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不動産登記不動産売却時の後見監督人の同意について
いつもお読みいただきありがとうございます。
流行ってますね電子マネー。
とは言え、日本におけるキャッシュレス決済の普及率は他の先進国等と比べるとかなり低い部類に入るそうです。
そのため、海外からの旅行者が支払いでやきもきすることも多いそう―
国もようやっと対策を練ってきたことですし、僕も近くQUICPayとPayPayでも使ってみようと思っています。
はたして、Suicaの便利さを超えることができるでしょうか(あくまで私見)?
いつか追って報告します。
さて、余談はこれぐらいにして、今回は前回に引き続き後見関係の内容をお送りさせていただきます。
あくまで僕の体感ですが、最近、本当に増えてきたような気がします。
申立もそうですし、前回ご案内した居住用不動産の売却許可についてもそうです。
高齢者等が増加したこともそうでしょうが、制度自体が徐々にでも世間に浸透してきた結果でもあるのではないでしょうか?
僕自身、わりと得意な分野でもありますので、今後も角度を変えつつお送りさせていただく予定です。
<目 次>
1.後見監督人がいる場合の居住用不動産の売却許可
被後見人等(保佐人・補助人)が所有する居住用不動産の売却に裁判所の許可が必要な点は、前回お送りしたブログ内容のとおりです。
詳細については次の記事を参照ください。
「居住用不動産の売却許可はいつ必要?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_112/
では、後見監督人(保佐監督人や補助監督人がいる場合も同様の考え方です。)が選任されているような案件では、これとは別にどのような注意点が生じると言うのでしょうか?
尚、後見監督人が選任されているかどうかは登記事項になりますので、法務局(本庁)て取得できる後見人等の登記事項証明書でも確認可能です。
1-1.裁判所とは別に後見監督人の同意も必要
後見監督人が選任されている案件の注意点は、ある意味ごくごく単純と言えます。
後見監督人の同意が必要。
それだけですから―
もっと厳密に言うと、後見監督人から印鑑証明書付きの同意書を貰うことにはなります(弁護士や司法書士等、個人で後見人になっている場合は個人の印鑑証明書と、登録住所が事務所住所だったりする場合は、関連性を証する弁護士会や司法書士会発行の証明書等が必要になることもあります。)。
ようするに、後見監督人が選任されている案件では、裁判所による不動産の売却許可の前提として、後見監督人の同意が必須というわけなんです。
あくまで許可の前提です。
裁判所の許可後に後見監督人の同意を得るわけではありません。
まあ、それはそうですよね。
仮に許可の前段階で何ら後見監督人が手続に関与しないとすれば、何を監督しているのか?という存在意義の問題が浮上してしまいますから...
僕自身、監督人の経験がそんなに多いわけではないので、今のところ遭遇したことはありませんが、たまにあるそうです。
後見監督人の同意書を添付せずに行われる居住用不動産売却許可(処分許可)の申立てが...
ちなみにそのような場合では、裁判所より後見監督人に口頭確認した上で、同意書を追完するような対処がされることが多いようですが、もちろん事案によるところもあると思いますので、売却を急いでいるような案件では、最初から忘れずに取得しておきたいものですね。
仮に後見監督人の同意が得られなければ、最悪、手続自体が取り消されてしまいますので―
1-2.法務局に対しては何が必要となるのか?
では、無事、裁判所の許可が下りた後の手続についても少し―
対象不動産の決済が終了すれば、残すは法務局に対して行う名義変更登記のみです。
ただ、ここで一つの疑問が生じることがあります?
法務局へはいったい何を提出するべきなのか?という点です。
通常、後見人等が行う居住用不動産の売却時には、法務局に対し、「裁判所作成の居住用不動産の売却許可書」と「後見人の印鑑証明書」、「後見人の登記事項証明書」を添付することになります。
あくまでこれが最低限必要となる書類であり、後は事案に応じて他の書類が要求されるわけですが、後見監督人に関する書類が必要になることがあるのでしょうか?
※居住用不動産の売却時には権利証は不要です。その他、住所変更がある場合などには住民票等の書類が必要になるケースもあります。
既述のとおり、後見監督人の有無は、後見人の登記事項証明書に記載されますので、法務局としてはその存在を覚知することは簡単です。
では、それだけでいいのか?
もしくは、他の必要書類に加えて後見監督人の同意書と印鑑証明書も添付する必要があるのか?
実はこの辺が担当する司法書士の頭を悩ませている部分なのです。
既述のとおり、居住用不動産売却許可(処分許可)の申立ての段階で、裁判所へは後見監督人の同意書を提出しています。
それは、許可には後見監督人の同意が大前提であり、「許可が下りている=後見監督人の同意がある」という結論を導き出せそうにも思えるでしょう。
事実、私的には登記申請時は後見監督人の同意書等の添付は不要と考えていますから。
ただしー
現在はどうか分かりませんが、同意書の添付を求める法務局も存在しました。
この問題は法務局によっても見解が分かれるところだったのです。
おそらく、添付を要求する理由は、後見監督人の同意を得ずして行った居住用不動産の売却は、後見監督人によって取り消すことができるため、その点に着目した結果なのでしょう。
分からなくはないです。
裁判所の許可書には後見監督人の同意の有無など記載されてませんからー
ただ、裁判所の許可が絡まない非居住不動産であればまだしも、居住用不動産の場合にそんなことなどあるんでしょうかね?
では、実際、僕はどうしているかと言うと―
事前に管轄の法務局で確認しています。
なんと言うか、大なり小なり争いがある以上、それが一番ですから。
もしくは、それらを判断する以前に、とりあえず後見監督人から同意書と印鑑証明書を貰っておくのもいいかもしれませんね。
より安全でしょうから。
2.まとめ
今回は、後見監督人が選任されている場合の居住用不動産売却許可及びその後の登記手続についてのお話しでした。
少しばかり登記実務に踏み込み過ぎたきらいがありますが、ある程度長く司法書士をやっていると、判断に迷う事案が多々生じます。
もちろん、本テーマもその一つです。
前回記事を作成していた段階で、迷っていた当時の自分を思い出し、記事にしてみたというのが本当のところなので、需要自体はあまりないかもしれませんね(ちょっと専門的過ぎたと反省しております。)。
次回はなるべく一般的なもので、かつ、分かり易いものを...とは思っていますが、はたしてー
それではこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一