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会社・法人登記

会社(法人)の役員等の氏名につき併記可能な旧氏について


いつもお読みいただきありがとうございます。


さて、今回は会社役員を旧姓で登記する際のお話しです。
まあ、厳密には併記になりますが…

時代も時代なので、役員を旧姓で登記できること自体は当たり前のようにも思えますが、はたしてその実態は??



1.実はこれまでも旧氏の併記は可能でした

そもそも、旧氏のみでの登記はできず、併記という形が可能になったのが約8年ぐらい前の話しでした。
とは言え、これ自体、知らなかった方も多いのではないでしょうか?

イメージとしては、以下のような感じです。

取締役 川口花子(蕨花子)


蕨花子さんが結婚して、川口花子さんに氏を変更したケースですね。
旧氏がカッコの中に表記されるわけです。

相応の需要はあると思うのですが、実際に僕自身が担当した登記件数は僅かですし、他所で登記されているものを目にする機会も少なかったように思えます。


正直、これまでは使い難い点があったので、少なからずそれが影響していたのかもしれません。
具体的には、次のように旧姓の併記を法務局に申出をできるタイミングが限られてしまっていたのです。


  • 会社設立の登記申請時
  • 役員等の就任の登記申請時(重任含む)
  • 婚姻後、氏の変更登記申請時


ようするに、任意のタイミングで旧姓の併記を申出ですることができなかったと…
そのため、これまでは上記のタイミングを逃してしまうと、役員の任期満了を待つか、いったん辞任等を行い再度就任する他ないという状況に陥ってしまっていたわけなのです。


昨今、ほとんどの株式会社の役員任期は10年です。
合同会社に至っては役員の任期という概念自体がありません。


結果、当該制度が利用される機会は少なくなってしまったというのが真相に近いのではないでしょうか?
(単に制度の認知度の問題かもしれませんが…)


それが、昨年の令和4年9日1日から少しだけ使い易くなっています。




2.併記できる旧氏の範囲と併記できるタイミングが変更に

ちなみに、以前は併記できる旧氏は、なぜか「婚姻前の氏」に限られていました。
離婚後婚姻中の旧氏」養子縁組前の旧氏」を併記することができなかったのです。
今回の改正によりこれらが可能になったと…


むしろ、趣旨からすれば、最初から併記可能で良かったのではないかな?とも思いますが、色々事情があったのでしょうね。
尚、登記できる旧氏の範囲が広がったのはいいですが、「併記」である点は従前どおりです。


現行においても、「婚姻前の旧氏」や「離婚後婚姻中の旧氏」、「養子縁組前の旧氏」だけを単独で登記することはできません。
あくまで「併記」ですので、その点はご注意ください。



また、もう一つの変更点は、そのタイミングです。
既述のとおり、以前は上記でご説明したタイミングに限られていましたが、今回の改正により「いつでも」旧氏を併記することができるようになりました。



これは良い改正ですね。
グッと利便性が増したような気がします。
何かしらの登記時でも、それ以外のタイミングでの申出も可能となりましたから。

尚、登記申請時以外で申出を行う場合は、以下の書類を法務局に提出することになるそうです。

https://www.moj.go.jp/content/001379359.pdf


お恥ずかしながら、今のところ旧氏併記申出書を提出したことがないので、細かい点があやふやな部分があるのですが、申出だけなら登録免許税は発生しないのでは?と思っています。
登記申請ではありませんからね。
(この辺りについては、経験次第、追記致しますので、参考程度にしていただけると幸いです。)


では、最後に旧氏を利用するメリット等についてご紹介しますね。




3.旧氏を併記する理由

なんとなく旧氏を併記しておきたいという方は、そんなに多くはないと思います。
では、なぜこのような制度が存在するのか?


端的に言えば、一部の方にとっても相応のメリットが生じるからなのです。


尚、旧氏の併記については、何も会社法人登記に限られたものではありません。
住民票やマイナンバーカード、運転免許証等にも旧氏を併記できるようになっているのをご存じでしたか?


旧氏で仕事をしたいという世間的なニーズの高まりですねいわゆる。
政府が進める女性活躍推進の一環と言えるでしょう。


また、これにより営業活動もし易くなる面があるかと思います。
ただ、反面、実生活ではまだまだこれからでしょうね。

現段階ではすべての銀行や保険会社などで旧氏を使用できるわけではありませんから。
おそらく、その辺がもっと進めば当該制度の認知度も上がり、利用者が増えていくのではないでしょうかー



4.まとめ

さて、今回は会社(法人)の役員等の氏名について、併記可能な旧氏についてのお話しでした。

ちなみにこれは、会社法人登記での話しであり、不動産登記については適用がありません。
ようするに不動産登記では旧氏の併記が認められていないのです。


なぜ??


そう思う方も多いかもしれませんね。
私的には、旧氏併記の適用がないことに違和感はありません。
そもそも登記の趣旨が異なりますから。

不動産の登記は、現況の権利を公示すると共に、取引の安全を保護するものです。
ここに自由度を高めるのは余計な混乱を招きかねないとー
(ただ、数年後にどうなっているかは分かりませんが…)


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一