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債務整理

或る借金の話 ~後編~

それなりに反響があったようなので、後編をお送りさせていただきます。
ただし、ドラマティックな展開や、あっと驚くようなオチがあるわけではありません。

その点、悪しからず―

前回までのあらすじ

ふとした切っ掛けで多額の借金を負ってしまった『私』。
自己破産を覚悟して司法書士事務所に相談に赴くも、それとは異なる可能性を提示される。

⇒ 或る借金の話 ~前編~

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2015.6
まず聞かれたのは家のことだった。
やはり状況的に厳しいものがあるのだろう。

私としては自己破産を覚悟していたし、それによって家を失ってしまうであろうことは予想していた。

こうなってしまったのは誰がどう考えても私の責任である。
それも仕方がないだろう。

ただし、司法書士には『できることなら家を、自宅を守りたい』旨を伝えていた。

虫のよい話かもしれないが、家族のことを思うとそれ以外の言葉が見付からなかったのである。

その他に、収入面、財産面、住宅ローンの内容等を詳しく聞かれ、自分なりに分かる範囲で応答した。
そうしたやりとりを数十分、あるいは1時間以上行っていたかもしれない。

ひどく疲れたのをおぼえている。

数日後
おそらく妻も察しが付いていたことだろう。

相続でも起きない限り司法書士事務所なんてそうそう行くものではない。
いきなりそこについて来てくれというのだから―

ちなみにこの時点で妻に借金を打ち明けられていたわけではなかった。
できればその方が良かったのであろうが、そうでない選択肢を選んだわけである。

とは言え、これまでのように逃げの一手というわけではない。
単に状況と解決策を的確に伝えられる自信が私にはなかっただけだ。

司法書士には悪いと思っていたが、そこは快く協力してくれることになっていた。

ではなぜ妻に打ち明ける気になれたかというと―

なんてことはない。
妻の協力を得ることを手続受任の条件にされたからである。

誤解がないように言うと、借金問題は必ずしもオープンにしなければならないわけではないらしい。
家族に秘密のまま手続を進めることも可能であるし、実際、そのようなケースは多いと言う。

ただ、ケースバイケースであるとも―

私の場合は打ち明けた方が良いと判断されたのだろう。
もうそこは任せるしかない。

これ以上あれこれ考えるよりは、提示されたの可能性にかけてみようと思っていたのだ。

妻の協力が可能であれば、家を失わずに借金を解決できるという可能性に。

当然と言えば当然だろう。
司法書士の話す内容に妻はただただ驚いていた。
もちろん怒っているようでもあった。

ただしそれは借金の事実そのものよりも、それを私が隠していたこと自体に向けられているようだった。

前回同様、小一時間程話しただろうか。
おそらく出口が見えている状態での説明が良かったのだと思う。

妻は想像していたよりもすんなり納得してくれ、手続の協力を得ることができたのである。

司法書士が提案してきた手続は、個人再生というものだった。

個人再生手続(司法書士九九法務事務所)
https://99help.info/service/bankruptcy/post_47/


簡単に言うと、住宅ローンはこれまでどおり支払いつつ、他の借金を大きく減額する方法らしい。

これが成功したとするならば、私の場合だと、約100万円の支払いで済むことになるそうだ。
しかも支払いに利息は付かないという。

現状の『400万円+利息』の借金が、手続後には『100万円』のみになるのだ。
その効果は絶大である。

ただし、その100万円は原則として3年間で返済し終わる必要があるらしい。

月額にすると2万円強の返済額といったところだろうか。

正直な話、私にはそれが難しいことのようには思えなかった。
なぜならば、これまで毎月それ以上の金額を何年も返済していたのだから―

そうした私の甘い考えを見透かすように司法書士は話を続けた。

おそらく半年間であれば誰でもできると。
貯金に置き換えて考えると分かり易いとも。

私はそれを聞いて自身の勘違いに気付くことができた。

確かに借金生活の後半は月に10万円以上を支払っていた。
その感覚が残っていたのである。

ただし、それは借金返済のために新たな借入れをしていたからこそ可能な芸当だったわけだ。
贔屓目にみても、月に10万円を貯金できる状態には程遠いものがあっただろう。

毎月約3万円の貯金を3年間続けられるかどうか―

私から何も言わずとも、日々家計に向き合っている妻にはその意味が十分に伝わっているようだった。

2015.12
司法書士が妻の協力を条件としたのは、単に手続的な部分だけではなく、意識的な部分が大きかったように思える。

あれから細かく色んなことが変わった。

当然、小遣いは減らされたし、外食の機会も減った。
仕事関係の飲みも必要最低限に抑えている。
ちなみに今のところそれによる支障は出ていない。

むしろ健康的になったのではないだろうか。

それと、この半年の間に何をやっていたかにも触れておこう。

司法書士の事務所へはこれまで2~3度訪問しただろうか。
当初は毎週のように呼ばれるのでは?と思っていたがそんなことはなかった。

その代わりにというわけではなかったが、色々と宿題を提示されていた。

メインとなるのが履行テストである。
実際に支払いができるかどうかのテストを行う趣旨らしい。

ちなみに私の場合だと、想定される支払額(約3万円)より多い、月額4万円を毎月振り込むよう指示されていた。
尚、住宅ローン以外の借金の支払いはすべて司法書士が止めていてくれたため、二重払いになるようなこともなかった。

その他は、家計簿の作成と指示された財産関係書類の取集である。

いずれも大したことではなかったが、それなりに大変だったように思う。

2016.1

不足書類の提出と、状況報告のため司法書士事務所を訪れた。

履行テストに失敗はない。
必要書類の収集もこれで済んだはずだ。

後は司法書士による裁判所への申立てを待つばかりである。

確かにここまで来るのには妻の協力が必須だったろう。
書類の収集もそうだが、うまく家計のやりくりをしてくれた部分が殊の外大きいように思う。

多めに履行テストをしていこともあり、本番になれば幾分生活も楽になるはずだ。
そう思えることがどこか嬉しい。

ただし気を抜くつもりは毛頭ない。
仮に個人再生を失敗してしまったら、今度は本当に自己破産になってしまうだろうから―

あくまで司法書士に聞いた話だが、残念ながら途中で個人再生の支払いに失敗してしまう人は少なくないらしい。

自分がそうならぬよう気を引き締めていく次第だ。