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利益相反行為にご注意を


いつもお読みいただきありがとうございます。



少し前の話になってしまいますが、またまたJアラートの誤送信が話題になっていましたね。
僕のスマホはいたって静かでしたので、Twitterのトレンド入りするまでは気付いてすらいませんでした(どうやら東京都江東区やその隣接区にのみエリアメールが送られたよう...)。

なにせミサイルや地震、津波等の警告を主とする内容であるため、それが間違いであってくれた方が絶対に良いとは言えます。
ただし、あまりにもミスが続き過ぎると、もしもの時の緊張感が薄れてしまわないか心配ですよね。
考えたくはありませんが、おそらくは数分、いや、数秒単位の判断になるでしょうから―



さて、そろそろ本題に入りましょう。

今回は当ブログの中でも何度か軽く触れたような気がしますが(?)、『利益相反行為(りえきそうはんこうい)』というものについてのお話しです。

日常において頻繁に起こることではありませんが、そんなに珍しいものでもありません。
会社関係が多いと言えますが、個人であっても起こり得るものなのです。


知っていて損することはありませんから、是非、ご覧になってみてはいかがでしょう?




<目 次>

1.利益相反行為とは

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そもそも"利益相反行為"とはなんなのでしょう?


ちなみに会社と取締役間で利益相反が生じている状態を"利益相反取引"とも言います。
あるいはこれらの違いに悩んでいる方がいたのだとしたら、その答えはわりと簡単です。

利益相反行為は民法上、利益相反取引は会社法上で明記された一定の取引のことを言うだけですから。
両者共に"利益相反が生じている"という根幹部分は同じであり、大まかにいうとその対象が個人なのか、または法人と役員なのかの違いなのです。


それ自体は知ってさえいれば、そんなに分かりにくいものではないでしょう。
むしろ分かりにくいのは"利益相反が生じている"という状態そのものなのです。


さて、その意味とは―

対象となる行為の結果、一方にとっては利益となると同時に、もう一方にとっては不利益になってしまう行為



僕が司法書士として利益相反行為を真面目に答えるとすると、どうしてもこんな感じになってしまいます...
本来、中立であるべき人が、片方だけに利益を出してしまう行為とでも言いましょうか―


でもこれだけではあまりにも分かりにくいというか、イメージしにくいですよね。


我ながらそう思います...


そこで、まずどのような行為が利益相反行為に該当するのかを検証することにより、具体的にイメージするところから始めることにしましょう。



2.利益相反行為の判断基準及びその対応について

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利益相反行為はいつでも、誰にでも起こるものではありません。


あくまで"利益相反行為"が問題となるのは、その一方に相応の権限と立場がある場合に限られます。
やろうと思えば相手方の利益を害すことのできる立場とでも言いましょうか―


具体的に言うと、"親権者と未成年の子""後見人と被後見人"等の間柄において問題になることがあるわけです。
※会社と取締役間の"利益相反取引"については、近く別記事にてご紹介させていただきます。


イメージできますでしょうか?


あくまで理屈上ではありますが、親権者は未成年の子の財産を管理したり、代理して法律行為を行うことのできる立場にあります。
また、それは後見人と被後見人の関係性においても同様です。


いわゆる、"やろうと思えば一方(親権者や後見人)が相手方(未成年者や被後見人)の利益を害すことのできる立場"にあり、このような間柄において、"ある一定の行為"を行う場合には、それが利益相反行為に該当してしまう可能性があるというわけなんです。




2-1.利益相反行為に該当する行為(親権者~未成年の子)

上記の"ある一定の行為"について、これ以上あれこれ難しく論じるよりは、シンプルに具体例を挙げる方が断然理解し易いと思われます。

尚、これ以降、親権者と未成年の子との間の利益相反行為を中心にご説明していきますが、後見人等の場合も基本的には同様です。


それでは以下、ご確認ください―



<利益相反行為に該当するケース>

  • ①親権者及び未成年の子が共同相続人である場合の遺産分割協議
    (※親権者も共同相続人になる場合)
  • ②親権者が複数人の未成年の子を代理して行う遺産分割協議
    (※親権者が共同相続人にならない場合)
  • ③親権者が、自身については相続しつつ、未成年の子については家庭裁判所で相続放棄を行うこと
  • ④親権者が、自身の借金(債務)のために、未成年の子所有の不動産に抵当権を設定すること
  • ⑤親権者が、自身の借金(債務)のために、未成年の子を連帯保証人にすること
  • ⑥親権者の財産を未成年者の子に有償で譲渡する行為

続いてこれらの意味について簡単に検証してみましょう。


まずその①について―
実現しようとする内容如何にかかわらず、親権者とその未成年の子が遺産分割協議を行うこと自体が利益相反行為となってしまいます。内容ではなく行為そのものが問題視されるためです。

続いて②について―
たとえ親権者が相続人にはならないケースであっても、親権者が複数の未成年の子をまとめて代理し遺産分割協議を行うことはできません。それぞれの未成年の子について個別の判断を要するという趣旨のものです。そのため、そのような行為は、実現する内容いかんにかかわらず利益相反行為に該当してしまいます。

③について―
ケースとしては少ないでしょうが、親権者については相続し、未成年の子については家庭裁判所で相続放棄を行うという行為は、その理由を問わず利益相反行為に該当してしまいます。

④について―
これはたとえ未成年の子のための借金(債務)であったとしても、親権者名義の債務である以上は問答無用で利益相反行為に該当してしまうという趣旨のものです。

⑤について―
あまり説明の必要はないでしょうが、他と同様、その理由は問われません。

⑥について―
これについても他と同様、その行為自体が問題となってしまいます。




2-2.利益相反行為に該当しない行為(親権者~未成年の子)

2-1の事例と似通ってはいても、実際には利益相反行為に該当しない行為も存在します。
これらを比べてみれば、とあるポイントが見えてくることと思われます。


具体的なところで言うと―



<利益相反に該当しないケース>

  • 未成年の子1人のみが相続する場合で、親権者がそれを代理して行う遺産分割協議
  • 親権者と未成年の子が共に家庭裁判所で行う相続放棄
    (※親権者が事前に相続放棄を行っている場合も利益相反行為には該当しない。)
  • ③親権者が未成年の子の借金(債務)のために、未成年の子の不動産に抵当権を設定する行為
  • ④親権者が未成年の子に対して行う贈与
  • ⑤親権者と未成年の子が共有している不動産を売却する行為



これらはいずれも利益相反行為には該当しません。
2-1の事例と比べると僅かな違いしかないように思えるかもしれませんが、利益相反行為を語る上では、これが結構大きな違いになるのです―

ここで利益相反行為か否かを判断するポイントを整理してみることにしましょう。



<ポイント>

遺産分割協議の場合は、まず親権者と未成年の子が共に相続人なっているかどうかが大きなポイントとなる。仮になっている場合は、問答無用で利益相反行為に該当する(2-1の①のケース)。
また、親権者が相続人になっていない場合(未成年者のみが相続人)であっても、対象となる未成年の子が複数人いる場合には、親権者が、そのすべての未成年の子を代理することは利益相反行為に該当してしまう(2-1の②のケース)。

尚、いずれのケースについても、たとえ未成年の子に一方的な有利な内容の遺産分割協議であったとしても結論は覆らない。これは、あくまで結果よりもその行為自体(遺産分割協議)が利益相反行為と判断されるためである。そのため、遺産分割協議を行う必要のない相続手続(法定相続等)においては、元より利益相反行為を考慮する必要はない。

未成年の子が所有(または共有)する不動産に抵当権を設定する行為は、その外形が重要となる。遺産分割協議の場合も同様であるが、未成年の子の利益を保護することが最大の目的となるため、外形上、未成年の子に不利益な場合(債務者が親権者となる場合等)は利益相反に該当し、そうでない場合(債務者が未成年の子となる場合等)は該当しない旨の判断がなされる。

その他、親権者が未成年の子に行う負担付ではない贈与は、不利益な点が生じる恐れが少ないため利益相反行為には該当しない。また、共有不動産の売買についても利益相反にはならず、親権者が未成年の子を代理して通常通りに不動産売買を行うことが可能である。




どうでしょう?
ポイントは分かったとしても、まだまだ根本的な部分の「なぜ?」が解消されない方も多いのではないでしょうか。

単純に、これは利益相反で、これは利益相反ではない、と、記憶してしまうのもいいかもしれませんが、より理解を深めたいのであれば、次項をご覧になってみてください("判例"の話になってしまいますので、ちょっと難しいかもしれませんが...)。



2-3.利益相反行為についての判例

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ここで利益相反行為についての判例も少しご紹介します。


利益相反行為であるかどうかは、行為の外形から客観的に判断すべきであって、親権者の意図や動機から判断すべきではない(最判昭48.4.24)



非常に有名でいて、かつ、利益相反行為を理解する上で非常に重要な判例です。
2-2でも少し触れていますが、利益相反行為を判断する上でのポイントは行為の外形です。

ようするに、動機や意図は一切考慮されないということです。
あくまで客観的に見て利益相反か否かが判断されるという趣旨ですね。


例えば、何ら未成年者の子を害する目的でなかったとしても、むしろもっぱら未成年の子のために行っていたとしても、外形上、利益相反行為に該当する以上はそうみなされてしまうのです。


これは個別判断の困難さから導かれたものなのでしょう―


例えば、実際の手続を行う法務局や銀行等に判断できるのはあくまで行為の外形だけでしょう。
仮に親権者が『こういう意図なんだ!』と、説明したところでそれを鵜呑みにするわけにはいきません。
なにせ、それが書類等から読み取れるわけではありませんから...

仮にそれを認めたとすると、未成年者が不利益を受けてしまう事態が増えてしまうこともそうですが、取引自体が混乱しかねません。


結果、利益相反行為か否かは、意図や動機は加味せず、あくまでその行為の外形のみによって判断されるという結論に至ったものです。



ケース的には少ないでしょうが、その他の判例もご紹介致します。

利益相反行為は、財産上の行為において問題となるのが通常であるが、身分上の行為についても本条は適用され得る。親権者が自己の15歳未満の非嫡出子を自分の養子にする場合などである(昭23.11.30-3186号)

未成年の子の身分行為について触れたものです。
趣旨的なところでいうと、財産上の行為同様、未成年の子の利益を最大限保護するための規定です。

また、同じく珍しいケースになりますが、利益相反行為は相手方のない単独行為にも適用されることがあります。

諸々、ご注意を。



2-4.利益相反行為に該当してしまった場合はどうなるのか?

利益相反行為に該当してしまったからと言って、必ずしも目的が達成できないわけではありません。

実現を希望する内容如何にもよりますが、そこに問題がなければある手続を行うことによってそれが可能となります。

まずは、お馴染みの民法の条文から―

第826条<利益相反行為>
① 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
② 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

これを簡単に説明すると―


『目的となる行為は利益相反行為に該当するため、本来、代理人となるべく親権者には代理をさせない。代りに家庭裁判所で"特別代理人"を選任してもらいなさい。また、未成年の子が複数人いる場合には、それぞれについて特別代理人の選任が必要であり、親権者が未成年の子全員の代理人になれるわけではない。』


と、いう事なのです。


尚、当ブログ内容と重複する部分もありますが、"特別代理人"についての詳細は次の記事を参照ください。


「特別代理人の選任手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/succession/post_30/


利益相反行為に該当したら特別代理人を選任―
ある意味シンプルな結論ですが、知らなければその判断もできません。

不動産の名義変更時や預金の解凍手続時に法務局や銀行から指摘された経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?

それがこれなんです。



3.まとめ

利益相反行為についての説明でしたが、どうだったでしょう?


まあ、おそらくかなり分かりにくかったものと思われます。
ただ、これで簡単なさわり部分でしかないのです...

この辺は難しいんです本当に。

近く、会社と取締役間の"利益相反取引"についてのブログ記事をお送りさせていただく予定ですが、これも変わらず難しい...

興味のある方は是非そちらもご覧ください。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一