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相続

未成年と相続と民法改正と

さて、今回は未成年者絡みの民法の改正や相続手続等についてのお話です。


相対的には未成年者が絡む案件はそう多くはありません。
が、極めて少ないと言う程でもありません。

僕自身、未成年者が絡む相続や相続放棄、売買等、これまで多くかかわってきました。


その上で―
未成年者が絡む手続は、状況によってはなにかと面倒になることも...


加えて、この度、民法の改正により未成年の定義自体もかわります。

せっかくなので、このタイミングでそれら未成年に関するあれこれをまとめてみることにします。



目 次



1.民法の改正により未成年の定義がかわります

まずは大前提から。

  • 未成年とはー
    現行の法律では、20歳未満の者を"未成年"と定義し、20歳に達した時をもって成年とされます。



なにをいまさら...
そう言う反応が予想されますが、この度、その大前提そのものがかわるのです。


世間ではそれなりに騒がれていますので、あるいは既にネットニュースなどで情報を得ている方も―


平成30年6月13日に民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げること等を内容とする民法の改正が行われたのです。


施行日も既に決まっています。
平成34年4月1日からです。


なんと約4年後からは18歳が成人となるわけです。
高校をストレートに卒業すればすぐに成人...
飛び級でもない限り大学生はすべて成人...


びっくりですよね実際。

あまりピンときませんが、成年年齢の見直しは約140年振りになるそうです。


また、これに伴い未成年が結婚できる年齢にも改正のメスが入りました。
男女の婚姻開始年齢を統一することとなったのです。


男女共に18歳~。


女性の婚姻開始年齢が2歳引き上げられたわけです。

その他の詳細が気になる方は次の法務省のHPを参照してみてください。



「民法の一部を改正する法律(成年年齢関係)について/法務省HP」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00218.html



18歳から成人と言われても...

あまり実感が湧かないのではないでしょうか?
でも、これ、世界的にみれば珍しい話ではないどころか、むしろ20歳で成人になる方が少数派だったりするわけです。



1-1.世界の成人年齢

世界の成人年齢のスタンダードは18歳です。
意外かもしれませんが、実に世界の半数以上の国は18歳を成人年齢としています。


ただし、これまでの日本同様にそうじゃない国も―


日本政府が承認している196ヶ国すべてをご紹介するのもあれなので、独断と偏見で主要国をピックアップしてみました。


国  名 成 人 年 齢 国  名 成 人 年 齢
アルゼンチン 21歳 中国 18歳
アメリカ 18~21歳
(州ごとに異なる)
ネパール 16歳
イギリス 18歳 ブータン 女性16歳
男性18歳
インド 18歳 フランス 18歳
エジプト 21歳 ベルギー 18歳
オランダ 18歳 クロアチア 18歳
タイ 20歳 スペイン 18歳
韓国 20歳 日本 20歳



ヨーロッパ圏は圧倒的に18歳で成人になる国が多く、対してアジア圏では日本と同様に20歳で成人となる国が多い印象です。
珍しいところで言うと、アメリカのように州ごとに異なっていたり、ブータンのように性別で異なっていたりするところもあります。
上記には挙げていませんが、たしかカナダなんかも州によって成人年齢が異なっていたように思います。

その他、経済的に発展していない国の成人年齢は低くなりがちな印象を受けます。
おそらく労働の問題が絡むからなのでしょう―


ちなみに今回の民法改正同様、他の国でも成人年齢が引き下げられてきた歴史があります。

有名なところで言うと、イギリスやドイツです。
両国ともそれまでの成人年齢は21歳でした。


それが度重なる学生運動を発端として、現在の成人年齢に変更されたのです。


僕が知り得る限り、日本で成人年齢の引き下げに関する学生運動が起きたような話は聞きません。
イギリスやドイツとは異なり最初から国主導という部分が大きいのでしょうね...




1-2."飲酒"や"喫煙"はいつから?

では、18歳で成人になるということは、選挙権や法律行為だけではなく、他の部分においてもこれまでの成人同様の権利を得ることができるのでしょうか?

  • 成人になったらできること―


まっさきに思い浮かぶのは、"飲酒"と"喫煙"ではないでしょうか?
毎年、必ずと言っていいほど成人式で過剰にアピールする若者がいますからね。


しかしながら、今回の改正ではこの辺に変更はありません。

従前どおり飲酒も煙草も二十歳になってからです。
あくまで成人になることと、それらは別物であると言うことなのでしょう。

成人になったからと言って、この辺を勘違いしないよう注意しましょう。
権利云々と言うわけではなく、健康面の問題ですからね元より。


下記に成人になったらできること、できないことをまとめた資料を引用させていただきます。



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※政府広報オンライン出典



個人的には大型・中型自動車免許が意外でしたが、他は概ね予想どおりと言ったところです。
今後、様子をみつつ細かい変更や調整があるかもしれませんね。


ちなみに少し蛇足になってしまいますが、成人年齢同様、飲酒可能年齢も国よってかなり異なります。
フランスのワインなどが知られるところでしょうか。


フランスでは公共の場でのワインの飲酒が16歳から認められています。


その他、アルコールの種類や度数で飲酒可能年齢を定めている国も多いです。
スイスなどは面白くて、18歳未満の者へのスピリッツの提供が禁じられていたりするそうです。

スピリッツに関しては年齢の問題ではないような気もしますが...


ともあれ、世界的には20歳未満の飲酒を認めている国が多いのは確かです。

将来的には日本もこれに追随するのか、それとも世界が日本をスタンダードとする日が来るのか―
文化も絡んできますので一朝一夕にはいかないでしょうね。


2.未成年者の法律行為

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まあ、ある意味ここからが本題となります。

民法の改正で話題になっている成人年齢の引き下げですが、18歳未満についてはこれまでと変更があるわけではありません。
未成年者が法律行為を行う際には、法律上様々な保護と規制を受けることになるわけです。


ちょっと分かりにくいかもしれませんが、まずは未成年者の法律行為についての民法の条文をみてみましょう。
なるべく分かりやすく解説しますので、しばし我慢してください...

  • 民法第5条(未成年者の法律行為)
    1.未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。
      ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
    2.前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。



これらを分かり易く噛砕いて説明しますと―

  • 未成年者は単独で法律行為(相続、相続放棄、売買、賃貸契約等)をすることができない。
    それをしたければ、法定代理人(両親などの親権者または未成年後見人)の同意が必要となる。
    仮に法定代理人の同意なくして行われた法律行為は、法定代理人によって後日取り消すことができる(取り消されるまでは無効というわけではない。)。


だいたいこんな感じでしょう。
まだまだ分かりにくいですよね...


未成年者は人生経験の面からしても、まだまだ物事の良し悪しを判断する能力が足りていないので、法律によってしっかり保護しつつ、分別ある大人がそれをフォローしようという趣旨なのです。


2-1.未成年者の法律行為の具体例

古本屋に読まなくなった本を売りに行った際、店主から保護者の同意がないと駄目だと言われたような経験はありませんか?
あれは古本の下取りと言えど立派な売買契約(法律行為)だからです。


ちょっと例えが古いかな?

今っぽく例えるならば、スマホの新規契約などでしょうね。
ドコモショップなどでお母さんと一緒に契約した覚えはありませんか?

あれは心配してついてきたわけではなく、未成年者に代わって契約をするためのものだったわけです。

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ちなみに法律に無知だった高校時代の僕は、大学で独り暮らしをするために賃貸物件を1人で内覧しに上京しましたが、すぐに正式な賃貸契約を結ぶことができませんでした。

わざわざ故郷である福岡県から大学のある神奈川県まで来ていたので、費用と時間が無駄になってしまうと凄く焦ったのは懐かしい思い出です―

尚、その際はあくまで仮の賃貸契約を結ばせてもらい、後日、親権者の同意書を送付することで事なきを得ましたが、交渉等色々大変でした...

いずれもこの条文が適用されたわけです―


尚、条文上にある『単に権利を得、又は義務を免れる法律行為』とは、未成年者にとって一方的に利益になる行為であったり、不利益を免れたりする法律行為を指します。


具体的には負担のない単なる贈与(友人から洋服を貰ったり、親戚の叔父さんからお年玉を貰ったりするような行為です。)を受けるものであったり、借金の免除を受けるような場合などです。

ただし、詳しくは後述しますが、実は未成年者の法律行為はここら辺の判断がとても難しいんです...



3.未成年者が相続人であった場合

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一見して相続は上記で言うところの『単に権利を得、又は義務を免れる法律行為』に当たりそうに思えるでしょう。
相続は亡くなった方から遺産を無償で『貰える』イメージが強いですから。


ただし、相続手続は『単に権利を得、又は義務を免れる法律行為』には当たりません。


ですので、未成年者が単独で相続手続を行うことはできず、親族等の法定代理人の関与が求められることとなります。


それはなぜなのか?


必ずしも相続の対象はプラスの財産や権利ばかりではないないからです。


借金等、マイナスの財産や義務等も相続の対象となってしまうため、未成年者が不利益を被る可能性があるわけです。

その辺りの詳細が必要な方は、次のブログを参照してみてください。


「相続って何?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_35/



結論からすると、未成年者が相続人であった場合、その手続は未成年者本人ではなく原則どおり親権者が未成年者を代理して行うこととなるわけです。
(スマホの新規契約と一緒です。)

3-1.両親が離婚している場合は誰が未成年者を代理するのか?

既述のとおり、未成年者の法律行為は親権者が代理して行います。
そのため、未成年者の両親が共に健在の場合には、当然ながら父母双方がその代理人となるわけです。
婚姻関係にある両親がいる限り、父親だけが代理人になったりはしません。


肩書的には―

  • ~法定代理人 父~
  • ~法定代理人 母~

と、言ったような感じになります。
契約書や委任状なんかもこのような記載で特定すると良いでしょう。
参考にしてみてください。


では、両親が離婚しているようなケースではどうなるのでしょうか?


変わらず父母双方が未成年者を代理するのかどうか...
仮に双方が代理するのであればトラブルになっちゃいそうですね...


結論からすると、そうはなりません。
離婚する際には、夫婦間の未成年の子には親権者をどちらか一方に決めているからです。
(もう片方はあくまで元親権者でしかありません。)


当事務所の近隣にある戸田市のHPが分かり易いので興味のある方は下記のリンクを参照してみてください。


「離婚するとき(離婚届)/埼玉県戸田市HP」
https://www.city.toda.saitama.jp/soshiki/191/simin-rikon.html



離婚後も父母双方が親権者になるわけではないのです。

そのため、未成年者が相続等の法律行為を行うには、離婚時に親権者と定められた父(または母)が単独で未成年者を代理することになるわけです。


尚、実務的には未成年者の戸籍謄本を添付して手続を行うことになるため、未成年者の親権者が誰であるかはその戸籍の記載で確認することとなります。

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ちなみに、ちょっと難しくなり過ぎるので触りだけにしますが、離婚後、親権者に定められた一方の者が死亡した場合には、未成年者の親権者は誰になるのでしょうか?


例えば両親が離婚し、母が未成年者の親権者となったが、程なくその母が死亡した場合などです。


結論からすると、上記の例では当然に父の親権が復活するわけではありません。
あくまで一時的に未成年者に親権者がいない状態になるのです。

そのため、そのような状況で未成年者が相続手続等の法律行為を行うには、未成年後見人を選任するか、もしくは父の親権を復活させたい場合には、「親権者の変更」(民法819条6号)の申立を行い、裁判所に相当であると認めてもらう必要が生じてしまいます。


ケース的に少ないと思われますが、仮に該当するようならばご注意ください。


3-2.未成年者が絡む相続手続の注意点

  • "利益相反(りえきそうはん)"


そういう言葉があります。

未成年者の絡む手続は、常にこの"利益相反"か否かを精査する必要があるため、面倒、かつ、複雑になりがちなわけです―

相続の手続にも同様のことが言えます。


では、具体的にはどのような場合に利益相反となるのでしょう?
また、利益相反とは実際どのようなものなのでしょう?



未成年者が遺産分割協議を行う際は要注意

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毎度毎度、父に死亡してもらって申し訳ないのですが、父が死亡し、母と未成年者(A及びB)がその相続人となるケースで説明します。

原則であれば母が親権者として未成年者を代理し、相続手続を行うことになります。
それ自体は問題ないでしょう―


ただし、遺産分割協議を行う場合には、原則どおりにはいかないのです。
なぜなら、その行為自体が利益相反に該当してしまうからです―


だいぶ分かりにくいと思いますので、順を追って説明しましょう。


遺産分割協議とは、亡くなられた方(今回で言うと父)の遺産をどのように分配するかを相続人全員で決める協議です。
ようは契約ですし、立派な法律行為です。


よって、未成年者は当然この遺産分割協議には参加できません。


とは言え、親権者が未成年者を代理して行うわけだから問題ないのではないか?
そう、見えなくもありません。

ただし、このケースでは当の親権者自身が遺産分割協議の当事者になっています。
母は父の相続人兼未成年者の法定代理人という立場にあるわけです。


仮にこれが許されるとするならば、母が父の遺産を独り占めしようとすれば簡単にできてしまいます―


母と未成年の利益が相反している状態というわけです。
こうした状態のことを"利益相反"と言います。


法律は、法律上弱者とされている未成年者をとにかく保護します。
親権者の人間性などは全く加味しません。

形式上、利益相反に該当するケースは親権者が未成年者を代理することはできません。


結果、未成年者が遺産分割協議を行うには、親権者の代わりに未成年者を代理する者を別に用意する必要があります。

具体的には、家庭裁判所にて"特別代理人"の選任申立を行わなければならないわけです。


ちなみに、代襲相続の場合等、親権者は相続人(当事者)にはならず、未成年者のみが相続人になるようなケースでは、特別代理人の選任を要しません。
親権者と未成年者の利益が相反しないため、原則どおり親権者が未成年者を代理することが可能となるわけです。


その他、特別代理人の内容及び注意点等の詳細については、次のリンクを確認ください。


「特別代理人の選任手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/succession/post_30/




・未成年者が相続放棄を行う際にも注意が必要

未成年者が行う遺産分割協議の注意点は上記のとおりですが、未成年者が相続放棄を行う際にも同様に注意が必要となります。

異なる点があるとするならば、未成年者と親権者が共に遺産分割協議を行う場合(互いに当事者となる場合)には必ず特別代理人の選任が必要となりますが、相続放棄の場合には必要になるケースとならないケースがあることです。


それは―
未成年者と親権者が互いに相続放棄を行う場合です。


このケースのみ、特別代理人の選任は要しません。


その他に例えば次のようなケースが考えられますが―

  • 親権者のみが相続放棄をする場合
  • 未成年者のみが相続放棄をする場合
  • 複数いる未成年者の1人だけが相続放棄をする場合


このいずれのケースについてもも特別代理人の選任が必要となります。
その理由は問われません。

たとえ子が父の借金を負わないように、母だけがその借金を被るための相続放棄手続であっても同様です。


相続放棄という行為自体が未成年者にとって不利益になるかどうかで判断するわけではなく、形式上、利益相反にあたるかどうかを判断されるためです。


難しいんですよ―
この辺は本当に。


特に相続放棄は適切かつ迅速な判断が必要になってきますので、未成年者の絡むものは司法書士等の専門家に相談されることをお勧めします。


4.未成年と相続と民法改正と、まとめ

民法の改正により、そう遠くない未来に18歳以上の者が法律行為を行うことができるようになります。


とは言え、成人年齢の引き下げが行われるだけであり、"未成年"という概念自体がなくなるわけではありません。

今後も未成年者が絡む相続や相続放棄手続には変わらぬ注意が必要です。


加えて、これまで単独で法律行為ができなかった年代が、いきなり法律行為を行うことになりますので、最初のうちは戸惑いや、何らかのトラブルも予想されます。

場合によってはちょっとした法律の微調整が入るかもしれません―


この件については、継続的に動向を追っていきますので、新しい情報や注意点等あれば改めてご報告するようにします。


それではこの辺で。