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会社・法人登記

株式会社や有限会社の資本金の増資手続について 


いつもお読みいただきありがとうございます。




2024年度上期を目途に紙幣が刷新されるそうですね。
紙幣を一新するのは2004年以来、約20年ぶりとなるそうです。

1万円札が渋沢栄一、5千円札が津田梅子、千円札が北里柴三郎といったラインナップ―

人選に異論はありませんが、個人的には渋いなぁ、と、感じています。

デザイン的な部分で言えば、現在のものよりも好みです。
千円札は富嶽三十六景でしょうか?
とても千円札とは思えない存在感がありますよね。

ちなみに流通枚数の少ない2千円札の刷新は見送られたそう(もはや存在意義が)...
でも、それなら紙幣の一新にはならないのでは?と、密かに思っていたりもします。




さて、そろそろ本題に入らせていただきます。
今回は株式会社や有限会社における資本金の増資のお話しです。

その内容や手続の説明、手順、必要となる書類等をご説明させていただこうと思っています。



<目 次>




1.資本金の増資とは

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そもそも、会社の"資本金"とは何なのでしょう?
基礎中の基礎ですが、まずはそこを簡単に触れてみることにしましょう。


資本金とは―


会社法第445条第1項
株式会社の資本金の額は、(省略)、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。



対応する会社法の条文です。

どんな事業であれ、最低限の元手は必要です。
もちろん、それを銀行等の外部から借り入れることもできるでしょうが、すべてではないはずです。

その際、会社は元手を地力で用意する必要が生じます。
具体的には、株式会社の場合は株主から"株式"という形で、有限会社の場合は社員から"出資金"という形で事業資金を募ることとなります。



そうして集まった会社の自己資本のことを、資本金と呼ぶわけなんです。




資本金は、借金などの負債とは異なり、利息を付して返済する必要はありません。
そのため、何もそれだけで判断されるわけではありませんが、あくまで一般的には、資本金が多い会社ほど資金繰りが安定しやすく、財務が健全であると見られているわけです。


まあ、ようするに会社の顔のようなものなんです資本金は。




1-1.資本金の増資方法

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それではその資本金ですが、何も会社の設立時にだけで決められるわけではありません。

設立後、改めて"増資"という形で増やすことも当然に可能なのです。


例えば、取引先との関係や、銀行融資、各種許認可申請等々、それこそ資本金を増資する機会は会社によって様々ですし、多く存在するものです。



そこで、ここでは資本金の増資方法についてご紹介することに致します―



資本金の増資方法は、株を"誰に向けて"発行するかによって、"公募増資""株主割当増資""第三者割当増資"の3つに分けることができます。

以下、それらの簡単な説明となります。



  • 公募増資
    既存の株主や知り合いの投資家だけではなく、不特定多数の投資家に新株取得の申し込みを募集する増資方法を言います。
    中小企業には正直あまり関係がありません。
    株式を公開している会社(主に上場会社)の増資方法ですねいわゆる。
    株の投資を行っている方はよりイメージし易いのではないでしょうか?



  • 株主割当増資
    書いて字のとおり、一般の投資家等への公募は一切行わずに、既存の株主からのみ新株取得の申し込みを募集する増資方法を言います。
    追加出資のようなものですねいわゆる。
    尚、株主割当には他にはない特徴があります。
    具体的には、既存の株主の株式数に応じて新株を引き受ける権利が与えられる点です。
    そのため、既存の株主が皆、新規発行株式を引き受ければ持ち株比率に変化は生じません。
    既存株主が複数いて、現行のバランスを保ちたい場合には適した増資方法と言えるわけです。
    ただし、あくまで新株を引き受けるかどうかの判断は株主に委ねられます。
    既存株主は、別に新株の引き受けを断ってもいいわけです。
    その点、ご注意を。



  • 第三者割当増資

    特定の第三者(株主か否かを問いません。もちろん株主であっても可能です。)に対して新株を発行する増資方法です。
    中小企業に多く利用されている印象がありますし、実際、僕自身が関わる事が最も多い資本金の増資方法です。
    第三者割当はその特徴から、"縁故募集"とも言われ、身内や役員、既存株主が出資するケースがほとんどです。
    尚、
    役員の会社に対する金銭債権を出資する、いわゆるDES(デッドエクイティスワップ)による増資もこの第三者割当によって行われます。
    より家族経営に近い小規模な会社などに適した増資方法とも言えるでしょう。



    なんとなく増資に対するイメージが湧きましたでしょうか?
    内容的にはかなり難しい部分ですので、すべてを理解するのは容易ではないと思います。

    そのため、増資にあたっては、なるべく司法書士や税理士等の専門家に一度ご相談されることをお勧めします。

    尚、中小企業の増資方法は、ほぼ株主割当か第三者割当のどちらかです(公募増資は株式を公開している必要があるため。)。

    状況に適した方をご選択いただければと―



1-2.資本金増資手続の流れ

ここでは資本金増資方法の内、中小企業に関わりの深い、株主割当と第三者割当による資本金増資手続の流れをご紹介させていただくこととします。

なにぶん実際に手続を経験してみないと分かりにくい点は多くあるとは思いますので、更なる詳細につきましては別途お問い合わせください。



<株主割当による増資の場合>

  • ①募集事項の決定
    増資する資本金の額や、新規に発行する株式数等の詳細を決めます。株主総会の特別決議によるのが原則ですが、会社の定款に別段の定めがある場合には、取締役会(取締役の決定書)によって定めることになります。

  • ②株主への通知
    ①で定めた内容を既存株主に通知する必要があります。株式の引受を行う機会を与えるためです。具体的には、募集株式の引き受け期日の2週間前までに、既存株主に募集事項等の詳細を通知します。尚、この"2週間の期間"はは、総株主の同意があれば短縮することが可能です。

  • ③募集株式引き受けの申込み
    新規発行株式の引き受けを希望する株主は、その旨の申込みを会社に対して行う必要があります。尚、申込み期日までに申し込みをしなければ、その権利は失権してしまいます。

  • ④出資金額の払込み
    払込期日迄に、所定の口座(会社名義)に払込金額の全額を振込みます。この際、誰からの振込みか分かるよう、必ず引き受けを行う株主の個人名が振込先の通帳に記載
    されるよう注意しましょう。振込時期や金額だけではなく、"誰から振込まれた"ものなのかという点も非常に重要なのです。

  • ⑤法務局への登記申請
    ここまでくればほぼほぼ終了です。
    後は登記手続の完了を待ちましょう。



<第三者割当による増資の場合>

  • ①募集事項の決定
    当然ながら、この辺は株主割当でも第三者割当でもその手続に違いはありません。
    株主総会の特別決議によるのが原則であり、会社の定款に別段の定めがある場合には、取締役会(取締役の決定書)によって定めることも同様です。

  • ②申込み者に対する通知
    申込みをしようとする者に対し、募集事項その他法定の事項を通知します。株主割当の場合は既存株主へ通知していましたが、第三者割当の場合は特定の第三者に対して行うことになるわけです。

  • ③募集株式引き受けの申込み
    この辺も基本的に株主割当と同様です。

  • 募集株式の割当の決定
    株主割当の場合には既に決まっているのでこの手続はありませんが(既存の株主の株式数に応じて割当てられるため。)、第三者割当の場合は、その詳細を決める必要があるのです。
    尚、それらを決定する会社の機関は、次の優先順位に従うこととなります。

    (1)定款に定めがある場合はその定め
    (2)取締役会が存在する会社は、取締役会
    (3)取締役会が存在しない会社は、株主総会の特別決議

  • ⑤募集株式の割当の通知
    株式の引受人に実際に割当てられる株式数を通知します。

  • 出資金額の払込み
    注意点も含め株主割当時と同様になります。
    誰からの振込みか分かるよう、必ず引き受けを行う個人名が会社名義の振込先通帳に記載
    されるようにしましょう

  • ⑦法務局への登記申請




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株主割当同様、資本金の増資にあたってやるべきことは結構多いんです。
尚、もちろんケースバイケースですが、僕の場合は省略できるところは省略してしまいます。

例えば、第三者割当による場合、上記の②~⑤の手続を実際に行うことはほとんどありません。


とは言え、もちろんさぼっているわけではありませんよ―


これらの手続の代わりになる書類を作成しているのです。
具体的には、"募集株式総数引受契約書"なるものが存在します。

これによって、原則として行わなければならない②~⑤迄の手続を一つの書類で済ませることができるのです。

募集株式総数引受契約書の参考書式について以下のとおりです。

是非参考にしていただければ―



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2.発行可能株式総数にも注意

"発行可能株式総数"という言葉ご存知でしょうか?


既に発行されている株式のことを"発行済み株式数"と言うのですが、その発行済み株式数は発行可能株式数を超えることができません。

なんというか、発行できる株式の上限を定めた"枠"のようなものなのです。
ちなみに会社謄本(履歴事項証明書)や定款などでその記載が確認できるはずです。


資本金の増資にあたっては、この発行可能株式総数も注意事項の一つになります。


仮に発行可能株式総数を超える資本金の増資を予定しているのであれば、その前提として別途その旨の定款変更及び変更登記手続が必要になるためです。

会社の定款を変更し、発行可能株式総数の枠を拡げるわけですねつまり。


尚、当該変更手続は株式の増資とは異なる登記手続ですので(あくまで付随して行っているだけです。)、株主総会での決議の他に、別に実費(登録免許税3万円)が発生してしまいます。


念のため資本金の増資手続の前に確認するようにしましょう。


尚、以下が第三者割当による資本金の増資と合わせて、発行可能株式総数を変更する内容の株主総会議事録の参考書式となっております。
そのまま使用できるわけではありませんが、参考にしてみてはどうでしょうか。



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※有限会社の場合、特に何の変更もしていなければ、発行済み株式数と発行可能株式総数は"同数"になっています。いわゆる、最初に行う資本金の増資の前提として、発行可能株式総数の変更が絡むケースがほとんどなわけです。また、公開会社(株式の譲渡を制限していない会社)の場合だと、"発行可能株式総数は、発行済株式総数の4倍を超えてはならない"という決まり事があります。公開会社自体が非常に少ないので、あまり留意する必要はないかもしれませんが、念の為ご注意を。




3.まとめ

資本金の増資についてのお話しでしたが、これらはあくまで初心者入門部分というか、ほんの冒頭部分というか(例えば上記の参考書式以外にも必要となる書類が存在する等々。)...

実際に行う手続によっては、より複雑になりますし、違う注意事項も生じることでしょう。


結構、奥深い手続きなんです資本金の増資手続は―


当ブログの反応がよければ、もっと踏み込んだ内容のものも検討しますが、とりあえず現段階ではこの辺に留めておきます。
DES(デッドエクイティスワップ)についてなんかは、自身の復習の意味合いでも書いてみたい気がしますが、しばらくは様子見ですね。

でないと、内容が複雑になり過ぎ、置いてけぼりをくってしまうような人も多く出てしまうでしょうから(既に難解になり過ぎたかな?と反省していますが...)―


そのような次第ですので、とりあえず今回はこの辺で。

write by 司法書士尾形壮一