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相続

相続人の中に不在者(行方不明者)がいる場合の相続手続

いつもお読みいただきありがとうございます。



最近はテニスやサッカー等、スポーツに関する明るいnewsが多いですね。
スポーツ好きの僕には嬉しい限りです。


そして、スポーツと言えば、世界最大規模の祭典たるオリンピックに触れないわけにいきません。


驚くことに東京オリンピックの開催迄、もう600日を切っているんです。
このブログを書いている本日現在(2019年1月31日)において、残す期間は540日!!

きっと、あっという間に開会日を迎えるのでしょうね―


日韓ワールドカップの際は、幸運と友人に恵まれ、無事、現地観戦することが叶いましたが、果たして今回はいかに...
いつでも観戦チケット(特にサッカー)をお待ちしております。



さて、今回は相続は相続の話でも、行方不明者が絡むイレギュラーなケースのお話しです。

マニアックな題材に思われる方もいるかもしれませんが、そうしたご相談は結構多いんです。
きっと、同じような事例で困ってはいるが、どこに何を相談していいのか分からないと思っている方は少なくないはずです。

本ブログが少しでもそうしたお悩みの手助けになれば幸いです。



<目 次>



1.行方不明者自体はもはや珍しくない?

まずは、行方不明者そのものについて少し整理してみることにしましょう。

  • この国には、いったいどのくらいの行方不明者がいるのか―


考えてみたことはありますか?

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先ごろ発表された警察庁の発表では、行方不明者の数はここ10年間は横ばいで推移しており、平成29年度は84,850人だったそうです。


これをどう思うか―


ちなみに、これ、あくまで捜索願の年間の"届出受理数"に過ぎません。


約1憶2,000万人の人口がいるこの国で、毎年、毎年、少なくとも約8万人規模の行方不明者が生まれ続けているのは、ある種異常な事実とも言えるかもしれませんね(もちろん、中に見付かっている人も大勢いるでしょうが...)。

尚、他に警察に対して捜索願を提出していない案件も数多くあるでしょうから、国が把握できていない実際の行方不明者総数はこの数倍にも(あるいはもっと)及ぶのではないでしょうか?



なんともとんでもない数です―



ちなみに年代別の行方不明者数は10歳代が最も多いそうです(家出等が原因でしょう。)。
ただし、最近ではその10歳代は減少傾向にあり、その分、70歳以上の高齢者の行方不明者が増加していると言います。


これも時勢なのでしょうね。



さて、これが意味する高齢者問題とは別の問題とは??


そうです。
統計的にみても相続手続に関わり易い年代の行方不明者数が増加しているとも言えるのです。


相続の対象は両親や兄弟姉妹であることが多いです。
そのため、未成年者が相続人になるケースは稀であり、最も関わり合いが多いのは中高年層ということになるわけです。


  • 相続人の中に行方不明者がいて手続が進まない―



もはや、誰にとっても他人事では済まない話かもしれませんよ?




2.行方不明者がいると相続手続はどうなってしまうのか?

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行方不明者問題が対岸の火事ではないというのは記述のとおりですが、仮に実際にそうした状況に陥ってしまった場合、どのような不都合が生じるというのでしょうか?


まずはその辺を確認していきましょう―


端的に言うと、このままだと何もできなくなってしまいます。


シンプルに困るんです。
たとえ他の相続人との間にはなんにも争いがなかったとしても、ただ、ただ、相続手続自体が進まない―

なぜなら、ほとんどすべての相続手続には、相続人全員の関与を必要とするためです。


銀行での預金口座の解凍手続もそうですし、不動産の名義変更手続(相続登記)なども原則として相続人全員の何らかの関与が必要となってきます。

具体的には、実印による遺産分割協議書への押印だったり、銀行所定の書式への押印だったりもそうですし、他に行方不明者分のものも含め、期限内の印鑑証明書の提出を求められることでしょう。


  • そんなこと言ったって行方不明なんだからどうしようもないだろう―



お気持ちは分かりますが、それで済むわけはありません。
なにせ大切なお金の問題です。
その大小に限らず、仮に銀行や法務局がその言い分を認めてしまったならば、行方不明者の数は現在の比どころではなくなるばかりか、ほぼ確実に急増してしまうことでしょう。

もちろん、それに伴うトラブルも...


  • では、行方不明者がいると相続手続自体ができなくなってしまうのか?



そういうわけではありません。
できないと言うわけではなく、目的を達成するためには相応の手順と手続を踏む必要が生じてしまうわけです。


要する期間も費用も大きく変わってしまうかもしれませんが、行方不明者が出てこない限り致し方ない事態なのです。




3.行方不明者が絡む相続手続の具体的な解決方法


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それではようやっと本題に入らさせていただきます。


行方不明者がいる相続手続は本当に面倒です。
ただし、だからと言って、そうそう簡単に諦められるものではないでしょう。
金銭的な面でもそうでしょうが、中には先祖代々の土地などが絡んでくることもしばしばですから...


捨て置けるものではなく、どうにかする方法があるのであれば、それにすがりたいと思うのは道理です。


では、いったいどのような解決方法があると言うのでしょうか?


少なくともまだまだ手詰まりの状況ではありません。
かかる手間と案件に応じた費用にさえ対応できるのであれば、十分に打つ手は残されているのです―


そこで、ここでは行方不明者が存在する場合の相続の解決方法を幾つかご紹介させていただくことにします。



3-1.失踪宣告という手続

あるいは耳にされたことがあるのではないでしょうか?
単語としての"失踪宣告"は、それなり世間に浸透しているようにも思えます。
本やTVなんかでもたまに使われていたりするので。

今回はそこからもう少しだけ突っ込んだ話になります。


まずは法律的な説明から―


"失踪宣告"とは、生死不明の不在者(行方不明者)に対し、法律上、死亡したとみなす効果を生じさせる制度です。



こうやって文字にしてしまうとかなり物騒な手続に思えてしまいますね。
でも大丈夫。
失踪宣告は家庭裁判所で行う適法な制度であり、決して物騒なものではありません。
あくまで法律上、不在者(行方不明者)を死亡したとみなす効果を生じさせるだけです。


その結果―


不在者の生死不明時から7年間が満了したときに死亡したものとみなされ、不在者(行方不明者)についての相続が開始されることになります。

※上記は"普通失踪"についての効果であり、"特別失踪"についてはまたの機会に。

尚、仮に不在者(行方不明者)に配偶者がいる場合には、当然、婚姻関係も解消されます。
そうでないと、この国では重婚が許されていない以上、行方不明者の配偶者はいつまで経っても再婚できなくなってしまいますから。



どうでしょう?イメージできますでしょうか??



なにも物騒な話ではないのです。
相続手続等を進めるため、婚姻関係を解消するため、その他、何らかの目的のため、止む無く法律上不在者(行方不明者)を死亡扱いにするという制度なのです。


その結果、相続の場合ですと、不在者(行方不明者)の相続人となる者が、不在者(行方不明者)の代わりに当初の相続手続に関与することができ、そこでの話がまとまれば手続はようやっと無事完結に至るわけです。


尚、既述のとおり、失踪宣告を行うと相続人自体が代わるため(不在者の相続人となるため)、実際の申立手続を行う前にその者等との協議(失踪宣告後、相続財産をどう分けるか?)をしておくべきであろうことは言わずもがなと言ったところでしょう。



その他、失踪宣告の詳細や注意点等につきましては、次のリンクを参照ください。


「失踪宣告手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/home/post_52/




3-2.不在者財産管理人選任という手続

既述のとおり、上記の失踪宣告には生死不明時から7年という要件があります(自然災害等、特異な状況でない限り、失踪宣告は行方不明になってからすぐに行える手続ではないのです。)。


また、あくまで法律上とは言え、不在者(行方不明)を死亡扱いにするのはさすがに抵抗がある―


実際、そうした意見を持つ依頼者も少なくないです。

僕自身、もちろん案件にもよりますが、最初から失踪宣告を進めるよりは、まず、相続手続なら相続手続という最大の目的を叶えるための手続を行い、後に必要に応じて失踪宣告を用いてはどうかという提案をすることが多いです。

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そして、その手続こそが、"不在者財産管理人選任手続"なのです。



失踪宣告では、不在者(行方不明)を法律上死亡扱いとし、その相続人になる者と相続手続を行うのに対し、不在者財産管理人選任手続では、死亡扱いではなく、あくまで不在者(行方不明)の代わりとなる者(不在者財産管理人)を家庭裁判所に選任してもらい、その者と相続手続を行うことになります。


もちろん、不在者(行方不明)について相続が発生するようなこともありません。


また、相続手続だけに限らず、例えば相続後に行う不動産の売却行為なども、この不在者財産管理人が不在者(行方不明)に代わって行うことが可能です(居住用不動産の売却であれば家庭裁判所の許可が要件となります。)。


意味合いは異なりますが、後見人等をイメージしていただけると、不在者財産管理人の業務内容がある程度想像できるのではないでしょうか。


尚、不在者の財産管理人は、不在者(行方不明)の行方が明らかになった時点でのその任を終えることになります。
具体的にはその時点で管理していた財産を不在者(行方不明)であった者に引き渡すことによって業務を終了するわけです。


加えて、不在者(行方不明者)が帰来する見込みがなく、かつ、期間等その他の要件が整い、それが妥当と思われる状況であるならば、不在者者財産管理人から不在者(行方不明者)の失踪宣告の手続を行うこともあり得ます。


そのような場合は、不在者財産管理人の業務は、不在者(行方不明者)の相続人に対し管理財産を引き渡すことで終了となるわけです。



対象となる人物が、長年行方不明で、今後、全く帰来する可能性がないというな状況でも限り、不在者財産管理人選任手続を用い、まずは当初の目的(相続等)を達成する選択肢はいかがでしょうか??



その他、不在者財産管理人選任申立手続の詳細や注意点等につきましては、次のリンクを参照ください。


「不在者財産管理人選任申立手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/succession/post_28/




3-3.不在者の概念はあくまで生死不明

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"失踪宣告"を行うにしても、"不在者財産管理人選任"を行うにしても、注意すべき点は多くあります。


なかでも重要なのは、"不在者の概念"です。


よく勘違いされている方がいますが、電話に出ない、手紙の返信がない等、ただ単に連絡がつかないだけでは不在者とは言えません。
折り合いが悪く、会ってくれないだけなどはもっての外...


それらは行方不明が原因ではなく、不仲等、他の問題が起因しているため、解決方法も相続調停などの別の手続になってきます。



あくまで不在者の概念は、"生死不明"です。


少なくとも住民票の登録上の住所はつきとめ、なにかしらの調査(そこに誰か住んでいないか、手渡しの郵送物は届くか?等々)が必要になってきます。
ただ単に住所が分からないだけでは、生死不明とは言えないからです。


  • そんなこと言ったって住所が分からないから困っているのに...



そういう場合もあるでしょう。
とは言え、不在者(行方不明者)のご家族であればそれを調べる方法があります。
実際の居所は別としても、あくまで住民票登録上の住所であれば調査は可能なのです。



"戸籍の附票"という書類をご存知ないでしょうか?



本籍地の役所(市役所、区役所等)で取得することができる書類です。
戸籍の附票には、個人の住所の変更経緯(どの住所からどの住所に移転したか等)の履歴が記載されています。


そうです。
現在の住所の表記が分からなくとも、本籍さえ分かれば戸籍の附票でそれを調査することができるのです。


仮に本籍地が分からなくとも、不在者(行方不明者)のご家族であればそれを調べるのはそんなに難しくはありません(自身の戸籍から辿っていけばいいだけなので。)。

※ただし、もちろん本人や家族等、利害関係人以外の誰もが無制限に取得できる書類というわけではありません。


尚、必ずしも自身等で取得しなくとも、相続登記や不在者財産管理人申立業務の正式な業務依頼受けた司法書士であれば、職務上の権限で当該書類を取得することも可能です。

それらと合わせて必要最低限の調査を任せてしまうのも一つですね。




4.光る遺言書の重要性

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行方不明者が絡む相続手続の最大の問題点は、相続人全員が手続に関与しなければならないという原則を達成できないためです。


で、あるならば、そもそも相続人全員の関与が必要のない状況になれば、そうした問題自体が生じないことになります―


その例外こそ、"遺言書"です。


当ブログでも遺言書の記事は多く取り上げてきましたが、やはりここでもその重要性が光ります。




『遺言/司法書士九九法務事務所HP内ブログ記事の遺言関係一覧』
https://99help.info/blog/will/



適法な形で作成された遺言書さえあれば、相続手続において上記のような手続(失踪宣告、不在者財産管理人選任)を行う必要性が生じにくいと言えます。
なぜなら、遺言書に基づく相続手続では、必ずしも相続人全員の関与を必要としないからです。

仮に相続人の中に行方不明者がいたとしても、受遺者(遺言によって遺産を受ける側)が単独で相続登記等の手続を完結することが可能となるというわけです。



僕の立場からは、たとえそうでなくとも、何もなくとも、遺言書を作成しておくことを強くお勧めしておりますが、家族の中に音信不通の者がいる方などは、残される他の家族のためにも是非遺言書の作成をご検討ください。




5.まとめ

行方不明者が絡む相続手続―


いかがでしたでしょうか?


ちなみに僕自身、不在者財産管理人の申立業務だけではなく、家庭裁判所より不在者財産管理人そのものに選任された経験が何度かあります(おそらくは近日中にもう1件...)。

そのため、上記の他にも実務上の観点からも諸々のアドバイスが可能です。


相応に専門性が高い分野でもありますので、お困りの方はお気軽にご連絡ください(相談は無料で対応させていただいております。)。

尚、川口市や戸田市、蕨市等の近隣だけではなく、東京、千葉神奈川、茨木等、県外からのご相談についても対応させていただきます。



それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一