ブログ
物語或る任意売却の話(住宅ローンの支払い苦)~後編~
さて、今回は「或る任意売却の話」の後編をお届け致します。
前編を見逃された方はこちらからご確認ください。
「或る任意売却の話~前編~/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_48/
任意売却という、あまり聞きなれないであろう事案をテーマにしていますが、住宅ローンを組んでいる方にとっては決して他人事ではありません。
できれば、こうなってしまう前にご相談ください。
それによって選択肢が広がりますし、よりスムーズに手続を進めることが可能となります。
また、手続の複雑さ故、今回のブログは多少難解な内容になってしまっておりますが、その点、ご容赦ください。
それでは本編のはじまりです。
前回までのあらすじ
収入の減少を主な理由に住宅ローンの支払い苦に陥ってしまった『私』。
住宅ローン以外の借金を負うだけでなく、固定資産税をも滞納、あまつさえ市から自宅に差押をされてしまう。
どうにか競売手続を避けるべく奔走した結果、司法書士事務所に相談に訪れるのであるが―
司法書士との面談
電話予約を取って司法書士事務所に無料相談に訪れた。
その際、聞かれたのは概ね次のようなことだった―
- 借金原因
- 借金先
- おおよその借金総額
- 住宅ローン滞納の有無
- 住宅ローンの内容
- 滞納税金の有無と滞納金額
- 主だった財産の内容
- 年収及び月の収支
それらの情報を元に何やら懸命に試算しているようだった。
聞くと、まずは自宅を守る術がないか検討するのだという―
これがこの人のスタンスなのだろう。
ただし、私の場合は多重債務に陥った原因が収入の減少と住宅ローンそのものであるため、実現するのはかなり厳しいであろう旨も伝えられていた。
それはそうだろう―
何より私自身、恥ずかしながら今の状態では仮に他の借金や税金の滞納がなくなったとしても、最後まで住宅ローンを支払い終える自信がない。
転職の予定もないし、今後、劇的に収入が改善することもないだろう。
それでも無料相談にも関わらず、どうにかしてあげようという気持ちは凄くありがたかった。
しかし、現実は現実だ。
受け入れざる得ないものもある。
私は素直にそのことを司法書士に伝え、自宅を失うのは覚悟の上だが、競売だけは避けたい希望を伝えた。
手続の性質上、それが100%大丈夫という保証はないらしい。
それをよく理解した上であれば、もちろん手続を受任するし、最大限の努力を行うと告げられた。
それは十分承知の上だ。
それ以前になんとも裏表のない返答だろうか―
どこかそれに好感を覚え、正式に手続を依頼することにした。
尚、あくまで私の場合がそうであっただけであり、案件によっては自宅を守れるケースもあることだろう。
その際は、大まかでもかまわないので、上記の質問に対する答えを事前に準備しておくといいのではないだろうか。
より中身の濃い相談ができるだろう―
任意売却実現の可能性
やはり競売を避けるには任意売却しかないそうだ。
目下、問題点は滞納税金とそれに基づく差押えの存在である。
自宅不動産の差押えが外れない限りは、任意売却手続の完遂は困難であり、いずれは競売で処理されてしまうらしい―
ただし、もちろん今の私には滞納税金をすぐに解消できる資力はない。
今になって思うと、以前に相談した不動産仲介業者はこの問題をクリアーできないと判断したのだろう。
やはり諦めるしかないのだろうか―
私のそうした不安をよそに、司法書士は任意売却手続に強い不動産屋を紹介するので、諦めるのはそれからでいいと諭してくれた。
どうやら彼は勝算を感じているようだった。
確かに簡単な案件ではないそうだ。
解決には相応の経験と手間を要するという。
ただ、おそらくはまだどうにかなるギリギリのレベルだと―
任意売却という手続は、大手であればいいとか、中小では駄目だとか言うものではないそうだ。要は不動産仲介業者の担当者自身にその経験と能力があるかどうか大きいということなのだろう。
私の場合は、多少複雑な案件ということもあってか、任意売却を専門に行っている不動産業者を紹介してもらうこととなった。
正直、聞いたことのない社名ではあったが、担当者の感じがよく、手続の過程で不安をおぼえるようなこともなかった。
お金の問題
切実な問題だ。
日々の生活については司法書士がすべての借金先に受任通知というものを出してくれており、一時的にその支払いを留保してもらっていることから、特に問題は生じていない。
「ご依頼の流れ/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/bankruptcy/post_14/
そればかりか、私の場合だと住宅ローンの支払いも止めてもらっているので、むしろだいぶ生活に余裕があるぐらいだ。
尚、生活費の余剰金については、今後の賃貸物件への引っ越しに備え、司法書士の報酬と合わせて毎月無理のない範囲で積立を行っている。
この調子でいけば、引っ越し資金ぐらいはなんとか自力で拠出できるだろう。
ただし、全く心配がないわけではない。
それは不動産屋へ支払うであろう仲介手数料についてだ。
仲介手数料は結構な額になってしまうイメージがあるが、果たしてちゃんと支払えるだろうか―
そうした私の不安はまさに杞憂に終わった。
思い返してみると、その点についても事前にちゃんと説明を受けていたのであるが、考えることが多過ぎてすっかり記憶から抜け落ちてしまっていたのである。
原則として、任意売却という手続は何ら手出しで費用を支払う必要がないのだ。
あまりにも虫の良い話で怪しく思えるかもしれないが、それにはちゃんとしたロジックがある。
仲介手数料等、通常、不動産売却にかかる費用は任意売却であっても発生する。
ボランティアではないのだから、それも当然だろう。
もちろんそれに伴う支払いも然り。
ただし、あくまでそれを手出しで支払う必要がないのだ。
ではどうやってそれらの費用を支払うのかというと―
不動産の売買代金から支払うのである。
私自身、この辺を理解するのが大変だったのだが、元より任意売却というのは住宅ローンを完済できないことを前提としている(オーバーローン状態の不動産売買)。
また、住宅ローンを支払えないぐらいだから、生活に困窮しているのが普通だ。
そのため、私に限った話ではなく、仲介手数料等の諸経費を拠出できないであろうことは、元より分かりきった話であるし、織り込み済みなのである。
尚、実際の手続では、売買代金から『割付(わりつけ)』というものを行うのだそうだ。
具体的には、仲介手数料、登記費用、場合によっては滞納税金や土地の測量費、建物の残置物処理費、マンションの場合だと滞納管理費・修繕積立金等、売却を行うにあたっての必要諸経費を売買代金から振り分けるのである。
そうなると債権者側の回収がその分少なくなるわけだが、一般的にはそれでも競売で処理されるよりは任意売却による方が高く不動産を処分できるため、仮に諸経費分を差し引いたとしても、より多くの債権を回収できるという仕組だ―
まぁ重要なのはその辺の難しい話ではなく、任意売却は金銭負担なく行える手続であるということだろう。
破産手続との同時進行
当然ながら任意売却手続そのものは、司法書士に紹介してもらった不動産仲介業者にすべて任せてある。
素人にどうこうできるものではないので、こればかりは吉報を待つ他ないだろう。
その間、私が何をしているのかと言うと―
既述のとおり、引っ越し費用及び司法書士費用の積立もそうだが、並行して自己破産手続を司法書士と共に進めているわけだ。
とは言え、司法書士の質問に答え、預金口座や保険証券等、財産関係の書類などを集めているに過ぎない。
あと、家計簿をつけるよう指示されている。
最終的には裁判所に提出するらしいが、それ以前に改めて自身の生活を見直すためだそうだ。
意外と無駄な生活費が多いことが分かる―
その他、だいたい1~2カ月に一度、司法書士と会って細かい打ち合わせや、手続の説明を受けている感じだ。
そのせいか、破産手続が進んでいるにも関わらず大きな不安は感じることはない。
正しい知識の大切さがしみじみ分かった。
報告では、任意売却の手続も佳境を迎えているそうだ。
良い条件の買手候補者が現れ、固定資産税の差押え問題もどうにかひと段落着いたらしい。
うまく差押えを外すことができるのだろう。
かなり大変だっただろうに、さすがは専門業者というところだ―
今後、特に新たな問題が生じない限りは、近く不動産の売買契約を結ぶことになるという。
当初の最大の目的であった、自宅の競売回避は無事完遂というわけだ。
ほっと一安心とはこのことである。
その後―
司法書士と裁判所へ向かっている―
任意売却は無事に終了した。
残すは破産手続だけである。
ただし、裁判所への申立は既に行ってもらっており、「審尋」というらしいが、手続の最後に行われる裁判官との面談に赴く最中だ。
想像していたよりも、とんとん拍子に物事が進んでいった印象を受ける。
もちろん事案にもよるらしいので、あるいは少しだけ運が良かったのかもしれない。
尚、余談であるが、任意売却は費用がかからないばかりか、債権者から引っ越し代を貰えることもあるようだ。
だいぶ驚いたのであるが、少なくとも私の場合はそうだった。
司法書士に言わせれば、売買代金等、諸条件にもよるが、引っ越し代を貰えるケースが多いという―
ただ、これも必ずというわけでもないため、期待し過ぎないよう配慮してくれたようだ。
おかげで臨時ボーナスを貰ったような感覚を味わうことができた。
ちなみにそれによって司法書士への支払報酬がちょうど浮いたため、その分、生活が楽になったのは言うまでもない。
きっと破産手続も同じようにうまくいくだろう―
こんなことならもっと早く相談していればよかったように思う。
裁判所が見えてきた。
後、30分もすれば最後の手続がはじまる―