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かくも恐ろしい税金の滞納について

さて、今回は税金の滞納のお話です。


私たちの暮らしと社会を支える大切な『税金』
国を維持し、発展させる大切な『税金』


聞こえはいいですが、これを滞納し続けてしまうと、かくも恐ろしい目にあうかもしれません―


経験上、税金の支払いよりも、借金の返済を優先されている方が非常に多いです。

正直どうかと思っています。
あるいはこのブログを読めば、その結論が異なるものになるかもしれませんし、私的にそうなって欲しいと思います―

本当に厄介ですから滞納税は。



<目 次>




1.税金の滞納問題は決して他人事ではない

ある程度しっかりした会社のお勤めの方であれば、税金を滞納してしまうようなことは少ないでしょう。
仮に払いたくなくとも、自動的に給与から天引きされていることが多いですから―

ただし、それでも税金を滞納してしまうようなケースがないわけではありません。


例えば―

①不動産(自宅)を所有している場合
②通勤務先を退職した場合


などです。

①は言わずもがな、"固定資産税"です。
これは給与天引きにはなっていないはずです。
あくまで不動産の価値に対して納める税金であり、収入とは直接関係ありませんから。

②は主に"住民税"です。
勤務先を退職したことをきっかけに税金の滞納地獄に...
なんて話はそんなに珍しいものではありません。


それはなぜか??


「住民税」は前年の所得をもとに計算されています。
そして、それは後払いなのです。


結果、退職時期や転職時期などによっては、一括で「住民税」の支払い請求がくるようなこともあり得ます。


「会社を辞めた後に住民税を一括請求されて驚いた」


一度くらいそんな話を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
このように税金を滞納してしまう機会は誰にでも訪れます。

税金の滞納問題―
対岸の火事とは思わずに十分注意しましょう。




2.滞納税の延滞金は思っているよりもかなり高い

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滞納税の恐ろしさの一つです。

通常、税金を滞納した場合、14.6%の延滞金を課されてしまいます。

ピンとこない人がいるかもしれませんが、これ、サラ金並みの高さです。
いや、今の消費者金融は過払い金等の影響もあり、もっと低い金利で貸し出しているところも多々あるので、サラ金以上の金利といっても過言ではないかもしれません。

そんな高金利な滞納税を1年以上滞納してしまうと―

当然ながら見るも無残な結果になってしまいます。
ケースによっては、元々の滞納金額の倍やそれ以上になってしまうことも―

一度でも経験したことがある方なら、その恐ろしさがよく分かると思います。


滞納税は放置してしまうと、すぐに膨れ上がってしまいますし、なにせ一度大きくなってしまうとなかなか減りません。
滞納税を頑張って分納していても、そのうち次年度の税金が新たに発生してしまうからです。


分納額が少額であった場合などには、毎月ちゃんと協議して決めた金額を支払っているにも関わらず、新しい税金の季節がやってくる度に滞納税総額が増えてしまうようなことも間々あると...

十分に注意しましょう。
というか、その恐ろしさをよく認識しておきましょう。




2-1.延滞金の減免は極めて困難

一昔前までは、例えばまとまった金額を一度に納付することで、延滞金の免除や減額を受けることができたりもしました。


もちろん、現在でもそれが全くできないとは言いません。
ケースバイケースな点は昔と変わらないのです。


ただし、その要件がとにかく厳しい―


やむを得ない理由がある場合になされることはありますが、実際に適用されているケースは稀です。
ほぼできないと思っていた方がいいぐらいに―

例えば生活保護を受けたとしても免除はされません。
基本的には『猶予』扱いとなります。

生活保護が打ち切られたら、その時点で納付を催促されます。
どこまでもどこまでも追いかけてくるのです。


延滞金が発生してしまったら、大きくなる前になんにつけても直ぐに解消するのが一番の対策なのです。





3.極めて時効になりにくい

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税金にも『時効』があります(延滞金についても同様です。)。
例えば、住民税の場合では原則5年で時効を迎えることになるのです。



なんだ、5年間我慢すればいいのか!



そう思うのはあまりにも危険です。
安易過ぎます。

なぜなら元々税金は極めて時効の要件を満たしにくくなっているからです。




3-1.時効の中断

まずは時効の中断についてご説明致します。


時効の中断とは―
それまで進行してきた時効期間を「ゼロに戻す」ことを言います。


例えば、5年で時効になるものがあったとして、4年1ヵ月の時点で時効の中断事由が生じると、そ
れまで進行してきた時効期間(4年1ヵ月)はリセットされ、時効完成にとって全く無意味なものになってしまうのです。

ようするに、またはじめから5年待たないと時効が完成しないわけです。

尚、時効の
中断事由は民法で次のように定められています。


民法第147条(時効の中断事由)
  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
 (1)請求
 (2)差押え、仮差押え又は仮処分
 (3)承認



これらの事由が生じると時効は中断してしまうわけです。


・時効の中断事由 ~請求~

では、ここで言うところの「請求」とは何を指すのでしょう?
大別すると、「請求」は「裁判上の請求」「裁判外の請求」に分かれます。


裁判が確定すると時効は中断します。
これが裁判上の請求です。


対して裁判外の請求は、内容証明郵便等で裁判所を介せずに行う「催告」です。
ただし、催告だけでは時効は中断しません。


時効の進行を止めるだけです。


しかも、ずっと止めていられるわけでもありません。
催告後、6カ月以内に裁判上の請求か他の時効中断事由が生じない限り、時効が中段することはないのです。


あくまでこれが一般的な話です。
そうそう簡単には時効は中断しないわけです。


しかしながら、驚くことに滞納税はこの常識を簡単に覆してしまいます―



「裁判外の請求」で、ようは単なる役所からの催告書の送付をもって、何ら裁判所の関与なく簡単に時効の中段が実現してしまうわけです。


なんと送付だけで時効が中断してしまうのです。



・時効の中断事由 ~差押え、仮差押え又は仮処分~

「請求」同様、本来であれば差押え等を行うには相応の手順を踏む必要があります。
具体的には裁判に勝訴し、それによって得る「債務名義」を元に強制執行という手続を行うなど、面倒な裁判所の手続を色々介すわけです。


しかしながら、滞納税の差押えはここでも簡易的です。
裁判を要せず簡単に差押えをすることが可能なのです。


所有不動産屋、預金口座、給与に至るまで押さえられるものはなんでも差し押さえられてしまいます。

もちろん一度付けられた差押えを外すのは容易なことではありません。
給与を押さえられ生活ができないと懇願したところで、どうとなるものではありません。


・時効の中断事由 ~承認~

滞納税で言うと、これは分納誓約書などを交わすことを指します。
滞納額を認め、それを支払う約束を交わすわけですから、それによって時効が中断することに違和感はないでしょう。

これについては税金だからという上記2つのような特則はありません。




3-2.結果として

滞納税は極めて時効になりにくいです。
特に直近のものはまず不可能だと判断するのが賢明です。

滞納税の時効を狙い、いたずらに放置することの危険性を分かってもらえましたでしょうか?

失敗するだけならまだしも、滞納税は確実に増えますからね。
愚策以外の何物でもありません。


ちなみに、昔は滞納税であっても時効になるようなケースは珍しくありませんでした。
実際に経験された方もいるのではないでしょうか?

財政の問題なのか、他に何かあるのか、細かい理由は定かではありませんが、少なくとも今ほど厳しくはなかったのです―

相応の誠意と条件を提示すれば、滞納税の減免もそこまで難しいものではなかったように思えます。
ただし、それをどうこう言っても仕方ありません。

あくまで今を基準に考える他ないわけです。




4.自己破産をしても滞納税は免責されない(なくならない)

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冒頭でも申し上げましたが、税金よりも借金の支払いを優先される方が多いです。


おそらくはイメージの問題なのでしょう。
借金の方が怖い―
税金は後回しでもいい―


多くの方の頭の中はこのような感じです。


借 金  >  税 金



しかし、本当にそうなのでしょうか?


結論からすると、どっちを優先すべきとかではありません。
どっちらも支払う義務のあるものなのです。


借金は借金先との契約です。
税金に至っては国民の義務です。


ないがしろにしていいわけがありません。


ただし、どっちが恐ろしいか、どっちか怖いかと言われれば、少なくとも僕は『税金』と答えます。
しかも即答します。



それはなぜか?



逃げようがないからです。

知らない人も多いかもしれませんが、仮に自己破産を行ったとしても滞納税は免責されません。
借金は消えても滞納税はそのままなのです。

それは自己破産だけに限らず、個人再生でも同様です。
裁判所が税金を免除してくれるようなことは何らありません。


無事、自己破産の手続を終了しても、その後、何年も滞納税の支払いに四苦八苦するようなケースも珍しくないです。
実際にこの目で何度も見てきました。


滞納税の存在で個人再生手続がうまくいかず、大切なマイホームを失ってしまうことだってあり得ます。


違う市町村に逃げても同じです。
そんなに甘いものではないです。


住所も勤務先も、調査すれば預金口座の存在もまる分かりです。


考えてもみてください。
相手は誰ですか?

よくよく考えれば、その辺の貸金業者の方が怖いなんてことないと思います。




5.まとめ

大切なことは税金を滞納しない、甘くみないことです。
それでも滞納してしまったならば、極力、早く解消すべきです。

滞納期間が短ければ、それこそ1カ月以内で解消できれば延滞利息も少なくて済みます。

借金の返済ために税金を滞納するなど愚の骨頂です。
それをするぐらいなら、その時点で借金問題を解消すべきです。

もはや自力での借金解消ができなくなっている確たる証拠でしょうから。


※司法書士九九法務事務所では、滞納税金に関する役所との交渉等は承っておりません。あくまで、当ブログは税金滞納の恐ろしさをお伝えするためのものなのです。その点、ご理解願います。

write by 司法書士尾形壮一