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会社・法人登記

代表取締役等住所非表示措置とは~社長の住所が登記されなくなった??~

いつもお読みいただきありがとうございます。


さて、今回は『代表取締役等住所非表示措置』についてのお話しです。
少し前に始まった制度なんですけど、なかなかブログを書く時間が確保できなくて…

遅ればせながらご紹介させていただきます!

代表取締役等住所非表示措置が設けられた背景

一言でいえば時代の流れですね。


このような制度が設けられるとは思いもしませんでした。
ただ、確かに以前から少なからず要望はありました。
実際に何度か顧客から相談されたことも…


頷ける部分は多々あります。


実は会社の代表取締役等は、個人の住所が筒抜けなんです。
具体的には、会社の登記簿(履歴事項全部証明書等)に住所・氏名が登記され、手続き上、手数料さえ支払えばそれを誰もが閲覧できる状態にあると…


これ、今までは当然のことでした。


ただし、インターネットやSNSの普及に伴い、「住所」という個人情報の価値に変化が生じることになりました。
結果、プライバシー侵害や、DV被害、ストーカー被害等もそうですが、過度な営業行為等の誘発、中には住所を公開することへの抵抗感からの起業の躊躇すような方もいらっしゃったようで、ちょっとした社会問題になってしまっていたわけですね。


そこでそうした諸々の問題を解消すべく、導入されたのが 「代表取締役等住所非表示措置」 なのです。

どのような制度なのか?

代表取締役等住所非表示措置とは、一定の要件の元、代表取締役等住所の一部を非表示にできる制度です。


なんとなくは想像できますが、これだけではなにぶんはっきりしない部分が多い印象ですね。
要件の詳細もそうですし、そもそも代表取締役『等』とは?

他にも該当者がいることが連想されます。
また、住所全体の非表示ではなく、一部??


それでは、それらを中心に紐解いていくことにしましょうー

対象者は具体的に誰になるのか?

まずはこの点からご説明致します。
一定の要件は細かいので、後にじっくりの方が入りやすいかと。


さて、代表取締役『等』とは?


具体的には、以下、3つの役職(役員)が対象となります。

  • 代表取締役
  • 代表執行役
  • 代表清算人

いわゆる、登記上、住所が登記されることになる役員ですね。


株式会社では、そもそも平の取締役や監査役、会計参与等、他の役員の住所は登記事項ではありません。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の対象にはならないわけです。


ちなみに、住所が登記される役員は他にもいます。
例えば、合同会社の代表社員や、一般社団法人や医療法人等の代表理事等がそれに該当します。


ようするに株式会社以外の法人の代表者達ですね。


これらの役員に対して、代表取締役等住所非表示措置の適用は無いのか?
当初、僕が抱いていた疑問です。
なにせこれらの人達は、上記の3つの役職(役員)には該当していませんから。


結論からするとー


代表取締役等住所非表示措置が適用される法人は、株式会社のみなのです。
そのため、現行法上、合同会社の役員(代表社員)住所を非表示にする方法は無いということになります。


『株式会社よりも透明性が重視される合同会社等には代表取締役等住所非表示措置が適用されない!』というのが一応の理由らしいですが、どうなんでしょうね…個人的にはしっくりきません。


しかしながら、どうこう言ったところで、現時点ではそうなってしまっているのが結論です。
その点、ご注意ください。


尚、代表執行役とは、委員会設置会社という形態をとった株式会社(実務上でも珍しいです。)の代表者であり、代表清算人とは、株式会社の解散及び清算業務を行う際に選任される清算会社の代表者となります。

住所のどの部分が非表示にできるのか?

住所全体が非表示になるわけではありません。
あくまでその一部です。


なぜかは…よく分かりません。
おそらくは特定できなければ良しという判断なのでしょうね。


具体的には、住所の内、行政区画以外の部分について非表示とすることができます。


例えばー

<本来の表記>
埼玉県川口市芝2-1-1 司法書士九九法務事務所

<非表示を希望すると>
埼玉県川口市 司法書士九九法務事務所

と、言うようなイメージです。
都内なら、東京都〇〇区までの表示になるわけです。


まあ、確かに特定できないので目的は達成できそうですが、どうせなら住所のすべてを非表示にできなかったのかな?とも思ってしまいますね。

一定の要件とは?

この辺が分かり難いんですよね…
僕自身も理解するのに苦労しちゃいました。


まず一つ言えることは、いつでもどんな条件でも代表取締役等住所非表示措置を利用できるわけではありません。
要件が2つあり、そのいずれもを満たす必要があるわけです。

<要件①>

  • 登記の申請と同時に申し出ること

なんと、そうなのです。
仮に『なんて良い制度だ。すぐに使いたい!』と思っても、常に利用できるわけではないのです。


加えて、同時に行う登記の種類も無制限ではありません。
ここにも制限がかかってしまうと…


あくまで同時に行う登記は、~代表取締役等の住所が登記すべき事項に含まれる登記の申請時に限る~』、と、されています。


思いつく限りでは、それに該当する登記申請は、代表取締役の新規就任や重任』、もしくは、『代表取締役の住所変更』または『管轄外本店移転』の登記申請時ぐらいのものでしょうか(意外と限定されてしまうのです。)…

尚、管轄内本店移転(埼玉県内の本店移転等)登記時は、これに該当しません。
他の役員、例えば平の取締役や監査役のみの役員変更登記時でもダメです。


ちなみに、実際にご相談を受けた案件でも、残念ながらこの要件に当てはまらなかったため、次の機会に持ち越したことがありました。
不満というわけではありませんが、ちょっとどうなのかな?と、思う部分ではありますね。

<要件②>

  • 特有の添付書類を提出すること

具体的には以下の書類の提出を求められることになります。

  1. 本店所在場所における実在性を証する書面
  2. 代表取締役の住所等を証する書面
  3. 実質的支配者の本人特定事項を証する書面

分かり難いと思いますので、個別にご説明していきます。


尚、対象となる会社が上場会社の場合は、じゃっかん書類が異なります。
ちなみに、株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面(金融商品取引所のホームページの写し等)がそれに該当します。


ややこしくなってしまうので、それとは分けてご説明しますね。
そのため、これ以下は非上場会社(一般的な会社)の説明であると理解ください。


まず、『本店所在場所における実在性を証する書面』についてです。


ようは対象となる会社が本当に存在しているかを証明すればいいだけです。
どうやって??と思う方もいるかもしれませんが、そんなに難しくはありません(面倒ではあります。)。


ちなみに、その方法は2つあります。
端的に言えば、郵送と資格者による現認ですね。


対象となる会社に宛てて書面を送付し、その到着を証する書類を登記申請時に添付すればいいわけです。
そのため、通常郵便ではダメです。
到着を証明できませんから…

あくまで株式会社が受取人として記載された書面が、その本店所在地に送付されたことを証明する必要があります。



【内容証明郵便+郵送物受領書】



これが答えです。
ただし、配達証明書又は郵便物受領書に記載された株式会社の商号又は本店所在地が登記記録と一致することがマストです。


続いて、『代表取締役の住所等を証する書面』についてです。


これはシンプルです。
公的に住所を証明すればいいわけですから、以下の3点のいずれかになるでしょう。

  1. 住民票
  2. 戸籍の附票
  3. 印鑑証明書

尚、代表取締役の住所変更時に当該制度を適用する場合は、住民票または戸籍の附票が良いと思います。
住所移転時期も明確になりますからね。

ちなみに、運転免許証やマイナンバーカードの写しを添付し、それに原本証明を行う方法も考えられますが、僕自身まだ試したことこがないので、ここでは割愛させていただきます(どうなんでしょうね?できるのかな??)。

最後に、実質的支配者の本人特定事項を証する書面』についてです。


これが本当に分かり難いと思います。
そもそも実質的支配者自体に聞き覚えがないと思いますので。

そのため、まずは株式会社における実質的支配者について簡単にご説明することにします。


実質的支配者とは、対象となる会社の経営権を実質的に支配できる個人を指します。
ようするに株をたくさん持ってる人のことです。


具体的にはー

  1. 会社の議決権総数の50%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人
  2. 1に該当する者がいない場合は、会社の議決権総数の25%を超える議決権を直接又は間接に有する自然人

この実質的支配者に該当する者につき、一定の書類等の提出を求められるわけです。

端的に言えば、僕ら司法書士や司法書士法人がそれに該当する書類を作成すればいい感じです。
もしくは、公証役場ですかね。

法務省では、次のような説明がされています。

・登記の申請を受任した資格者代理人が犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)の規定に基づき確認を行った実質的支配者の本人特定事項に関する記録の写し。ただし、代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請の日の属する年度又はその前年度に認証を受けたものに限ります。また、記載事項として、実質的支配者の氏名、住居及び生年月日が必要となります。
・実質的支配者の本人特定事項についての供述を記載した書面であって公証人法(明治41年法律第53号)の規定に基づく認証を受けたもの
・公証人法施行規則(昭和24年法務府令第9号)の規定に基づき定款認証に当たって申告した実質的支配者の本人特定事項についての申告受理及び認証証明書。ただし、代表取締役等住所非表示措置の申出と併せて行う登記の申請が当該株式会社の設立の日の属する年度又はその翌年度に行われる場合に限ります。


尚、事前に法務局に対し、『実質的支配者リストの保管の申出』をしている場合は、別途、上記の書面の添付は必要ないそうです。
BOリストですね。
ただ、そっちの方が面倒なのでは?とも思っています。

司法書士に手続きを依頼されるのであれば、そこまで深く考える必要はないかもしれませんが、独力で行う場合はこの辺りが最大のハードルになるかもしれませんね。

代表取締役等住所非表示措置を取る上でのデメリットは?

メリットについては言わずもがなでしょう。


代表者の登記住所を隠せる。
これに尽きます。
プライバシー保護ですね。


では、デメリットは?


まず言えることは手続きの煩雑さかと。
僕の知り合いの社長が独力で代表取締役等住所非表示措置をやっていたのですが、正直、関心しました。

忙しだろうによくやれたなと…
それぐらい大変です。


その他、法務省が当該制度の注意点として次のようなメッセージを出しています。
デメリットと言うよりかは、よく考えて制度を活用しなさいという注意喚起と言ったところでしょうか…

代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます。
そのため、代表取締役等住所非表示措置の申出をする前に、このような影響があり得ることについて、慎重かつ十分な御検討をお願いいたします。

 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法(平成17年法律第86号)に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があります。

 代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、登記の申請書には代表取締役等の住所を記載する必要があるため、登記されている住所について失念することのないよう御留意ください。

まあ、確かにね、とは思います。
ただし、制度が施行されてからそこまで期間経過しているわけでもないこともあり、具体的なトラブルはまだ耳にしていません。


もちろん、僕の知らないところでは実際のトラブルがあるのかもしれません。
当然ながら、その可能性を排除する気はありません。


ただ、私的にはそこまで心配することはないかなと思っています。
なにせ、登記上、住所の一部が非表示になるだけですから。


住所の証明にひと手間かかることはあるでしょう。
ただ、それだけが原因で何かが駄目になることなどあるのかな?で、あれば他の要因の方が大きいのでは??


ついついそう思ってしまいます…

まとめ

さて、今回は代表取締役等住所非表示措置についてのお話しでした。


おそらく興味の有無がはっきりと分かれる制度ですね。
ただ、今後、制度が浸透していけば一定の需要が生じる手続きだとも思っています。

ただ、正直、もう少し具体的な事例が欲しいとことです…
当該制度に対する僕の経験がもう少し増えれば、改めて詳細や注意点等のご紹介をさせていただければと思います。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一