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相続

不動産はどのように相続すべきなのか?

さて、今回は不動産の相続のお話です。

皆さんにも関わり合いの深い手続かと思われますので、今後の参考にしてみてはいかがでしょう?

不動産はどう分ければいいのか?

相続が発生した際、戸惑う要因の一つが不動産なのではないでしょうか?


どのように分ければいいのか―


例えば現金などは相続人間で話し合いさえつけば簡単に分けることができますし、保険などは元より受取人の指定がされている場合がほとんどです(分ける必要すらありません。)。

預貯金にしても、銀行所定の手続を行う必要はありますが、それでも分配自体はそんなに難しいものではないでしょう。
誰が幾ら相続するかを決めるだけですから。


ただし、不動産となると―


同じような価値の不動産が相続人分きっちりとあるようなら別ですが、なかなかそんなケースはないでしょう。
なかなか分けようにも分けにくいものです。


不動産を相続人で共有した方がいいのか?
それとも特定の相続人の単独所有にした方がいいのか?


悩みは尽きません―

そこでここでは不動産の相続に焦点をあて、相続人間でどのように分ければよいかを検討してみましょう。

どう分けるかよりはどうしたいのか

大昔はあまりこういった問題は発生していませんでした。

なぜかと言うと、この国は長男が親の遺産を相続する文化が根強く残っていたからです。
旧民法時代(明治31年7月16日~昭和22年5月2日)などは特にそれが顕著に現れており、基本的に1人の家督相続人(主に長男)が前戸主の身分上・財産上の権利義務のすべてを承継していました。

いわゆる家制度というやつです。
107477b.jpgただし、時代は変わってきました。

無条件に長男が相続するようなケースは段々と少なくなってきており、その代わりに『では、どう分ければいいのか?』という問題が生じるようになってきたのです。


では、早々にまず結論から―
当然と言えば当然ですが、不動産をどのように分けるべきかという問い対する明確な答えはありません。

あくまで置かれている状況は人それぞれだからです。
これを画一的に処理するのはあまりにも無理があります。


そこで『どう分けるか?』という問いを、『今後どうするのか?どうしたいのか?』という問いに置き換えてみましょう。

たったそれだけでも意外と簡単に最良策が見付かることがあります。

状況に応じた臨機応変な対応が必要です

  • 売買
  • 賃貸
  • 現状維持

相続した後の不動産の取扱いは概ねこれらに該当するでしょう。
順にそれらの事例に応じた相続の方法を検討してみましょう。

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  1. 相続した不動産を売却する場合
    相続が発生した後、不動産を売却することはよくあることです。
    この際、重視すべきポイントは―

    『不動産の売却代金をどう分けるか?』です。

    またすぐに売却するわけではなくとも、将来的に売却の予定が確実な場合も同様です。


    例えば相続人3人で売買代金を三等分する予定ならば、3人で等分に不動産を共有するのが最も一般的であり、何より後の不動産売却に関わる税務申告上でも分かり易いと言えます。

    売却代金の分配金に合わせて相続割合を決める方法です。


    ただし、これにも問題がないわけではありません。
    不動産の所有者(共有者)になるということは、不動産の売買契約における当事者(売主)になるということです。

    当然ながら不動産の売買契約に関与する必要がありますし、その後の不動産の引き渡し手続き(不動産決済)にも原則として参加する必要が生じます。

    共有者の中に遠方に住まわれている方や体の不自由な方がいる場合や、共有者間の仲があまりよくない場合、共有者数が多い場合などにはあまりお勧めしにくいというわけです。


    尚、そうした場合には『換価分割』という遺産分割方法を検討するのも手でしょう。
    不動産そのものではなく、それを換価(売買代金)したものを遺産分割の対象とするわけです。

    具体的には、代表者相続人が単独で不動産を相続した後、不動産の売却代金から諸経費(不動産仲介手数料や測量費等)を除いた金額を相続人間で分配することになります。

    こうすると、不動産を所有するは1人だけですので、他の相続人は売買契約や引き渡し手続へ関与する必要がなくなるわけです。



    その他、不動産の売却を前提にしているのであれば、後の税金についての注意も必要です。

    譲渡取得税というものがあります―
    これは相続税ではなく、あくまで土地や建物を売った時に生じることのある税金です。


    「土地や建物を売ったとき/国税庁HP」
    https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_2.htm


    また要件に当てはまる場合にはこれに対する減税処置も存在します。
    3,000万円控除(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除)などがその代表例と言えるでしょう。


    「マイホームを売った時の特例/国税庁HP」
    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm


    何を言わんとするかというと、これらを見越した上で誰がどのように相続するのかを決定した方が良い場合があるということです。

    私自身は司法書士ですので、税務相談自体には応じかねます。
    ただし、税理士との付き合い自体は多いため、希望される方にはご紹介も可能です。


    とりあえず相続しておこうではなく、どう相続して、それをどうするのか?
    特に居住用不動産を売却後に住み替え等を検討されているような場合には注意が必要です。


  2. 相続した不動産を賃貸に出す場合
    続いて賃貸についてです。
    基本的な考え方としては不動産売買同様、お金(賃料)の流れを基準にすべきです。
    ただし、賃貸と売買には大きな相違点があります。


    それは不動産を手放さず今後も維持していくという点です。


    仮に相続人3人で不動産を共有し、家賃をそこから分配することになったとしましょう。
    日常的に様々なトラブルを目にする機会が多い者からすると、不動産は『なるべく単独もしくは限りなく少人数での共有』が好ましいと思っております。

    もちろんトラブルの発端になりやすいからです。

    例えば不動産の処分時などは、売る売らないで揉め、売買代金で揉め、売却時期等でのトラブルだって生じかねません。

    不動産取得時は仲の良い共有者であっても、処分時にも必ずそうとは限らないのです。


    これに対する解決策としましては、不動産以外に財産があるのであれば、それでバランスをとりつつなるべく単独で所有するよう心掛けることです。


    そうした財産もなく、売却も厳しいとなるなら、面倒がらずに極力きちんとした遺言書を残すようにしましょう。

    売却時のトラブルもそうですが、更なる相続が発生することも念頭に置いておくべきです。
    そうでないと3人の共有者の相続人が不動産を共有するともなると―

    容易にトラブルに発展しそうだということが想像できるのではないでしょうか。


  3. 相続した不動産に対して何もしない場合(現状維持)
    最後に現状維持についてですが、今後も維持していくという点で、注意点や対策は賃貸の場合とほぼ同様となります。

    ただし、相続人が対象の不動産に住み続ける場合などは、なるべく居住している相続人名義にすべきです。

    いざ処分しようとした際に、引越し代等を原因になかなか立ち退こうとはせず、売却がうまかいかないような事例は決して珍しいことではありません。

    適切な手続をとってさえおけば、それだけ後の負担が随分軽減できるはずです。

相続の手続きに「普通」はない

相続の手続は一つとして同じものはなく、人によって異なります。
そのため相続時に明確な答えを出すことは困難でしょう。

重要なことはその時点よりも、その後です。

とりあえずで相続手続を行うのではなく、よく考え、よく話し合い、それでも判断に迷うのであれば我々専門家を頼って下さい。

状況に応じたハンドメイドのサービスを提案させていただきます。