの手続を行う専門家自体の数の問題もあるようだ―
どうやら、司法書士であれば、弁護士であれば、行政書士であれば誰でもいいというわけでもないらしい。
誰もができる手続ではないのだろう―
尚、私の場合は司法書士に任意後見人になってもらうつもりだが、もちろん書類作成のみの依頼も可能だそうだ。
親族や知人が任意後見人になるパターンだろう。
その場合は月額料金もかからない、もしくは随分安く設定することができるのではないだろうか。
(就任を依頼する人物との問題だ。)
条件に当てはまる人はそれを検討するのもいいだろう。
その分、コストも抑えられる。
ともあれ、私は当該手続を司法書士に委任することとした。
これからじっくり時間をかけて細部を練っていこう。
あわせて公正証書遺言も作成し、司法書士に遺言執行者になってもらうつもりだ。
私の場合はこれと言って財産を残すべき相手もいないので、有用な活動をしている機関などに寄付できればいいと思っている―
まだまだやらなければならないことが山積みだ。
しばらく充実した日々を過ごすことができるのではないだろうか―