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不動産登記

(根)抵当権は完済したらなるべく早めに抹消手続を行いましょう



いつもお読みいただきありがとうございます。



なにかとバタバタしていてブログの更新頻度が微妙になってました...
ちょっとだけ落ち着いた(?)ような気もしますので、ここからどうにか盛り返していければと思っております。



さて、今回は(根)抵当権の抹消登記のお話しです。
抵当権自体イメージしにくいかもしれませんが、わりと日常的に関与していることが多いものです。
持ち家などを購入された経験がある方は特に―


そうです。住宅ローンを借りた際に銀行から設定される"あれ"です。
尚、それらはなにも住宅ローンに限られるものでもありません。


会社経営者の方や個人事業主の方であれば、事業資金として借入れを行った際に抵当権や根抵当権を設定されたり、そうでなくとも個人のお金を貸し借りの際に設定されることもあります。


これらが借金完済後も長期間放置されているケースが殊の外多くあるのです。


それによってどのような問題が生じる恐れがあるのか?
その解決方法等、ご紹介致します。




<目 次>





1.完済してもその旨の登記を行わない限り勝手に抹消されることはない

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抵当権や根抵当権を設定するのに登記が必要になるのと同じで、当然ながらそれらを抹消するのにもその旨の登記が必要になってきます。
例えば金融機関が借金完済に伴い、抵当権や根抵当権を抹消してくれるわけでも、法務局が自動的に抹消してくれるわけでもありません。

それらの作業は、面倒でも不動産の所有者(または共有者)となる者が任意に行う他ないわけです。


あくまで、それが結論です。
何もしなければ、ある意味ずっとそのままです。


尚、借金の相手先が金融機関であれば、完済後、まず間違いなく抵当権や根抵当権を抹消するのに必要となる書類一式を渡してくれます。
住宅ローンを完済された経験がある方であれば、思い当たる節があるのではないでしょうか。
今はまだ住宅ローンを返済中の方であれば、いずれはそうなるはずですので、まずはそうした認識を持っておく事が大切です。


問題はその後です。
書類一式が届いたらそのままにするのは極力避けましょう。
いつかどうにかしようでは、きっとそのままです。


法務局へ行ってご自身で登記を行うか、それが面倒であれば司法書士へ手続を依頼しましょう。
尚、抵当権や根抵当権の抹消登記は、基本的には簡単な部類の登記に入ります。
そのため費用的にもそう高くはなく、司法書士に依頼しても、総額で2~3万円で済むことが多いと思われます(ただし、金融機関の住宅ローン完済の場合となります。)。



何の手続も講じないまま放置しておくと...


忘れた頃に何らかの原因で抹消されていない事実が明らかになり、余計な手間と費用がかかってしまうというカラクリなのです。
ちなみに、経験上、対象となる不動産の所有者に相続が発生した場合や、売却を検討した際などにそうした事実が判明するケースが多いように思えます。


そして、これ、場合によってはかなり面倒になってしまうこともあるのです―





1-1.抹消登記に期限はあるのか?

そもそも、なぜそのようなことが起こるのかと言うとー


相続登記等と同様、抹消登記についても期限はありません。
すべて任意であり、あくまでやるやらないの判断は不動産の所有者に委ねられているわけです。
いつ外してもいいし、外さないことへの罰則もないと...


以前、当ブログで土地の相続登記の義務化の記事をご紹介しましたが、それについても現状において実現できているわけではありません(予定だと本年中のはずなのですが...)。
どうやら、登記手続を義務化するには色々な壁があるようです。


ともあれ、義務化されない以上は、各自で意識する他ないのです。





1-2.放置することによって起こり得ること

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既述のとおり、本来は簡単なはずの(根)抵当権の抹消登記ですが、長期間放置してしまっていると場合によってはかなり難しい部類の登記に、時には裁判所を用いらざるを得ない程に変貌することがあるのです。


どうしても意識は借金の方に集中しがちですので、それを完済した後となれば気が緩んでしまうのは、ある意味で道理とも言えます。
だからこそ完済したまま何年も、場合によっては何十年も放置されたままになっている抵当権や根抵当権が多く存在することになるのでしょう。



では、いったいどのようなことが起こり得るのか??


端的に言うと、当事者が代わってしまう可能性があるのです。
ちなみに、抵当権や根抵当権を設定している者のことを、"抵当権者""根抵当権者"と呼びます。


例えば、(根)抵当権者が個人の場合であれば、"相続"が発生すれば当事者が代わります。
(根)抵当権者が金融機関を含む法人の場合であれば、"合併""会社分割"等によっても当事者は変わります。
法人の場合はこれに加え、"清算決了"というものもあります。
分かり易い言い方でいうと、"倒産"ですね。


当事者が代わると、当然ながら手続もそれに合わせたものへと変わっていきます。
単に手間だけならまだいいのですが、時にはそれ以上のことが起こってしまうことも...




1-3.(根)抵当権者に相続が発生した場合

個人である(根)抵当権者の相続が発生してしまった場合、まずは亡くられた方の戸籍謄本等(出生~死亡迄)と除住民票、各相続人の戸籍謄本は必須となります。
誰が相続人になるのかを証する必要があるためです。
その他、状況に応じて書類は変わってきます。

この辺の考え方は所有権相続の場合と同様ですね。
当然、必要書類の収集に関し、同じぐらいの手間がかかってしまうと...


尚、だからと言って、必ず(根)抵当権の相続登記が必要になるとは限りません。
解除原因日付(弁済日や解除日等)が、(根)抵当権権者の死亡日の前か後かによって結論が異なってくるのです。
以下、簡単にまとめてみます。



解除原因日付(弁済日や解除日等)が、(根)抵当権権者の死亡日の前である場合はー

  • (根)抵当権者を登記義務者とし、便宜その相続人全員が申請人となる
    ※必要書類の収集等手間はかかってしまうが(根)抵当権自体の相続登記は不要



解除原因日付(弁済日や解除日等)が、(根)抵当権権者の死亡日の後である場合はー

  • (根)抵当権について相続登記を行った後、その相続人自体が登記義務者となる
    ※必要書類収集の手間に加え、(根)抵当権の相続登記の費用が発生してしまう




面倒ですよね。ただ、これだけで済めばまだ良い方です。
言っても手間と費用だけですから。


このようなケースで本当の意味で厄介なのは、相続人の協力を得られるか否かと言う点です。
個人間の貸し借りであれば、借金がその時点でどうなっているのかよく分からないことも多いと言えます。
ただでさえ巻き込まれた感じの相続人は登記への協力を渋ることも...


(根)抵当権の抹消登記とは言え、登記の原則は共同申請です。
それを覆すには裁判しかありません。


ようするに、仮に相続人の協力が得られないとなると、場合によって裁判沙汰に発展してしまうこともあるわけです。
防げるのであれば是が非でも防ぎたいものですね。




1-4.(根)抵当権者に合併や会社分割が発生した場合

相続同様、合併や会社分割により当事者が変わることになります。
ただし、これについてはそこまで心配する必要はないかもしれません。
対象が金融機関であればなおのことです。


それ自体、結構、よくある話なので。


抹消手続を放置しているか否かに関わらず、金融機関が組織変更を行うことはざらにあります。
それ故にトラブルになりにくいとー

尚、金融機関ではなく、一般法人の合併であれば多少注意は必要になってくるでしょうが、それでも個人の相続に比べれば楽な部類に入ると言えるでしょう。
次に説明する清算決了とは異なり、権利の承継先(合併先等)も存在するため、そことの調整がつきさえすればと言ったところでしょう。




1-5.(根)抵当権者が清算決了してしまっている場合

これはかなり厄介な状態です。


法人の清算決了とは、人で言うところの"相続"に近しい状況を指します。
清算結了による登記がされると、法人は完全に消滅したものとして登記情報も閉鎖されてしまうのです。


ただし、相続とは大きく異なる点も存在します。


相続人なるものが、合併等のようにその義務を承継する者が、何ら存在しない状態になってしまうのです。
尚、精算手続中であれば、清算人がその任を負うこととなりますが、精算決了の登記がなされると、原則として清算人の任務も完結します。
いわゆる、(根)抵当権を抹消しようにもその相手先がいない状態になってしまうわけです...


では、どうすればいいのでしょうか??


原則は対象となる法人の精算業務のやり直しです。
なぜなら、本来、精算業務の一環として、対象となる(根)抵当権の処理をすべき状況にあったはずだからです。
具体的には、当該清算結了登記を抹消した上で、法人を復活させ、目的となる(根)抵当権抹消登記を行う流れです。


しかしながら、それは言うほど簡単な手続ではなく、むしろ、現実的にはかなり困難だと言えるでしょう。
(根)抵当権の抹消だけを目的として、清算決了のやる直しなんてそうそうできるわけがありません。
費用、期間、利害関係人等々、問題は山積みですからー


もはや、打つ手はないのでしょうか...


結論からすると、ないわけではありません。
僕自身、だいぶ苦戦しながらも何度か似たような案件を処理した経験もあります。

条件付きにはなってしまいますが、これに対する救済処置のようなものが存在するのです。
具体的には以下のような取り扱いとなります。


  • 対象となる(根)抵当権の被担保債権(元の借金)が精算決了より前に消滅していれば(完済していれば)、その旨の抹消登記は旧清算人から申請することができる



清算決了のやり直しをせず、便宜、旧清算人の協力の元、抹消の登記申請が可能という趣旨のものです。
ただ、これも長期間放置されていたものであれば、そう簡単にはいかない可能性も高いです。

なにせ人ですから、清算人も。
期間経過によってどうなるか...

大事なのはそうなってからではなく、そうしないようにする意識です。
その点、ご注意ください。




2.まとめ

今回は(根)抵当権抹消に関するお話しでした。

本来なら簡単なはずの手続が、どこまででも複雑になっていくという怖めの内容ですね。
そして、これ、なにも珍しい話ではありません。


最近、類似したご相談をよくいただきますので...


興味本位でもいいので、一度、ご自身や両親名義の不動産の登記簿を法務局で取得してみてはいかがでしょう?
案外、完済はしたけれどそのままになっている(根)抵当権が存在するかもしれません。
もしくは、把握していない、忘れていたものが存在するかも...


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一