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相続法改正に伴う預貯金の仮払い制度について思うこと


いつもお読みいただきありがとうございます。



気付いていましたでしょうか?
もうとっくに今年も折り返しに入っていることを...
加えて、いつの間にか七夕が終わっていたことを...

少なくとも僕はなんとも言えない気分です。
この分だときっとすぐに年末を迎えることになるのでしょうね...



さて、本題です。
今回は、相続法改正に伴う預貯金の仮払い制度についてのお話しです。

実は以前にブログ記事で軽く取り上げていた同制度ですが、当時は法律の施行前でなにぶん情報が少なかったため、軽くその概要に触れる程度でした。


当時の記事がこちらです。


「民法(相続法)が改正されます/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_56/



この内、今回の記事の主題でもある"預貯金の仮払い制度"が、予定通り2019年7月1日付けで施行されるに至りました(実際に銀行窓口での取扱いが開始されたということです。)。


果たして気になるその詳細とは―




<目 次>




1.預貯金の仮払い制度とは

まずは簡単なおさらいから―


預貯金の仮払い制度とは、実に40年ぶりに行われた相続法改正の一つです。

おそらく世間的には、他の改正項目である"配偶者居住権""夫婦間における居住用不動産の贈与等の優遇処置"などが目玉として注目されていましたし、業界的には"自筆証書遺言の方式緩和"についての話題を耳にすることが多かったように思います。



ただし、改正案の公布当初から僕が最も注目していたのは、この"預貯金の仮払い制度"でした。


その理由は後述するとして、あらためて預貯金の仮払い制度がどんなものなのかを見直していきましょうう―




1-1.これまでの相続時の預貯金の取り扱いはどうだったのか?

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"遺産分割前であっても一定の範囲で預貯金の払い戻しを受けることが可能"


預貯金の仮払い制度を一言で表現するならこんな感じでしょうか―



とは言え、さすがにそれだけで理解しろとは言いません。
なるべく分かりやすく順を追って説明させていただくことにします。



具体的には、以前はどうで、それがどうなっていったのかを―



まず以前の取り扱いがどうだったのかと言うと、相続の手続上、預貯金というのは、遺産分割協議や調停などで各相続人の合意が無くても、自身の法定相続分に相当する分については対象となる銀行から払戻し手続を受けることが可能でした(あくまで理屈の上では)。


それが当時の裁判・銀行実務だったわけです。


とは言え、昔から何かと議論が繰り広げられてきた部分でしたので、金融機関毎の取り扱いにも結構な差異があったように記憶しています(実際のところ、手続に相続人全員の関与を求める等、多くの金融機関が独自の判断でこれとは異なる対応していました。)。


そうしたはっきりしない状況に終止符が打たれたのが平成28年12月です(わりと最近なんです。)。

当時の最高裁大法廷決定により、遺産分割協議が終了するまでの間は、相続人単独では預貯金の払い戻しを受けることができなくなったのです―



ちょっとだけ難しい表現をするならば、裁判所が正式に預貯金債権が遺産分割の対象に含まれるとの判断をしたわけです(この辺はなんとなくの理解で大丈夫です。)。



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結果―


扶養家族であった相続人の生活費や、被相続人の葬儀費用の支払い、借金の返済等々、相応の理由のある急な支払いへの対応が困難になってしまうという弊害も...


なにせ遺産分割が終了するまでの間は、被相続人名義の預金の払戻しができないわけですから―


すんなり相続手続が進むケースならまだいいでしょうが、相続人間に争いがある場合や、相続人の中に行方不明者や意思能力が欠如した者がいるような場合だと、遺産分割はそうそう簡単には終わりません。


夫が急死し、専業主婦であった妻が預金を下ろせず四苦八苦するような事態も珍しくなかったのではないでしょうか?



ただし、国も無策というわけではありませんでした。
もちろん、当時からそうした事態は想定されており、それに対する対抗処置とも言える手続が用意されていたのです。

幾分、問題をはらむ部分はありましたが...



1-2.あまり利用されなかった仮分割の仮処分手続

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聞き覚えがない方も多いと思います。


お恥ずかしながら、僕自身、仮分割の仮処分手続を検討したことはあっても、実際の手続を行った経験はありません(それには諸々の理由があるのですが...)。



ともあれ具体的にどういう手続だったかと言うと―


ごくごく簡単にそれを表現するならば、裁判所に遺産の預貯金の一部について分割するよう"仮"の決定を出してもらい、早急にその払い戻しを受けられるようにする手続です。


ただし、実際にそれを行うにはあまりに超えるべきハードルが多くて...


まず、仮分割の仮処分は、調停又は審判を申し立てることが前提とされていました。
加えて、仮分割を申し立てる人の収入資料(源泉徴収票や課税証明書等)や、債務や費用についての明細資料、報告書等々の提出が必要等々...

利用すべきケースが限定されるだけではなく、とにかく要件が厳格だったのです。


おそらく、実務上でもあまり利用されていなかったのではないでしょうか?


尚、今回の相続法改正では当該手続にもテコ入れがされています。
もちろん、要件を緩和する方向に...


果たしてどのように変わったのでしょう?
より使いやすくはなったのでしょうか??


詳しくは後半にて。




1-3.家庭裁判所を介さない預貯金の払戻し制度の新設

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相続法改正に伴う預貯金の仮払い制度の変更点は、大きく別けて2つです。


その一つ目が、上記の仮分割の仮処分手続の要件緩和なのですが、僕が最も注目していたのは、もう一つの"家庭裁判所を介さない預貯金の払い戻し制度"です。


元々の趣旨がそうであったように、仮分割の仮処分手続は裁判所での調停や審判を前提にしています。
もちろん、それが悪いわけではありませんし、その必要性も十分に理解できます。



ただし、世間により必要とされていたのは、もっと簡易に済む手続です。



その点で、家庭裁判所を介さないで一連の手続ができるというのは、かなり魅力的なように思えてたわけです。

実際の手続を担当する金融機関(銀行窓口)は、三度これまでとは違った対応を求められることになるため大変でしょうが、利用する側にとっては良い話でしかありません。


そして、次に気になるのは、どういう手続になるのかです。
どういった書類を求められ、概ねどの程度の期間を要すのか―


仮分割の仮処分手続の要件緩和と併せて検証してみましょう。




2.預貯金の仮払い制度の具体的な内容について

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ひとまず改正された民法の条文を見てみましょう。


【改正後民法】
第909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。



紹介しておいてなんですが、おそらくこれだけで完璧に理解できる人などまずいません。
なんと難解な条文なのでしょうか...



早速、読解していくことにしましょう―


はじめに、"預金債権"とは、正式には"預金口座又は貯金口座に係る預金又は貯金に係る債権"です。
もっと簡単に言うと、銀行に預けているお金を返してもらえる権利と思っていただけると分かり易いかと...



問題はここからです。


冒頭から"遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の3分の1に第900条及び第901条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額"と、あります...

また、カッコ内には、"法務省令に定める額を限度とする"とも...


いきなり何を言ってるのか分かりません。


ただ、なんとなくでも"債権額の3分の1""法務省令に定める額"という2つの限度額を定めているのが分かりますでしょうか??




ここがポイントです。




まず、なんの3分の1かと言うと...

債権額とは銀行に対する債権です。
そう、"預貯金"であり、正確には"預金債権"です。

尚、民法900条と901条は、法定相続代襲相続について定められた条文です。
民法で予め定められている相続割合ですね各相続人の。
これを預貯金の3分の1に乗じろとあります。


すると、次のような公式(?)を導き出すことができます。


  • 『預貯金の3分の1×法定相続分』



これについてはまだなんとなくの理解で大丈夫です(後で具体的な事例を紹介しますので。)。
ただし、既に結構難しいと思うので、頑張ってついてきて下さい。


結果、これによって導き出される値が1つ目の限度額となります。



続いて、"法務省令に定める額"というのがありますが、これについては難しいことを考える必要はなく、実は既に決まっています。

【民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令】
民法第909条の2に規定する法務省令で定める額は、150万円とする。


だったら条文上に明記すればいいのにとは思いますが、きっと色々な事情があるのでしょう。
ともあれ、それ以上難しいことは考えず、とりあえずここは単純に"
150万円"と、憶えてください。



そして、これが2つ目の限度額となります。



尚、これについては金額も大事なのですが、他に間違いやすい点があるので注意が必要です。
対象となる条文のカッコ内に、"~預貯金債権の債務者ごとに"と、あるのが分かりますでしょうか?


実は、これ、大事です。


預貯金債権の債務者―
これを簡単に言い換えると、"預金を支払う義務のある者"と、なります。

そうです。
銀行であり、金融機関を指しているわけです。


そうすると―


正確には単に150万円ではなく、


  • 金融機関ごとに150万円



と、言う趣旨の限度額だったわけです。


もうちょっと分かり易い表現にできないのか等々、この条文については色々言いたいことはありますが、これらをまとめますと―


預貯金の仮払い制度とは、金融機関ごとに150万円を上限とし、最大『預貯金の3分の1×法定相続分』にあたる預貯金の払い戻しを受けることができる手続なのです。





2-1.預貯金の仮払い制度の法律的な効果は?

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先にご紹介した条文の後半部分には、仮払いにより法律効果のことが書いてあります。


~当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。~



分かりやすいような、分かりにくいような、微妙な表現に聞こえるかもしれませんね。


預貯金の仮払いを受けた相続人は、その結果として"遺産の一部分割"
受けたものとみなされるという趣旨のものです。

尚、遺産の一部を、他の遺産とは分離または独立させ、まず先に誰が相続するかを決めてしまうことを、一部分割といいます。


預貯金の仮払いで取得した遺産は、その権利を行使した相続人の取り分とみなした上で、他の遺産について分割をするときに、遺産全体についての公平性を保つ趣旨なのでしょう―


おそらくこの辺はかなり分かりにくいとは思うので、なんとなくのイメージでもかいません。
ただ、僕はこれをもってようやっと葬儀費用の問題が解決するのでは?

と、期待していたわけなんです。




2-2.預貯金の仮払い制度の具体的な事例

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条文の解説だけでは分かりにくい点が多々あると思いますので、具体的な参考事例を基に預貯金の仮払い制度を振り返ってみましょう。


~事例~
夫Aが死亡し、その相続人は専業主婦である妻Bと、子であるC、Dであった。
B自身にはこれといった収入がなく、当面の生活費の問題もそうであるが、生前Aは借金をしていたようで、その返済期限が過ぎてしまっている。相続放棄は、住まいの問題(自宅がA名義であり、住宅ローンは団信で完済予定)もあるし、借金自体はそこまで高額ではなく、Aの預金額で十分賄える状況であるため、相当とは言えない。Bとしては、これ以上迷惑をかけたくないのでいち早く借金の返済を済ませてしまいたい。

<預金内容>
X銀行:1,200万円
Y銀行:300万円



それでは、上記事例に合わせて計算してみましょう。
まずは法定相続分です。

尚、法定相続分について、詳しく知りたい方は次の記事をまず参考にしてみて下さい。


「相続って何?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_35/



法定相続分は、妻であるBが4分の2、子であるCとDがそれぞれ4分の1となります。
そのため、妻であるBが単独で行使できる権利は...

X銀行:1,200万円×1/3×2/4(法定相続分)=200万円


と、なりますが、金融機関毎の限度額である150万円を超過してしまっているので、結局のところBがX銀行に行使できる権利は、150万円迄となります。




たぶん説明はこれで十分かと思いますが、せっかくなのでY銀行についても―


Y銀行:300万円×1/3×2/4(法定相続分)=50万円


と、なります。また、当該金額は、金融機関毎の限度額である150万円を超過しているわけではないため、BはY銀行に対し、単独でそのまま50万円の権利行使が可能となるわけです。




結果―



Bは合計200万円の預貯金の仮払いを受けることができました。
これらは他の遺産に先んじてBが遺産の一部分割を受けたものとみなされ、残余の遺産については、原則どおりCとDとを加えた相続人全員で通常どおりの遺産分割を行っていくことになります。




2-3.仮分割の仮処分手続はどう変わった?

改正前からそうですが、仮分割の仮処分手続には、預貯金の仮払い制度のような限度額が定められているわけではありません。

裁判所が認めてくれる限り、一つの金融機関につき、150万円を超える払戻しや、預貯金債権額×法定相続分×3分の1を超える払戻しをすることも、現実的に可能なのです。


ただしー

  • 調停又は審判を申し立てることが前提



この点は変わりません。

まあ、それはそうでしょうね。
元々、預貯金の仮払い制度ではなく、こっちが主の制度なわけですから。


では、相続法改正により何が変わったのでしょうか??

これまでは...

<家事事件手続法200条2項>
家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、強制執行を保全し、又は
事件の関係人の急迫の危険を防止するため必要があるときは、当該申立てをした者又は相手方の申立てにより、遺産の分割の審判を本案とする仮差押え、仮処分その他の必要な保全処分を命ずることができる。

でしたが、上記の条文上で言うところの赤字部分が緩和され...


相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要があると認めるときは、他の共同相続人の利益を害しない限り遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにしたものです。



これだけ??
と、言えばそれまでですが、おそらくだいぶ使いやすくなったのではないでしょうか?

預貯金の仮払いの必要性があると認められる場合には、他の共同相続人の利益を害しない限り、家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになったわけですし...

私的には十分な前進かと思われます。




3.預貯金の仮払い制度における注意点等

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さあ、こまで長々と預貯金の仮払い制度のお話をしてきましたが、実際のところどうなのでしょうか?



  • 本当に便利な手続なのか?
  • もしくは使えない手続なのか?




ある意味、ここからが本題ですね。

なにぶん数日前に施行されたばかりの手続であるため、当ブログ記事を執筆している段階では、僕自身、まだ事務上で経験できているわけではありません。

そのため、後日になって注意事項や感想も変わってくる可能性はあります。



その上で、預貯金の仮払い制度を僕なりに評価するならばー

  • かなり限定的ではあるが、便利な、使える制度だと思っています

とは言え、正直なところ個人的にはもっと期待していました。
その理由は後述しますが、僕が考えていた運用にはちょっと厳しいかな?と思っているからです。


その他、なぜ限定的だと思うのかと言うと―




3-1.一般的な相続案件では出番が少ない??

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率直な感想です。


使えないわけでは決してありません。
ただし、むしろ使わないケースの方がほとんどではないのかと...


その理由は、銀行窓口で必要とされる書類と、手続完了までに要する期間です。
もっと言えば、当該制度の利用を検討してから、無事に完了するまでに要する期間です。



何が言いたいのかというと



制度上、まず大前提として、各相続人の法定相続分を確定する必要があります。
そうでないと、銀行側も仮払いできる上限金額を把握できないでしょうから。

と、なると、必要になってくるのは、被相続人(お亡くなりになられた方)の"出生~死亡までの連続した戸籍謄本等"と各相続人の"現在戸籍"となるのでしょう。
死亡の旨が記載ある戸籍謄本だけでは、相続人が何人いるかを判断することはできないからです。


そうです。
人によってはこの時点でかなり時間がかかってしまうのです。
出生地やその後の本籍地の移動の有無次第では、1ヵ月以上かかってしまうようなことも...


生まれてから死ぬまでずっと川口市に戸籍がある人もいるでしょうが、そうでない人もたくさんいるはずですからね。



預貯金の仮払い制度の最大の売り文句(?)は、生活費や葬儀費用の支払、相続債務の弁済などの急な資金需要に、遺産分割の終了前に対応できることだったと記憶しています。



実際、どうなんでしょう??



少なくとも手続の準備ができた段階では、葬儀は既に終わっていると思いますよ...
出生~死亡迄の戸籍謄本等の取得はもちろんのこと、死亡の旨が記載された戸籍謄本を取得するだけでもある程度の時間がかかりますから(戸籍の記載内容変更のため10日前後を要するのが通常です。
)...


もっと言うならば、必要とされる書類が揃うのであれば、何も預貯金の仮払い制度を使わなくとも、通常の預貯金解凍手続をすればいいとも考えられます...



ただし、勘違いして欲しくないのは、預貯金の仮払い制度は、決して使えない制度ではないということです。
あくまで急な資金需要を要する案件には不向きなだけで、裁判所での調停や審判手続を行わない特殊な相続案件であれば、最大限の効果を発揮することでしょう―


先に同制度をあくまで"限定的"と表現したのは、そのためなのです。




3-2.複雑な相続案件にこそ光る手続

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直近の生活費や葬儀費用等、急な資金需要については、とりあえず忘れましょう。
それらについては更なる手続の改正を待つ他ありません。


では、どのようなケースでの運用が考えられるのでしょうか?
それこそたくさんあるとは思いますが、僕が想定しているのは主に次のようなケースです。


  • ①相続人の中に行方不明者がいる場合
  • ②相続人の中に認知症等を原因とする意思無能力者がいる場合
  • ③相続人の中に未成年者がおり、かつ、親権者と利益相反関係にある場合
  • ④その他、相続調停等を行わないまでも、問題解決までに相応の時間を要する場合



端的に言うと、預金口座の解凍手続までに結構な期間を要する場合ですね。

例えば①のケースですと、最終的には"不在者の財産管理人選任申立手続"を検討する必要があるでしょうし、同じく②のケースですと、"成年後見制度"、③のケースですと、"特別代理人選任手続"が絡んでくるでしょう。


いずれも数日で終了するような手続ではありません。


特に①の行方不明者がいる場合などは、実際の申立迄に調査する期間もある程度必要でしょうし、高額な予納金になってしまうことも多いため、それに充てる意味合いでも同手続は非常に使えそうです。


その他、一見してなんら複雑な状況ではないにしても、相続人の1人が怠慢なため、ただただ手続が進まないことなども考えられます―
相続人の一部が海外の居住しているため、連絡が取りにくかったり、書類の準備に時間がかかることもあるでしょう。


ともあれ急ぎでさえなければ、預貯金の仮払い制度は、多くの需要にマッチする便利な手続であることに違いなにのです。




4.まとめ

今回は預貯金の仮払い制度についてのお話しでした。

ちょっとボリュームが多過ぎましたかね?
なんとなく伝わってくるかと思いますが、僕自身、この制度にはかなり期待していましたから、ついつい張り切りすぎてしまいました...


ちなみに僕は、ある用途での運用を本格的に考えていてました。


そうです。
葬儀費用の問題です。
それも後見制度の絡む案件ですね特に。

現状の問題点を解消する光明になり得るとすら考えていました。


「葬儀費用は誰の負担?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_20/



既述のとおり、預貯金の仮払い制度の効果は遺産の一部分割にあたるため、これまでの諸問題をクリアーできるからです。


おそらく立法者もそれを強く意識していたに違いないと思います。


なぜなら、預貯金の仮払い制度の限度額である"150万円"は、一般に交通事故等の実務上で用いられる葬式費用の相場ですから。

偶然なわけはないでしょう―



ただし、そこまで想定しておいて、なぜ...
そう、思うばかりです。



まあ、手続上の問題は銀行も絡みますからきっと色々あるのでしょうね。
これ以上、僕がどうこう言ったところで変わるわけもありません。

今後の更なる改善に期待しましょう。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一