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遺言遺言執行者は誰にすべき?その報酬は??
いつもお読みいただきありがとうございます。
とうとう消費税が二桁にのりましたね。
特に小売店や飲食店などは値札の張り替え等の対応に追われているのではないでしょうか?
ポイント還元に軽減税率等々、いつもの増税とは異なる点も多いので、しばらく世間もバタつくことでしょう。
良い方向に進めばいいのですが...
さて、今回は遺言執行者についてのお話しです。
基本的な内容に加え、遺言執行者は誰にすべきか?また、遺言執行者の報酬について踏み込んでいければと思っております。
<目 次>
- 1.遺言執行者選任の是非について
- 2.遺言執行者は誰にすべきなのか?
2-1.遺言執行者はあくまで遺言内容で判断すべき
2-2.遺言執行者はその実務の一部又は全部を第三者に委任することもできる - 3.遺言執行者の報酬相場は?
3-1.どの専門家に依頼すべきか - 4.まとめ
1.遺言執行者選任の是非について
まずは次のブログ記事を参照ください。
「遺言書に遺言執行者は必要なのか?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_94/
リンク先内容と重複する部分ではありますが、遺言書に遺言執行者は必ずしも必要なわけではありません。
ただし、僕等のような専門家と呼ばれる者が作成に関与する場合に、遺言書で遺言執行者を指定しないことはまずありません。
それは、後の手続面等で依頼者にとってプラスになると考えているからです。
では、次に疑問となるであろう点が、遺言執行者は誰にすべきなのか?という部分でしょう―
では、それについてじっくり紐解いていきましょう。
2.遺言執行者は誰にすべきなのか?
まず、誰にすべきかという疑問の前に、誰が遺言執行者になれるのかという点について―
お馴染みの条文(民法)紹介です。
ただし、今回はすごく簡単な内容ですのでご安心を。
民法1009条(遺言者の欠格事由)
未成年者及び破産者は、遺言執行者となることができない。
これだけです。
条文にあるとおり、未成年者と破産者は遺言執行者になれませんが、それ以外であれば誰でもなることができるわけです。
法人であっても遺言執行者の就任は可能です。
イメージしやすいところだと、信託銀行なんかが遺言執行者になっているケースでしょうかー
また、遺言執行者を複数人選任することも、予備的な選任(遺言者よりも先に遺言執行者が死亡していた場合に備え、別の候補者を挙げる等々)をすることも可能です。
意外とこの辺の選択肢は多いわけです―
尚、既述のとおり未成年者は遺言執行者にはなれませんが、それは遺言で未成年者を遺言執行者に指定することの妨げになるものではありません。
いわゆる、たとえ遺言書作成時に未成年者であったとしても、遺言者が死亡した時点で成人になっていれば何の問題ないわけです。
実際、僕自身、依頼者の希望で何度か未成年者を遺言執行者に指定する遺言書を作成したことがあります。
このように遺言執行者を誰にすべきかの選択肢は広いです。
実に迷いやすいと言うか、何と言うか...
いったいどのような基準で判断すべきなのでしょうか?
2-1.遺言執行者はあくまで遺言内容で判断すべき
参考までに、これまで結構な数の遺言書の作成に関わってきましたが、僕自身が遺言執行者になっているケースはほとんどありません。
現時点で言うと、ほんの数件程度です。
その多くは、僕ではなく受遺者(もしくは受贈者)自身を遺言執行者に指定しています。
※受遺者(もしくは受贈者)とは、遺言を受ける側の者を言います。
それはなぜか??
端的に言えば、それで十分なケースが多かったからです。
例えば、単に預貯金や不動産が対象になっているだけの遺言書に、わざわざ専門職の遺言執行者が必要かというとー
もちろん、ケースバイケースな部分はあります。
ただし、相続人間にこれといった争いもなく、財産も単純と言うことであれば、ほとんどのケースにおいて遺言執行者は受遺者(もしくは受贈者)で十分です。
そのようなケースで、わざわざ高額な遺言執行者報酬を支払う必要はないと言えるでしょう。
では、どういったケースで専門職を遺言執行者にすべきなのか?
ここで、実際に僕が過去に遺言執行者に指定されたケースを挙げてみますので、参考にしてみて下さい。
- ①任意後見及び死後事務委任契約に付随したケース
- ②相続人の廃除手続が関連するケース
- ③遺産内容が複雑であり、不動産等の売却した後(すべての遺産を現金化した後)、各相続人に分配するようなケース
なんとなく複雑そうなのが伝わりますでしょうか?
その他、単純に相続財産がかなり多い場合もこれに含まれてくるでしょう。
ただし、これらに該当する(該当しそう)からと言って、専門家の関与が必須と言えば、それもまたケースバイケースです。
大事なことは勧められるままに遺言執行者を決めるのではなく、信頼できる専門家とよく相談し、今後、起こり得る様々な場面を想定することです。
加えて、次項の内容もよく把握しておいてください。
必ずしも自身やその家族には対応できそうにない遺言内容であっても、遺言書の書き方次第ではその問題が簡単に解決できることもー
2-2.遺言執行者はその実務の一部又は全部を第三者に委任することもできる
『何の知識も経験もない私に遺言執行者ができるのでしょうか??』
そのような趣旨のことを質問されることが多いです。
でも大丈夫。
遺言執行者は、その実務の一部又は全部を第三者に委任することが可能なのです。
どういうことかと言うとー
遺言執行者に就任した者が、例えば僕のようなものに不動産の名義変更や、預金口座の凍結手続などの業務を委任することができるのです。
遺言書の書き方にもよるでしょうが、何も遺言執行者自身がすべての手続を直接行わなければならないわけではありません。
普通に分からない、手が回らないことがあれば、その部分だけでも専門家に依頼するこができるわけです。
ここで僕がよく使っている遺言書の記載例をご紹介します。
<遺言執行者の遺言書記載例>
第〇条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、〇〇〇〇を指定する。
2 遺言者は、前記の〇〇〇〇が遺言者の死亡以前に死亡した場合には、本遺言の遺言執行者として、〇〇〇〇を指定する。
3 遺言執行者は、遺言者の不動産、預貯金、有価証券その他の債権等遺言者名義の遺産のすべてについて、遺言執行者の名において名義変更、解約等の手続をし、また、貸金庫を開扉し、内容物の収受を行い、本遺言を執行するため必要な一切の権限を有するものとする。尚、この権限の行使にあたり、他の相続人の同意は不要である。
4 遺言執行者は、必要なとき、他の者に対してその任務の全部又は一部を行わせることができる。
これは遺言執行者を指名すると共に遺言執行者の予備的指名及びその権限を分かり易く明記したものです。
最近はそうでもないように思えますが、以前は遺言執行者と言えども銀行によっては相続手続に苦戦することもしばしばでした。
これぐらい記載しておけばたいてい何でもでき、かつ、第三者(専門家等)にも依頼できるとー
もちろん案件にもよるでしょうが、うまく活用できれば十分にご自身で対応できるケースも多くなるのではないかと思います。
3.遺言執行者の報酬相場は?
まずはじめにー
遺言執行者の報酬はこれと言った制限がありません。
ようするに自身等で行わない場合は、依頼先によって大きく異なってくるのです。
多少古い情報になってしまうかもしれませんが、大手信託銀行等が遺言執行者になる場合の報酬は相続財産の大小によっても異なるので、単純にいくらと言えるものではありませんが、最低でも100万~150万円以上はかかります。
僕が見てきた限りでは、相続財産が5,000万円以内で2%台の報酬であることが多いイメージです。
弁護士の場合はと言うとー
正直、各弁護士によっても、同じく相続財産の大小によっても異なってくるため何とも言えない部分はありますが、平均するとだいたい60万円前後の報酬になるようです。
ただし、あくまで平均値ですので、これより安い報酬の弁護士もいれば、かなり高い弁護士もいるということでしょう。
その辺は司法書士も同様です。
どちらかと言えば、弁護士よりも安いイメージはありますが、司法書士によっては弁護士よりも高い報酬を要求する人もいるはずです。
ちなみに僕の場合だと、相続財産が5,000万円以内の報酬は、相続税法及び国税庁が定める相続評価額による相続財産の総額の1.2%(ただし、それが30万円を下ることがないものとする。)であることが多いです。
もちろん、相続財産の大小によって比率も変わりますので、あくまで参考程度ですが(相続財産が多くなれば報酬比率が下がるイメージです。1.2⇒0.8等々)・・・
まあ、何を言わんとするのかというと、専門家に遺言執行者を依頼するのは結構な費用が発生してしまうのです。
- 本当に専門職の遺言執行者が必要な案件なのか?
- 依頼する専門家は適当なのか?
安易に決めるのではなく、再度、よく考えてみてはいかがでしょうか。
3-1.どの専門家に依頼すべきか
では、熟考の末、遺言執行者が必要と判断した場合、誰に手続を依頼すべきかという点についての話です。
銀行なのか、弁護士なのか、司法書士なのか、それとも行政書士等他の選択肢があるのかー
結論からすると、それについても遺言内容によって判断すべきです。
専門家によっても得意分野が異なりますのでー
ちなみに最もオールマイティーと言えるのが銀行です。
意外に思われるかもしれませんが、まず間違いないでしょう。
なぜなら、銀行が直接遺言執行者の業務のすべてを行うわけではないですから。
基本的に、遺言執行業務自体は銀行から依頼を受けた専門職が行うケースがほとんどです。
結果、あらゆる事案に対応が可能ということにー
ただし、手続に関与する専門家等が多くなるということは、その分、かかる費用も大きくなっていきます。
そして、おそらくこれが銀行に頼んだ場合に報酬が大きくなりがちな理由の一つでしょう。
その点を考慮するならば、やはり弁護士や司法書士に直接頼む方がお得なのでしょうか?
一概にそうとも言えない部分はありますが、金銭面からすると基本的にはそうなるでしょう。
ただし、金額だけで選ぶのはどうかと...
最も安そうだから司法書士がお勧めというわけでもありません。
繰り返しになりますが、あくまで想定される遺言執行者の業務内容から判断すべきです。
例えば、遺留分減殺請求等、裁判が予想されるような案件であれば、適職は弁護士でしょう。
司法書士に対応できないわけではないですが、比べるとやはり劣る部分は多いと思います。
対して、不動産の絡む案件等、司法書士の方が精通していると思われる部分ももちろんあります。
- どういう事態が想定されるのか?
- どのような財産内容なのか?
- 何を最も重視するのか?
これを機に改めて整理してみてはいかがでしょうか?
4.まとめ
今回は遺言執行者についてのお話しでした。
世間一般でも"終活"の意識が高まっている昨今、遺言執行者の需要は日に日に増していくことでしょう。
ただし、それに付け込むような悪質な商売も生まれがちです。
噂に聞いた程度の情報でしかありませんが、遺言執行者報酬として総財産の20%を要求するようなところもあるとか...
それが本当なら、さすがにやり過ぎですよね...
しっかりとした遺言書を作成すること自体は、本当に本当に大事なことだと思っています。
ただし、大事であるからこそ、その内容も、依頼先も、本当によく考えるべきなのです。
かなり特殊な内容でもない限り、遺言執行者の業務に優劣はあまりでませんよ?
それでは今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一