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相続「遺産分割協議」を行う上での注意点とポイントについて
さて、今回は遺産分割協議のお話です。
存在自体は知ってはいても、特殊な職業でもない限り、実際に触れる機会はそう多くはないはずです。
そんな知っているようで知らない「遺産分割協議」―
本編ではその注意点や行う上でのポイントなどを中心にご案内させていただきます。
遺産分割協議はどう行うべきなのか?
まず遺産分割協議について簡単に説明すると―
遺産分割協議とは、相続人の内、誰が何を相続するかを決める協議です。
その協議内容は基本的には自由です。
必ずしも全部ではなく、必要に応じて一部の遺産についてのみ行うこともできます。
(例えば不動産のみの遺産分割協議などはケースとしてよくあります。)
相続人全員の同意がある限り、どのような割合であってもかまいません。
特定の相続人に偏った内容であろうと、均等な内容であろうと、あくまで相続人全員の同意があるのであれば、それは立派な「遺産分割協議」です。
端的に言うと、相続人が皆、納得する内容のものになりさえすればいいわけです。
話し合いの基本となるのは法定相続分
とは言え、お金の絡む話です。
そうそう簡単に相続人全員が納得できる「案」を出すのは難しいかもしれません。
それぞれの主張もあるでしょう―
- 長男だから
- 親の面倒をみていたから
- 他の兄弟姉妹より自分にはあまりお金がかかっていないから
よく聞く主張です。
それこそ他にも色々な主張があるでしょう。
ただし、互いに主張ばかりでは、まとまるものもまとまりません。
そこで民法はあらかじめ遺産をどういう風に分ければいいかの『指標』を定めています。
それが「法定相続分」です。
詳細についてはこちらをご確認ください。
「相続って何?/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_35/
ただし、これ、あくまで『指標』であり、強制力のあるものではありません。
当然ながら、それ以外の割合(例えば、夫に発生した相続で、子等は相続をせず、妻が単独で相続する場合などが挙げられます。)での遺産分割も可能なのです。
結果、指標はあるものの、強制力はないので揉めるときは揉めます。
だからこそ『遺言書』が大事なのです。
(遺言書のポイント等についてはまたの機会に―)
とは言え、もちろん指標があるとないのではだいぶ違ってきます。
決して不必要なものではないのです。
是非、参考にして話し合ってみてください。
「遺言書」がある場合に遺産分割協議はできるのか?
遺産分割協議を行う上での注意点の一つです。
まず前提として―
遺言書とは、故人が亡くなる前に残した最後の意思表示であり、相続人はこれに束縛されることになります。
遺言書は争いを事前に防止する側面が強いですが、相続人への「メッセージ」でもあるわけです。
ただし、その内容は必ずしも相続人等が望む内容ではないかもしれません。
あるいは相続人が皆、異なる結果を求めているかもしれません。
私的にはそれでもそれは故人の最後のメッセージであるため、なるべく遺言を優先させてあげたいとは思っています。
しかしながら、それによって弊害が生じては元も子もありません―
そこで法律は、遺言執行者が定められていない遺言書については、相続人全員の同意がある限り、遺言書とは異なる内容での遺産分割協議を認めています。
なんとできるのです―
それにはもちろん条件があります。
まず当然ながら相続人全員の同意です。
そうでなければ、遺言書本来の意味を失ってしまいます。
仮に一部の相続人の意思でその内容を変更できるとするならば、なんのトラブル防止にもならないでしょう。
あくまで相続人全員の同意は必須です。
もう一つは、遺言執行者がいないこと条件にしています。
遺言執行者とは、遺言書の内容を実現することを義務付けられている人物であり、その業務に対し重い責任を負っている人物です。
にも関わらず、いくら相続人全員の同意とは言え、あずかり知らないところで業務内容を変えられてしまっては、たまったものではありません。
ただし、それだけで全く遺言書と異なる遺産分割協議ができないというわけではなく、その趣旨を鑑み、あくまで遺言執行者の同意があればそれも可能となるわけです。
相続人間で話がまとまったからと言って、遺言執行者を無視しないよう注意しましょう。
遺産分割協議は全員参加が必須
遺産分割協議は必ず相続人全員で行う必要があります。
例えば、日頃から仲の悪い他の相続人がいたとして、その者を除外した遺産分割協議は、仮にそれ以外の相続人の全員が同意していたとしても当然に無効です。
どうしても話がまとまらないのであれば、裁判所での調停や裁判を利用することとなります。
実に避けたい事態ですが、この辺りは想像し易いのではないでしょうかー
では、そうした心情面の問題ではなく、物理的な問題、何らかの理由で協議自体に参加が難しい場合などはどうなるのでしょう?
相続人の中に行方不明者がいる場合
警察庁の発表では、平成28年に届出を受理した行方不明者の数は8万人を超えるそうです。
もはや一つの町の人口ですね。
余談ですが、私の生まれ故郷(福岡県の片田舎)は、住んでいた当時、人口1万人ぐらいだったと思いますので、実にその8倍以上です―
埼玉スタジアムでも収容できない人数ですね。
ちなみにこれ、実際に行方不明者として警察に届出がされた件数でしかありません。
それについての詳しい統計があるわけではありませんが、これに警察に届け出がされていない実態上の行方不明者数を合わせると―
もはや他人事ではありません。
※既に音信不通の家族がいるような方は、今の内にしっかりとした『遺言書』の作成を強くお勧めします。
こうした場合、遺産分割協議はどうなるのか?
行方不明者ですから、当然、協議には参加できません。
だったら仕方ないか―
とは、なりません。残念ながら。
どんな理由であれ、全員参加の基本は覆らないわけです。
ただし、行方不明者は見付からないので行方不明者なのです。
本腰を入れたところで、それを見付けるのは至難の業でしょう。
そのため、このようなケースでは、行方不明者の代わりとなる人物を家庭裁判所に選任してもらうことになります。
具体的には、不在者財産管理人というやつです。
「不在者財産管理人の選任手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/succession/post_28/
相応の手間と費用がかかってしまいますが、目的を達成するには致し方ありません。
もしくは、要件に当てはまるのであれば、これと並行して「失踪宣告」という手続を検討するのも手です―
「失踪宣告の申立手続/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/service/home/post_52/
尚、この辺りの手続は個人で行うには複雑過ぎますので、我々司法書士等、その途の専門家に直接ご相談ください。
もちろん、当事務所でも取り扱いは可能です。
また、申立業務だけではなく私自身が不在者の財産管理人として選任された経験が数度ありますので、その点からのアドバイスもできると思います―
相続人の中に未成年者等がいる場合
存在はする。存在はしても、協議できないパターン例です。
この国の民法では、未成年者は単独で法律行為を行うことができません。
もちろん、遺産分割協議も立派な法律行為です。
基本的には、未成年者に代わって法律行為を行うのは親権者(父母)になるのですが、遺産分割協議の場合だと、親権者も遺産分割の当事者になる可能性が高くなります。
例えば父が死亡し、母とその二人の未成年の子が相続人になるような場合です―
原則どおりなら、母が未成年の子の代わりに遺産分割協議を行えばいいように思えますが、母自身も遺産分割協議の当事者です。
結果、母と子の利益が相反するという理由から、このようなケースでは母が子を代理することができません。
仮に子に有利な遺産分割の内容であっても同様なのです。
法律は、結果云々ではなく、そのような状況下で遺産分割協議を母が行う事自体を「利益相反行為」とみなすわけです。
では、どうすべきなのでしょう?
このようなケースですと、家庭裁判所で未成年の子に対し、「特別代理人」というものを選任してもらう必要が生じます。
ちなみに上記のケースですと、子それぞれにつき、異なる特別代理人の選任が必要ですのでご注意ください。
尚、契約ができないという点では、未成年者だけに限らず、成年被後見人も同様です。
基本的には成年後見人が代わりに行いますが、同じく利益が相反する場合などには同様の手続が必要となるわけです。
まとめ
なんとなくイメージが湧きましたでしょうか?
遺産分割協議は簡単なものは簡単ですが、状況によっては非常に複雑になったりもします。
いつでもお気軽にご相談ください。
また、その他に遺産分割協議の内容を書面にした『遺産分割協議書』の作成方法も気になるところでしょう―
それにつきましては、そう遠くない未来に本ブログに掲載させていただく予定です。
それでまでしばしお待ちください。
ではでは。