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相続

生前の相続放棄(遺産放棄)は無効です

今回は相続放棄(遺産放棄)についてのお話です。

このところ質問されるケースが多いので記事にしてみました。
今後の参考になるかどうかはあれですが、知っていて損はないはずです。

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とにかくできません

理由は人によってそれぞれですが、事前の相続放棄(遺産放棄)の相談を受けることがあります。
例えば―

  • 他の兄弟姉妹と関わり合いを持ちたくないから
  • 親の借金が怖いから
  • 相続しても仕方ない不動産(田畑等)だから

忘れぬうちにあらかじめ相続放棄をしておきたい!


と、言うような要望であったり、あるいは次のようなことを原因とする場合もあります。

  • 両親の面倒をみないから
  • 既に十分な額の財産をもらっているから
  • そもそも必要ないだろうから
  • 親の財産は自分だけのものと理解しているから

後で権利を主張できないよう事前に遺産放棄をさせておきたい!

ちなみに理由はどうあれできません。
それが相続放棄を『したい』であっても『させたい』であっても。

法律上、生前の相続放棄(遺産放棄)は無効なのです。

なぜ??

そう思われる方も多いでしょうが、個人的には至極当然のことだと思っています。

事前に相続放棄(遺産放棄)ができない理由

よ~く考えてみてください。

仮に生前に相続放棄(遺産放棄)が可能だとするなら何が起こりそうですか?

これはもう絶対に悪用されてしまいます。
まずもって、強要する、もしくは強要されるような事態が多発してしまうでしょう。

ただでさえ多い相続トラブル。
これ以上、増やしてどうするのという話です。

もう一つ根本的な理由があります。
どちらかと言うと、こちらが法律上正しい回答になるのでしょう。

そもそも『相続が発生していない』からです。

生物である以上、誰しもが必ず死にます。
相続は仮にではなく確実に発生することなのです。

しかし、たとえ確実なものであったとしても、現実に発生すらしていないことをあらかじめ放棄することはできません。

正当な放棄する意思があったしても、『何を』という部分が欠けている限り、それを認めないのが法律なのです。

加えて状況は常に変化します。

今後財産が増えるかもしれません。
仲違いも解消する可能性があります。

放棄しようと思っていた原因が解消する可能性もあるわけです。

結果、あくまですべてが確定した時点(死亡時点)でないとの相続放棄は行えないとの結論に至ることとなります。

代替案はないのか?

相続放棄は相続が起こってからしかできないのは記述のとおりです。
法律が変わらない限りこの現実は動かせません。

であればこれ以上それ論じるよりは、代替案を立てる方が随分建設的なのではないでしょうか?

事前に相続放棄(遺産放棄)をしておきたい理由はなんですか?

借金が原因であるならば、むしろ方向性を変えて債務整理手続を検討するのもありです。

債務整理(自己破産・個人再生・任意整理)『司法書士九九法務事務所HP』
https://99help.info/service/bankruptcy/

その結果によっては相続放棄自体が不要になるかもしれません。

あるいは相続放棄は期間制限があるから怖い―
そういう方もいるでしょう。

とは言え、まず大丈夫です。

事前に相続放棄を検討するぐらい意識の高い方が手続を忘れるとは思えません。

少し堅苦しくなってしまいますが、ここで民法の条文をみてみましょう。

民法第915条  
相続人は、自己のために相続の開始があつたことを知った時から3カ月以内に、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。但し、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において、これを伸長することができる

たしかに相続放棄には期間制限があります。
ただし、単に3ケ月ではありません。

あくまで、『相続の開始があったことを知った時から』です。

知らないうちに期間が経過することはありませんし、知った後も相続するかどうかを考える期間(熟考期間といいます。)を伸長することが可能なのです。

相続放棄の期間伸長手続(司法書士九九法務事務所HP)
https://99help.info/service/succession/post_25/


慌てずにじっくり考えましょう。
十分それで間に合うはずです。

相続放棄をさせたい理由はなんですか?

私利私欲が目的なのであれば―
なんというか頑張ってください。

それ以外の理由、例えば両親の介護などが関係する場合はどうでしょう。

介護は大変です本当に。
そのため、遺産を多くもらっておきたいという気持ちも十分理解できます。

しかしそれとこれとは別問題なのです。

だからと言って生前の相続放棄が認められるとの結論には至りません。

尚、民法にはこうした場合に備え、『寄与分』というものが存在します。
要件が厳しくそれに当てはまらないとなかなか認められにくいという残念な側面もありますが、療養介護を理由に検討すべきは本来こっちです。

その他に介護の負担自体を減らす方向性も検討すべきです。
例えば成年後見制度をうまく利用するのも一つの手段と言えるでしょう。

成年後見制度等申立業務のご案内(司法書士九九法務事務所HP)
https://99help.info/service/guardian/


特定の相続人に確実に相続させたい場合

遺言書が有用です。
何も相続放棄をさせる必要まではありません。

また、生前に相続放棄はできませんが、生前に遺留分(いりゅうぶん)を放棄することは可能です。

遺留分は相続人に与えられた権利(ちなみに兄弟姉妹には遺留分はありません。)ですので、たとえ遺言書ですべての財産を得る形であったとしても、遺留分を主張されればそれを支払う義務が生じます。

ちなみに遺留分は本来相続できる権利の1/2です。
(父が死亡し、母と子2人が相続人であるならば、子1人の遺留分は1/8となります。)

ただし、例えば―

公正証書遺言+遺留分放棄

と、いうような準備を生前に行っておけば、後の憂いを取り払うことも可能となるわけです。

事前に相続放棄を迫るよりは、遺言書と遺留分放棄の可能性を検討しましょう。

まとめ

事前の相続放棄(遺産放棄)はできません。

ただし、状況をよく整理し、他の手続をうまく活用することでそれと同等の、もしくはそれ以上の結果を得るこも不可能ではありません。

まずは再度、なぜ事前に相続放棄を『したい』または『させたい』のか?を整理ください。

きっとそこに何らかの解決策が隠れているはずです。

ではでは。