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相続

民法(相続法)が改正されます

さて、今回は民法改正のお話です。
いかにも小難しそうなテーマではありますが、なんと約40年ぶりに民法改正に伴い相続分野の見直しがされたのです(施行についてはもう少し後になります。)。

これ、結構なニュースなんです。
大なり小なりこれから色々なことが変わっていくことでしょう。

相続に関与しない人間などいません。
生物である以上は必ず死にますから―

誰もが相続人か被相続人に、そして大半の人はその両方になるのです。
相続関係の知識が無駄になることはありえません。

なので法律の難解さと僕の文章力の問題で、かなり読みづらい内容にはなっているかと思いますが、最後まで我慢してお付き合い下さい。

それでは本編の始まりです。



目次
・民法改正によって何が変わるのか?

改正①.『配偶者居住権』の新設
改正②.結婚20年以上の夫婦に対する優遇処置
改正③.自筆証書遺言の利便化及び簡素化
改正④.相続人にはなれない親族への救済措置
改正⑤.預貯金債権の仮払制度
改正⑥.その他の改正点

・民法(相続法)の改正 いつ?

・まとめ



民法改正によって何が変わるのか?

ちなみに前回(昭和55年)の相続分野の改正の目玉は配偶者の法定相続分の変更でした。
現行法では配偶者の法定相続分は2分の1になってますが、それ以前は3分の1だったのです(昭和55年以前の相続登記を行う際などには注意が必要です。)。

より配偶者を保護した変更であり、明解でいて殊更に大きな変更でした。
これによって相続手続における配偶者の取り分がシンプルに増えましたから―


対して今回の民法改正では何が変わるのでしょうか?
それによって私たちの生活にも少なからず影響を及ぼすことになるのでしょうか?


改正①.『配偶者居住権』の新設

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イメージしにくいですよね。

そのネーミングセンスはさておき、今回の民法改正の目玉とも言える法律の新設です。
ただし、先に言っておきますが、結構分かりにくい点が多いと思います。

端的に言うと、相続発生後に配偶者がそのまま自宅に住み続ける権利なのですが、それだけだと何が何だかさっぱりでしょう。



そのため、まずはその背景から―

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急速に高齢化社会が進む昨今、残された配偶者もかなりの高齢であることが必然的に多くなってきました。
既に老人ホーム等の施設に入居している場合は別としても、配偶者の相続が発生したことを原因に、高齢者が住み慣れた我が家を離れざるを得ない状況は、肉体的にも精神的にもかなり大きな負担がかかってしまうことでしょう。


そこで、そうした配偶者の生活の安定を図るため、『配偶者居住権』が新設されたのです。


具体的には、たとえ配偶者が自宅を相続しなくても、相続発生時に当該住居(自宅)で同居していた場合には、無償でその居住していた建物の全部について使用及び収益する権利を取得することができるとされたのです。


これによって、配偶者は居住権を取得しさえすれば、仮に自宅の所有権が他の相続人や第三者に渡ったとしても、これまでどおり自宅に住み続けることが可能となります。

これまでは相続の話し合いがまとまらず、止む無く自宅を売却するようなケースは珍しくありませんでしたから。

そうした事態を防ぐ趣旨なのでしょう―

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尚、配偶者が得る権利は何もこうした『居住権』だけではありません。

自宅を相続しなくても「配偶者居住権」を主張できるということは、相続手続上において、実質的に自宅以外の財産の取り分が増加する可能性を意味します。

一般的な家庭において最大の財産は『自宅』です。
そのため、自宅を相続したから法定相続分を超えてしまい、他の財産を相続することができなかった―
と、言うようなケースも多いでしょう。

それが、たとえば自宅については居住権を得るだけで相続はせず、預金などの他の財産を相続する分にまわすようなケースが考えられるわけです。

結果、住居も保証されだけではなく、相続による取得財産も増え、老後の生活の安定を得ることができる―


もちろん、前回の民法改正にように配偶者の本質的な相続分が増えるわけではありませんが、それでもかなり配偶者寄りの法改正と言っていいでしょう。


また、この他に『配偶者短期居住権』というものも新設されています。
趣旨的には『配偶者居住権』と同様です。

その期間に違いがあり、配偶者居住権が基本的に終身であることに対して、配偶者短期居住権は遺産分割協議を行うべき場合に、最低6カ月間は無償で自宅を使用できるというものです。

適宜、これらを使い分けるようになるのではないでしょうか?

尚、『配偶者居住権』を第三者に対して主張する場合には『登記』が必要になります。
(どうやら『配偶者短期居住権』の方には登記は不要なようです。)

現時点で具体的にどういう手続を取るのかは不明ですが、登記は司法書士の専門分野ですので、詳細が分かり次第、追ってご報告させていただきます。



改正②.結婚20年以上の夫婦に対する優遇処置

これもかなり大きな変更であり、かなり配偶者に有利となる法律です。

条件付ではあるものの、結婚20年以上の夫婦であれば、配偶者が生前贈与や遺言等で取得した自宅は遺産分割の対象から除外されるというものです。

尚、対象となる自宅は『特別受益』として評価されないため、配偶者がその他の財産を相続する際に支障が生じるようなこともありません。

上記の『配偶者居住権』同様、高齢配偶者の住まいと生活の安定を図る法律と言えます。

これをうまく活用すれば、かなりの配偶者保護になりますし、無用なトラブルを事前に防止することも可能となるでしょう。
特に今後の生前贈与の可能性を広げる面白い法律だと私的には思っています。



改正③.自筆証書遺言の利便化及び簡素化

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とうとう遺言書についても法改正がありました。
ただし、あくまで『自筆証書遺言』についてのものです。

便利だなと思える点も多くありますが、それでも公正証書遺言の優位性は変わらないかな?というのが僕の率直な印象です。

ただし、これによって確実に自筆証書遺言の幅は広がりました。
これまでの短所を補う良い改正です。

費用対効果も含めて、ハードルが下がり、選択肢が増えたことには間違いありません。
自筆証書遺言の作成を希望する依頼者には、是非とも取り入れていきたい改正点です。


それではどういった点が変わったのでしょうか?


  1. 法務局での遺言書の保管
    公正証書遺言とは異なり、これまで『自筆証書遺言』は自宅等で自ら保管するか、作成を依頼した司法書士や弁護士等にお金を払って保管してもらう他ありませんでした。
    それが今回の改正で全国の法務局で保管してもらえるようになるのです。
    これにより遺言書の紛失や変造、破棄等のリスクが少なくなるでしょう。
    また、特に便利そうに思えるのが、「検索サービス」です。
    相続人が法務局に対し、遺言書の有無を確かめることができるわけです。
    公正証書遺言の長所をうまく取り入れた良い改正だと思いますが、後は普及するか否かと言ったところでしょうね。



  2. 家庭裁判所での検認手続が不要に
    家庭裁判所での遺言書の検認手続は、自筆証書遺言の大きな欠点の一つでした。
    相応の手間や費用がかかりますから。

    なんと、これが不要になります―

    ただし、注意しなければならないのは、いつでも不要というわけではない点です。
    あくまで自筆証書遺言を法務局に預けた場合に限り、家庭裁判所での遺言書の検認手続が不要になるというものです。
    とは言え、これだけでも随分な相続手続の時間短縮と費用削減に繋がります。
    是非、活用したいものですね。



  3. 自筆証書遺言の方式緩和
    自筆証書遺言作成の大原則として、『遺言者本人が全文直筆する』というものがあります。
    今回の改正でこの原則が少しだけ変更となります。
    尚、遺言書本人が直筆しなければならない点に変更はありません。

    ただし、必ずしも『全文』である必要がなくなったのです―

    具体的には、『財産目録』についてのみ、パソコン等での作成でも可とされたわけです。
    本文や名前、日付等は原則どおり直筆です。
    財産が多い人には多少の手間軽減や誤字脱字の防止になるとは思いますが―
    おそらく不動産であれば法務局で取得できる不動産の登記簿などを直接別紙目録として添付する等を期待してのものでしょう。
    その際はページごとの割印を忘れずに―
    遺言書の作成を専門家に依頼しない場合には利用したい変更点ですね。



改正④.相続人にはなれない親族への救済措置

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まず結論から―

(新)民法第1050条
相続人ではない親族が無償の療養看護や労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした場合に、相続人に対し、特別寄与料の支払いを請求することができるようになります。


とは言え、これだけではちょっと分かりにくいかもしれませんね。


そこで例えば、嫁が行う義理の親(夫の父等)の介護などを想像すると分かり易いと思います―
と、言うかおそらくそこを焦点にし、問題を是正するのが主の目的だったのではないでしょうか?

ともあれ、一部の方にとっては待望の結果と言っても過言ではないでしょう。

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僕自身後見業務を行っておりますので、少なからず老人介護の場面に立ち会うことがあります。

その上で―
介護は本当に壮絶です。
実際に行っている方にはただただ頭が下がるばかりです。

とは言え、これまでの民法では、嫁がいくら無償で介護を頑張ったところで、義父の相続分はもちろんのこと、寄与分さえも認められていませんでした。

崇高なるボランティアでしかなかったわけです―


あまりにもあまりにも不公平でした。
そこで今回の改正をもって、そうした功労者に『特別寄与者』として金銭の支払請求を認めたのです。

金額や細かい要件等、まだまだ詰めるべきところは山積みですが、かなり大きな一歩になるのではないでしょうか?

尚、今回の改正では対象があくまで相続人ではない"親族"に限られています。
問題となることが多い、事実婚や内縁者などが行う介護については今のところ同条の適用がないのです。

同条が類推適用されるようなことがあるのか?
これまでどおり権利を得ることができないのか?

今後の動向が気になるところです―



改正⑤.預貯金債権の仮払制度

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地味かもしれませんが、私的には最も注目している改正点です。

銀行等の金融機関は、相続が発生し銀行口座が凍結されてしまうと、遺産分割協議が成立するまでは払戻しや名義変更には応じません。
結果、残された配偶者等の生活費の確保や葬儀費の支払いに支障が生じることも少なくありませんでした。

そこで今回の改正では、遺産分割協議が終了する前であっても、一定の範囲で預貯金債権の単独での権利行使(仮払制度)が認められるようになったのです。

認められる要件や金額等の詳細もそうですが、後見や任意後見業務にも深く関わってくるであろう改正点ですので、今後ともより注視していきたいと思っています。



その他の改正点

主な改正点は上記のとおりですが、他に遺留分減殺請求権の金銭債権化や遺留分侵害額の計算方法の明確化、遺留分額算定上の財産の限定、遺言執行者の地位と権限が明記等、重要な改正が幾つかあります。

ただし、ここでご説明するにはあまりにも複雑過ぎる―
(前提知識がないと理解が大変なのです。)

そのため、それらにつきましては、また別の機会に。



民法(相続法)の改正 いつ?

今回の改正案ですが―

  • 2018年 7月 6日成立
  • 2018年 7月13日公布

と、なりました。
結構、最近のことなのです。

ただし、成立し、公布されただけであり、施行はいまだされていません。
そればかりか、施行日すらほとんど決まっていません。
面倒に思うでしょうが、施行されてからこその法律なのです。


とは言え、施行の目途がたっていないわけではありません。

例えば自筆証書遺言の改正などは、「公布の日から起算して6か月を経過した日に施行」とされていますので、単純計算すると2019年1月13日に施行されるのではないでしょうか?

また、配偶者居住権などは、「公布の日から起算して2年以内に施行」とされていますので、遅くとも2020年の前半迄には、あるいはもっと早く施行されるかもしれませんし、その他の改正点については、「公布の日から起算して1年以内に施行」となっているものが多いです。

多少のばらつきはあるでしょうが、そう遠くない未来にこれが現実のものとなるわけです―



まとめ

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40年ぶりの民法(相続法)の大改正とあって、前回ほど明解ではないにせよ、なかなか中身の濃い内容になっていると思います。
より時勢にあわせた形とでも言いましょうか―

とは言え、実際に施行されてみなければ分からない点も数多くあります。
少なからず何らかの問題点も生じることでしょう。
本コラムにおいても、ニュアンス違い等があるかもしれません。

なにせまだ施行されていない法律ですから―

そのため、現時点ではまだイメージとして捉えておく方が無難です。
今後、新たな情報が入りましたら続編にてご案内させていただきます。

ではでは。