取扱業務
不動産の登記手続について離婚に伴う財産分与手続
財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して得た財産を、離婚に伴い分配する手続を指します。
ここではその対象が不動産であった場合を中心に注意点等をご説明させていただきます。
尚、こちらのブログ記事も併せてご覧ください。
より詳しく解説していますので―
「離婚時の財産分与に基づく登記手続のあれこれ/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/post_106/
1.離婚成立前にしっかり準備しましょう
協議離婚の場合は特にそうです。
何を言わんとするのかというと、財産分与に伴い不動産の名義変更をする場合、その原因となる日付は原則として協議の成立日です。
しかし、財産分与の協議成立の時点で離婚の届出がされていない場合は、届出日が原因日となります。
- 財産分与に基づく登記原因日は、財産分与の協議成立日か離婚日のいずれか遅い日付
ようするに不動産の財産分与は必ず離婚が成立した後になるというわけです。
離婚後に相手方から諸々の協力を得ることはできそうですか?
裁判上の離婚でもない限り、その旨の登記は共同申請で行うこととなります。
現在の所有者(分与者)の権利証だけではなく、印鑑証明書も、ケースによっては他の書類も必要になります。
一つでも不足書類があれば登記できないことも考えられます。
とは言え、協力してくれるかどうかは実際のところはそうなってみないと分からないと思います。
であればこそ登記必要書類の収集等、極力できる準備は事前にしておくべきなのです。
財産分与の対象に不動産をお考えの方は、なるべく離婚届を提出してしまう前にご相談を。
2.住宅ローンはありませんか?
どちらかと言うと離婚時というよりは離婚後の問題になります。
財産分与の対象となる不動産に住宅ローンがある場合、銀行に対し不動産の所有者が変更になる旨の届出を行う必要があります。
これを怠ってしまうと住宅ローン条項に違反してしまいますので、最悪の場合残りの住宅ローン残高を一括請求される可能性もあります。
ご注意下さい。
その他、住宅ローンの保証人になっていたりはしませんか?
ご夫婦の一方が保証人になっているのはよくあるケースです。
仮にそうであれば、所有者変更の申し出時にあわせて保証人の変更の手続を行っておきましょう。
通常であれば住宅ローンの保証人を変更するは大変ですが、離婚時となればたいていの場合変更することが可能となります。
そうでないと、仮に相手方が住宅ローンの支払いに失敗した場合は多額の借金が降りかかってくることも考えられます。
あくまでそれは保証人としての責任ですので、離婚の有無は何ら関係ないのです。
離婚したんだから払わないはとおりません。
最後に相手は離婚後も住宅ローンを支払っていけそうですか?
自宅は特別なものであり大切なものです。
守りたいと思うのは当然のことでしょう。
ただし、離婚後住宅ローンを支払いつつ、別の新たな場所で生活を行うのには相応の経済力が要求されます。
相手は再婚するかもしれません。
何を言わんとするのかというと、しっかりとした支払いの目途がたっていないならば、住宅ローンの残った不動産を財産分与の対象にするか否かはよく検討すべきだということです。
住宅ローンがある以上、名義を変えればいいだけではありません。
せっかくの手続が無駄にならないように注意しましょう。
3.税金関係にも注意が必要です
離婚に伴い不動産を財産分与した場合、贈与税が課されるか否かは非常に重要な問題でしょう。
結論から言うと、財産分与は基本的に贈与にはあたりません。
あくまで夫婦間の財産関係や離婚後の生活保障であると考えられるためです。
ただし、例外的に贈与税が課税される場合もあります。
それは対象となる財産が多過ぎる場合です。
具体的には・・・
『分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合』と定義されます。
尚、この場合その多過ぎる部分に贈与税が課税されます。
ただし、よっぽど大きくなければ実際に課税されることは少ないものと思われますが、念のためご注意下さい。
その他、離婚自体が脱税目的であるような場合です。
このような場合は離婚でもらった財産のすべてに躊躇なく贈与税が課せられてしまいます。
他の税金としては、理由はどうであれ不動産を取得することに違いはないため不動産取得税が気になるところです。
ただし、考え方は贈与税の場合と同様で、その目的が夫婦財産の清算である以上、不動産取得税は課されませんが、慰謝料や離婚後の扶養を目的としたものである場合には不動産取得税が課税されることがあります。
また、譲渡取得税については基本的に財産を譲渡した側に課されることとなります。
とは言え、元より不動産を購入したときの価額より財産分与したときの時価の方が低ければ課税されませんし、されたとしても離婚後であれば特別控除の対象となるため実際に税金を支払うことはそう多くはないでしょう。
以上のように不動産の財産分与に伴い、贈与税、不動産取得税、譲渡取得税が発生することがあり得ます。そうならないに越したことはないでしょうが、あわせてそれらの準備や調査を行うこともまた重要なわけです。
不動産の財産分与をご検討であれば、まずは当事務所にご相談下さい。
税理士ではないため税務のご相談自体に乗ることはできませんがご紹介することは可能です。
目的達成のためより良い準備をしていきましょう。
司法書士報酬・費用
※ただし、川口、蕨、戸田以外の地域に司法書士の出張をご希望の場合は、交通費実費のみ別にいただいております。他の埼玉の地域はもちろんのこと、日帰りできる範囲内であれば東京・千葉・神奈川・茨木等、出張させていただきます。
<協議離婚の場合の登記必要書類>
財産分与をする方(義務者)
協議離婚の場合の登記申請は原則どおり権利者及び義務者の共同申請となります。
そのため権利証も必要となり、仮に紛失している場合などは司法書士が作成する「本人確認情報」というもので代用するのが一般的です。
- 登記済権利証(登記識別情報通知)
- 印鑑証明書(発行から3ケ月以内のもの)
- 離婚日の記載ある戸籍謄本
- 固定資産評価証明書(最新のもの)
住所変更登記が必要な方(登記されている住所と上記の印鑑証明書上の住所が異なる方)は別に以下の書類が必要となってきます。
趣旨としましては、住所の変更経緯を繋ぐ必要があるためです。
尚、いずれもご依頼いただければ司法書士が取得可能な書類となります。
- 住民票(本籍地入りのもの)
- (戸籍の附票、改正原戸籍の附票)
- (不在籍証明・不在住証明)
財産分与を受ける方(権利者)
1.住民票
<裁判上の離婚(調停、審判、訴訟)の場合の登記必要書類>
協議離婚の場合とは異なり、調停、審判、訴訟など裁判上の離婚の場合は、財産分与を受ける方(登記権利者)が単独で登記申請を行うことができます。
相手方(登記義務者)の協力はいりません。
ただし稀にあるのですが、例えば調停調書に「~と~は互いに協力して所有権移転登記を行うものとする」といったような文言である場合は登記の単独申請ができない場合もあります。
そもそも共同申請を前提とした内容になっているからです。
その点、ご注意ください。
財産分与を受ける方(権利者)
- 調停調書、審判書、和解調書等
- 住民票
- 固定資産評価証明書(最新のもの)