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相続相続って何?
さて、今回は相続についてのお話です。
かなりメジャーでいて、かつ、大きなテーマですが、あえてそこを紐解いてみようと思います。
よく耳にするけれど、実際に言葉で説明するのは難しい―
『相続』とはそんな言葉です。
また『相続』は誰しもが必ず一度は経験します。
天涯孤独であったとしても、元から両親がいないことはあり得ませんし、生物である以上は最終的に自分の相続が発生します。
改めてそれがどういうものなのか知っておいて損なわけがありません。
相続を一言でいうと?
せっかくなので、まずは専門家らしい言葉で相続を表現してみます。
相続とは―
『故人が生前に有していた一切の権利及び義務を相続人が承継すること』
俗にいう『包括承継(ほうかつしょうけい)』というものです。
ただ、これでは分かりにくいですよね?実際。
法律用語に慣れていないと呪文のように聞こえてしまうかもしれません。
もう少しかみ砕いた表現にしてみましょう―
『すべての相続財産を相続人が引き継ぐこと』
少しだけ分かりやすくなったのではないでしょうか?
とは言え、どこかまだ含みがあるようにも思えます―
ちなみに『相続財産』と『遺産』は一般的に同じ意味で使われます。
より法律的な言い方が『相続財産』であり、日常的な言い方が『遺産』となります。
では、ここで言う、『すべての相続財産(遺産)』とは何を指すのでしょうか?
代表的でいてイメージし易いものとしては―
- 不動産(戸建、マンション、宅地、田畑等)
- 預貯金(普通預金、定期預金等)
- 現金
- 有価証券(株式、投資信託等)
ただし、これだけと言うわけではありません。
相続はこの他に、目には見えない『権利』もすべてその対象となります。
具体的には、故人が誰かにお金を貸していたとして、その返済を受ける権利(貸金返還請求権)や、ここ数年巷を騒がせている過払い金(払い過ぎた利息も相続の対象となるのです。)などもこれにあたります。
これらはいずれも相続の対象となります。
では『義務』は?
主に借金です。
その他、未払いの公共料金や、滞納税金、損害賠償義務も同様です。
これらについてもすべて相続の対象となります。
プラスの財産だけを選んで相続できるわけではありません。
あくまで権利及び義務のすべてを承継するわけですから、マイナスの財産があればそれも対象となってしまうわけです。
必ずしも相続は得ばかりがあるわけではないのです―
法定相続が基本です
相続人が何を相続するのかは記述のとおりです。
では誰がどのように相続するのでしょうか?
実はその基本系が民法に定められています。
これを『法定相続分』と言います。
以下、民法の条文です。
民法第九百条(法定相続分)
同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
1.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
2.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相
続分は、三分の一とする。
3.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉 妹の相
続分は、四分の一とする。
4.子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、
嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする
兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
これが民法上の法定相続の条文となります(第4項については現在削除されています。その趣旨等につきましては後述します。)。
少し分かりにくいと思いますので、できる限り簡単に書き換えてみます。
民法第900条(法定相続分)
- 配偶者が2分の1の権利を、子が残りの2分の1の権利を相続する。
※子が複数いる場合は、2分の1を頭数で平等に相続する形となる。
そのため配偶者は常に2分の1の権利を得、子はその数によって割合が変更する。
Ex.夫が死亡し、妻と二人の子(A及びB)が相続人である場合
→妻2分の1(4分の2)、子A4分の1、子B4分の1 - 故人に子がいない場合は、配偶者及び直系尊属(故人の両親、両親が亡くなっている場合は祖父母等)がその相続人となる。
その時の相続の割合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1となる。
※この場合、子がいないからといって配偶者のみが相続人になるのではなく、その親や祖父母が相続人になることに注意です。
ちなみに典型的な遺言書を書いていた方がよいパターンです。
Ex.夫が死亡し、子がなく妻と祖母が健在である場合
→妻3分の2、祖母3分の1 - 故人に子がなく、かつ、両親、祖父母等も既に亡くなっている場合は、故人の兄弟がその権利を相続する。
その時の相続の割合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が残りの4分の1となる。
※この場合、配偶者は常に4分の3の権利を得、兄弟はその数によって割合が変更することになります。
子がいないからといって配偶者のみが相続人になるのではないことに注意が必ようです。
同じく遺言書を書いていた方がよいパターンです。
夫が死亡し、妻と夫の兄弟2名が相続人である場合
→妻4分の3(8分6)、兄A8分の1、妹B8分の1 - これについては、平成25年12月5日民法の一部を改正する法律が成立し、嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同等になりました(同月11日公布・施行)。
余談ですが、以前、非嫡出子(婚姻関係にない男女の間に生まれた子)は嫡出子(一般的な親子関係にある子)の得る権利の2分の1しか認められていなかったのです。
その改正の必要性、新法の適用の範囲につきましては―
「民法の一部が改正されました/法務省」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00143.html
ここで改めて誰が相続人になるのかー
考え方としては、上記民法900条の1(配偶者と子のみが相続人)を基本とし、当てはまらなければ同2、それにも当てはまらなければ同3といった具合になります。
子供がいない場合は権利が複雑になりそうなイメージがしませんか?
兄弟姉妹が既に亡くなっている場合(代襲相続)や、相続手続をしないうちに亡くなった場合(数次相続)などはより複雑になっていきます。
甥姪や兄弟姉妹の配偶者まで絡んでくることがありますので―
尚、必ずしもこの『法定相続』どおりに相続しなければならないわけではありません。
相続人全員で遺産分割協議を行い適宜の割合に変更することもできますし、訴訟や調停で決定する場合もあります。
ただし、法定相続は相続税額を求めるときや、相続人同士の話し合いがつかない場合等の法律上の目安となるので、きちんと理解しておく必要があるわけです。
まとめ
何を相続するのか?
誰が相続人になるのか?
一読してすぐに理解できるものではないでしょう。
今回の例題もあくまで分かり易いケースを挙げております。
当然ながら実際の複雑な相続案件はこんなものではありません―
多額の借金と財産が入り混じっていたり、相続人が数十人に及ぶことも珍しいことではないのです。
ただし、恐れることはありません。
相続に対する高い意識さえ持っておけば、それに備えることができますし、事態がより複雑化する前に手を打つことも可能なのです。
ご不明点等ございましたらいつでもご相談下さい。