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不動産登記

居住用不動産の売却許可はいつ必要?


いつもお読みいただきありがとうございます。



大きな天災が続きますね。
気候自体が変わってしまったとでも言うのでしょうか??
もしかしたら、今年の冬は稀にみる大雪なんてことも―
首都圏はとにかく雪に弱い印象があるので、できれば避けたいところですが...
子どもの頃は好きだった雪も今ではただただ憂鬱なだけですからね。



さて、今回は家庭裁判所が行う居住用不動産の売却についてのお話しです。
その意味や趣旨、どのような場合に必要になるのかと言った部分についてお送りできればと思っております。




<目 次>






1.居住用不動産の売却許可とは

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居住用不動産の売却許可とは、被後見人等
居住用不動産を処分する際に必要となる家庭裁判所の許可を指します。


まあ、基本はそのままの意味ですね。
その文言だけでも、どういうものなのかある程度想像することができるでしょう。


とは言え、注意点は少なくありません。
ざっと挙げてみますと―



  • まず何をもって居住用不動産とされるのか?
  • 被後見人とは具体的に誰を指すのか?
  • 不動産の処分とは何か?売却以外もその対象となるもなのか?




尚、これらはそのまま居住用不動産の売却許可における注意点に直結していきます。
次項にて、それぞれ検証していきましょう。




1-1.何をもって居住用不動産とされるのか?

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被後見人等が現に居住している不動産―


これが居住用不動産に当たるであろうことに異論はないでしょう。


ただし、該当するのは必ずしもこれだけとは限りません。
現に居住していないものであっても、居住用不動産に該当するケースが幾つか存在するのです。


考え方の問題ですねいわゆる。
居住用不動産に当たるかどうかは、対象となる不動産所在地に住民票があるかどうかなどの形式的な基準だけには留まらず、被後見人等の生活実態が直接の判断材料とされます。



分かり易いところで言うと、老人ホームや病院などでしょうか―



それらの場所に被後見人等が入所(入院)している場合、対象となる不動産には現に居住しているとは言い難い状況です。
実際、その時点では住んでいませんから―


ただし、それをもって居住用不動産に当たらないとすると、被後見人等は多大な損害を被ってしまう恐れがあります。


人の暮らしにとって"住居"というものは殊の外大切な、重要な、ものです。
本来、居住用不動産の売却許可という制度も、意思能力ない(もしくは欠如した)者の住居を保護することが主な目的であり、被後見人等が少しでもその住居に戻ってくる可能性があるのであれば、安易な処分は許さないという趣旨のものなのです。


結果、居住用不動産売却許可の対象は、現に居住している住居だけではなくー



  • 現に居住しているわけではないが過去に生活の本拠となっていた建物とその敷地
    ※ex:入院、入所直前の住居

  • 現に居住しているわけではないが将来生活の本拠として利用する予定の建物とその敷地
    ※ケースとしてはあまり多くないかもしれませんが、これも対象となります。




これらもその対象となるわけです。
特に数年に渡って施設等に入所している場合などには、間違った解釈をしがちですのでご注意ください。

また、別荘などは居住実績がない限り、これに該当することはありません。
その他。例えば子供等に被後見人名義で買い与えた住居などについても同様の考え方となります。






1-2.居住用不動産の売却許可を要する対象者とは?

冒頭にて、被後見人等居住用不動産を処分する際には裁判所の許可がいる旨の説明をしておりましたが、この"等"の中には具体的には誰が含まれるのでしょうか?

早速結論からー


  • 被後見人
  • 被保佐人
  • 被補助人
    ※後見・保佐・補助手続を受けている者を、それぞれ"被~"と表現します。



以上、3種類です。
ただし、後見人とは異なり、保佐人及び補助人については、不動産処分の代理権が付与されている場合に限られます。
処分権限がなければ売却等を行うことはできませんので、元より居住用不動産の売却許可の問題にもならないからです。

ともあれ、被後見人だけではなく、被保佐人や被補助人もその対象になることがある点には注意が必要でしょう。



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・任意後見監督人が就任しているケースはどうなるのか?

ちなみに、上記には登場していませんが、任意後見制度は居住用不動産の売却許可の対象にはならないのでしょうか?


任意後見制度は、基本的に判断能力等が落ちる前段階に公証役場で行う手続ですので、最初から裁判所が関与してくるわけではありません。

ただし、即効型の任意後見や、判断能力等が落ちてしまい任意後見監督人が選任される段階では、後見や保佐とそうそう大きく変わるものではないようにも...


となると、感覚的には居住用不動産の売却許可が必要なようにも思えますがー


結論からすると、居住用不動産であっても、非居住用不動産であっても、原則として任意後見監督人の同意も家庭裁判所の許可も不要です。

ただし、元の任意後見契約書の内容が、居住用不動産の売却時に監督人の同意を要する旨の規定があれば、監督人の同意が必要にはなります(少なくとも許可ではありません。)。


自分の意思を反映しようというのが任意後見の特徴でもありますので、制度趣旨の違いと言ったところでしょうかー


ともあれ、任意後見監督人が選任される段階であっても、任意後見に不動産売却許可を要することはなく(処分の合理的な理由や、裁判所や監督人への報告は当然に必要です。)、司法書士の事務的な話をすると、その登記手続には常に登記済権利証やそれに代わる手続が必要になるということなのです。




1-3.売却以外の行為でも裁判所の許可を要することがあるのか?

まずは該当する条文を紹介します。
ほぼ、これが結論ですので―

民法第859条の3(成年被後見人の居住用不動産の処分についての許可)
成年後見人は、成年被後見人に代わって、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。

賃貸借契約の締結や解除、抵当権(住宅ローン、不動産担保ローン等々)の設定やこれらに準ずる処分をする場合にも、家庭裁判所の許可が必要となる旨の条文です。


具体的なケースとしては、被後見人名義の家屋を第三者に貸し出す際はもちろんのこと、それまで同居していなかった親族が新たにそこに住まうような場合も、基本的には裁判所の許可の対象となってしまいます。


対して、成年後見制度を利用する以前から同居している親族等については、"賃貸"ではないのでこれには該当しません。
改めて許可を取っておく必要もないわけです。


その他、たとえ被後見人のため(施設費用の捻出等)であっても、抵当権等を設定する行為はれっきとした不動産の処分行為に該当します。


不動産の処分行為に当たるか否かの判断基準は、あくまで形式的になされるものだからです(居住用不動産の売却許可の申立の際には、形式的な判断だけでなく、ありとあらゆる実情が加味されます。)。


不動産の売却以外の行為については、事案によっても判断に迷う場面が多いと思われます。
そのため、どのような行為がその対象になるのかを把握した上で、事案事案に合わせた適宜な対応が必要となってくるでしょう。




2.居住用不動産の売却許可を得ずして行った処分行為はどうなる?

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最後にこの辺にも軽く触れておきます。


無効なのか?
取り消しの対象となるのか?
はたまた他にあるのか?



答えは"無効"です。
絶対的に無効です。

決して後でOKされるようなものではありません。
不動産の売買契約上であれば、違約の対象となってしまうことも...


制度趣旨からしたら当然のことなのですが、知らなければ判断できるものではありません。
いわゆる、後見人やその家族、関係者だけではなく、不動産業者等にとっても必要な知識ですし、情報と言えるのです。




3.まとめ

今回は居住用不動産の売却許可についてのお話しでした。
ちなみに上記は基本中の基本です。

実態上は、もっと複雑な、慣れていても判断に迷うような案件が多数存在します。
また、ここではご紹介しきれていない注意点等も...


一例としては―


それらについても近くご紹介させていただく予定です(非居住~についてはUP済みですので、興味がある方は是非に。)

乞うご期待ください。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一