取扱業務
借金問題のご相談について個人再生手続(小規模個人再生、給与所得者等再生)
個人再生手続とは―
『将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、債務者が抱える債務のうち公租公課を除いたもの再生債権の総額、が5000万円を超えない個人である債務者が行う、民事再生法221条1項に規定する特則の適用を受ける民事再生手続』を指します。
また、個人再生手続には『小規模個人再生』と『給与所得者等再生」の2種類が存在し、内、一般的な手続が『小規模個人再生』であり、下記の諸々の説明は『小規模個人再生』を前提としております。
尚、『給与所得者等再生』に興味がある方につきましては、こちらをご参照ください―
「給与所得者等再生手続とは/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_52/
と、まぁ出だしから分かりにくいですよね随分。
なかなかどうして、まっとうに説明してしまうと理解するのが難解な手続なのです。
ただし、その代わりと言うわけではないですが、かなり便利な手続でもあります。
そこで、ここではなるべくわかりやすく個人再生手続を紐解いていければと思っています。
(目次)
1.個人再生手続のメリット
個人再生は2001年4月1日にスタートした比較的新しい制度です。
そのためか世間の認知度はまだまだですが、とても便利な制度ですので当てはまる方は是非ご検討してみてはいかがでしょうか。
(1)自宅を手放さずに行う借金解決方法です
戸建であってもマンションであっても、自宅というのはほとんどすべての人にとって人生最大の買い物であり、また子供等子孫に残しておきたいと思う大切な財産でしょう。
ただし、諸々の理由によって自力では返済困難な借金を負ってしまった場合、それを手放さなければならない危機に直面してしまうかもしれません。
個人再生はそのような場面(借金で自宅を手放さなければならない可能性がある場合)において、最大の効果を発揮する手続なのです。
具体的には原則として、従前の住宅ローンの支払いはそのままに、他の借金を大きく減額(例:借金の免除率80%前後)することが可能となります。
結果、同手続に基づく支払いを完了すれば、無事ご自宅を守ることが可能となるわけです。
とにかく自宅を守りたい、自己破産はしたくない方にとって最適な手続と言えるでしょう。
(2)借金の元本を大幅に減額することができます
任意整理手続では、将来的な利息を免除することができたとしても、借金の元本自体を減額することはまず不可能でした(適正な利息である限り500万円の借金を100万円に減額することはできません。)。
それに対し―
個人再生手続では借金額、財産状況等、諸々の要件にもよりますが、大幅な減額(例:借金の免除率80%前後)が可能となることがあります。
自己破産のように借金がゼロになるようなことはありませんが、それこそ適正な利息である500万円の借金を、利息なしの約100万円にまで減額するようなことができたりもするのです。
(手続前)借金500万円+利息 ⇒ (手続後)借金約100万円、利息は免除
尚、個人再生手続は必ずしも住宅ローンの存在が必須というわけではありません。
住宅ローンはなくとも、単に大幅な借金の減額のためだけに個人再生手続を利用することも可能です。
(3)比較的大きな財産であっても処分(換価)の対象にならないことがあります
自己破産を行う場合、原則20万円を超える財産は処分(換価)の対象となってしまいます。
対して個人再生では必ずしも財産を処分する必要はありません。
例えば解約返戻金(保険を解約した際に戻ってくるお金)が100万円の保険契約があったとします。
自己破産の手続上では、原則としてこの保険は換価(お金に換えると言う意味です。)し、借金の返済に充てられることとなります。
要するに解約しなければならないケースが多いわけです。
しかしながら、個人再生手続では必ずしもそうとは限りません。
仮にその金額の保険契約であっても、収入や借金額、他の財産状況次第では保持し続けることも可能となるわけです。
当然ながらすべてについてそう言えるわけではありませんが、個人再生は自己破産とは異なり、財産を保持しながら借金を大きく減額できる手続なのです。
(4)資格制限がありません
『資格制限』という言葉があります。
自己破産を行った場合などに、ある一定の職業・資格に一時的に就けなくなってしまうことです。
これは聞いたことがあるのではないでしょうか?
個人再生にはこうした『資格制限』の適用がありません。
自己破産のデメリットを補完できる手続なのです―
仮に次に記載する代表的な資格制限のある職業の方であっても、個人再生の手続を利用することが可能というわけです。
関係のない人には全く関係ない話ですが、関係ある人には殊の外、大きなメリットとなることでしょう。
代表的な資格制限のある職業例
- 保険業
- 警備員、警備業者
- 士業(弁護士、税理士、司法書士、行政書士、土地建物取引士等々・・)
- 旅行業
- 通関士
- 貸金業者
- 質屋
※あくまで一例でありここにあるものが全てではありません。
尚、会社の取締役などは欠格事由にはならないのですが、在任中に自己破産を行うと、会社との委任契約がそこで終了となるため、結局は退任することとなります。
(5)借金の理由を問いません
自己破産とは異なり、個人再生は借金の理由を問いません。
例え借金の原因が遊興費やギャンブルであった場合でも、個人再生手続をとることが可能となります。
基本的に自己破産は財産内容と借金の原因がキーとなりますが、個人再生は実際にその支払いを継続できるかどうかが最重要視される手続なのです。
(6)これ以上家族に迷惑がかかることがありません
これは自己破産や債務整理についても言えることなのですが、借金はあくまで『債務者』と言う借主だけの責任となります。
そのためご家族が借金の保証人にさえなっていない限り、ご家族の財産(例えば配偶者の保険等)や仕事に影響を与えるものではありません。
当然、お子様についても同様です―
もし仮にそれを懸念して手続に踏み切れていない方がいるようでしたら、これ以上悪化する前に何らかの手を打つことこそが最もご家族に迷惑がかからない手段と言えるでしょう。
2.個人再生手続の要件
多くのメリットについては記述のとおりですが、デメリットと言えば―
個人再生手続(小規模個人再生、給与所得者等再生)は、誰にでも無条件でできるわけではない点です。
マンションや戸建て等の自宅を守る上で、その他の財産を守る上でも、非常に便利な手続であることに違いはありませんが、手続上、幾つかの要件を満たしている必要があります。
仮に一つでも当てはまらないのであれば、残念ながら同手続を用いることができなくなってしまいます―
よく確認してみてください。
以下、個人再生手続の要件を列挙致します。
- 債務者(借主)が個人であること
利用できるのは個人だけです。
法人では使えません。
ただし個人事業者は、あくまで法人ではなく個人であるため手続をとることが可能です。
尚、それらの違いを簡単に言うと、法務局に対し法人設立の登記を行っているかどうかです。
単に税務署に開業届出を行っているだけの状態では法人ではなく、あくまで個人事業者となります。 - 債務者(借主)が継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること
個人再生は返済を継続していく手続ですので、少なくとも3年間にわたって反復継続して収入を得る見込みが必要となります。
ただし、それを満たしている限り、正社員であることが必ずしも求められるものではありません。
派遣社員やアルバイトであっても、裁判所の認可が下りたケースは多々あります。
また、転職直後であっても要件さえ満たせば同手続を取ることが可能となります。 - 住宅ローンを除く借金総額が5,000万円を超えないこと
これは手続上の要件となりますが、さすがに一般的な案件において、この条件に引っ掛かる事はごく稀だと思われます。 - 再生計画案で減額された借金を原則3年で返済(例外として5年)できること。かつ、3か月に1回以上の割合で債権者に返済することができること。
例えば月1回返済を3年間で完済する計画をたてた場合、年12回3年で36回の分割払いになります。
相応の資力さえあればなんてことはない要件です。
3.個人再生手続を利用できないパターン例
個人再生は自宅を手放さずに借金を大きく減額できる等、非常に便利な手続なのですが、残念ながら万能の手続というわけではありません。
「2.個人再生手続の要件」同様、個人再生手続のデメリットと言えるでしょう―
以下に当てはまってしまう場合は黄色信号ですので、個人再生手続をご検討であれば早めにご相談下さい。
- 安定した収入がない場合
あくまで個人再生は借金を支払う手続です。
そのため最低限の安定収入が必要となります。
具体的には、家賃、住宅ローンを含めた一般的な生活費(食費、電気光熱費等)に加え、+3万円の借金額の支払いをイメージしてください。
なんだ簡単じゃないか―
そう思える方はおそらく大丈夫です。
ただし、+3万円はそんなに低いハードルでないですよ。
それが原則3年続きます。
当然それを払いきれば借金は完済です。
ようするに住宅ローンの支払いだけで手一杯のご家庭は、個人再生手続には不向きと言えるわけです。あくまで住宅ローンの支払いをそのままに他の借金を大きく減額できる手続なのですから。
反面、収入が安定さえしていれば必ずしも正社員である必要はありません。
転職したてであっても、アルバイトや契約社員でも問題はありません。
あくまで重視されるは安定的な資力なのです。
尚、個人再生に基づく支払いは何も毎月の給与だけが基準となるわけではありません。
安定した見込み賞与があるのであれば、それを併用した支払いも可能となります(それによって毎月の支払金額を下げることも可能になります。)。
加えて、仮に本人に安定した収入がなくとも、生計を共にする他の家族(配偶者等)の収入が安定しており、かつ、その者が個人再生手続に基づく支払いに了承している場合は、裁判所により手続が認可されることも多くあります。
収入が低いからと言って諦めるのではなく、まずはご相談してみて下さい。
あるいは解決までの道筋が開けるかもしれません。 - 借金はあるが財産を処分すればその返済が可能である場合
自己破産同様、個人再生の要件の一つに『借金の支払いが困難なこと』というものがあります。
当然と言えば当然ですよね。
でなければ払えちゃいますから。
それでもたまに起こり得ます。
典型例はご自宅がオーバーローンではなかったような場合です。
まずはオーバーローンという言葉の簡単なご説明から・・・
一般的には不動産の価値は経年と共に低下します。
そのため、いずれ自宅の価値よりも住宅ローンの残債の方が大きくなることが考えられます。
仮に売却しても住宅ローンが残ってしまうような状態です。
このような状態を『オーバーローン』と言います。
ローン金額が不動産の価値をオーバーしているわけです。
ただし当然そうならない場合もあります。
不動産の購入時に頭金を多く入れた場合や、不動産価値自体が上昇した場合です。
特に後者は本来喜ばしいことなのですが、個人再生の手続だけをみるとネックになってしまうわけです。
尚、東京都内だけに限らず不動産価値の上昇は川口や蕨、戸田でも行っています。
駅前のマンションなどは新築時の価値よりも上がっているものも多くあります。
仮に不動産を処分したとすれば住宅ローンを含め他の借金もすべて完済できるとしたら・・・
自己破産は元より個人再生をとることも正直な話、厳しくなってきます。
また借金完済とはいかないまでも、財産を処分すれば十分に支払可能になる場合なども同様です。
ただし仮にこれらにあてはまる場合であっても諦めずに一度は詳細をご相談下さい。
勘違いされていることもあれば査定書がおかしい可能性もあります。
ご自宅を守るためにやれることはすべてやりきりましょう。 - 一定の債権者が個人再生に異議を出した場合
これは小規模個人再生特有の条件となります。
一定の債権者とは、借金総額の半分以上を有する債権者、もしくは、全債権者の半数以上を指します。分かりにくいと思われますので、例を挙げてみますと―
【例】債権者3社 借金総額500万円(A社:300万円、B社100万円、C社100万円)
この場合、A社への借金額は全体の半数を超えていますので、仮にA社が小規模個人再生に異議を出せば手続はできません。
対してB社、C社は単独では要件を満たせませんが、B社C社が共に小規模個人再生手続に異議を出す場合は、もう一つの要件である、全債権者の半数以上を満たすこととなりますので、同じく小規模個人再生手続を用いることができなくなってしまいます。
とは言え、一部の会社を除き(実際に案件に関わらず異議をだしてくる会社は存在します。)、よっぽどのことがない限り債権者が異議を出す可能性は低いと言えます。
仮にその心配がある場合は、事前の債権者との協議やもう一つの個人再生手続である給与所得者等再生を用いることでそのリスクを回避することが可能です。
打つ手がないくなるわけではないので、その点はご安心ください。 - 滞納税金の支払いがある場合
自己破産手続にも同様のことが言えますが、国の権利たる税金の滞納については、個人再生手続をとったとしても減額ができるわけではありません。
そのため、国保や市県民税等の滞納が存在する場合には、役所と分納契約等を行う必要性が生じ、実際にそれに基づく返済を行わなければなりません。
結果、それを行う経済的余裕がない場合は、個人再生手続を行うことが困難になってしまうことがあり得るのです。
4.個人再生手続きの流れ
司法書士九九法務事務所に個人再生をご依頼いただいた際の手続の流れについてご説明致します。
- 当事務所に来所いただき面談
ご依頼者様とは司法書士が必ず一度は面談させていただきます。
あくまで当事務所では直の面談にこだわらせていただいております。
メールや電話だけではどうしても伝わりにくい部分があるからです。
次のアポイントでもない限り面談に時間制限があるわけではないため、ご質問、ご不明点等あればなんでもお申し付け下さい。 - 各債権者(借金先)へ受任通知の発送
業務を受任しましたらば直ちに各債権者(借金先)に対して『受任通知』という書面を発送します。
これは借金先に借入れの履歴等正確な借金内容の開示を求める書面であり、同時に司法書士が手続に介入するため債務者(お金を借りた人)に対し直接借金の取立行為をしないよう通知する書面でもあります。
結果、後に裁判所が行う個人再生の認可決定に基づく支払いが開始するまで、借金先へ何ら返済を行うことはありません。 - 司法書士報酬の積立及び履行テスト
受任通知を提出すると借金先への返済が止まりますので、その期間を利用いただき毎月司法書士報酬と予納金の積立を行っていただきます。
尚、この際の入金額は個人再生の返済予定額に近いものとします。実際に借金先へ返済できるかどうかの履行テストの意味合いもあるわけです。
そのため司法書士報酬を超える積立になってしまう場合もありますが、和解終了後にきっちりご精算させていただきます。 - 必要書類の収集
住民票、源泉徴収票、その他、財産関係の書類の収集をご指示致します。
これらのほとんどは、ご本人さんでないと集められない書面ですのでご協力願います。 - 管轄裁判所への申立て
基本的には必要書類及び予納金、司法書士報酬の積立がすべて終了次第、管轄の裁判所(住所地を管轄する地方裁判所)に申立てを行います。
尚、川口市、戸田市、蕨市、さいたま市の管轄はいずれもさいたま地方裁判所(本局)となります。
ちなみに越谷市や草加市などは越谷支部での申立てです。
ここまでで早い人ですと3~4ヶ月くらいです。
ちなみに長い人だと1年以上もかかる場合もあります。 - 再生委員の選任及び訪問
申立後、裁判所が再生委員というものを選任します。
自己破産でいうところの管財人に近いのですが、ようするに監査機関のようなものです。
実際に支払いが可能かどうかを中心に、その他、財産状況等もあわせて監査されることとなります。 - 履行テストの実施
再生委員が具体手的に支払いできるかどうかを監査する方法がこの履行テストです。
実際に支払い相当額の積立を計3~5回行います(もちろん後で清算されます。)。 - 再生計画の認可決定
依頼者に履行テストを行っていただいてる間、司法書士は再生委員と打ち合わせながら『再生計画案』というものを作成します。
返済額等、細かい支払条件を記した計画書のようなものです。
これに対し裁判所の認可を受けることが本手続の目的となります。 - 再生計画の認可決定の確定
認可決定の後、問題がなければ1ヶ月程度でこの確定が裁判所よりなされます。 - 再生計画に基づく支払いの開始
ここでようやっと各債権者への支払いを開始することになります。
後はしっかり支払いを行っていただければ無事借金完済に至ることでしょう。
この手続は、平均すると裁判所への申立から支払開始まで半年と言った具合であり、手続受任の段階から含めると最短でも1年近くに及びます。
ある意味、長い付き合いになるわけです。
専門家選びは慎重に。
5.費用・報酬
こちらを参照下さい。