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会社・法人登記NPO法人を作ろう~所轄庁による設立の認証~
いつもお読みいただきありがとうございます。
さて、前回はNPO法人の歴史等、大枠をご説明させていただきましたが、今回は認証を受けるための準備や条件等についての記事になります。
本題に入る前にこちらも合わせてご覧いただければー
「NPO法人を知ろう/司法書士九九法務事務所HP」
https://99help.info/blog/npo/
知っているようで知らないNPO法人。
果たしてその中身とはー
<目 次>
- 1.NPO法人設立の絶対条件
1-1.設立手続の申請書や定款の内容が法令の規定に適合していること
1-2.特定非営利活動(20分野の非営利活動)を行うことを主たる目的とし、営利を目的としないこと
1-3.10名以上の社員(正会員)を有するものであること
1-4.社員の資格の得喪に関して不当な条件を付さないこと
1-5.役員(理事及び監事)のうち報酬を受ける者の数が役員総数の3分の1以下であること
1-6.その他の要件 - 2.まとめ
1.NPO法人設立の絶対条件
まずは基本的な考え方からー
NPO法人は、所轄庁による設立の認証を受ける必要があります。
単純につくりたいからと言って、任意につくれるわけではないのです。
また、無事に認証手続が終わった後は、所轄庁から"認証書"が届きますので、その日から2週間以内に管轄法務局で設立登記を申請しなければなりません(わりとタイトなスケジュールですので要注意です。)。
ようするに、NPO法人を設立するには、認証手続の準備を進めることが先決なわけです。
そして、これが大変なんです...時間もかかりますし...
早くても半年前後はかかるでしょうか―
細かい修正はもちろんのこと、内容によっては認証されないことだってあり得ます。
ただし、あらかじめ定められた基準をしっかり守れてさえいれば、不認証の決定がされることはまずありません。
重要なのは理想と現実のバランスです。
では、問題となる"認証の基準"とはどういうものなのでしょうかー
1-1.設立手続の申請書や定款の内容が法令の規定に適合していること
所轄庁による設立の認証を受けるには、最低限次のような書類等が必要になってきます。
当然ですが、これらに不備がないようにすることをまず心掛けていきましょう。
<NPO法人認証時必要書類等>
- 定款
- 役員名簿(役員の氏名、住所、報酬の有無を記載)
※役員及び報酬の有無については、後記参照ください。 - 役員の就任承諾及び宣誓書
- 役員の住民票(戸籍の附票)
- 社員のうち10人以上の氏名、住所を示した書面
※社員については、後記参照ください。 - 団体確認書
- 設立趣旨書
- 設立についての意思の決定を証する議事録
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の事業計画書
- 設立当初の事業年度及び翌事業年度の活動予算書
NPO法人の設立作業は、これらの収集及び作成がメインとなってきます。
諸々、注意点等ありますが、詳しくは後述させていただきます(記載内容等、細かい必要書類の説明につきましては、需要があるようでしたら別記事にてご紹介させていただくつもりです。)。
1-2.特定非営利活動(20分野の非営利活動)を行うことを主たる目的とし、営利を目的としないこと
これについての詳細は、冒頭でもご紹介した前回記事を参照いただければと。
NPO法人独自の特徴であり、株式会社や合同会社とは大きく異なる点と言えるでしょう。
1-3.10名以上の社員(正会員)を有するものであること
NPO法人は株式会社のように1人だけで設立することはできません。
必ず社員が10名以上必要となります。
尚、ここで言うところの社員は、一般的な会社の会社員とは全く異なるものです。
そのNPO法人の社員とはー
- 法人の構成員で総会での議決権を有する者
と、されています。
ようするに株式会社で言うところの株主に近い役割を持っているわけです。
そうした社員が最低10人も必要...
まあ、元々ボランティア団体に法人格を持たせることを目的に作られた法律ですので、その名残と言うか何と言うか...
ともあれ、いくら活動目的がしっかりとしていても、志を共にする社員が他に9名以上集まらなければNPO法人設立への道は開かれないわけです。
意外と躓きやすい部分でもありますので、目的が決まった後は人数集めから始めるのもいいかもしれませんね。
1-4.社員の資格の得喪に関して不当な条件を付さないこと
なんとも分かりにくい規定ですよね。
これは、社員の入会資格や退会条件が恣意的では駄目だという趣旨です。
つまり、誰もがNPO法人の社員になることができ、また、いつでも退会ができることを原則にする必要があると―
とは言え、全く制約を設けることができないわけでもありません。
対象となるNPO法人の活動目的によっては、一定の入会資格を設けることも可能です(例:医療活動等)。
あくまでそれが活動目的に応じた合理的な制約であり、また、不当な条件に当たらなければOK。
まあ、その辺の判断が難しいんですけどね...
1-5.役員のうち報酬を受ける者の数が役員総数の3分の1以下であること
NPO法人には社員の他に役員も必要となります。
具体的には、理事と監事です。
また、理事は3人以上、監事は1人以上というのが最低限の目安です。
それぞれ株式会社で言うところの取締役や監査役に近い役割ですね。
まだ人を集めなければいけないのか...
そう思われるかもしれませんが、社員と役員は兼任可能ですので、必ずしも新規に対象者を募るのではなく、社員の中から適任者を選ぶのも手でしょう―
尚、理事の内、代表者が理事長(代表理事)となるのですが、他に定款上の規定によって、"副理事長"や"常務理事"等、いろいろな名称の理事を置くことができるのも特徴です(登記上は単に"理事"としか記載されませんが...)。
また、監事は役員であることに違いはありませんが、なぜか登記事項にはなりません(会社の登記簿には記載されません)。
その他、役員についての注意事項等は以下のとおりになっています。
<どのような人物が役員になれるのか?>
結論からすると、概ね株式会社の取締役と同様の規定となります(成年被後見人や被保佐人、破産者で復権を得ないもの等々。)。
NPO法人特有の規定としては、『設立の認証を取り消された特定非営利活動法人(NPO法人)の解散当時の役員で、設立の認証を取り消された日から2年を経過しない者』というものがあります。
あまり該当するケースは少ないでしょうが、念のため注意しておきましょう。
<親族の人数制限規定とは?>
株式会社等には存在しない規定です。
NPO法人には親族の人数制限があります。
いわゆる、一族による法人支配の排除ですね。
家族運営ができないわけではありませんが、家族が多くを占めるNPO法人の運営は認めないという趣旨なのです。
以下、その旨の条文になります。
特定非営利活動促進法 第21条
(役員の親族等の排除)
21条 役員のうちには、それぞれの役員について、その配偶者若しくは三親等以内の親族が一人を超えて含まれ、又は当該役員並びにその配偶者及び三親等以内の親族が役員の総数の三分の一を超えて含まれることになってはならない。
必ずしも親族が役員になれないわけではありません。
とは言え、最大1名です(~親族が一人超えて含まれ~の部分に該当します。)。
とは言え、親族が1名だけならいいわけでもありません。
具体的には、役員(理事・監事)総数の内、3親等内の親族が3分の1を超えて含まれてはならないというものです。
※両親、子供が1親等、兄弟、祖父母、孫が2親等ですので、叔父叔母、曾孫までが3親等内に該当します。ですので、従兄弟などは制限の対象にはなりません。
つまり、1名の3親等内の親族を役員としてNPO法人を運営したいのであれば、他に親族ではない5名の役員を選任する必要があるわけです。
この割合からすると、そもそも役員の総数が5名以下の場合は、3親等内の親族を1名も入れられなくなってしまうと(役員総数の3分の1を超えてしまうため。)・・・
以上、簡単にNPO法人の役員の説明をしてきましたが、その上で設立の認証を受けるには、役員報酬の規定をクリアーしておくことが必須です。
この項の本題ですね。
そもそも、役員のうち報酬を受ける者の数が役員総数の3分の1以下とはどういう状況なのでしょうか?
結論からすると、特に捻りなどはなく、そのまんまの意味です。
記述のとおり、認証時に提出する役員名簿にも各役員の報酬の有無を記載するぐらいですから...
具体的にはー
- 役員が4~5名:役員報酬の支給は1名迄
- 役員が6~8名:役員報酬の支給は2名迄
- 役員が9~11名:役員報酬の支給は3名迄
と、なるわけです。
もちろん、株式会社では役員の人数に関わりなく、その全員に役員報酬を支給することが可能です。
なぜこのような違いをつくる必要があるのか??
まずは改めてNPO法人設立の目的を考えてみましょう。
それは地域社会の発展等、社会的な使命の達成を目的であったはずです。
であれば、無報酬役員を置く仕組みをつくることで、高額な報酬による動機づけの阻止を図っているー
おそらく、そんなところなのでしょう。
尚、この場合の"役員報酬"とは、あくまで役員としての地位や職務に与えられる報酬のことを指します(何も仕事をしなくても役員であるだけでもらえる報酬)。
そのため、一般的な給与がもらえないわけではありません。
現存する多くのNPO法人では、理事が職員を兼務していることが多いです。
もちろん、そのような場合において、適正な給与が支払われることに問題が生じるわけではありません。
あくまで、地位としての役員報酬について一定の制限があるという意味なのです。
1-6.その他の要件
その他の要件については、詳しく説明する必要もないでしょうから(当たり前なので)、簡単な紹介にとどめておきます。
NPO法人は、その活動が次のいずれにも該当する団体であることが必要です。
非営利かどうか以前の問題ですね。
・宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでない
こと
・政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと
また、これについても当然ですが、NPO法人自体が以下に該当しないことも必須条件となります。
・暴力団
・暴力団又はその構成員若しくは暴力団の構成員でなくなった日から5年を経過しない者の統制下にある団体
尚、これはNPO法人に限った話ではなく、株式会社等の役員にも同様のことが言えます。
まず大丈夫でしょうが、念のため注意しておきましょう。
2.まとめ
NPO法人の所轄庁による設立認証手続についてのお話しでした。
多少なりともイメージが湧きましたでしょうか?
とは言え、お送りした内容は、あくまで基本中の基本でしかありません―
実際に大変なのはこれからなのです。
定款や設立趣旨書、事業計画書、活動予算書等の作成が残っていますし、その後は厳しい(?)所轄庁との打ち合わせが数回続くことでしょう。
NPO法人設立までに要す時間と労力はなかなか大変なものがあるのです。
なぜNPO法人が必要なのか?
社団法人では駄目のか?
改めて今一度その辺を整理した上で手続を進めていくことも大切かもしれませんね。
それでは今回はこの辺で。
write by 司法書士尾形壮一