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債務整理給与所得者等再生手続とは
さて、今回は個人再生という手続の中の一つである「給与所得者等再生」についてのお話です。
個人再生は、大切なご自宅を借金から守る有用な手段の一つです。
仮に今は必要なくとも、今後のため、周りの人達のため、同手続を知るきっかけになってくれればと思っています―
では、まず個人再生の概要につきましてはこちらをご確認ください。
「個人再生手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/bankruptcy/post_47/
あくまで個人再生の基本は、もう一つの手続である「小規模個人再生」となります。
正直な話、僕自身、依頼者に「給与所得者等再生」を勧めるのは稀です。
その訳は後述しますが、9割以上は「小規模個人再生」にて借金問題の解決をはかっています。
しかしながら、状況によっては「給与所得者等再生」を選択すべきケースもあるのです。
どちらが優れた手続というわけではなく、適宜、使い分けるべきものなのです。
給与所得者等再生のデメリット ~小規模個人再生との比較~
給与所得者等再生とは―
個人再生手続を利用できる個人の債務者の中でも、特に会社員などの給与所得者についてのみ認められる手続となります。
読んで字の如くといったところでしょうか―
尚、もう一つの小規模個人再生は個人である限り、給与所得者である必要はありません。
例えば個人事業者(法人は不可)であってもその利用は可能です。
その他、両手続の違いは次のとおりです。
支払額を比較
- 小規模個人再生:反復または継続的に収入の見込みのある者
- 給与所得者等再生:給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者で、その額の変動の幅が少ないと見込まれること
文章にしてしまうと、どうしても分かりにくいと思われますが、ようするに小規模個人再生の方が収入の安定性の要件が緩やかで利用しやすいということです。
これだけみても小規模個人再生をとりたくなりますよね。
ただし、そう思うであろう決定的な違いは別にあります―
最も大きな違いは両手続の支払額の差です。
結論からすると―
小規模個人再生に基づく支払額より、給与所得者等再生に基づく支払額が低くなることはありません。
ないのです―
小規模個人再生の方が支払額が低くなるか、良くても同額にしかなりません。
場合によっては100万円近い開きになることもあり得ます。
当然ながら依頼者にとってベストな選択をすべき立場としては、なかなか選択しにくい手続というわけです。
支払額に差が出る理由
この辺を詳細に説明してしまうと、かなり難解な内容になってしまうので、触りだけにしておきますが―
その理由は、給与所得者等再生には小規模個人再生にはない『可処分取得』というものを加味しなければならないからです。
ちなみに可処分所得とは、以下の方法によって算定されます。
(なんとなく読んでいただければで結構です。)
『収入-(税金+社会保険料+最低限の生活費)』
そうして算出された2年分の支払額が、概ね給与所得者等再生の支払額となります。
ただし、仮にこれが小規模個人再生に基づく返済額よりも少額であった場合には、その算出された数値でなく、小規模個人再生に基づく返済額を基準とするのです(結果、小規模個人再生と同額になります。)。
ようするに、可処分所得が大きければ大きいほどその支払い額は増加する一方、小さくても小規模個人再生に基づく支払額を下回ることはないと言うわけです。
また、可処分所得は子供のいない夫婦等、扶養家族が少ない世帯などは高額になってしまうことが多く、居住地域(田舎、都会)によっても相応の差が出ることとなります。
期間制限を比較
給与所得者等再生には、7年間の期間制限というものがが存在します。
この辺りも難解かと思われますので、なんとなく読んでいただければ結構です。
しないに越したことはないでしょうが、個人再生は自己破産同様、2回目の再申立が可能です。
その際、1度目の申立が小規模個人再生か給与所得者等再生かによって違いが出てくるのです―
1度目の申立が給与所得者等再生である場合は、その認可決定の確定日より、7年間は再度の給与所得者等再生の申立ができないのです。
小規模個人再生にはこのような規定はありません。
要件さえ整えば、期間に制限なく再申立が可能なのです。
また、個人再生に失敗し、後に自己破産する場合にも両手続で違いが出てきます。
自己破産ができないという結論に直結するわけではありません。
しかし、失敗した個人再生が給与所得者等再生であった場合、その認可決定確定の日より7年以内に自己破産する場合は、破産手続上での免責不許可事由に該当してしまうのです(尚、7年経過後であれば該当しません。)。
これも小規模個人再生には適用されない規定となります。
手続の失敗を前提としているわけではありませんが、捨て置けない短所の一つと言えます。
給与所得者等再生のメリット ~小規模個人再生と比較~
以上のようなことから、実務上は給与所得者等再生に比べ、圧倒的に小規模個人再生を用いるケースが多くなるわけです。
言うまでもなく、単純にその方が依頼者にメリットが出やすいというのがその理由です。
であればー
『そもそも給与所得者等再生などいるのか?むしろいつ使うのか?』
そう思われることでしょう。
ただし、給与所得者等再生にもれっきとした存在意義があるのです。
実のところ、これまで小規模個人再生の利点ばかりを書いてきましたが、小規模個人再生にも大きな欠点が存在します。
小規模個人再生は、一定の債権者(借金総額の半分以上を有する債権者、もしくは全債権者の半数以上)が個人再生手続に異議を出した場合、手続を取ることができなくなってしまうのです。
債権者が異議を出すかどうかにもよりますが、特に『借金総額の半分以上を有する債権者』という要件は、わりと当てはまることが多いのです。
尚、給与所得者等再生にはそのような制限は何らありません。
いわゆる、給与所得者等再生は、この小規模個人再生の決定的な欠点を埋めることができる手続なのです―
給与所得者等再生は、安定した給与収入等、他の要件を満たす限り、債権者からの反対・異議に左右されません。
この点が、小規模個人再生と給与所得者等再生を使い分ける大きなポイントとなります。
メリットの大きい小規模個人再生をとれるにこしたことはありませんが、給与所得者等再生であっても、ほとんどの場合は借金の大きな減額が可能であるため、十分に有用な借金解決方法となり得ます。
小規模個人再生と給与所得者等再生、どちらを選択すべきか?のまとめ
- 債権者異議の要件に当てはまる余地が少なければ小規模個人再生
- 当てはまる危険性があるのであれば、対象となる債権者と協議しつつ、給与所得者等再生をとるか否かを判断していく。
尚、あくまで現時点での話にはなりますが、実際に異議を出してくる債権者はそう多くはありません。個人再生手続がとれないパターンの行きつく先はほとんどの場合が破産手続です。
そのため、債権者は少しでも多くの債権を回収しようとするためでしょう。
ただし、国の金融機関等、実際に異議を出してくる債権者は存在しますし、今後、そうした債権者が増えないとも限りません。
そのため、他にも言えることではありますが、最も重要なことは一つ一つの案件ごとに適切な判断をしていくこと、これに尽きると思います。