ブログ
会社・法人登記代表取締役の地位のみの辞任手続について
いつもお読みいただきありがとうございます。
とうとう東京オリンピックの抽選結果が出ましたね。
ここだけの話、結構な枚数を申し込んでいました。
それこそ全部当選してしまったら支払いはどうするのか?ぐらいには...
結果―
全く駄目でした...
1枚も当たらないと言うとても残念な結末です。
まあ、そんなもんでしょうね現実は。
きっと秋の二次募集も厳しいだろうな...
さて、そろそろ本題です。
今回は株式会社の代表者がその地位のみを辞任する際のお話しです。
代表者のみを辞任して、取締役としては引き続き会社に残るパターンですねいわゆる。
簡単なようで、諸々、注意点が生じることがありますのでご注意ください。
<目 次>
- 1.代表取締役のみを辞任することはできるのか?
1-1.そもそも代表取締役とは何なのか?
1-2.代表取締役の地位のみの辞任の注意点(取締役会設置会社)
1-3.代表取締役の地位のみの辞任の注意点(取締役会非設置会社) - 2.まとめ
1.代表取締役のみを辞任することはできるのか?
大前提の話です。
できるできないで言うのであれば、辞任自体は当然に可能です。
もちろん、代表取締役の地位のみを辞任し、取締役としては引き続き会社に残ることもできます。
そもそも取締役と会社との間に雇用関係はありません。
あくまで委任契約の関係です。
そのため、取締役はたとえ任期の途中であっても原則として辞任の意思表示をすることが可能となります。
そして、これは代表取締役であっても変わるものではありません。
辞意を表明すること自体は自由なのです(後は会社が認めるかどうかの問題です。)。
ちなみに、取締役のみを辞任し、代表取締役としては引き続き会社に残るようなことはできません。
あくまで取締役という地位あってこその代表取締役だからです。
逆を言うと、代表取締役は必ず取締役の中から選定されます。
取締役ではない者が、代表取締役になることもできないというわけなんです。
以下に代表取締役について簡単にご説明致します。
1-1.そもそも代表取締役とは何なのか?
代表取締役、代表取締役社長、社長―
世間に溢れている会社代表者の呼称です。
たまにこれらの違いを尋ねられることがありますが、基本的な意味合いはずべて同じと言えます。
いずれも会社を代表する役職です。
尚、この内、法律上の観点からして正しい呼称は、"代表取締役"になります。
事実、法務局での登記記録には、代表取締役~と登記されても、代表取締役社長~や社長~とは登記されません。
代表取締役社長や社長などの呼称は正式なものではないのです。
では、なぜそう呼ばれることが多いのか?
先に言っておくと、そうなるに至った明確な理由は僕にも分かりません(むしろあるのか?)。
おそらくですが、会社によっては代表取締役は複数人いることもあるので、その中で差別化する意味合いで生まれたであろう呼称が"代表取締役社長"であり"社長"なのではないでしょうか?
ともあれ、これらは法律上定められたものではなく、慣例上使用されてきた名称に過ぎないというわけなんです。
ちなみに、もちろん僕も"社長"という呼称をよく使ってます。
相手方に対し、"社長"とは呼びやすいですが、"代表取締役"とは言いにくいですもんね...
どれが正しいというよりかは、実際に使用する場面が大事というわけです。
それらを踏まえた上で、あらためて法律上の『代表取締役』とは―
取締役の中から選定される法律上の会社代表者であり、『業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限』を有する者のことを指します。
ちなみに代表取締役のいない株式会社はありません。
株式会社である以上、必ず存在します(代表取締役を定めていない場合は、取締役各自が代表取締役となります。)。
1-2.代表取締役の地位のみの辞任の注意点(取締役会設置会社)
以前はそんなに注意事項はありませんでした。
ただし、平成18年の会社法の改正からは、代表取締役の地位の辞任にも何かと注意事項が増えることに―
まあ、色々なタイプの会社がつくられるようになったことが、その主たる原因ですね。
尚、ケースが何パターンかあるのですが、面倒なのはそれによって変更の登記に必要となる書類が異なってくる点です。
その線引きとしては―
- 取締役会設置会社か否か
まずはこれです。
対象となる会社が取締役会を設置しているかどうかで結論が大きく異なってきます。
尚、取締役会を設置している会社の場合、登記に必要となる書類は...
- 辞任届(代表取締役を辞任する内容のもの)
のみです。
議事録等もいりません。
必要書類に関して言えば、とても簡単なんです。
ちなみに会社法改正以前の株式会社には必ず取締役会が設置されていました。
そのため、代表取締役の地位の辞任登記は最も簡単な部類に入っていたわけです。
加えて、以前は辞任届に押印する印鑑の指定もありませんでした(いずれのケースでも認印でよかったのです)―
ただし、現在では辞任届に押印する印鑑についてはどの印鑑でもいいとは限りません。
改正があり、以前よりも取り扱いが厳しくなったのです。
尚、余談ですがこれは平成18年の会社法改正ではなく、商業登記規則の改正によるものです。
具体的にはー
法務局に会社の印鑑を届け出ている代表取締役(会社の印鑑証明書を取得した際に代表取締役として表示されている者)が、その地位を辞任する際の辞任届に押印する印鑑は、"会社の実印"または"代表者個人の実印+印鑑証明書の原本の添付"となりました。
また、上記の例で対象となる代表者が日本に住所のない外国人や日本人であった場合で、会社の実印を押印できないケースでは、印鑑証明書を取得できないためサイン証明書等でこれに代用することとなります。
もちろん、法務局に会社の印鑑を届出していない代表取締役の場合には、このような面倒な規定はなく、従前どおり辞任届に押印する印鑑は認印であってもかまいません。
わりと知られていない部分のようですので、該当する場合にはご注意を。
1-3.代表取締役の地位のみの辞任の注意点(取締役会非設置会社)
さて、続いて取締役会非設置会社についてです。
現行で新規設立される会社の多くはこれに該当します。
例えば、取締役が3名未満の会社は漏れなくこれです。
統計を調べているわけではありませんが、もはや取締役会非設置会社の方が多くても驚きはしません。
それぐらい一般的になってきたわけですー
尚、取締役会非設置会社の場合は、大別すると次の3パターンに分けることができます。
その際、ポイントとなるのは会社の定款の記載内容(具体的には代表取締役の選定方法についての記載)です。
これがどうなっているのかによって必要となる書類が変わってくるのです。
ちなみに辞任届に押印する印鑑の種類については、上記の取締役会設置会社の場合と同様の注意が必要になってきます。
- ケース1 取締役の互選によって代表取締役を選定する内容の場合
当然に代表取締役の地位のみの辞任が可能です。
この際、登記に必要となる書類は、"辞任届"と会社の"定款"です。
※株主総会議事録等、他の書類はいりませんが、代表取締役の選定方法が取締役の互選であることの証明のため、定款の添付が要求されます。 - ケース2 株主総会の決議によって代表取締役を選定する内容の場合
この場合は、なんと辞任の意思表示だけでは代表取締役の地位を辞することができません。
取締役の地位と代表取締役の地位が一体化していることがその理由らしいのですが...
ともあれ、結論からすると株主総会で選ばれたのだから、辞任にも株主総会の承認がいるというわけなんです。
結果、登記に必要となる書類は、"株主総会議事録"と"株主リスト"ということになります。
※僕は一応、辞任届も作成していますが、その趣旨からすると法務局での登記には添付の必要はないはずです。 - ケース3 会社設立時の定款で代表取締役が選定されている内容の場合
設立時代表取締役ですねいわゆる。
この場合、ケース2と同様の理由から辞任の意思表示だけでは代表取締役の地位を辞することができません。
結果、株主総会の承認が必要になる点もそうなのですが、実質的には定款内容の変更にあたるため、株主総会の特別決議が要求されます。
なにもそんなに厳格にしなくても...とは思うのですが。
以上のようなことから、登記に必要となる書類は、"株主総会議事録(特別決議)"と"株主リスト"ということになります。
と、まあ、こんな感じで随分と変わったわけです。
ともあれ、手続にあたっては常に対象となる会社の現行定款を確認する必要がありますね。
尚、上記パターンの例外としては、代表取締役を定めていないケースが挙げられます。
この場合、取締役各自が代表となるのですが(各自代表と呼ばれたりもします。)、当然ながらその地位のみを辞することはできません。
とは言え、地位を辞するのではなく、他の取締役を代表取締役に選定することで同様の結果を得ることができますので、単純にそうすればいいだけの問題です。
2.まとめ
ちょっとマニアックなテーマになったようにも思います。
ただ、そんなに多くはありませんが、代表取締役の地位のみの辞任の依頼があった際、いつもどうだったか悩むんですよね。
であれば、せっかくならばと記事にした次第です。
これで僕自身はしばらく悩みませんし、同様の案件で悩む方も多少は減るのではないかと思われます。
ほんと会社登記は毎年のように変わりますし、細かくなる一方です。
まあ、きっと色々あるんでしょうね。
それでは今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一