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会社・法人登記合同会社設立時の払込証明は領収書で大丈夫?
いつもお読みいただきありがとうございます。
盛り上がっていますねラグビー日本代表。
いまいちルールが分からなくても、何となく見入ってしまうパワーがあると言うか何と言うか...
代表チーム以外でも似たような盛り上がりを見せれるようなら、今後、ラグビーは国内スポーツとして大きな発展を遂げていくのでしょうが、その辺はどうなのでしょう?
他のスポーツにも言えることですが、とにかくナショナルチームを好む国民性ですからね日本は。
さて、今回は合同会社設立時の払込証明書をメインにお送りさせていただきます。
実のところ、知識としては持っていたのですが、つい最近までこの制度のことを失念しておりました。
急を要する案件等にはもってこいですので、是非、活用いただければと。
<目 次>
- 1.会社設立時の払込証明書とは?
1-1.発起人の個人口座への振込
1-2.払込があったことを証する書面の作成 - 2.合同会社の場合は異なる払込証明方法が許されている
2-1.領収書による資本金の払込証明
2-2.領収書で認められるが、資本金の払込手続自体は必須 - 3.まとめ
1.会社設立時の払込証明書とは?
そもそもの話です。
いったい何の払い込みを証明すると言うのでしょうか?
ちなみに会社設立時に払い込みを要するものは一つしかありません。
そう、"資本金"です。
株式会社や合同会社等、資本金を要する会社を設立する際には、設立時に必ず資本金の払い込みが必要であり、かつ、その払い込みがあったことを証する書類が必要になります。
※一般社団法人やNPO法人等には、元より資本金の概念がありません。そのため、払い込みの証明を行う必要は当然ありません。
こうやって文字にしてみると難解に思えるかもしれませんが、実際の手続はそんなに難しいものではありません。
手続上、面倒な部分はありますが、ある意味、ルールに従いその旨の書類を作成するだけです。
決して理解できないものではないでしょう。
1-1.発起人の個人口座への振込
では次に具体的な資本金の払込み方法についてですー
基本的には、発起人が発起人の個人口座へ資本金の振り込み(1人だけならば入金でも可)を行うことになります。
※当ブログでも何度か登場している"発起人"については、以下の記事を参照ください。
「発起人とは何ですか?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/faq/post_70/
資本金の振り込みは、発起人の代表的な業務の一つです。
尚、当然ながら資本金の振り込みは会社の設立前に行うものです。
そのため、発起人が個人であれば、その振込先は便宜、"発起人の個人口座"となるわけです。
会社の口座に入金するようなイメージもあるでしょうが、会社の設立が完了しない限り金融機関で法人口座を作成することはできないのです。
※法人口座開設には、設立登記完了後に法務局で取得できる会社謄本(登記事項証明書)が最低限必要となります。
1-2.払込があったことを証する書面の作成
上記の発起人が行う資本金の振り込みが完了すれば、後はそれを書面にするだけです。
とは言え、問題は以下の部分でしょうー
どうやって書面にするのか?
もっともな疑問でしょうね。
そんなに難しいものではないので、順を追ってご説明していきます。
発起人の個人口座への振り込み手続が終わったのであれば、それが入金されている通帳をご準備ください。
そして、該当箇所のコピーすると...
具体的には次の部分のコピーが必要になります。
- ①資本金を入金した通帳の表紙(ここは別にいらないという話もありますが、付けておいた方が無難です。)
- ②資本金を入金した通帳1ページ目(銀行の支店名や口座番号などが記載されているページです。ここは必須です。)
- ③資本金が入金されている部分のページ(すべてのページを提出する必要はありません。)
※①~③、すべて見開きでコピーください。
以上、3枚のコピー(スキャンしたPDFデータでも可ですが、原則、写真は不可とされています。)を次の書類と合綴(契印を忘れずに。)すれば完成です。
それが、"払込があったことを証する書面"になります。
面倒と言えば面倒でしょうが、簡単と言えば簡単ではないでしょうか?
現物出資などは少し異なりますが、一般的な株式会社の払込証明は概ねこんな感じです。
尚、一部余談になってしまいますが、昔はもっと大変でした...
複雑だったわけではないのですが、通帳の写し等ではなく、金融機関そのものから、とある証明を受ける必要があったからです。
その名も、"払込金保管証明書"。
端的に言えば、金融機関が資本金に相当する出資の払込が現実になされていることを証明する書類です。
もちろん、手数料もかかれば、銀行の審査も行われます。
そのため、わりと時間がかかりますし(1~2週間程度だったと記憶しております。)、銀行の別段口座に保管されてしまうため、設立登記が完了した後でなければそれを引き出すことができません。
結果、少なくとも出資金を振り込んでから2~3週間は資本金を寝かせておく必要が生じると...
尚、この"払込金保管証明書"ですが、平成18年の法改正に伴い一部撤廃されました。
簡単に言うと、上記のような通帳の写しと会社作成の証明書を合綴するパターンでOKということになったわけです(払込金保管証明書では手続ができないわけではありません。あくまで通帳の写しでもよいという趣旨です。)。
ただし、ケースとしては少ないでしょうが、募集設立(※1)の場合は、会社設立に際し、引き続き払込金保管証明書の添付が要求されます。
※1 募集設立:会社設立時に発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りについては、発起人以外から引受人を募集して設立する方法
ちなみに、一般的な会社設立方法(発行する株式の全部を発起人だけで引き受けて設立する方法)のことを募集設立に対して"発起設立"と呼んだりもします。
2.合同会社の場合は異なる払込証明方法が許されている
ここでようやっと本題です。
資本金の払込証明方法の原則については、既述のとおりです。
以前に比べるとだいぶ楽にはなりましたが、それでも面倒に感じられる方は少なくないので?
通帳のコピーをわざわざ用意しなければなりませんし、急ぎの設立案件であれば、なおさらにそうでしょう。
また、それ以外にも、昨今は金融機関のペーパレス化が進んでおり、通帳が発行されていないようなケースも散見されます。
ちなみにネットバンクだからと言って、払込証明ができないわけではありません。
パソコン等より次の情報を出力できれば、手続を問題なく進めることが可能です。
- 金融機関名
- 支店名
- 預金種類
- 口座名義人名
- 払い込みがあった部分のページ情報
ただしー
僕自身には経験ありませんが、セキュリティー上の問題で必要な情報を出力できないネットバンクがあるとかないとか...
困ったものです。
とは言え、合同会社の場合はこうした事態を打破し、かつ、より迅速に手続を進めることのできる便利な方法があるのです。
2-1.領収書による資本金の払込証明
まずは当該書類の参考書式からー
見てのとおり領収書です。
もっと具体的に言うと、資本金の出資を行った合同会社の社員が、合同会社から貰う領収書です。
上記の場合ですと、資本金100万円の出資を行った結果ですね。
そうですー
合同会社の場合は、この領収書で"資本金の振込証明書"の代わりにすることができるわけです。
これがあれば、わざわざ通帳をコピーする必要もありません。
ネットバンクであっても安心な、なんとも便利な証明方法なのです。
ちなみに、これ、残念ながら株式会社の設立手続では認められておりません。
なぜ?
と、言われても多少困ります。
設立手続の際の出資金の払込みについて、銀行等の払込取扱機関で行わなければならないという規定が株式会社には存在しますが、合同会社には存在しないからとでも言いましょうか...
そんな単純な理由でしかありませんが、とにかく通帳の写しに代わり、代表社員が作成した出資金の領収書でも問題ないとされているわけです。
お急ぎの案件等には是非活用してみてはいかがでしょうか?
2-2.領収書で認められるが、資本金の払込手続自体は必須
最後にー
言うまでもないでしょうが、払い込みの領収書でそれに代えることができるというだけで、資本金の払込手続自体は必要です。
そうでないと、架空の資本金になってしまいますから...
あくまで法務局の手続上では、領収書でも"可"というだけの理解なのです。
決して資本金がいらないわけではありません。
仮に架空の出資金を計上するような事態になると、税務上の問題は元より、最悪は刑法に触れてしまうことも考えられます。
特に出資者が数名いる場合などにはトラブルになりかねませんのでご注意を。
3.まとめ
さて、今回は合同会社の払込証明書を中心にお送りさせていただきました。
多少、マニアックな部分ではありますが、便利な手続ですので今後とも活用していきたいものです。
他にも、今回のような便利系の手続等があれば(思い出せば)、順次ご紹介していきたいと思っています。
では次回をお楽しみに。
write by 司法書士尾形壮一