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相続権がなくなる?~相続欠格事由とは~



いつもお読みいただきありがとうございます。



毎年、なぜかこれくらいの時期に花粉症に悩まされているような気がします。
おそらく対象がスギとかではないのでしょう。
尚、時勢もありマスクを付ける習慣がしっかり身についているので、今期ばかりは症状は軽いのでは?と高を括っていました。

結果―

あまり変わらないと言うか、去年よりキツイ気が...
マスクをしても目までは隠せませんからね...
新型コロナウイルス同様、いち早い終息を望むばかりです。



さて、今回は"相続欠格事由"についてのお話しです。
だいぶマニアックな内容ではありますが、知っていて損はないという、いつものスタンスでお送りさせていただきます。




<目 次>



1.相続欠格とは

端的に言うと、犯罪等、一定の行為に該当してしまった場合に、相続人の資格がなくなることを指します。


似たような効果を生じさせる法律行為としては、他に"相続の廃除手続"がありますが、それとは異なりこちらは家庭裁判所での手続を何ら要せず、対象の行為に該当するだけで当然に相続権を失ってしまうのです。


相続する権利は誰もが生まれながらに持っている権利です。
それがすべて剥奪されてしまうと...

なかなかに強力な法律なのです。
ともあれ、まずは対応する民法の条文を見てみましょう。


民法891条
次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者



頭から"相続人になれない"と言い切っていますね。
他の部分についても、わりと分かり易い部類に入る条文内容と言えますが、特有の注意点等もあるので、例のごとくその内容を紐解いていくことにしましょう。




1-1.故意に生命を侵害する行為

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上記の条文中、第1号がこれに該当します。
まあ、なんと言うか、ドラマや映画のような内容ですね。


被相続人に対する殺人や、殺人未遂の罪で刑に処された場合に相続権がなくなるという趣旨の内容です。


まあ、これについては至極当然の内容と言えるでしょう。
仮に殺人を犯しても相続権が消えないとなると、良からぬことを考える者が増え、治安は大きく乱れてしまいますからー


それ故、"故意に"と言う部分がクローズアップされています。


被相続人の死亡という結果は同じであっても、過失致死、傷害致死、遺棄致死等はそこに"故意がないため"相続欠格事由に該当しません。
あくまで自身等の利益のため、悪意をもって対象者を死に至らしめた(もしくはそうしようとした)場合の話なのです。


尚、殺人や殺人未遂の対象者(被害者)は、被相続人に限らるわけではありません。
先順位や同順位の相続人に対する生命の侵害もこれに含まれるのです。


あまり具体的に考えたくもありませんが、例えば兄弟姉妹間の殺人事件等々(同順位の相続人に対する生命の侵害)。
相続人の頭数が減れば取り分が増えますからね計算上は...


相続欠格事由は、そうした愚行に走るのを防止するための法律でもあるのです。




1-2.殺人犯を知りながら告訴・告発しなかった場合

1号と一緒くたにするのはどうかなと思う部分もありますが、被相続人が殺害された場合に、相続人がその犯人を知りながら告訴・告発しなかったケースも、殺人同様相続欠格事由に該当することになります。


自分が直接殺害したわけではないが、取るべき処置(告訴・告発)を取らず、不当な利益を得た場合ですねいわゆる。


ただ、もちろん悪意をもって告訴・告発しなかった場合の話です。
対象となる相続人が善悪の判断(是非の弁別)が付かないような状況下(年齢的に未熟、精神疾患、知的障害、認知症等々)では、相続欠格事由に該当する余地はありません。


尚、この条文には続きがあります。


殺人に手を染めた者が、その相続人の配偶者直系の血族(祖父母、両親、子供、孫等)だった場合の話です。
なんと、このケースでは悪意をもって告訴・告発しなくとも相続欠格事由には当たらないとされているのです。


ごくごく近しい関係性であれば、やむなく殺人行為を庇ったとしても致し方がないとの判断なのでしょうー


ただ、その範囲には多少注意が必要かもしれません。
あくまで、対象は配偶者と直系の血族のみです。
ここに傍系血族は含まれていません。
 
尚、代表的な傍系血族としては、兄弟姉妹、叔父叔母、甥姪等が挙げられます。

配偶者や直系はいいのに、傍系は庇ったら相続欠格事由に該当してしまうわけです。



1-3.不当な遺言書への干渉行為

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上記条文中3号から5号がこれに該当します。


現実的には最も起こりやすそうな内容ですね。
遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿等、不当な干渉行為についての規定です。


威力をもって遺言書の変更等を妨げた場合や、もしくは変更等させた場合、悪意をもって自身で変更等した場合ですね。


尚、他の相続人に内緒で両親に遺言書を書いてもらうようなケースは、もちろんこれに該当しません。
後になって遺言書の形式不備を見付け、遺言者の意思を実現するために、悪意なく不備を是正したというような場合も同様です。


あくまで、単にその行為に該当するか否かではなく、相続に関して不当な利益を目的とするものが処罰の対象になるという趣旨なのです。






2.相続欠格事由に該当するとどうなってしまう?

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相続欠格事由がどういうものなのか、なんとなくでもご理解いただけたのではないかと思います。
続いては、その効果のお話しです。


相続欠格事由に該当してしまうと、相続人たる権利を当然に失ってしまうのは記述のとおりです。


そうなると、相続権が剥奪されてしまうわけですから、もちろん遺留分も認められなくなります。
偏った遺言内容であっても遺留分減殺請求などできなくなるわけです。


ちなみに相続欠格事由の効果は、相続発生前に欠格事由に該当した場合にはそのときに、相続発生後に欠格事由に該当した場合には相続発生時に遡って発生します。


その他の注意については以下のとおりです。




2-1.代襲相続が発生する

代襲相続については、次のブログ記事を参照ください。
尚、そこでも一部、今回の相続欠格事由に触れています。


「相続人になるべき者は誰か?~推定相続人を把握しておこう~/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_123/



奇妙に思われるかもしれません。

代襲相続は本来であれば死亡した相続人の子や孫がするものですから。
ただし、相続人としての資格を失ってしまうのは、あくまでも愚行を犯した当人のみです。
その子や孫等に罪はないとの考え方なのです。


僕が知る限り死亡以外の理由で代襲相続が発生するのは、"相続欠格事由に該当した場合""相続の廃除手続が行われた場合"のみです。


相続人になるべきものは誰か?勘違いしないように注意しましょう。




2-2.相続欠格事由に該当しているかどうかの判断はどのように行うのか?

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個人的には最もお伝えしたかった部分です。
いや、最も困る部分とでも言いましょうか―


端的に言うと、分かり難いのです。
相続欠格事由に該当しているか否かが...


相続欠格事由に該当したとしても、その旨が戸籍謄本等に記載されることはありません。
成年後見制度のようにその旨の登記が法務局なされるわけでもありません。


実務的な話をしますと、例えば僕が相続手続の依頼をされ、その相続人の一人に相続欠格事由に該当している方がいたとします。
正直な話、こちらからあえて聞くか、依頼者から申告でもしてくれない限り分かり得ないことなのです。

当然、それは相続手続先である法務局や金融機関にとっても同様です。


なんとも微妙な感じですよね...


尚、相続放棄の場合などは、家庭裁判所が"相続放棄申述受理証明書"を発行してくれるので、手続上はそれを添付する事で足ります。
ただし、既述のとおり相続欠格事由は、裁判所等での手続を要せず当然に相続権を失ってしまう制度です。
それ故、刑事裁判でもされていない限り、証明書のようなものが当然には発行されるわけではないと...



実務的にはどうすると思います??



少なくとも公的な証明書がないならないでOKとはなりません。
相続人に変更が生じる重大な行為ですから、おざなりにできるわけわけもないと...


結論からすると、ないならないなりに任意で作成した書面を要求されることになるのです。


具体的には、欠格者自身が作成した欠格事由が存する旨を記した証明書(現実的には司法書士が作成し、欠格者に記名押印してもらうことになるでしょう。)の添付が必要になります。
加えて、これ、実印で押印の上、相続欠格者の印鑑証明書も必要なのです。



なかなか貰えるものではありませんよね...
欠格者に有利な点など一つもありませんから。



そのため、
欠格者が欠格者であることを認めなかったり、認めていても証明書の作成に協力しなかったりする場合には、ここにきてようやっと裁判所の力を借りる形になるわけです。
この先の部分については、業務的に弁護士さんの領域に入るため詳細は控えさせていただきますが、上記の証明書に代え、"確定証明付の欠格事由を証する確定判決の謄本"を添付することによって登記手続等を行うことになります(刑事裁判の場合はその裁判所の謄本でもいいそうですが、僕自身、見たことはありません。)。


なんともな...と言うのが正直な感想です。




3.まとめ

今回は相続欠格事由についてのお話しでした。
そうそうあることではないでしょうから、そこまで気にする部分ではないかもしれません。

ただし、遺言書の作成が今以上に浸透してくれば、あるいは該当する案件が増えることも...

なんとなくでも頭の片隅に置いていただけると幸いです。


それでは今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一