取扱業務
各種相続手続について不在者財産管理人選任申立手続
例えば、弟が、妹が、他の相続人になるべきものが、行方不明で相続手続が進まない。
そんな悩みを解消する手続があります―
司法書士九九法務事務所では、一般的な司法書士が得意とする不動産登記手続だけではなく、不在者財産管理人選任申立手続等、家庭裁判所で行うような複雑な案件も得意としております。
加えて、司法書士本人が不在者財産管理人に選任された経験が数度ございますので、実際の実務上の観点からのアドバイスも可能です。
<目 次>
- 1.不在者財産管理人選任申立手続とは
1-1.どのようなケースで不在者財産管理人が選任されているのか
1-2.申立を行うべき家庭裁判所(管轄)
1-3.申立を行うことができる者
1-4.申立にあたっての必要書類 - 2.手続の流れ
- 3.費用・報酬
1.不在者財産管理人選任申立手続とは
不在者財産管理人選任申立手続とは、行方が分からなくなっている人(不在者)の代わりに、その財産を管理する者を家庭裁判所に選任してもらう手続です。
尚、その"不在者"の定義としては―
- 従来の住所または居所を去り、容易に帰来する見込みのない者
と、されています。
多少、この部分の判断が難しいかもしれません。
必ずしも生死不明であることを要しませんが、数週間前は連絡が取れたが、現時点では取れないような状況だと、これにはなかなか該当しません。
尚、行方不明期間についての明確な規定はありませんが、不在者として認められるには少なくとも1年以上は不在者の定義に当てはまる必要があると言えるでしょう。
その上で―
連絡が付かず、かつ、何処にいるのかも分からないことが必要であり、何処にいるか分からないが連絡だけは付いたり、居所は分かってるけれど単に連絡が付かなかったりするようなケースはこれに該当するものではありません。
仮にそのようなケースであった場合には、不在者財産管理人選任手続ではなく、また別の手続が必要になるとの理解でいて下さい。
1-1.どのようなケースで不在者財産管理人が選任されているのか
まず、具体的にどのようなケースで不在者の財産管理人が選任されているのかをご紹介します。
おそらくここから入った方が幾分イメージし易くなると思われますので―
- 1.相続手続(遺産分割協議等)を行う場合
相続が発生し相続人の中の一人に行方不明者がいるケースです。
遺言書が存在しない限り、相続手続は相続人全員で行う必要があるため、不在者の代わりに不在者の財産管理人がこれを行います。
おそらく最も多く不在者財産管理人が選任されているケースと言えるでしょう。 - 2.不動産の売却を行う場合
不在者も含めた共有不動産の売却時に利用されるケースです。
共有不動産は、他の共有者の関与なくしてその名義を変更することは叶いません。
そのため、不動産を売却する必要があるが、共有者が行方不明の場合などに用いられることがあります。 - 3.財産管理を行う場合
不在者所有の建物が老朽化して取り壊す必要があるが、財産を管理する者がいないようなケースです。 - 4.相続放棄を行う場合
相続が発生し、その結果、多額の負債を不在者が相続してしまう可能性がある場合に、代りに相続放棄を行うようなケースです。
以上のように、不在者財産管理人の選任手続は、必ずしも相続が絡まなければならないわけではありません(大半が相続絡みというだけです。)。
尚、上記の"遺産分割協議"、"相続放棄"、"不動産の売却"は法律上、重要な行為に該当するため、不在者財産管理人がそれらを代りに行う場合には、事前に『不在者財産管理人の権限外行為許可』を家庭裁判所からもらう必要がある点、注意が必要です。
1-2.申立を行うべき家庭裁判所(管轄)
不在者財産管理人選任申立手続は、家庭裁判所で行う手続です。
ただし、どこでも自由な裁判所に申立手続ができるわけではありません。
以下のように、予め申立先が決まっているのです―
- <原則>
不在者の住所又は居所を管轄する家庭裁判所 - <例外>
不在者の財産の所在地を管轄する家庭裁判所
被相続人(亡くなった方)の住所地を管轄する家庭裁判所ではありません。
あくまで不在者(行方不明者)の住所又は居所を管轄する家庭裁判所です。
最後に居所を確認できた場所と考えていただけると分かり易いかと思われます。
尚、例外については、不在者(行方不明者)の最後の居所が遠方であった場合などには、手続に不都合が生じる場合もあるため、財産の所在地(例えば不在者名義の不動産が存在する場所等)での申立も認められています。
1-3.申立を行うことができる者
裁判所の管轄同様、誰しもが申立人になれるわけではありません。
以下のように、これについても予め定められた規定があります。
- 申立人になれる者
1.利害関係人(不在者の配偶者や相続人にあたるもの、債権者等)
2.検察官
不在者に対して何らかの法的な利害関係を有する者と、国(検察官)が申立人になれるというイメージです。
尚、これについては事案に応じて個別に判断すべき点も多いため、多少曖昧な表記にはなってしまっております。
1-4.申立にあたっての必要書類
家庭裁判所に対する申立書の他、以下の書類等が必要となってきます。
ただし、これらはあくまで最低限必要になる書類と言うだけであり、事案に応じて追加書類が発生します。
その点、ご注意ください。
<必要書類>
- 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 不在者の戸籍の附票
- 財産管理人候補者の住民票又は戸籍の附票
※候補者を希望する場合のみ必要となります。 - 不在の事実を証する資料
※警察へ行った捜索願の受理証、宛先不明で戻ってきた郵送物の写し、その他、調査報告書等がこれにあたります。"これ"を提出しなければという、明確な規定がないのです。おそらく、本手続で最も苦戦する部分でしょう。事案ごとに適宜の判断が求められる部分ですので、不明点等につきましては別途お問い合わせ願います。 - 不在者の財産の疎明資料
※法務局で取得できる登記簿謄本(不動産登記事項証明書)や、預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等がこれにあたります。ただし、不在者の財産内容に応じて集めるべき書類ですので、もちろん人によって大きく異なってきます。 - 利害関係人からの申立ての場合は利害関係を証する資料
※戸籍謄本(全部事項証明書)、賃貸借契約書写し、金銭消費貸借契約書写し等
2.手続の流れ
司法書士九九法務事務所に不在者財産管理人の選任手続をご依頼いただいた際の手続の流れについてご説明致します。
- 面談もしくは訪問によるご相談
ご依頼者様とは司法書士が必ず一度は面談させていただきます。
法律上、我々司法書士に本人確認義務が課せられているという点もありますが、それ以前にメールや電話だけではどうしても伝わりにくい部分があるからです。
尚、その際、行方不明になった経緯や警察への捜索願の有無等を確認させていただきますので記憶を整理しておいて下さい。
また、申立てのきっかけになった手続の資料が手元にあればお持ち下さい(最初は資料なしに相談だけでも大丈夫です。)。 - 不在者財産管理人の選任手続に必要な書類の収集
不在者財産管理人の選任手続をするのに必要な、戸籍謄本、戸籍の附票などを収集します。
司法書士が取得することができない書類もありますので、適宜ご指示させていただきます。 - 申立書の作成
聴取した内容と取得した関係書類の情報を元に、家庭裁判所に提出する申立書等を作成致します。 - 家庭裁判所への申立て
裁判所書類作成者兼送達受取人として司法書士が裁判所に申し立てを行います(家庭裁判所で代理人になれるのは弁護士だけであり、他に一部の司法書士だけが書類作成者になることが認められています。税理士や行政書士などにはできない専門性の高い業務です。)。 - 不在者財産管理人の選任
不在者財産管理人が選任されれば、それ以降は同人との手続となります。
そのため手続上は業務終了となりますが、引き続きご相談いただいても結構です。
もちろん案件によっても異なりますが、手続の受任から家庭裁判所の申立まで、およそ1~2ヶ月であることが多いと言えます。
3.費用・報酬
こちらをご覧ください。
尚、行方不明者の絡む相続手続を題材にしたブログ記事もございますので、こちらも併せてご覧ください。
「相続人の中に不在者(行方不明者)がいる場合の相続手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_78/