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不動産登記

とうとう配偶者居住権が施行されます



いつもお読みいただきありがとうございます。


とうとう緊急事態宣言が発令されましたね。
これまで以上に気を引き締めていきたいものです。
司法書士九九法務事務所でも可能な限り、テレワーク等の実施を行っておりますが、なかなか完璧には難しいというのが正直なところです。


そうした混乱のせいか、すっかりその存在を忘れていたのですが...
そう言えば、2020年4月1日より約40年ぶりに行われた民法改正の目玉とも言える、"配偶者居住権"が施行されるのでした。

ようやっとその全容が見えてきたので、その概要や注意点等をご紹介させていただくことにします。
尚、過去に民法改正をご紹介したブログ記事は次のとおりです。



「民法(相続法)が改正されます/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_56/#h22sjln2ecu5174b2ld18ki4mt11gk3y7






<目 次>




1.配偶者居住権とはどんな権利?

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少し硬い内容になってしまうかもしれませんが、大事なところですので、まずはここから説明させていただきます。
尚、中盤以降に配偶者居住権の有用性をご紹介しておりますので、できればそこまで挫折せず付いて来ていただけますとー


では、本題です。



配偶者居住権とは、相続発生前から住んでいた自宅は、たとえその配偶者が相続を受けなかったとしても(他の相続人が自宅を相続したとしても)、引き続きそのまま自宅に住み続けられる権利(他の相続人に売却等されなくて済む権利)とでもいいましょうか...



まあ、何と言うか、これほどまでに一言で説明しにくい権利も珍しいです。
もちろん、僕の表現力の問題もあるとは思いますが...

そのため、しっくり配偶者居住権の内容をご紹介させていただくことにします。
例のごとく、まずはその適用条文からー


【民法(改正後)】
1028条(配偶者居住権)

1 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。
2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。
3 第903条第4項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。



分かり難いとは思いますが、条文なんてどれもだいたいこんなもんです。
ここで諦めるのではなく、理解する工夫をする方が間違いなく有用です。
それが有用な手続であるのなら特にー

そのため、ここではせめてもう少し分かり易く、その内容を紐解いていくことにしましょう。




1-1.配偶者居住権が適用される人物は?

もちろん、"配偶者(妻・夫)"です。
子や兄弟姉妹への適用はありません。


あくまで配偶者をより優遇しようという法改正ですので、自ずとその適用も配偶者に限定されます。


他のブログ記事でもご紹介していますが、相続手続において配偶者は最強です。
今回の相続法の改正で、その地位がより強化されることにー



では、配偶者は配偶者でも内縁関係にある場合はどうなるのでしょうか??
いわゆる法律上の夫婦ではない場合ですね。

結論からすると、色々調べてみましたが、これと言った情報は見当たりませでした。
なにせ施行間もない制度ですから...

とは言え、現行法上、内縁配偶者には相続権が認められていないことから、配偶者居住権についても同様に適用がないと考えるのが妥当でしょう。




1-2.配偶者居住権の対象は建物のみであり土地はその対象とはならない

あくまで配偶者の居住権を保護する法律ですので、その対象は建物であり、かつ、"居住建物"になります。
土地はもちろんのこと、その他の建物、例えば、別荘や投資物件などはその対象にはなりません。




1-3.相続開始時に配偶者が居住している必要がある

そもそも"居住"とはー
一定の継続性や頻度をもって日常生活を営んでおり、かつ生活の中心の場としてその住宅を使用していることを指します。

ようするに生活の本拠としている自宅ですね。
参考までに火災保険などでは、
週2、3日以上寝泊まりをしている場合や、一月の間に連続して半月だけ寝泊まりをしている場合なども"居住"に該当するようです。

尚、要件はあくまで相続開始時に配偶者が対象となる自宅住居に居住していることであり、他の相続人が同居していても問題はなく、むしろ被相続人がそこに同居している必要もありません。





1-4.居住建物の全部について無償で使用及び収益できる

居住建物の"全部"という点がポイントです。
これは、配偶者が相続開始時に居住建物の一部に居住していた場合であっても、配偶者居住権は成立し、かつ、その効力は居住建物の全部に及ぶことを意味しています。

そもそも、詳細は後述しますが、配偶者居住権は登記することが可能ですし、むしろそれを前提としているような所があります。
その際、建物の一部のみに配偶者居住権を登記することは、技術的にかなり困難なわけです(登記手続上、範囲の指定が困難なのです。)。
おそらくその点も少なからず影響しているのでは?と私的に思っています。

ともあれ、配偶者居住権は居住建物の全部について無償で使用及び収益できるものであり、後述する配偶者短期居住権の場合を除き、その期間は原則終身となります。




1-5.居住建物に他に共有者がいる場合は配偶者居住権は適用されない

相続開始時に既に居住建物に他の共有者がいた場合の話ですね。
これは当然そうでしょう。

仮にこのようなケースでも配偶者居住権が認められるとするならば、他の共有者はたまったものじゃないですから...
自身の不動産でもあるのに、何の処分もできなくなってしまうとー
その辺のバランスを考慮した結果なのでしょう。




1-6.配偶者居住権は住んでいれば当然に取得できる権利では決してない

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ある意味、最大のポイントです。
勘違いしやすいところですので、しっかり把握しておくようにしましょう。


あくまで配偶者居住権は、以下のいずれかの条件に該当する必要があるのです。


  • 遺産分割協議によって配偶者居住権を取得するものとされたとき
    ※これは相続人全員で行う任意の遺産分割協議の他、家庭裁判所の審判による遺産分割も含まれます。

  • ②配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき
    ※尚、被相続人と配偶者の間で締結した配偶者に配偶者居住権を取得させる旨の死因贈与契約によっても配偶者居住権は成立するとされています。




配偶者居住権は強力な権利です。


さすがにそれを無条件で配偶者に与えるのは優遇され過ぎとの判断なのでしょうか?
ともあれ、配偶者居住権は住んでいれば当然に与えられる権利などではなく、遺贈や遺産分割の選択肢の一つとして追加されたものに過ぎません。


ようするに、配偶者居住権は配偶者に与えられた当然の権利ではないわけです。
相続人全員での話し合い(遺産分割協議)か、もしくは裁判所ので審判、そうでなければ遺言書等で予め準備をしておく必要があるとー


そうです。
配偶者居住権の新設によって、遺言書等による事前準備(法律に基づいた正しい終活)の重要性が更に浮き彫りになったわけです。

大事な事なんです。
遺言書を書いておくということは本当に。




1-7.なぜ、遺贈の目的とされたときなのか?

僕なんかは当初すぐにそう思いました。
お恥ずかしい話、あれ?間違ってる??相続じゃなくて??といった具合ですね...


では、なぜそう思ってしまうかと言うと、一般的な遺言書上では、相続人になる者に何かしら遺産を残す際には、"遺贈"ではなく、"相続"という文言を用いるためです。
配偶者はもちろん相続人に該当します。
であれば、そこは"相続"じゃないのかと...
尚、遺言書作成時に相続人にはならない、例えば甥や姪、孫等への遺言では"遺贈"を用いるのが一般的です。


しかしながら、配偶者居住権が遺言の対象になっている場合は、対象が配偶者であったとしても、"相続"ではなく"遺贈"を用いるわけです。
果たしてこれはなぜなのでしょうか??


もちろん、相応の理由がありました。


これは、"相続させる旨の遺言"の場合、仮に配偶者が配偶者居住権の取得を望まないときに、配偶者居住権の取得のみを拒絶することができなくなってしまうからなのです。
そうなってしまうと、他の方法としては相続放棄を選択する他なくなり、それではかえって配偶者の利益を害する恐れが生じてしまうと...

配偶者居住権を遺言書によって配偶者に与える場合、その遺言書には配偶者に『遺贈する』と記載するよう注意しなければいけませんね。





2.結局、配偶者居住権の何が優れているのか?

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どうでしょう?なんとなくでも配偶者居住権の内容が伝わりましたでしょうか?
この時点では、とりあえず事前の準備が重要になるとのイメージを持っておいていただければOKです。

そしてここからは、その有用性、配偶者居住権のメリットについてご案内させていただきます。
おそらく実際の利用者にとっては、制度そのものよりも興味のある部分でしょうからー




2-1.住み慣れた我が家を出で行かなくても済む

自宅(居住建物)に住み続けられる権利ー
配偶者居住権のメインテーマであり、最大のメリットになります。


ただ、いきなりそう言われても、あまりイメージしにくいかもしれません。


なにせこれまで何の問題なく住み続けてきた自宅です。
相続が発生したからと言って、そこを追われてしまう可能性があるのか?


それが、普通の反応でしょう。
結論からするとー


程度の差こそあるものの、そこまで珍しい事態ではありません。
また、実際にはそうならなかったとしても、配偶者居住権を設定しておくことで得られる安心というものもあるのです。


では、具体的にどういったケースなのか??
簡単な事例を挙げつつご説明致します。




2-2.相続時に無用なご自宅(居住建物)の売却を防げることがある

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一般的な家庭にとって、最も大きな財産とは何でしょう?


預貯金?
車?
時計?


もちろんそういう家庭もあるでしょうが、大半は不動産であり、かつ、ご自宅(居住建物)であることがほとんどー
価値的なもので言えば、遺産のほとんどを占めているのではないでしょうか?


相続の手続上、配偶者は最も優遇されています。
ただし、だからと言って無条件にご自宅(居住建物)を相続できるわけではないのです。
他に分配できる大きな遺産があればいいですが、それがないとなると、やむなくご自宅(居住建物)を売却して各相続人でその売却代金を分配する...


決して珍しい話ではないのです。


残念ながら世の中、仲の良いご家族ばかりではありませんから。
子のいないご家庭なんかは、相続人が亡くなった配偶者の兄弟姉妹や甥姪になることもあるので特に...


もちろん、その辺りは遺言書で防げる部分でもありますが、それに加えて配偶者居住権を設定しておくことで遺留分等の問題をクリアーし、確実にご自宅(居住建物)に住み続けることが可能になったりもするのです。


その他、別に仲が悪いわけではないけれど、『子供の名義にしておくと将来的に家を出ていけと言われるかどうか心配』と、言ったようなケースでの利用も考えられます。
ただし、後述する配偶者居住権のデメリットもよく理解した上で、手続にあたるのが賢明と言えます。





2-3.相続時に預金の大半を失わなくて済むことがある

配偶者居住権は、なにもご自宅(居住建物)に住み続ける権利だけを守る制度ではありません。
配偶者のその後の生活をも守る制度なのです。


ご自宅(居住建物)を相続する代わりに、預金のほぼすべては他の相続人が相続する結果となったー


これまたよくある話です。
他に相続する権利を持つ者がいる限り、配偶者と言えどもすべての遺産を相続できるとは限りません。
その結果、ご自宅(居住建物)の権利を優先し過ぎたために、その後の生活に不安がなんてことも...


このようなケースでも、配偶者居住権はその効力を発揮します。


配偶者居住権は、対象となる不動産の所有権を取得するわけではありません。
あくまで、保証されるのは所有権ではなく、これまでどおりご自宅(居住建物)に無償で住み続ける権利なのです。

そのため、うまく配偶者居住権を行使すれば、価値の高い不動産は他の相続人に相続させ、自身は今後の生活費となる預貯金と、その後も自宅で生活し続ける権利を相続することも可能になるわけです。



2-4.配偶者居住権により相続税負担が軽くなることも

税務については本業ではないので、この辺はほんの触りというか結論だけ...


もちろんケースにもよるでしょうが、配偶者居住権を設定することで相続税負担が軽くなることがあるようです。
具体的には、配偶者居住権の相続税評価は残存耐用年数・平均余命を使って計算するそうなので、あとどれくらい自宅に住み続けられるのかがポイントになるのではないでしょうか?

その他の詳細については、税務のプロである税理士さんにお問い合わせいただければと思います。




3.配偶者居住権にもデメリットはあるのか?

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どんなに優れた手続であっても、何かしらのデメリットはあるものです。
多分に漏れず配偶者居住権についても、幾つかのデメリットが想定されます。


私的にも、配偶者居住権は非常に強力な権利だと思います。
そうであるが故にその反動と言うか、何と言うか...


よくよく検討した上で利用すべきである点は間違いないでしょう。
では、具体的にどのようなデメリットがあるのでしょうか?



3-1.認知症等、配偶者の意思能力がなくなった場合に不動産の処分に困る

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配偶者居住権の設定されたままの不動産を処分(売却)することは容易ではありません。
少なくとも僕ならば買いません。


なぜか?


配偶者短期居住権ならまだしも、通常の配偶者居住権の効果は基本的に終身であり、かつ、無償です。
かつ、登記手続を行うこととなるため、その効果はもちろん第三者に対しても効力を及ぼすことになります。
ようするに、かなり強力な制限のかかった不動産になるわけです。


仮に購入したところで、家賃も取れませんし、それどころか固定資産税の負担が生じると...


よっぽど安価でもない限り、そのような不動産を好きこんので購入する方はいないでしょう。
とは言え、であるからこそ、配偶者はそこに住み続ける権利を得られるわけです。



では、後々になって売却の必要性が生じてしまった場合はどうでしょう??



もちろん、配偶者自身が配偶者居住権を放棄した場合には、その権利を消滅させる事が可能です。
ただし、そのタイミングを見誤ってしまったら...


例えば、認知症の発症です。
その他、何らかの原因で意思能力がなくなってしまったら...


もはや任意に配偶者居住権の放棄をするこは困難です。
そうなった場合、成年後見制度等を用いて対応する他ないのでしょうが、今のところ事例もないため、家庭裁判所の判断がどうなるのか...

ともあれ、少なくとも不動産の売却に大きな手間がかかってしまうでしょうし、最悪の場合、配偶者が存命中は売却できないことも考えられるのです。




3-2.他の相続人にかかる負担が大きい

一般的に、固定資産税は不動産の所有者に対して課税されます。


既述のとおり、配偶者居住権は終身、かつ、無償です。
そうなると、対象となる不動産を相続することになった相続人は、その期間、ずっと固定資産税を負担しなければならないわけです。


ただし、全部が全部と言うわけはありません。
改正相続法では、配偶者居住権を取得した者は、
建物の通常の必要費を負担する義務を負うことが明記されており、固定資産税もこの必要費に含まれはします。
あくまで、建物だけですが...


そうです。
土地の固定資産税については、原則どおり土地所有者の負担なのです。


もちろん、話し合いで解決する問題かもしれませんが、土地の固定資産税は建物よりも高額であることがほとんどー
よくよく注意しておきて点ではあります。


4.その他、配偶者居住権に関するあれこれ

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配偶者居住権は、被相続人の死亡日が2020年(令和2年)4月1日以降の場合に適用されます。
あくまで、これからの権利なのです。


決して過去に遡って利用できるわけではありません(まずないでしょうが、仮に2020年4月1日以前に遺言書や死因贈与契約書で配偶者居住権を定めたいたとしても、改正法の適用はありません。
)。


そのため、配偶者居住権の設定を希望する場合は、新規の遺言書の作成や、既存の遺言書の書き直し、死因贈与契約書の作成といった作業がメインになってくるでしょう。



その他、注意点等についてはー



4-1.配偶者居住権は登記することができる

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配偶者居住権を第三者(相続人以外の者)に主張するためには、その旨の登記を備える必要があります。
対抗要件というやつですね。

この登記さえ備えておけば、たとえ自宅(居住建物)が第三者に売却等されたしても、配偶者はその第三者に対しても配偶者居住権を主張することが可能です。
単に自宅(居住建物)に住んでいるだけでは駄目なので、その点、ご注意ください。



ここで、かなり実務的な内容を少しー

僕自身の備忘録的な趣旨でもあるので、読み飛ばしていただいても結構です。

登記の申請人は、居住建物の所有者を登記義務者、配偶者居住権を取得した配偶者を登記権利者とする共同申請を行うのが原則です。
尚、遺言書による"遺贈"で配偶者居住権を取得したような場合には、遺言執行者があるときは、遺言執行者が登記義務者の立場から登記申請を行う形になるのでしょう。

ともあれ、配偶者居住権設定の前提として、相続や遺贈を原因とする所有権移転登記がされている必要があるのは言うまでもありません。

尚、配偶者居住権の成立要件の一つに、"配偶者が被相続人所有の建物に相続開始時に居住していること"というのがあります。
そのため、それを証するために配偶者の住民票等が必要になるような気もしますが、どうやら登記原因証明情報上でその旨を明らかにすることでも問題ないようです。

登記原因については、以下の3種類になるでしょう。


  • 『年月日遺産分割』
    ※遺産分割協議もしくは調停成立の年月日

  • 『年月日遺贈』
    ※遺贈の効力が生じた年月日

  • 『年月日死因贈与』
    ※贈与者死亡の年月日



また、配偶者居住権の存続期間も登記事項とされています。
配偶者居住権は、別段の定めがなければ、基本は終身です。


そのため、以下のような存続期間が基本になるでしょう。

  • 『存続期間 配偶者居住権者死亡時まで』
    ※もしくは、それに近しい表現(年月日から配偶者居住権者死亡時まで)


尚、別段の定めとして存続期間を定めた場合には、それを表記することになります。
ちなみに、配偶者居住権の一部放棄に基づく存続期間を終身より短期とする変更の登記はできても、期間の延長や更新等はできないとされています。


加えて、配偶者居住権は、居住建物の所有者の承諾を得なければ、第三者に居住建物の使用収益をさせることができないとされています。
逆を言えば、承諾さえもらえば賃貸等に出すことも可能だとー
ちょっと意外に思えますが、事実としてそうなのです。
そして、この旨(第三者に居住建物の使用又は収益をさせることができる、)は特約として登記事項となります。


ちなみに、配偶者居住権を設定する際の登録免許税はー

  • 居住建物の評価額 ×1000分の2(建物評価額の0.2%)


他の登記と比べると安めではあるようです。




4-2.配偶者居住権は譲渡することができない

趣旨からすれば当然の規定ですね。
配偶者居住権は配偶者にのみ認められた特別な権利です。

そのため、その権利を無償で誰かに贈与することも、有償で売却することもできません。
また、仮に建物所有者の同意や承諾があったとしても結論は変わりません。
そもそも譲渡に適した権利ではないからです。

そのため、相続の対象にもなりません。
あくまで、配偶者居住権を取得した配偶者の死亡時に消滅する権利なのです。




4-3.配偶者短期居住権とは

配偶者短期居住権にも触れておきましょう。
むしろ、一般家庭にはこちらの方が重要かもしれません。


配偶者短期居住権とは、法律上、6カ月間(遺産分割協議が終了しない等、ケースによってはそれ以上の期間)は配偶者に自宅(居住建物)に住み続ける権利を保障するものです。

尚、ポイントとしては、要件にさえ当てはまっていれば当然に認められる権利であることです。
配偶者居住権のように、遺言や遺産分割協議による必要がありません。


要件に当てはまる配偶者であれば、誰しもが何もせずとも主張できる権利なのです。
そのため、これについては登記もできません。


その要件についてですが、基本的な考え方は通常の配偶者居住権と大きく異なるものではありません。
配偶者が、相続開始時に対象となる建物に居住していればいいのです。


異なる点としては、既述のとおり遺言書等によらずとも当然に与えられる権利であることと、居住が認められる範囲が、生前に使用していた部分に限られるぐらいのものでしょうかー
配偶者居住権のように、例えば店舗部分等、必ずしも建物全体に権利が及ぶわけではないのです。





5.まとめ

この度、新設された配偶者居住権についての話でしたが、どのような感想を持たれたでしょうか?
なにぶん施行されたばかりの新しい手続のため、実際の運用例自体がほぼありません。

今後、状況に応じて微調整等あるかもしれませんね。


僕自身の率直な感想としては、興味本位で安易に行うものではないな、と言う、月並みなものです。
権利の部分もそうですし、税務的な部分も含めてよく検討すべきでしょう。


ともあれ、新しい情報や注意点が分かりましたら、随時更新をしていく予定です。


いつもより長めの内容になってしまいましたが、今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一