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会社・法人登記

テレビ電話を利用した定款認証手続について


いつもお読みいただきありがとうございます。



さて、今回は本年3月に人知れず(?)開始していた新しい制度についてのお話しです。
民法(相続法)の大改正もそうですが、最近は何かと目まぐるしく変わりますね。

もちろん、より良く、より使いやすく、より時代に即した形になることを目指しているのでしょうが、だからと言って、そのすべてが世間に普及するわけでもありません。
中には埋もれたままになってしまう制度も...

はたして今回の主題であるTV電話を利用した定款認証手続は、現時点ではどうで、また、今後どうなっていくのでしょうー





<目 次>



1.そもそも定款認証手続とは何か?

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まずは、"定款(ていかん)"そのものについて少し―


定款とは、会社の基本規則そのものです。
そこには会社の商号や目的(事業内容)、住所(本店)などはもちろんのこと、会社の指針となる様々な規則が記されています。


いわゆる、定款は"会社の憲法"と呼ばれることがあるぐらいに、会社の基礎となる重要な書類なのです―


さて、その定款ですが、作成するタイミングはもちろん会社設立の時点です。
そして一部の新規設立法人については、単に定款を作成すればいいだけではなく、それに加えて公証役場での認証手続が必要になります(定款の正当性を公証人に証明してもらう趣旨です。)。


尚、対象となる新規設立法人は、"株式会社"が代表的であり、その他に最近増えている"一般社団法人"なども同様です。

対して、"合同会社"には元よりそのような手続はありませんし、株式会社は株式会社でも、有限会社から株式会社に移行する手続の際にも不要です。





1-1.定款認証手続はどの公証役場で行えばいいのか?

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続いて、定款認証手続を行う公証役場ですが、どこでもいいわけではありません。
具体的には、設立しようとしている会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場が対象となります。

ちなみに全国の公証役場の一覧はこんな感じです。


「全国公証人役場所在一覧/日本公証人連合会HP」
http://www.koshonin.gr.jp/list



とは言え、上記の表現だけではイマイチ分かりにくいですよね・・・

もっと分かり易く言うなら、東京都内で会社を設立しようとするのであれば、対象となる公証役場は都内であればどこでも大丈夫です。
港区の会社の定款認証を北区の公証役場で行えるというわけです。

対して、埼玉県川口市に設立予定の会社であれば、管轄外となるため都内の公証役場では定款認証手続が行えません。
東京都北区の公証役場なんかは川口市からわりと近いのですが、あくまで距離の問題ではないのです(逆に距離はあっても同県内の秩父公証役場でなら手続は可能という趣旨です。)。


いわゆる管轄はありますが、あくまで都道府県単位なわけです。


結果、僕自身、上記のルールにそんなに不自由を感じることはありませんでした。
たしかに管轄はありますが、条件に当てはまる最寄りの公証役場を使えばいいだけでしたから...

法務局や裁判所なんかの管轄と比べると、かなり選択肢が広いと言えるでしょう。




1-2.定款認証手続とは具体的に何をするのか?

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一言で表現すれば、会社の定款に公証人による認証を受ける手続なのですが、実際には概ね以下のような流れで手続を進めていくことになります。


①事前に定款案を公証役場にメール又はFAX
※まずは認証手続の前に、できあがった定款の案文を公証役場に提出します。事前に公証人がその内容をチェックしておくわけですね。尚、この段階で公証人から細かい修正指示をされることもあるので、適宜の対応が必要となります。

②公証役場への実質的支配者となるべき者の申告書や発起人の印鑑証明書を提出
※僕なんかは①と合わせて提出していますが、定款の認証手続までに"実質的支配者となるべき者の申告書(※1)"及び"発起人の印鑑証明書"を公証役場に提出しておく必要があります。①と同様、公証人による事前チェックのためです。尚、この段階ではそれらの書類の原本提出までは要求されず、認証日当日に持参する形でも大丈夫です。

※1 『実質的支配者となるべき者の申告書』とは?



③発起人全員又はその代理人が直接公証役場に赴いての本番
いよいよ定款認証手続の本番です。とは言え、この時点ではほとんどの打ち合わせが終了している段階なので、やることはそんなにありません。もちろん内容にもよるでしょうが、手続に要する時間も微々たるものでしょう。なぜなら、この段階での一番の目的は公証人による本人確認だからです。そのため、基本的に公証役場へは発起人全員又はその代理人が直接足を運ぶ必要が生じます。仮に対象地が遠方の公証役場であっても郵送で済ませられるわけではないのです。



ともあれ、これまでの定款認証手続はだいたいこんな感じでした―

もはやお分かりの方も多いでしょうが、今回、新設された制度は上記③の部分についてのものです。
一定の要件さえ満たせていれば、わざわざ公証役場に足を運ばなくても定款認証手続が行えるようになったのです。

果たしてその詳細とはー




2.テレビ電話を使った定款認証とは

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平成31年3月29日より、一定の要件を満たす場合に、公証役場に直接足を運ばなくてもテレビ電話を使用することによって定款認証手続を受けることが可能になりました。



以前から噂は聞いていました。
少しばかり興味もありました。
ただ、あまり情報が入ってきませんでした。
気になって調べてみたところ、既にサービスは開始していたのです...



僕にも問題があるのでしょうが、これほど話題になっていないということは、おそらく世間に浸透しているとは言い難い状況なのではないでしょうか?


とは言え、まだまだ始まったばかりの制度です。
なにもこの時点ではっきり白黒つける必要などないでしょう。


まずは具体的にどういった手続なのか、諸々検証してみましょう―




2-1.公証役場が定める一定の要件とは?

本来、公証役場に足を運ばなくてはならない最大の理由は、公証人による利用者(発起人又はその代理人)の本人確認です。


ようするに、それを面前ではなくTV電話で済ませてしまおうというものです。
今時、銀行での手続(口座開設や繰り上げ返済手続等)でもTV電話は多用されています。
時代に即した良い制度のように思えますが...

使いたくなければ使わなければいいだけですし―


仮に問題があるとすればその方法でしょう。

一言でTV電話といっても色々です。セキュリティ対策はどうなのか?Skypeなどで対応できるのか?
スマホ一つで対応可能なら画期的だが、専用機器が必要となると...


僕がこの噂を聞いた時点で思っていたことです。


当然ながら当該手続の運用開始にあたって、その辺の疑問も明らかになってきました。
まず、TV電話で定款認証手続を行うにあたっての"一定の要件"とは―

以下、日本公証人連合会HPからの抜粋となります。

テレビ電話による認証を利用できるのは次の、いずれかの場合です。

① ア 発起人等が定款に電子署名し、自らがオンラインで認証申請する場合
  イ 発起人等が委任状に電子署名し、定款作成代理人が定款に電子署名してオンラインで認証申請する場合
つまり、オンライン申請した嘱託人本人しか利用できません。
発起人が電子署名しても定款作成代理人に委任した場合は、発起人は嘱託人とはなりませんので、発起人は利用できません。


② 認証を受ける文書は、電子文書に限ります。
電子文書であれば、私署証書であると定款であるとを問いません。電子文書の認証はほとんどが定款ですので、上記①の説明は定款を前提とした表現になっていますが、それ以外の電子文書でも同様です。また、定款であれば、株式会社の定款に限りません(上記①で発起人等としたのは、そのためです。)。
なお、上記①イの方法による場合、2019年10月までは、委任状と電子定款を一体化した電子文書(一つの文書)に発起人等と作成代理人が順次電子署名してオンラインで申請することになります(2019年10月からは委任状と電子定款とを別にした2通の電子文書でオンライン申請することになります。)。



どうでしょう?
伝わりますでしょうか??

そんなに難しいことは言ってません。
要件として、発起人が定款に電子署名するか、もしくは委任状に電子署名するか、また、その文書は電子文章に限られる―


たった、それだけなのです。


ただ、ちょっとこれだけだと説明が足りないような気がします。
必要となる環境等を説明した上ででないと、なかなかイメージしにくい部分があると思いますので―





2-2.TV電話による定款認証手続を行うには次の準備が必要

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個人的には最も気になる部分でした。
制度趣旨自体は魅力的なので、残すは手続面の問題だけでしたから。

結果、具体的には以下の環境を整える必要が―



  • ①インターネットができる環境
    TV電話を使用する以上、インターネット環境が要求されるのは当然ですね。


  • ②パソコン又はスマートフォン本体
    パソコンだけじゃないのかと勝手に思い込んでいましたが、なんとスマホ対応も可能なのです。
    尚、パソコンでの推奨ブラウザ―はGoogle Chrome(グーグルクローム)であり、スマホの場合はFaceHub(フェイスハブ)というアプリを事前にインストールしておく必要があります。
    やはり
    スカイプやLINEなどの既存テレビ電話は使用できないようですね...
    ちなみにパソコンを利用する場合は、カメラ・マイクが内蔵されているものか、もしくは外付けのカメラ・マイクが必要になる点に注意です。


  • ③電子証明書(マイナンバーカード等)
    聞きなれない方も多いとは思いますが、電子証明書とは、信頼できる第三者(認証局)が本人に間違いないということを電子的に証明するもので、書面取引でいうところの印鑑証明書に代わるものです。e-TAXを利用されている方には馴染みがあるのではないでしょうか?


  • ④カードリーダー及びAdobeAcrobat(有料ソフト)
    手続上、定款そのものか、司法書士等代理人への委任状に電子証明書を用いて電子署名(コンピューター上での署名方法)する必要があります(上記でご案内した"日本公証人連合会HPからの抜粋"①のア、イがこれに該当します。)。その際、必要な情報を読み込むためのカードリーダーと、その後の作業でAdobeAcrobatを用いるわけです。

わりと簡単に準備できるものと、準備自体は難しくはないが、相応の手間と費用を要するものと言ったところでしょうか...

①~②は特段問題にならないでしょう。
むしろここで躓くようなら早々にTV電話での手続は諦めるべきです。

問題は③~④でしょうね。
日常的に接する機会がある、もしくは利用しているのであれば、そんなに難しいことではありません。
ただ、これからはじめるとなると...

特に電子証明書自体が普及していませんからねまだまだ。
主にマイナンバーカードがこれに該当するのですが(他に会社の電子証明書等)、マイナンバーの通知書では駄目なのはもちろんのこと、単に顔写真付きのカードを持っているだけでも足りません。
電子証明書として利用するには、別にそれ用の手続を踏む必要があります...


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まず、これに対する個人的な感想を述べるとするなら、想像以上でも以下でもありませんでした。
スマホ以外は概ね予想通りの内容です。

人によっては否定的な意見もあるでしょうが、セキュリティや本人確認の都合上、こうなってしまうのも致し方ないかと思われます。



とは言え、正直な話をするならば、TV電話による定款認証をするためだけに上記の準備を整えるのはどうかな?
と、思っています。


そんなに何個も会社をつくらないでしょうし、既述のとおり公証役場の管轄はわりと広いです(埼玉県の会社であれば、県内の公証役場はどこでも使えます。)。
例えば埼玉の方が福岡に会社をつくるケースなど、そうそう多くはありません。
また、今のところTV電話にて定款認証手続を済ませれば手数料が安くなる等の特典があるわけでもありません。


だったら、従前どおり最寄の公証役場に出向けばいいだけなのでは...


ただし、毎年e-TAXを利用して確定申告をしているような方は、既に手続に必要となるほとんどの環境が整っているはずです。
それならば試してみる価値は十分に―


個人的には是非とも試してみたい制度なのですが、なにぶん上記のような環境の整備が要求されるは依頼者側なのです(委任状に電子署名してもらう必要があるため)。
僕の好奇心だけではどうにも...


5年先なのか10年先なのか、あるいはもっと先なのか、この国にも電子証明書の文化が根付いた暁には(もしくは他の代替手段が施されたならば)、是非とも活用してみたい制度と言えるのではないでしょうか。





3.まとめ

今回はTV電話による定款認証手続についてでした。


ちなみに手続の開始から約4カ月が経過しましたが、TV電話による定款認証手続を実際に経験できたわけではありません。
また、他で経験したという話も一切耳にしません。


おそらく、全くと言っていいほど普及していないのでしょうね...


そもそもマイナンバーカード自体が普及していませんから、かなり難しいものがあるでしょう。
先の報道では、マインバーカードの普及率は僅か12.8%止まりだった模様です。
半数とまでは言わなくとも、せめて3~4割ぐらいには普及しないと、それを前提とした手続が成り立つ理由はありません。


当該制度を原因にマイナンバーカードの普及率が上がればベストなのでしょうが、そうなるにはメリットの部分が決定的に弱いようにも...


加えて、既にマイナンバーカードを所持している方にしても、2020年以降は半数以上が更新しないといった残念な統計もあるようです。



再三言っていますが、制度自体は決して悪くないと思いますので、今後の対応(電子署名の簡素化等)に期待したいところです。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一