平日9:00〜20:00(土日は要予約)

ブログ

会社・法人登記

認定特定創業支援等事業って何?~登録免許税が安くなる?~


いつもお読みいただきありがとうございます。


さて、今回は会社設立時に利用できる、ある制度についてのお話しです。
基本的には万人にとって良い制度だと思っています(面倒だと思われるような側面もありますが…)。
また、一定の条件に当てはまる方には、かなり良い制度になり得るのかも⁉


しかしながら、世間での周知度はイマイチのようです…
実際に僕が直接関わった案件も数える程です。


そのため、周知の意味合いも含めブログ記事にしてみた次第です。
はたして、それはどういう制度なのでしょうかー



1.認定特定創業支援等事業とは?

まあ、何と言うかいきなり頭が痛くなりそうな固い制度名ではありますが、簡単に言うと、これから新規に会社を設立する方や、設立間もない方に対する、国や自治体のサポート事業ですね。
尚、当該制度は、国の認定を受けた自治体や商工会議所、民間事業者などと協力して実施されています(川口市の場合ですと、公益財団法人川口産業振興公社、川口商工会議所、鳩ヶ谷商工会がこれに該当します。)。


ともあれ、こういう国や自治体の制度に対して、いつも思うのですが、とにかく制度名が良くないですよね。
固すぎるし、ぱっと見、なんのことやら分からない…


ただし、中身は良いものですよ。
新規の創業者(会社経営者)を応援し、強いては日本の産業競争力を高めていこうという大きな志のある制度ですので。


また、その輪も着実に大きくなっているそうです。


昨年末(令和4年12月)時点で、なんと1,459もの市区町村が認定されているとのこと。
ちなみに、司法書士九九法務事務所が所在する川口市はもちろんのこと、蕨市や戸田市についてもその対象となっています。
もっと言えば、埼玉県はすべての市町村で認定されているそうです(素晴らしいですね。)。


いわゆる、埼玉県で新たに起業する場合、その本店所在地がどの市町村であっても、認定特定創業支援等事業のサポートを受けられることを意味するわけです。


では、具体的にどういったメリットがあるのでしょうか?




1-1.具体的なメリットは?

志は高くとも、メリットがなければわざわざ当該制度を利用する方はいないでしょう。
次項にてご説明しますが、特定創業支援事業による支援を受けた証明書を受け取るにはそこそこの手間がかかりますので。

また、メリットは幾つかあるのですが、まずはどの創業者(会社経営者)にとってもメリットになり得る部分をご紹介します。


会社設立時の登録免許税が半額に

これだけも利用する価値は十分にあると思います。
本来、会社の設立登記時には、管轄となる法務局に対して以下の登録免許税を納付する必要があります。
実費ですねいわゆる。


株式会社 ⇒ 登録免許税 金15万円
合同会社 ⇒ 登録免許税 金6万円


これが優遇処置を受けることによって…


株式会社 ⇒ 登録免許税 金7万5,000円
合同会社 ⇒ 登録免許税 金3万円
※合名、合資会社についても同様に半額になります(6万円⇒3万円)。


特に株式会社の場合にはメリットが大きいですよね。
何かとお金のかかる会社設立時に7万5,000円もの実費を浮かせられるのですからー


その他のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
もちろん、すべての方が対象になるわけではないでしょうが、当てはまる方にとっては大きなメリットになるかと。


・創業関連保証の特例を受けられる

※無担保、第三者保証人なしの創業関連保証が、事業開始の6か月前から利用可能になります(通常は創業2カ月前)。
別途、審査を受ける必要有。


・日本政策金融公庫の融資制度の要件緩和

自己資金要件の緩和
日本政策金融公庫の新創業融資を申し込む際、本来は融資額の10分の1以上の自己資金が必要になるところ、特定創業支援事業による支援を受けた証明書を提出することで、自己資金要件を満たしているものとみなされます。
ようするに、融資を受けやすくなるわけです。
もちろん、審査は別途存在しますが。

日本政策金融公庫の新規開業支援資金の貸付利率引き下げ
シンプルに日本政策金融公庫の新規開業資金融資を受ける際の利率引き下げ対象になれるわけです。
ただし、あくまで対象であり、別途、審査を受ける必要はあります。 



と、まあ、こんな感じなのです。
創業融資等を受ける方、もしくは検討されている方にとっては、かなり有益な、そうでない方にとっても相応に有益な制度なのです。

では、最後にどうすれば当該制度の対象になれるのかをご説明致します。



1-2.特定創業支援事業による支援を受けたことの証明書とは?

具体的には、『特定創業支援事業による支援を受けたことの証明書』を提出することによって、上記でご説明した各種恩恵を受けることが可能になります。
設立登記の場合ですと、実際にこの証明書の原本を登記申請時に法務局に提出するわけです。


ちなみに、かなり専門的な話しになってしまいますが、この『特定創業支援事業による支援を受けたことの証明書』による登録免許税軽減の根拠条文は、租税特別措置法第80条第2項第1号となります。
結果、登録免許税が半額で済むと…



では、何をすれば当該証明書の交付を受けられるのか?



セミナーの受講や窓口相談で相談を行う感じですね。
ようするにお勉強です。
それを決められた期間に決められた回数受講すると…

対象となる市区町村によって多少異なってくるかもしれませんが、概ね以下のような内容です。


特定創業支援等事業を1ケ月以上、かつ、4回以上利用し、「経営」、「財務」、「人材育成」、「販路開拓」の4分野の事業経営に必要な知識を習得した方に「支援証明書」が自治体から発行される。


まあ、何と言うか、大変と言えば大変でしょうね。
相応に時間も取られることでしょう。
ただし、制度趣旨からすれば当然のことかと思われます。

これによって、会社創業の基礎知識やビジネスモデルの構築、資金計画等々、着実に創業することができるよう適切な支援を受け、日本の産業競争力を高めていこうというものなのですから。



2.まとめ

さて、今回は特定創業支援等事業についてのお話しでした。
実際、良い制度だと思いませんか?
かなりお得かと。
また、そうでなくとも、単純に創業についての知識等が得られるだけでも十分な価値はあるのではないでしょうか。

とは言え、会社の設立手続を急いでいる方には、あまり向かない制度かもしれません。
(セミナー等の受講期間がありますからね。)
私的な感覚からすると、会社設立の登記業務は急がれている方が特に多い印象ですので。

その点、ご注意いただき、当該制度の利用をお考えの場合は、早めの始動を心掛けていただければ―


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一