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債務整理支払督促は無視せず専門家にご相談を
いつもお読みいただきありがとうございます。
新元号の他の案が判明しましたね。
「令和(れいわ)」の他、「英弘(えいこう)」「久化(きゅうか)」「広至(こうし)」「万和(ばんな)」「万保(ばんぽう)」だったそうです。
響きだけなら"万保"も捨てがたいですが、それでもやはり令和がしっくりくるような気がしています。
中には今回の決定に対し、結構無茶な批判もあったようですが、"令"という文字自体は本来そんな悪い意味ばかりではないので、すぐに鎮静化するのではないでしょうか...
さて、そろそろ本題に入らせていただきます。
前回に引き続き"支払督促"の話になりますが、今回は支払督促を提起された側の注意点等を中心にお送りさせていただければと思っております。
<目 次>
- 1.裁判所から支払督促の書類が送られてきたら
1-1."裁判所からの書類は受け取らない"は通用しない
1-2.付郵便送達という手続
1-3.知らない会社名だからと言って放置しないこと
1-4.督促異議を前提に - 2.支払督促に対する時効の援用
2-1.催促異議の申立と消滅時効の援用
2-2.催促異議を出さないと時効は中断してしまう
2-3.債権回収会社の狙いは数打てば当たる理論 - 3.まとめ
1.裁判所から支払督促の書類が送られてきたら
まず支払督促手続の詳細等につきましては、前回のブログも参照してみてください。
それにより、より理解が深まると思われますので―
「支払督促を利用する前に確認しておきたいこと/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_88/
訴え提起する際には相応の注意が必要だった支払督促という手続ですが、逆に訴えを提起されてしまった場合には、どういった注意事項が生じるのでしょうか?
普通に考えて、あまり想像したくはない状況かもしれませんが、いまだ解決していない借金問題を抱えている方にとっては、是非とも把握していた方がよい情報と言えるでしょう。
1-1."裁判所からの書類は受け取らない"は通用しない
たまにそういった事例を目にすることがあります。
気持ちは分かります。
分かりますが、特に支払督促に関しては、それは最も取ってはいけない選択肢の内の一つなのです。
前回のブログでも書きましたが、支払督促という手続は、裁判所から送付されてくる支払督促の封筒が送達されてから2週間以内に異議が出なければそれに基づく強制執行すら可能になるものです。
簡易なだけで、その効果は通常訴訟と変わりありません。
で、あれば、元より裁判所から送付されてくる訴状等を受け取らなければ裁判手続は進まないのではないか(文面上では送達されてから2週間なので。)?
郵便物の受取を拒否し、送達できない状態にすればいいのではないか?
そう思われる方がいるかもしれません。
たしかにそれならば裁判所からの送達は実現されていないので、一見すると大丈夫なようにも―
ただし、もちろんそんなことはありません。
仮にそれがまかり通るとするならば、支払督促は制度として成り立たなくなってしまうでしょう。
考えてもみてください。
自分にとって都合の悪い書類を受け取らないだけで問題が解決するのならば、いったい誰が裁判所からの書類を好き好んで受け取ると言うのでしょう?
尚、そうした打算ではなく、単に裁判所からの書類が怖いから受け取らないというのも同様にお勧めしません。
なぜなら―
たとえ裁判所からの郵送物を受領拒否したとしても、一定の要件のもと、受け取ったとものとみなされる特殊な郵送手続があるからなんです。
1-2.付郵便送達という手続
あまり聞きなれないかもしれませんが、付郵便送達(ふゆうびんそうたつ)と呼ばれる手続があります。
端的に言うと―
それは、裁判所から発送された時点で、送達があった(支払督促を受け取った)ものとみなされる特殊な郵便方法なのです。
つまり、理由はどうであれ"郵送物の受領拒否"はあまり意味がないわけです。
そればかりか、どの時点で送達があったものか判別しにくいため、その後の手続でも後手にまわってしまうことも...
通常訴訟で用いられることの多い、この付郵便送達ですが、支払督促手続においても当然に適用が可能です。
尚、特殊な郵送方法としては、他に"公示送達(こうじそうたつ)"というものがあるのですが、これについては支払督促手続での適用はありません(使えません。)。
主に郵送物の受取拒否対策としての付郵便送達に対し、公示送達は、元より相手方を知ることができない場合や、相手方の住所・
ともあれ、デメリットしかありませんので、裁判所から送付されてくる支払督促は怖くてもしっかり受け取るべきと言えるでしょう。
1-3.知らない会社名だからと言って放置しないこと
聞いたことのない社名、心当たりのない社名からの催告書や支払督促だったからと言って、油断してはいけませんし、放置することなど論外です。
未解決の借金問題を抱えている場合や、誰かの保証人になったような経緯があるのであればなおのこと...
- 借金先は結構頻繁に変わります(もしくは変わったように見えます)
単に借金先の名称自体が変わることもあるでしょう。
また、借金の回収を専門の債権回収会社や弁護士法人(もしくは弁護士事務所)等に業務委託しているようなケースも多々あります。
尚、そのような場合は元の借金先からではなく、当該業務受託会社から直接諸々の書類が送られてくることになるでしょう。
その他、あなたの借金自体が転々と売却され、借金先が全く別の会社に代わっていることだってありますし、保証会社があなたの代わりに借金を支払い、その立替分の支払い(求償権と言います。)を求めているケースも多いのです。
昨今、色々な種類の特殊詐欺が横行しており、警戒する気持ちは十分に分かります。
とは言え、借金や保証債務に少しでも心当たりがあるのであれば、捨て置ける問題ではない可能性も大いにあるのです。
ちなみにそのような会社名は―
- 〇〇債権回収
- 〇〇信用保証
- 〇〇弁護士法人(もしくは弁護士事務所)
と、なっていることが多いです。
参考にしていただき、なるべく早めに借金の専門家に相談することをお薦めします。
どうか放置だけはしないよう...
1-4.督促異議を前提に
一番は支払督促を提起される前に専門家に相談し、いち早い借金問題の解決を図るべきです。
しかし、それができず、実際に支払督促が送達されてきてしまったら―
なるべく早めにご相談ください。
なにせ何もしなければ2週間で支払督促が確定してしまいます。
何かしらの事情ですぐにそれができないのであれば、催促異議を前提に動きましょう。
でなければ、主張する機会も設けられないまま裁判は終結してしまいます。
催促異議後、大半は通常訴訟に移行しますが、それでもある程度の時間は稼げます。
この辺はケースバイケースなので一概にこうと言えるものではありませんが、無為に支払督促を確定させてしまうことだけは絶対に避けるべきです。
詳しくは後述しますが、特に借金の時効が成立しているようなケースでは、催促異議を出す出さないで、殊の外、大きな違いが生じてしまいます。
本来払う必要のない借金が、時効が成立している借金が、ある種、復活する可能性もあるわけですから―
支払督促は無視しないこと、独力で動くよりもなるべく早めに専門家に相談すること、何よりそれが大事と言えるでしょう。
2.支払督促に対する時効の援用
以前からたまに目にしていましたが、特にここ数年増えてきたような印象があります。
それは―
時効が成立している借金に基づく支払督促手続です。
具体的には、最終の支払日から長期間(5~10年)が経過した借金(いわゆる時効期間の到来した借金です。)の回収手段に支払督促を用いているわけです。
そんなことができるのか?
そう思われる方も多いでしょう。
結論からすると、それ自体は全く問題ありません。
仮に時効期間が経過していたとしても、それだけで当然に時効が完成するわけではないのです。
あくまで、時効の完成にはそれに加えて消滅時効の援用が必要になります。
例えば、5年経ったから、10年経ったから、即時効ではなく、その上で消滅時効の援用しなければ"時効"という法律効果は何ら生じません。
消滅時効を援用していない借金は、ただの長期間放置した借金と同義なのです。
結果、消滅時効援用前であれば、上記のような借金に基づく支払督促手続も当然に可能となってくるわけです。
2-1.催促異議の申立と消滅時効の援用
もちろんそうでない場合でもお勧めしていますが、時効期間の経過した借金については特に催促異議を出すべきです。
確実に時効期間が経過している自信がなくとも、その可能性があるのであれば同様です。
と、言うよりかは、それ以外の選択肢はありません。
また、それと同時に消滅時効を援用することも忘れないようにしましょう(消滅時効を援用する旨の内容証明郵便を相手方に送付するのがベストです。)。
時効さえ完成すれば、その借金に関する問題はすべて解決です。
後に再び同じ借金で訴えられるようなことも起こりません。
尚、これらの手続に間違いがあってはいけませんので、独力ではなく、なるべく弁護士や司法書士等の専門家に依頼するようにして下さい。
もちろん、司法書士九九法務事務所でも、そうした手続の取扱いは可能です。
ではなぜ、催促異議をそんなに強く勧めるのか?
それにはある大きな理由があるからです。
"時効の中断"という言葉をご存知でしょうか?
時効の中断とは、時効の完成に向けてそれまで進んでいた(もしくは時効期間が到来していた)時計の針が止まり、また一から動き出すような状況とでもいいましょうか―
ともかく、非常にまずい状態になってしまうことがあるわけなんです。
2-2.催促異議を出さないと時効は中断してしまう
支払催促が確定してしまうと(支払異議を出さないと)、それによって"時効の中断"の効果が生じることになってしまいます。
結果―
たとえば、残り3ヵ月で時効だったものは、支払催促の確定時から改めて所定の時効期間を経過しない限り時効が完成しなくなってしまうのです。
いわゆる、時効の中断により、時計の針がスタート地点に戻ってしまうわけですね。
このように時効完成間近に支払督促や通常訴訟を提起されるケースは間々あります。
債権者側としても、できることなら時効の完成を阻止したいわけですから、それもそのはずと言ったところでしょう。
尚、このケースは、消滅時効の援用で逃げられるパターンではありませんが、適宜の対応が必要となってくるのは言わずもがなです。
それでも放置してしまい、後に多額の遅延損害金を請求されるような事態にならないよう注意しましょう。
注意事項はそればかりではありません。
既に時効期間は到来しているが、消滅時効を援用していない借金についても注意が必要です。
なんと、時効期間を満たしていたとしても、消滅時効の援用をしていない限りは、支払催促の確定により上記と同様時計の針がスタート地点に戻ってしまうのです。
たとえ借金の最終弁済日から10年以上が経過していたとしても、"時効の中断"の効果が発生してしまう―
支払催促が確定してしまった以上は、改めての消滅時効の援用もできません。
もはや、後の祭り状態なわけです...
本来であれば消滅時効を援用することで免れたいたはずの借金が、法的にも完全に復活してしまうわけです。
2-3.債権回収会社の狙いは数打てば当たる理論
長年放置された借金(不良債権)は、転々と売られていくことが多いです。
そしてそれは、普通では価値がないようにも思える、既に時効期間が到来したような借金についても同様です。
イメージとしては、本来A社が持っていた借金の貸主としての権利をB社が買い、それを今度はC社が、そして最終的にはD社が買うといった具合...
転々としていくうちに、転売価格は安くなっていきます。
なにせ時効になっており回収が困難な不良債権なわけですから―
尚、上記でいうとD社の購入金額はあってないようなものでしょう。
たしかに借金の回収は難しいかもしれませんが、回収できさえすれば大きな利益を望めるというわけです。
そして、おそらくは他の似たような債権も含めて大量にまとめ買いしているようなケースが多いと思われます(少なくとも僕ならばそうします)。
そして、片っ端から催促状を送るなり、支払督促を提起するなりすると―
もちろん、消滅時効を援用さえすれば簡単に免れられるものです。
そのため、購入金額は安くとも、訴訟費用等、経費の無駄なようにも思えるかもしれませんが、仮にそのうち僅か数件でも借金の回収できたとすれば...
十二分に元がとれてしまうというカラクリなのです。
支払督促が確定さえしてしまえば、時効で逃げられる恐れもありませんから―
状況的に当てはまる方については、特にご注意を。
3.まとめ
借りたお金はしっかり返す。
あくまでそれが前提です。
ですので、時効期間の到来した借金を回収しようとする動き自体をとやかく言うつもりは何らありません。
借金を返さない方が悪いのは事実ですから。
ただし、支払催促に対し支払異議を出すことも、消滅時効を援用することも、正当に認められた権利なのは間違いありません。
更なる状況悪化を防ぐ意味でも、支払催促は放置せず、なるべく早めに専門家にご相談ください。
では、今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一