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成年後見制度

後見制度(後見・保佐・補助)の申立ては誰からできるのか?


いつもお読みいただきありがとうございます。



このところ後見絡みのご相談をいただく機会が増えております。
その際、たまに問題になるのが、誰が後見申立手続の申立人になるのか(なれるのか)?という点です。
分かり易いように見えて、意外と分かり難いんですよね実は...

今回はその辺りを焦点にお送りさせていただきます。




<目 次>



1.誰もが成年後見(保佐・補助)の申立人になれるわけではない

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例えば、近所に昔から世話をしているご老人がいたとします(血縁関係は存在しない。)。
長い付き合いであり、そのご近所さんにとってはある意味、家族以上の付き合いだったと言っても過言ではない状況でした。


そのご老人は、ここ数年で認知症が悪化、後見制度を利用する必要が生じました。
この際、ご近所さん自身がご老人の申立人になれるか否かー



結論からすると、なれません。



理由は後見手続等の申立人になられる者はあらかじめ法律で定められているからです。
尚、詳しくは後述しますが、だからと言って、ご老人に後見人を選任する方法がなくなったわけではありません。
あくまで、世話をしているご近所さん自身が、申立人にはなれないという趣旨のものです。


ちなみに"申立人"とは、裁判所に手続をする方の呼称です。
僕等からすると、手続の依頼人ですね。


ともあれ、上記のような例では、借りご近所さんからご老人の後見申立手続を依頼されても、アドバイスはできるものの、そのまま手続を進めることができないのです。





2.成年後見制度の申立人になれる者

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では、いったい誰が申立人になれるのか?
身寄りがいない方などは、どうなってしまうのか?
親族がいたとしても長年疎遠だったり、関係性が険悪だったり等、適切な申立人がいないケースも考えられるでしょう。


疑問や不安に思われる方も多いのではないでしょうかー


具体的には以下のような決まりがあるのです。




2-1.本人

いきなり妙に思われるかもしれませんが、意思能力・判断能力を欠いているはずの"本人"も申立人になることが認められています。

これは、認知症や精神障害等により、成年後見制度を開始すべき状況であっても、一時的に判断能力を取り戻す場合があることや、保佐や補助等、そこまで顕著に判断能力を欠いていない場合などを加味し、認められているものです。

僕自身の経験からすると、成年後見手続で本人を申立人にすることはまずありませんが、保佐等の申立手続においてはそこまで珍しいものではありません。


ポイントは、本人が申立ての意味内容を理解し、かつ、真意で申立てをしているか否かー


と、言ったところでしょうか。




2-2.配偶者

言わずもがなです。
これについては特に説明もいらないでしょう。

当然、配偶者(妻または夫)は、後見制度の申立人になれます。


2-3.4親等内の親族

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この辺が複雑という言うか、少なくとも分かり難いと思います。
文字にするとシンプルなのですが、最低限の法律知識が必要ですし、なにぶん範囲が広いー

そのため、より正確に把握されたいという方は、次のブログ記事も合わせてご参照ください。


「親族、親戚、家族の定義とは?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_113/



その詳細は、上記の記事でご確認いただくとして、民法上の"親族"とは、6親等内の血族及び配偶者、4親等以内の姻族を指します(民法725条)。
ようするに、後見制度の申立てには、すべての親族が対象になるわけではないのです。



あくまで、可能なのは"4親等内の親族"です。



したがって、それに該当するのはー


4親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族であり、これらの者が後見制度の申立人になることができるわけです。


では、次に4親等内の血族とは誰に当たるのか検討してみましょう
具体的には次のような人物等です。


  • 子供・両親(1親等)
  • 兄弟姉妹・孫・祖父母(2親等)
  • 叔父・叔母・甥姪・曾祖父母(3親等)
  • 従兄弟(4親等)



続いて、より分かり難いのが姻族です。
配偶者側の親戚ですねいわゆる。
3親等内の姻族は、次のような人物等が該当します。


  • 配偶者の子(連れ子)・両親(1親等)
  • 配偶者の兄弟姉妹・孫・祖父母(2親等)
  • 配偶者の叔父・叔母・甥姪・曾祖父母(3親等)



なかなかどうして結構広い範囲に申立権が認められているわけです。

この中で割合多いと言えるのが、養子縁組を行っていない配偶者の連れ子が、本人の後見申立てを行うケースです。
養子縁組を行っていない限り、配偶者の連れ子に相続権はありません。
しかしながら、それでも1親等の姻族であることに変わりないため、後見制度の申立権者になり得るのです。


ただ、確かに広範囲の親族に認められている後見制度の申立権ですが、肝心の親しい友人・知人はここには含まれてはいません。
先に挙げた例題のご近所さんは、やはり後見制度の申立権者にはなれないのです。


もはや手段は残されていないでしょうか?



2-4.市区町村長又は検察官

既述のとおり、ご近所さんは直接後見制度の申立人になれません。
ただし、だからと言って、打つ手がなくなったわけでもありません。


そのような場合には、市区町村長又は検察官からの申立てを検討してみましょう。


市区町村長や検察官も後見制度の申立人になれるのです。

尚、市区町村長による申立てには、あくまで一定の要件に当てはまる必要があります。
具体的には、65
歳以上の者(65歳未満の者で特に必要があると認められるものを含む)知的障がい者精神障がい者について、その福祉を図るために特に必要があると認めるときに市町村長は後見開始の審判等の請求ができるとされているのです。

ちなみに実際の取り扱いは、役所が本人に親族がいるかどうかを調査して、該当する親族がいる場合にはその意向の確認を行ってから手続に入るため、割合、時間がかかってしまう側面があるようです。


制度趣旨的には仕方がないのでしょうけどね...


また、正直、検察官からの申立ては僕自身、全く関与したことがありません。
少なくとも市町村長申立ての類型に該当しなかった場合に、検察官申立て検討するのが無難なのではないでしょうか?


ともあれ、以上のようなことから、後見制度の申立権のないご近所さんは、まず役所に相談すべきなのです。
川口市であれば、市役所内に長寿支援課がありますので、例えばそこに相談する感じですかね。




2-5.その他の申立権者等

他には、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、任意後見受任者、任意後見人、任意後見監督人なども申立権者です。

また、「補助」の申立を行う場合については、本人以外の者が申立てをする際、必ず本人の同意が必要になりますのでご注意を。





3.まとめ

誰を後見制度の申立人にすべきか?
むしろ依頼者は申立人になれるか?


僕自身、たまに迷うことがあります。
分かり難いんですよね本当に。


そのため、今後、迷うことのないよう記事にまとめてみた次第です。
まあ、なので半分は備忘録です。

直接関係する方はそう多くないかもしれませんが、よろしければ参考にしてみてください。

それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一